《した魔法~生まれ変わった魔法が、15年ぶりに仲間と再會する~》11 16歳差
昔、戦っていた頃の記憶を頭いっぱいにイメージする。
杖の先端で魔法陣を描く事で、魔法を発できる――筈なのだが。
ぐるぐる、と。
何度回しても手応えはなく、空しく宙を掻(か)くのみだ。
「あれ……えいっ、えいっ」
気合を込めて振っても、結局何も起きなかった。
「うーん、駄目だねぇ。やっぱり力はないのかな」
腕組みをして咲は芙(ふみ)から杖をけ取り、目の前でぐるぐると回してみせる。先端の軌道に合わせて、金のがキラキラと円を描いた。
「はぁぁあ。殘念。もしかしてと思ったのに」
がっくりと肩を落とし、芙は席に戻る。
「私の杖だから駄目なのかもしれないよ?」
見た目に差異はなかったはずだ。けれど五人とも使える魔法が違うので、何かそれぞれに仕掛けがあるのかもしれない。
「今度、ダムに探しに行ってみようかな」
「あんなトコロで十六年も野曬(のざら)しにされちゃあ、みが薄いんじゃないかなぁ」
再び「はぁ」と溜息をつく芙の橫に手を付いて、咲はその顔を覗き込んだ。
「ところで。弘人達に會って行くかい?」
名前を聞いただけで、衝が走った。カップを持つ手が震えて芙はそこから手を離すと、自分の元を強く握り締めた。見上げる咲の表に困のが滲(にじ)む。
「どうする? 私が言うのもなんだけどさ……辛くなると思うよ」
彼の言葉の含みを、何となく予想する事ができた。
「……うん。でも、會いたいの。町子は死んじゃったんだから、仕方ないと思ってる」
町子のいない十六年は長すぎたのだ。頭に浮かぶ弘人は十五歳のままだが、彼は今三十一歳。だから々覚悟しなければいけないと、この町へ戻ると決めた時、自分に強く言い聞かせた。
「二人に、會わせて」
「分かった」と答えて、咲はテーブルから放した手を芙の肩に乗せた。
「別に、強がる必要はないんだからね?」
「うん――ありがとう。あっ、でも……」
重要な事を思い出して、芙は慌てて柱に掛けてある鳩時計を見やった。
「帰りの電車、間に合うかなぁ」
既に時間は三時半になろうとしていた。バスと電車と、自転車での移時間。四時半にはここを出ないと、寮の夕飯に間に合わない。
「そっか、門限があるのか。高校生だもんね。何なら明日にするかい?」
「ううん。今日會いたい!」
芙は「お願い」と懇願する。ここで帰ったら、次會えるとは限らない。第一、気持ちが収まらなかった。
「分かった。じゃあ、私が寮まで送っていってあげる」
「本當? ありかとう、咲ちゃん。寮に電話するね」
満面の笑みで頭を下げ、芙は鞄からスマートフォンを取り出した。登録済みのアドレス帳から寮の番號を選ぶ。し長いコールの後、寮母のミナが返事する。
『はい、淺風寮です』
「えっと……一年の有村芙です」
慣れない會話に張しつつ用件を伝えると、ミナは「分かりました」と了解する。
『學校の周りは暗いから、気をつけて帰ってくるのよ? とりあえず、送ってくれる方の名前と連絡先だけ聞いとこうか』
ハッとして芙は話から口を放すと、小聲で咲に訴えた。
「連絡先、教えてって」
慌てる芙にクスリと笑い、咲はテーブルの隅に立て掛けてある手書きのメニュー表を指差した。
お店の名前と住所、その下に電話番號のったスタンプが押されている。芙はその番號を読み「送ってくれるのは、粟津咲さんという方です」とミナに伝えた。
「わかりました。門限は厳守よ。それまでなら――ゆっくりしてくればいいわ」
夕食の準備はしているだろう時間だから、嫌味の一つも言われるかと思ったが、ミナは寛大にそんな優しい言葉をくれた。
「ありがとうございます」と電話を切ると、今度は咲が自分のスマートフォンで電話を掛ける。芙が慌てる間もなく、咲は繋がった相手に、
「町子に會わせてあげるから、二人でおいで」
空いてる手を腰にあて、命令口調で言い放つ。
「二人……」
その言葉に芙のが痛んだが、今は深く考えないようにと自分をい立たせる。そして、話の奧かられる聲にじっと耳を澄ませた。
『ちょっと待て、咲、お前――』
「いいから。三十分で來るんだよ?」
向こうの了解も待たずに、咲は通話終了ボタンを押し「すぐ來るよ」と親指を立てた。
小さく聞こえた相手の聲に弘人を確信することはできなかったが、通話が途切れた途端、急にが震え出す。
いよいよ、その時が來るのだ。
「すぐ、って。どうしよう」
「そんな張しないで。そりゃ弘人には違いないけど、そんなに期待しちゃったら、夢が壊れるかもしれないよ? もうオッサンなんだから」
歳が三十一なことは覚悟していたが、ストレートにそう言われると戸ってしまう。思わず浮かんだ『オッサン像』に、芙はぶるぶるっと頭を振った。
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