《機甲學園ステラソフィア》準決勝も終わって

「Bブロック準決勝は――――チーム・ブローウィングの勝利だぁ!!」

結果として、ヒラサカ・イザナの裝騎アイロニィもその機能を停止し、スーパーセルとチリペッパーの2騎が殘ったチーム・ブローウィングの勝利となった。

試合が終わり、控室に戻ってきて早々ツバサがスズメへと問いかけた。

「スズメちゃん! アレって――――クリティカル・ドライブだよな!?」

「あ、はい――そう、みたいです」

「クリティカル・ドライブぅ~?」

何ソレと言うように首をかしげるマッハ。

「裝騎の力を限界まで引き出した時に達する境地――だと噂されていますわ」

「きょーち?」

「えっと――――裝騎がすっごく強くなる、すっごいモードなのですわ」

「理解したんですよ!」

そんなマッハに、クリティカル・ドライブの説明をしようとするチャイカだったが、上手く説明できる自信が無く、噛み砕いて――噛み砕き過ぎな気もするが――――マッハにそう言った。

「で、どうやってクリティカル・ドライブを使ったんだ!?」

「よく、分からないです……なんかイザナさんに負けたくない! 最後まで諦めたくない! って強く思ったら――なんか、あんな風になっただけで」

「クリティカル・ドライブは強く激しい純粋な思いに反応して発すると言われていますわ――」

「それだけ必死だったって事か……それじゃあどうやって使ったかなんて聞いても分からないよなぁ」

「すみません……」

「アタシもあれくらいできるようにならないとな……」

ツバサがポツリと呟いた一言は、誰の耳に捉えられる事もなく、空へと消えて行った。

それから、チーム・ブローウィングの4人は機甲科寮前に帰ってきていた。

「お疲れさん。チーム・ブローウィング」

「ウィリアムバトラー――!」

寮の正門前でブローウィングの4人を待っていたのだろう。

チーム・ウィリアムバトラーの4人が手を振ってきた。

「あ、あの――ヘレネ先輩…………」

「まふもふ」

そして、早速スズメの傍にすりよってくるモード・ヘレネ。

それをよそに、ツバサとミカエラが楽しそうに話し始める。

「ようやったな! あのミステリオーソに勝てたやなんて!」

「ハハハ、大は偶然ってじはするけどな」

「実力の、運も――――」

「そーなんですよ! この勝利も全てマハの実力なんですよ!!」

「まっ、今回はマッハちゃんも比較的頑張ったしな」

「比較的って何ですかコノヤロー!!」

「ああ? 先輩に対してその言葉遣いはねーんじゃねーかぁ?」

「うっ――――」

「スズメちゃんも凄かったなぁ! 噂のクリティカル・ドライブ! 初めて見せて貰ったわ!」

「先に使ったのはイザナさんですけどね……」

「そんなんどうでもいいんや!」

「クリティカル・ドライブって使うコツみたいなのがあるとね?」

「それはまだ私にも分からないです……あの時は無我夢中でしたし」

「しっかし、スズメちゃん惜しかったなぁ。あともーちょいでヒラサカ・イザナに勝てとったのに」

「う――――そ、そうですね…………」

何気なく、そんなことを口にするロバーツ・ミカエラ。

言葉に詰まるサエズリ・スズメの様子を見て、ミカエラはしまったと言う表を浮かべた。

「あ、でも、ほら、アレやん? トーコちゃんが邪魔しなければスズメちゃんが勝ってたんはよくわかるで!」

「でも、本來は4対4のチーム戦……そういう事があるってことも頭にれてなかった私の負け、ですよ――――」

「え、あ、えーっと……」

「全くリーダーは無神経過ぎるとよ!」

「ううう…………申し訳ない……カトレーンに言われるのは心外やけど」

「心外ってなんじゃ!」

「そうよ――――あの勝負は本來ならサエズリ・スズメが勝ってるはずだった、わ」

不意に割ってきた冷たい聲に一同がハッとして目を向ける。

そこに立っていたのは、チーム・ミステリオーソ――――その4人だった。

「ミステリオーソ……」

「私の――――負けよ」

「!! イザナさんは、イザナさんは負けてなんか――――」

「うるさいッ!」

「っ!!!!」

ヒラサカ・イザナはレインフォール・トーコを一喝する。

「貴は――私に1対1の戦いを挑んだ。私も――――私もそれに応じた。実戦なら、とか――――本來のルールなら――とか、関係無い。私と貴は一対一で――――プライドを賭けて戦った――――その結果、例え事故でも、私はそのプライドを破ってしまった。だから、その、貴の――――サエズリ・スズメの、勝ちよ」

「そんな――――」

「――――私は、先に帰るわ。サエズリ・スズメ――――ウチのトーコが、邪魔をした事、申し訳ないと思っているわ」

それだけ告げると、イザナはその場を後にした。

「あっ、ま、待ってくださいイザナさん――!!」

その後を追うように、トーコが駆けていく。

「イザナ、さん……」

去りゆくイザナにかける言葉も浮かばず、その後姿を見つめるスズメには複雑な表が浮かんでいた。

「お前らんとこの1年って――――なんか面倒くさいな」

「1番面倒くさいのはリーダーなんですけどね」

「ちょっとリコリッタぁ! それってどういうことぉ!?」

「ああ、それは知ってる」

「ツゥ、バァ、サァァアアアアア!!!」

「そういえば、ヒミコお前、さっき『私達負ける気がしない』とか言ってたよなぁ?」

「う――――そ、そぉ~だっけ?」

「言ってた言ってた、んで、負けた。今どんな気持ちだヒミコォ~」

「あんなのたまたまじゃん!! くっそぅ、ブローウィングめ! ちょっとラッキーだったからってぇ!!」

「ヒミコの場合は自業自得って言うんだよ! たまたまって言うのは――――」

何故かここで視線が一斉にリコリッタへと向けられた。

「え、ちょ、何? 何なのその目――――」

「心中お察し致します」

「何その憐れむような目!? 逆にそーいうのやめてよォ!!!!」

「え、ちょ、リコリッタぁ!?」

顔を真っ赤にしながら、寮に向かって走り出すリコリッタ。

「あんた達の所為でリコリッタが逃げちゃったじゃん!!!」

「べ、別にそんな意図があったわけじゃないんだけどな……」

「うー、もうあたしも帰るゥ!」

「それならリコリッタに謝っといてくれヒミコ……」

「しょーがないなぁ!」

むぅと口を尖らせながらヒミコはそう言うと、

「じゃーねー!」

と聲を上げ、そそくさとその場を後にした。

「全く――お前らは本當に賑やかだぜ」

「ディアマン・ソレイユ!? ってことはバーチャルスターか!」

そして更に現れたチーム・バーチャルスターの四人。

「よっツバサ、明日はついに決勝だな――――!」

そうにこやかに笑うソレイユ。

當然ながら、Aブロック準決勝を勝ち抜いたのはソレイユ達チーム・バーチャルスター。

そうなると――――

「そうだね――やっとお前らバーチャルスターをボッコボコに出來る時が來たよ」

「へっ、楽しみにしてるぜ! ゲームだと全戦全敗だが、実戦だと全戦全勝だし、今回も勝たせてもらうぜ」

「今回は期待の新人もいる事だし、ソレイユの戦績に初黒星を付けてやるよ!」

「スズメちゃん――――」

「えっ、は、はい!?」

「明日の決勝戦――――楽しみにしてるぜ」

「わ、私も! 私もソレイユ先輩たちと戦えるの、楽しみです!」

「さてと、そんじゃオレらは一足先に部屋に戻らせてもらうぜ」

ソレイユはそう言うと、他のメンバーを引き連れて寮へと戻っていく。

「さてと、そろそろウチらも帰るで!」

「足りない――スズメちゃんが」

「ヘ、ヘレネ先輩、だ、だからと言って邪魔するのはダメ、だばーよ」

「そうよーヘレネちゃん。今日はスズメちゃんはお預けとよ」

「むぅ……」

モード・ヘレネはやや不服そうながら、リサデル・コン・イヴァとエール・カトレーンになだめられ、渋々と言った表でスズメから離れた。

「そんじゃ、明日の決勝戦、頑張るんやで!」

ウィリアムバトラーの4人も、自らの寮室へと戻って行った。

「さてと、アタシらも部屋まで戻るか――――!」

「今晩のお夕飯は何にしますの?」

「そうだな――――豚カツ、とかか?」

「ゲン擔ぎ、ですね!」

「マハはなら何でもいいんですよォ!!」

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