《機甲學園ステラソフィア》第43話:Bůh je s Námi

Bůh je s Námi

-神は我々と共におられる-

「荒れ狂う(ヴェルカー)……毒蛇《サンクツェ》!!」

振り下ろされる巨大なアズルの拳。

その一撃は、的確に知恵の実を狙っていた。

知恵の実が壊されるということは、わたし達の夢が壊れてしまうということだ。

させない、させたくない、嫌だ絶対に嫌だ――――焦りと絶が心を犯し始める。

「だめ、だめ、だめだめだめだめダメダメダメダメダメダメ駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!」

不意にわたしの頭の中に聲が響いた。

『思い出しなさい、アンドレア』

思い出せって、一何を?

『本當の貴を』

本當の、わたし……。

わたし、ティベリアス・アンドレアには雙子の姉がいた。

名前はティベリアス・ペトラ。

目を閉じれば今でも鮮明に思い出せる。

よく湖畔で2人一緒に遊んだ思い出を。

わたしは姉《ペトラ》が大好きで、そして、とても尊敬していた。

だけど、そんな姉はいつの日にかわたしの目の前から消え去った。

わたしは姉《ペトラ》に會いたい。

どうしても、會いたい。

消えてしまった姉に、もう一度……だからわたしはスヴェト教団の言う「新世界」にすがった。

それは――――『本當に?』

『その記憶は本當?』

『本當に貴に姉なんていたの?』

『ううん違う。貴は本當に"アンドレア"なのかしら?』

心の中の聲が語り掛けてくる。

『思い出しなさい』

『本當の貴

『本當の記憶』

『思い出しなさい』

「思い――――出す」

靜かな湖畔を1人のが駆けまわっていた。

小さな人形を手に楽し気に、しかしどこか寂し気に落ちる夕けている。

「妹《アンドレア》! わたしの可い妹《アンドレア》、一緒に遊びましょう」

わたしの唯一の友達、わたしの唯一の妹、その人形だけが私の全て。

でも、そんな妹《アンドレア》はいなくなった。

深い、深い蒼の中に消え去った。

「アンドレア!!」

妹《アンドレア》を追いかけて飛び込んだ湖の中。

重くて、苦しくて、冷たくて、寂しくて、屆かなくて、手が屆かなくて、悲しくて、辛くて、泣きたくて、泣けなくて、寒くて、震えて、意識が、消えそうに、なった、時、に…………聲が聞こえた。

『ペトラ、貴はまだ死ぬ時ではありません』

その聲は優しくて、力強くて、輝いていて、暖かくて――――もしもわたしに姉がいるとすればきっと、こんな優しい聲で、優しい人で、暖かい聲で、暖かい人で、とても素敵な人なんだろうと思った。

『ペトラ――貴は変えたいですか? この世界を、この寂しい、孤獨な世界を』

わたしは答えた。

「変えたい」

『ならば、私の聲を聴きなさい。私の言葉を聴きなさい』

その日からわたしは、"彼"の妹《アンドレア》になった。

「ああ、お姉ちゃん(ペトラ)はわたしだったんだ……」

そうだ、姉《ペトラ》はわたしで、でも、わたしじゃなくて、でも、わたしの中に居る。

その事に気付いた時、私達は目覚めた。

そうだ――私達は始祖ティベリアス・ペトラ。

そしてその本當の姿は……。

『名乗りましょう、始源裝騎ヴィーラと』

「始原裝騎ヴィーラ……」

スズメはじる。

その圧倒的な力を。

めた強烈な意思が、まさに力となっているような底知れない覚。

始原裝騎ヴィーラはおもむろに知恵の実を摑み取る。

『天使ベリアル』

『はっ』

『ご苦労』

『は?』

不意に始原裝騎ヴィーラが知恵の実を天使裝騎ベリアルへと押し付けた。

『ぐっ……うぐ…………ぐぁぁあああぁあああああああ!!??』

まるで焼き鏝《ごて》が押し付けられたように、天使裝騎ベリアルの元が焼き付け、溶け始める。

『がァ、うがぁぁぁあぁあああああぁぁあああああああああああああああああああ』

「……ッ、サエズリ・スズメ、スパロー行きますッ!!」

「スズメ!?」

苦しむ天使裝騎ベリアルに向かって裝騎スパローTAが弾け飛んだ。

『臣徒共!』

始原裝騎ヴィーラの言葉に従って、臣徒裝騎が裝騎スパローTAに襲い掛かる。

しかしスズメは怯まない。

両使短剣サモロストを、全のヤークトイェーガーを閃かせ、向かう敵を斬り裂いた。

「ジッと見てる場合じゃあ無いってか!」

「スズメ、援護するわ」

裝騎ピトフーイDと裝士フーシーも臣徒裝騎を蹴散らし、裝騎スパローTAの前進を支援する。

『さすがですね、サエズリ・スズメ』

両使短剣サモロストを輝くの盾がけ止めた。

「ビェトカ!」

「甘き毒を(スラドキー・イェット)!」

霊子鎖剣ドラクを振り回した裝騎ピトフーイD。

毒蛇が牙を剝くように、その刃が始原裝騎ヴィーラを狙う。

『ふんっ』

始原裝騎ヴィーラが左手を捻る。

瞬間、の盾が捻じれ、ばし、刃のように霊子鎖剣ドラクを弾き返した。

「チッ、イザナ!」

「アカラシマカゼ――!!」

裝士フーシーは跳躍、始原裝騎ヴィーラの頭上を飛び越えながら両手のバトルライフル・ソウコクにアズルを込めて連する。

激しい銃撃に始原裝騎ヴィーラはかない。

く必要はなかった。

「臣徒裝騎が庇った……」

裝士フーシーの銃撃に臣徒裝騎は砕かれ弾け跡形もなくなる。

「けれど、スズメがく隙くらいは――」

「できました!!」

気付けば裝騎スパローTAは始原裝騎ヴィーラの脇を駆け抜けていた。

スズメの視線の先には、知恵の実に焼かれ全が溶けんとしている天使裝騎ベリアル。

「ユーディさん! ユーディさん、手を、手をばしてください!!!!」

『がぁぁあああぁああぁあああぁああぁっぁあああああああああああ』

「フォマス・ユーディ!!!!」

天使裝騎ベリアルの全が次第に原型を留めなくなっていく。

さらにその周囲に集まってきたのは臣徒裝騎達。

裝騎スパローTAのばす手を阻むように、そして自らも天使裝騎ベリアルの、知恵の実の一部になるように巨大な塊を形作った。

「ムニェシーツ、ジェザチュカ!!」

臣徒裝騎の壁を斬り裂かんと閃く両使短剣サモロストの斬撃。

切り開いた隙間に、裝騎スパローTAは空いている左手を突っ込む。

その中にいるであろう天使裝騎ベリアル――使徒ユーディを捜して。

「ひぁッ!?」

不意にスズメは左腕に悪寒をじる。

裝騎越しに自らの手が――いや、魂が摑み取られたような覚。

(マズイッ)

裝騎スパローTAは咄嗟に手を引き抜いた。

ドロリとしたが裝騎スパローTAの左腕を濡らす。

それは天使裝騎ベリアルと同じように溶けだしてしまった左腕のヤークトイェーガーだった。

「ユーディさん…………ッ」

スズメは覚悟を決めて、両使短剣サモロストを両手で構える。

両使短剣サモロストの刃が割れ、隙間から強烈なアズルの輝きが燃え始めた。

「ムニェシーツ……」

アズルの炎は輝きを増し、そして巨大な剣を形作る。

『氷晶《グラキエース》、鏡廻《スぺクルム》、聖晶《クリスタッルム》、祈りを(オーラーレ)・祈りを(オーラーレ)……』

裝騎スパローTAの攻撃に始原裝騎ヴィーラが何事か呟き始めた。

「大剣撃《オボウルチュニーメッチュ》!!!」

瞬間、始原裝騎ヴィーラの翼が舞い散り、輝き、明なを放つ。

それが走ると裝騎スパローTAの目の前を阻んだ。

裝騎スパローTAの放った巨大な剣――――その刃は明な翼を打ち砕く。

1枚、2枚、3枚、4枚――――しかし、その度に両使短剣サモロストの輝きが衰えていくのが目に見えて分かる。

5枚、6枚、7枚、8枚――――の剣が天使裝騎ベリアルだったモノに屆いた時には、その表面を空しく焦がす程度の力しか殘っていなかった。

『アズルを力任せに防ごうとしてはなりません。優しく包み込み、け止める――――どうですか?』

「水晶みたいな羽でアズルを分散させたのね……厄介だわ」

『知恵の実のまでまだ時間はあります。どうしてもアレを破壊したいのであれば――まずは私達を倒すことです』

始原裝騎ヴィーラは知恵の実の前へと舞い降りると、その周囲にの盾を複數展開する。

「いーじゃん、知恵の実とかいう怪しげなアイテムを守るボスキャラと、それに立ち向かう勇者一行様ってカンジでさ」

「私、やっぱりアナタ達が許せません」

『ええ、ならば來なさい。私達の理想が葉うのか、貴達の理想が葉うのか――その為に貴達も來たのでしょう?』

「モチロンです。サエズリ・スズメ、スパロー行きます!!」

裝騎スパローTAの斬撃が水晶の羽によって阻まれる。

「厄介ね――この水晶」

裝士フーシーがバトルライフル・ソウコクを連するが、その全てが明な煌きに阻まれ始原裝騎ヴィーラには屆かない。

「ですけどこの閉じ切った部屋なら……」

裝騎スパローTAは素早くバックステップを踏むと、その勢いで背後の壁を蹴り飛ばし跳躍した。

そのまま裝騎スパローTAは天井に向けて跳び、そしてさらに天井を蹴りまた違う壁へ、一気に始原裝騎ヴィーラの背後に回ると両使短剣サモロストで斬りかかる。

『背後に回るなど、わかりやすい』

始原裝騎ヴィーラは翼を羽撃かせた。

途端、巻き起こる暴風に裝騎スパローTAはバランスを崩す。

「さすがに、読まれますよね……ならっ」

"P.R.I.S.M akt.X"

スズメの意思に呼応して、裝騎スパローTAのから溢れたアズルが風になった。

P.R.I.S.Mシステムの追い風と正面からの向かい風が衝突し裝騎スパローTAはそのまま地面に降り立つ。

だがうかうかしてはいられない。

裝騎スパローTAの正面には、その手にの刃を纏った始原裝騎ヴィーラの姿があった。

「良いんですか? 背中を向けても」

「アタノカゼ――――!!!!」

裝騎スパローTAを貫こうと手を掲げる始原裝騎ヴィーラの背後から襲う裝士フーシーの銃撃。

『これで不意を突いたと……?』

だが始原裝騎ヴィーラは裝士フーシ-には構いもしない。

それもそのはず、始原裝騎ヴィーラの背後で弾けるアズルの輝き。

裝士フーシーの銃弾は全て始原裝騎ヴィーラの水晶の羽に弾き飛ばされていた。

「ぐっ、くぅぅぅうううううううう」

裝騎スパローTAを貫かんと放たれた始原裝騎ヴィーラの一撃を、右腕のヤークトイェーガーと左手でなんとかけ止める。

だが、右腕のヤークトイェーガーも左手もが放つ熱に焼かれ、溶かされていく。

そうはさせまいと裝騎スパローTAもさらにアズルを放出して対抗。

そんな中、始原裝騎ヴィーラの頭上が揺らいだ。

「脳天直撃! 天落す山禍《ウプシュチェン・スタラ》!!」

揺らぎの中から現れたのは裝騎ピトフーイD。

ステルス機能で潛み、機會を伺っていた裝騎ピトフーイDの一撃が――――始原裝騎ヴィーラに直撃した。

『うっ、ぐぅぅうう!!』

「大當たり(ジャックポット)!!」

それだけではない。

始原裝騎ヴィーラのを奇妙なアズルが侵食していく。

『これが……狙いですかッ』

「コレがワタシのP.R.I.S.M! どう、気持ちイイっしょ?」

アズルによって相手のアズルのきを阻害するP.R.I.S.M能力。

言うなれば裝騎に対する毒だった。

そしてそれは、アズルを利用する始原裝騎ヴィーラにも有効らしい。

「ビェトカ、助かりました。畳みかけます!」

「そうね、行きましょう……」

スズメの號令一下、3騎の裝騎が弱った始原裝騎ヴィーラへ攻撃を仕掛ける。

『我らが使命、我らが理想……この程度では、終わり、ませんっ』

強気な言葉を口にするが、毒に蝕まれ力強さがない。

力強さはないが――――めた決意がそこにはあった。

「っ、まずい!」

的にスズメは危機を覚える。

始原裝騎ヴィーラの全にアズルが回り、さらにその表層が沸騰するように膨れ始めた。

『ぐぁッ、んぐぁぁああああぁあああああ!!!!』

の一部は破け、その隙間からアズルのれる。

そのアズルは強烈な熱を帯び、床や壁や天井を焼き付けた。

「まさかこれは……ビェトカの毒のようなアズルを、自のアズルで無理矢理――」

「そのようですね。強制的に排出、煮沸してる、そんなじです」

「アズルでアズルを消毒ってワケ? ナンでもできんのね、クソ」

『呑気なお喋りはそれまでです! 聖晶《クリスタッルム》、増せ(プールス)・増せ(プールス)・おいでませ(プールス)、出でて(ソール)、㐂刻む(アルクス)!』

始原裝騎ヴィーラの両翼が大きく開き、神々しいが溢れ出す。

は一條の閃となり、その一條は更に複數に分かれ壁を、天井を、床を焼き付けながら羽撃きと共にスズメ達を襲う。

『聖晶《クリスタッルム》、鏡廻《スペクルム》、一條《リーネア》、起點に(プンクトゥス)、また一條(リーネア)!』

回避したのも束の間、始原裝騎ヴィーラの言葉に従って壁や、床や、天井に多數の水晶が現れた。

その水晶は何もしない。

しかし、始原裝騎ヴィーラの閃が水晶をなぞったその瞬間――――水晶を起點として閃が屈折する。

「ああもう面倒くさいッ!」

始原裝騎ヴィーラの閃が壁を、床を、天井を反しながら襲い掛かって來たのだ。

スズメは數多の閃を目で追いかけ隙を探す。

「そこです!」

裝騎スパローTAは躊躇なくの中へ駆け出した。

「ワタシ達も続くわよ!」

「ったく、仕方ないわね」

続いて裝騎ピトフーイDと裝士フーシーも駆ける。

繰り出される閃をなんとかその場その場で回避しながら裝騎スパローTAを追いかける。

それより先に、裝騎スパローTAはとっくに始原裝騎ヴィーラとの距離を詰めた。

「ムニェシーツ・アルテミス!」

「スズメはっや……」

「攻撃の中に突っ込むのはスズメの専売特許だもの。だけど――」

「ワタシ達も負けられないわね! スズメ!!」

裝騎ピトフーイDは始原裝騎ヴィーラの背後に回り込むと、左腕に蔵されたワイヤー、懲罰の鞭《シェデサーティー・プラメニ》をばし、宙を舞う裝騎スパローTAへと刃を放つ。

「行きます、スパロー!」

裝騎スパローTAが懲罰の鞭を摑み取った。

「ピトフーイ!」

裝騎ピトフーイDは右手の霊子鎖剣ドラクを構える。

両騎のアズルが応し合い、炎のように燃え出した。

裝騎ピトフーイDがワイヤーを思いっきり巻き取ると、それに引っ張られ裝騎スパローTAが空を走る。

裝騎ピトフーイDも始原裝騎ヴィーラに向かって駆ける。

「「不死鳥の炎《プラメニ・フェーニクセ》!!!!」」

蒼い炎をに纏った2羽の不死鳥《フェーニクス》が始原裝騎ヴィーラを挾み撃ちにした。

『聖晶《クリスタッルム》、城砦《アルクス》、一片《ペタルム》、二片《ペタルム》、三片《ペタルム》、四片《ペタルム》……ッ!』

始原裝騎ヴィーラのを水晶の壁が覆っていく。

それは側から湧き上がるように、段々と層を重ねていった。

「はぁぁぁぁあああああああああ――――はぁっ!!」

裝騎スパローTAと裝騎ピトフーイDは攻撃の反で一気に弾け飛ぶ。

始原裝騎ヴィーラは水晶の屑を舞い散らせ、どこか苦しそうに見えながらも五満足でその場に立っていた。

「スズメ、もう一撃れなさい!」

修復しゆく始原裝騎ヴィーラを見て、イザナが咄嗟にぶ。

裝士フーシーが裝騎スパローTAへと駆け寄り、全からアズルの風を吹き出した。

「P.R.I.S.M akt.X……」

裝士フーシーが放った敵を吹き飛ばす為の疾風は、裝騎スパローTAへの追い風となる。

更に裝騎スパローTAのP.R.I.S.Mシステムによる追い風とヤークトイェーガーの加速の相乗効果で神速を思わせるスピードに達した。

「ムニェシーツ……ガエボルガ!!」

あまりにも鋭い一撃は、始原裝騎ヴィーラを貫いた。

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