《機甲學園ステラソフィア》リベンジマッチ
「ついにやって參りました! 準決勝ぉ!!」
モニター前の舞臺上でマイクを片手に聲を上げるミウラ・リタ。
その言葉に呼応するように、會場が一段と盛り上がりを見せる。
「Aブロック準決勝! 無限の星は夢の數。チーム・バーチャルスター!!」
落ち著いた表で裝騎の最終調整をするチーム・バーチャルスター。
さすがは優勝最有力チームだけあって、その態度には余裕がある。
「対するは、希は我らに。オラシオン!!」
それぞれの裝騎と騎使の紹介がモニターに流れ、次はBブロックに切り替わる。
「そしてBブロック準決勝! 不思議大好き仲良し4人チーム・ミステリオーソ!!」
4年ヒンメルリヒト・ヒミコと裝騎フリップフロップ。
3年クラスタリアス・リコリッタと裝騎ラヴァーズ・シックス。
2年レインフォール・トーコと裝騎ニューウェイ。
1年ヒラサカ・イザナと裝騎アイロニィ。
「対するは、追風一杯、順風満帆! チーム・ブローウィング!!」
4年ワシミヤ・ツバサと裝騎スーパーセル。
3年テレシコワ・チャイカと裝騎スネグーラチカ。
2年カスアリウス・マッハと裝騎チリペッパー。
1年サエズリ・スズメと裝騎スパロー。
「ついに始まるな――」
「はい――――!」
「先ほどってきた報なんですが、なんとミステリオーソ1年ヒラサカ・イザナとブローウィング1年サエズリ・スズメは去年の四天王決定戦決勝で戦った因縁の相手らしいです!」
四天王決定戦東ブロック――その決勝で行われたサエズリ・スズメが所屬するプラヴダ中とヒラサカ・イザナが所屬するヘブンズフィールド中。
そして、両校のエースであったスズメとイザナの戦いを記憶していたものも多く、會場が更に燃え上がる。
「四天王決定戦ではヒラサカ・イザナの勝利で終わったようですが、サエズリ・スズメは今回の戦いでリベンジなるか期待が膨らみます!」
「う、すごく注目されてる気が――――なんか気分が……」
「スズメちゃん大丈夫か?」
「だ、大丈夫です……」
心なしか、人々の視線を一心にけたような気がしてその重圧をじるスズメ。
(これくらいで張してたらダメ、だ――こんなんじゃ、イザナさんに――――勝てない)
スズメはそう自分に言い聞かせ、深呼吸をする。
「それぞれの試合で勝ったチーム同士が明日行われる決勝戦でぶつかる注目の戦い!! それでは、準決勝――――レディ……」
意識を集中する。
これから始まる戦いに――。
一瞬の――本當に一瞬の沈黙。
そして、その沈黙を突き破る戦いの始まりが――
「ゴォォオオオ!!!!」
告げられた。
「行くぞ――GO! ブローウィングGO!!」
「諒解!!!」
「サエズリ・スズメ――スパロー、征きます!!!」
スパローを先頭に、チリペッパー、スーパーセル、スネグーラチカが続く。
「チャイカ――!!」
「ミステリオーソはアイロニィを先頭に突出させた凧形の陣形を作っていますわ」
「やっぱりアイロニィが先頭か――」
アイロニィを先端に鏃《やじり》形で向かってくるチーム・ミステリオーソの4騎。
「チャイカ、中央にを開けろ!! 相手を分斷するぞ――」
「諒解ですわ!」
スネグーラチカが右腕を構える。
まだレーダーにも映っていない明らかな程外の距離――しかし、相手を揺さぶることくらいは出來るだろう。
「第伍異能――リヒトシュトラーフ!!」
チャイカの唱えたワードに呼応するように、チャイカの魔力が弾丸に重なり、その弾丸はを纏い放たれた。
魔力を弾丸に乗せ、魔的な作用を引き起こす銃撃魔(ブリットスペル)と呼ばれるだ。
第伍異能――の屬を得た銃弾は木々を引き裂きミステリオーソを狙い走る。
チャイカは、それを數発立て続けに撃ち放った。
「銃撃!? まだレーダー範囲にもってないのに!」
「ヒミコ先輩落ち著いて――この距離からだと有効弾にはならないって」
慌てるヒンメルリヒト・ヒミコに、クラスタリアス・リコリッタが冷靜にそう返す。
しかし、テンパっているヒミコは作を誤り、自ら銃弾に向かって跳び出してしまった。
「ってヒミコ先輩バカッ!!」
「うわわわわぁ!?」
ガキィイン
「ヒミコ先輩、大丈夫ですか!?」
「あ、ありがとー、トーコぉ!」
それを救ったのはレインフォール・トーコの裝騎ニューウェイ。
ニューウェイがその弾丸を切り裂いたのだった。
「今のは魔弾でしたね――――」
「ってことはチャイカだなぁ! もう、ビックリさせないでよぉ!!」
そんな先輩3人に構わず、銃弾を軽々と避けながら先頭を走るヒラサカ・イザナのアイロニィ。
フリップフロップ、ラヴァーズ・シックス、ニューウェイの3騎がスネグーラチカの放った魔弾で掻きまわされ、進行速度が遅れた分、アイロニィが過剰に突出した形となる。
「結果的に分斷功だな! よし、スズメちゃん――もうそろそろアイロニィと接する。そしたら――頼んだぞ」
「――――任せてください!!」
そして、レーダーにヒラサカ・イザナの裝騎アイロニィが表示される。
そのまま、一気に互いの距離が詰まっていく。
通常であれば、このまま行くと4対1と圧倒的不利な狀態で戦する事になるアイロニィ。
だが、ヒラサカ・イザナは怖気づく様子は全くないままに突っ込んでくる。
ヒラサカ・イザナの技量は圧倒的――――だが、それ以上に、その自信が彼最大の強みなのかもしれない。
そして――互いの先頭を行くサエズリ・スズメのスパローと、ヒラサカ・イザナのアイロニィ――その2騎が接した。
互いの姿を捉えて1番――スパローはウェーブナイフを、そしてアイロニィはナイフ・クサナギを構え、ぶつかる。
「ヒラサカ・イザナ!」
「サエズリ・スズメ…………ッ」
互いの顔に笑みが浮かぶ。
ぶつかり合い、削り合いながら火花を散らすスパローとアイロニィ、互いのナイフ。
その背後から、スーパーセル、チリペッパー、スネグーラチカが飛び出してくる。
「やる気――――かしら」
イザナがそう呟き、その3騎に目を向けるが――3騎はイザナを避けると、他の3騎を狙いその背後に消えていく。
「――――面白いわね」
定石であれば、このまま4騎でアイロニィを集中攻撃をして各個撃破していく方が良い――それが當たり前だ。
だが、アイロニィに攻撃するそぶりを全くに見せずその場を離れた3騎。
そして、正面から相対するスパロー。
それが何を意味するのか、理解するのに時間は要らない。
「ヒラサカ・イザナ――――正々堂々、真剣勝負です!」
「リベンジマッチ――という訳ね。良いわよ、今度こそ――本気で來なさい!!」
スパローとアイロニィが戦するのを背に、ブローウィングのスーパーセル、スネグーラチカ、チリペッパーはミステリオーソの3騎を狙い、駆けていた。
一方、しばかり進行が遅れていたフリップフロップ、ラヴァーズ・シックス、ニューウェイも立て直し、ブローウィングの3騎を目指して駆ける。
「スパローとアイロニィで一騎打ちかぁ――くぅ、かっこいいことするねぇ!」
「ヒミコ先輩何言ってんの――わたし達もアイツらと一騎打ちでもする?」
「あたしは是非ともワシミヤ・ツバサをフルパワーでボッコボコにしてやりたいんだけど構わないよね!!」
「ご自由に――――それじゃ先輩、相手の分斷頼んますよー」
「おっけーリコちゃん!」
リコリッタの言葉に、裝騎の指でOKとサインを出すと、フリップフロップのローラーが降り、加速する。
「エネルギー充填!」
そして、部の拡散霊子砲ヒルメフラーレにエネルギーをチャージする。
通常、程は短く威力も低い部拡散霊子砲――しかし、そのエネルギーをチャージする事でその程と威力をばすことが可能となるのだ。
互いの裝騎が互いのレーダーに映る。
「ヒルメフラーレ――――発!!!」
その瞬間、フリップフロップの部拡散霊子砲ヒルメフラーレが黃金の輝きを発した。
「何!? 拡散霊子砲――――!!」
不意に走ったヒルメフラーレの。
だがブローウィングはそれぞれが散開し、拡散霊子砲を回避する。
「ブローウィングが散り散りになったよ! さぁ、ミステリオーソ、とっつげきぃ!!!!」
ヒミコの號令と共に、フリップフロップはスーパーセル、ラヴァーズ・シックスはチリペッパー、ニューウェイはスネグーラチカを目指して突撃した。
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