《機甲學園ステラソフィア》そうだ、がったいわざをしよう!
「私は、1対1でするデュエルゲームが専門なので、あまりそういう発想はなかったんですけど、こういうの良いですね」
準決勝が終わったその夜。
ブローウィングの寮室。
そのリビングルームのテレビで、今までの試合の映像を見ながらサエズリ・スズメがそんなことを口にする。
「何のことだスズメちゃん?」
「合技ですよ!」
バーン!!
スズメが思いっきりテーブルに手を叩きつける。
テレビ畫面に映っていたのは、準々決勝のリリィワーズ戦でワシミヤ・ツバサのスーパーセルとカスアリウス・マッハのチリペッペーが行った『ゴルディアスブレイク』の映像。
「スズメちゃんもゴルディアスブレイクみたいなのやりたいのか?」
「やりたいです! 是非に!!」
「あ、あれはやめやがった方が良いと思うんですよぉ……」
ゴルディアスブレイクを思い出したマッハの顔が見る見るうちに蒼ざめていく。
「でも、どんな合技が良いんでしょう…………」
「ウィリアムバトラーのルード・オブ・タイム――」
「アレはダメです」
「早いっ!?」
「だってアレって地味じゃないですかぁ! ウィリアムバトラーはアレが必殺技ってことになって認知されてるから盛り上がりますけど、私たちがやっても2番煎じにもならないただの地味で姑息な戦い方じゃないですか!」
「何気にボロクソ言ってるな!? これ聞いたらミカエラ泣くぞ……!」
相手を包囲し、じわじわと削っていくチーム・ウィリアムバトラーの必殺タクティクス、ルード・オブ・タイム。
時間差攻撃により、相手の數と力をじわじわ削り、十分削ったところで一気に叩く。
或は、一點突破を狙った所での包囲殲滅を狙うと言うその戦い方。
しかし、どうやらその戦法はスズメの學か何かに反する要素があるっぽかった。
「とりあえず參考にアニメの合技とかで好きなのとかあるか?」
「アニメ――ですか……私、アニメはニャオニャンニャーしか見てないんですよね……」
「ニャオニャンニャーって日曜の朝にやってる子ども向けアニメだっけ」
「そうですよ! ニャオニャンニャーは孤高のヒーロー! ネコの中のネコなんです! だから合技とかは無いんです…………」
「お、おう……」
「合技の定番と言えば、ダブルキックなんですよ!」
不意に復活したマッハがそんなことを言う。
「それぞれの必殺技を組み合わせる――という手もありますわ」
洗いをしながらも、話を聞いていたのだろう。
テレシコワ・チャイカもそう言った。
「スズメちゃんの必殺技と、裝騎スパローの特徴を生かせるような合技、ねえ。とりあえず試しにゴルディアスブレイクやってみっか?」
「でもあの技はチリペッパーの足の裏にキックバンカーがあるから映える技だと思うんですよねぇ。スパローがやってもただの蹴りですし……」
「そうか、スパローの跳躍力なら、飛び蹴りをするにしてもスーパーセルを踏み臺にして跳躍する必要もないしな」
加速したスーパーセルを踏み臺にしチリペッパーが高く跳躍――――そこからワイヤーアンカーによる姿勢補助をけながら、足の裏に仕込まれたキックバンカーを相手に叩きつけるゴルディアスブレイク。
それは通常の裝騎では跳び上がれないほど高く飛ぶ為に、ブースターで加速したスーパーセルを踏み臺にしている。
「あっ――――」
「どうしたスズメちゃん?」
「ゴルディアスブレイクはスーパーセルを踏み臺にして斜め上に跳躍する――――そうじゃなくて、加速したスーパーセルにスパローを弾丸みたいに、正面に撃ちだしてもらうスパロー・ブレードブリット! とかどうですか!?」
「それって當たりする気か……?」
「そうです! ブレードエッジ狀態のスパローで敵に當たり! そしてブレードでズッタズタに切り裂くんですよっ!」
「ほう――――とりあえず、シミュレーションで試してみてからだな」
「はい! 何か1つ思い浮かぶとどんどんイマジネイションが湧いてきますね!」
「マハも高いヤツ以外なら協力してやるんですよ!」
「ウチはあまりそう言うのに向かないタイプですけど、出來そうなことはやりますわよ」
「參考になりそうな資料も持ってくるか!」
「そんなのあるんですか!?」
「マハもあるんですよ! ビデオディスクが!!」
「アタシもコミックだけど……」
「ああ、やっぱりそういう方向から攻めるんですね……」
「個人的にこのアニメの必殺技が好きなんですよ!」
「これって球技ものじゃないですかー! 特訓や必殺技は真似しないでくださいって書いてありますし!」
「ゴルディアスブレイクも十分真似しないでくださいだけどな……」
「最軽量のチリペッパーでこのマハ様の実力あっての合技だもんね!」
「並の裝騎と騎使なら、スズメちゃんみたいな使い方でも十分危険なのですわ」
「う――――確かに今更ですね……あ、このぐるぐる車みたいに回った後ジャンプする技とかよくないですか!?」
「そうかぁ? それよりもアタシはファイナルなんたらスペシャルみたいな技が良い気がするんだけどなぁ」
「ここは是非ペンギンを出すんですよ!」
「ペンギンを出すのは無理なのですわ……」
そんなこんなでわいわい盛り上がりながら、ブローウィングの合技考案會議が夜とともに更けていく。
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