《機甲學園ステラソフィア》第45話:Jeho Hvězdu
Jeho Hvězdu
-その方の星-
『まさか……ッ!!!!』
救世裝騎ヒムヌスのが側からを放つ。
それが救世裝騎ヒムヌスの意図したものでないことは、その様子から明確だ。
それもそのはず。
「スズメ!!」
ビェトカが歓喜の聲を上げる。
救世裝騎ヒムヌスのを引き裂いたのは、黃金を纏った1騎の機甲裝騎。
「『聖霊裝騎スパロー・アナーヒター!!』」
『まさか、我らがなる宇宙から出してくるとはッ』
「『私もびっくりですよ。仲間達のおですね』」
聖霊裝騎スパロー・アナーヒターはそう言いながら左手に持った黒い端末を宙へと放り投げた。
それは裝騎バイヴ・カハの遠隔作端末FINのの1基。
『それは――神応作型式の遠隔攻撃裝置ッ。それを命綱として……!!』
アナヒトが救世裝騎ヒムヌスの中へと飛び込んだ時、裝騎バイヴ・カハのFINの1基も一緒についてきていた。
スズメとアナヒト両者の繋がり、そして現実世界にいるレイとFINの繋がり、その両方を利用した結果が帰還の功だったのだ。
『おのれおのれおのれッ!!! パイモン、アスタロス!!』
『えっ?』
『預言者様!?』
救世裝騎ヒムヌスの両腕が天使裝騎パイモンとアスタロスにびる。
そしてそのまま2の天使裝騎が救世裝騎ヒムヌスへと吸収された。
「チッ、アイツにとって仲間ってのは回復アイテムと同義ってワケ!?」
2の天使裝騎の力が聖霊裝騎スパロー・アナーヒターに引き裂かれた傷を癒していく。
「『ヒムヌスッ!!!!』」
聖霊裝騎スパロー・アナーヒターが発するように救世裝騎ヒムヌスとの距離をめた。
『一刀両斷コンツェルト……ッ!!!!』
救世裝騎ヒムヌスの両腕にエネルギーの剣が現れる。
巨大な剣は空を裂き地面を裂き周囲をズタズタにしながらも、向かってくる聖霊裝騎スパロー・アナーヒターを迎え撃たんと閃いた。
「不味いッ、各員攻撃に備えろ! 流れ弾――いや、流れ剣が來る!」
『味方もお構いなしカ……ソレに…………』
天使裝騎グラーシャ・ラボラスが救世裝騎ヒムヌスへと目を向ける。
『拡散放ノクトゥルノ』
救世裝騎ヒムヌスのからコンサートのレーザーのようなの線が放たれた。
それは聖霊裝騎スパロー・アナーヒターを追い詰めようとらかなきで行く手を阻む。
「『アフリマンは去れかし、潤白の祈の輝跡《ヴルフカー・スヴェテルナー・アナーヒター》!』」
黃金のマントが翻る。
救世裝騎ヒムヌスの線が聖霊裝騎スパロー・アナーヒターのマントにれた瞬間、その線が弾かれ、反らされ、救世裝騎ヒムヌス自のを焼き付けた。
『小癪なムシケラがァ。負けてたまるか、負けられるかッ』
救世裝騎ヒムヌスので魔力が暴れまわる。
ドス黒いがから湧き出す。
そのにが震え、沸き立ち、テクスチャが剝げ落ちるように表層を黒く染めていく。
『新世界《ノヴィー・スヴェト》、新世界の為に《ザ・ノヴェーホ・スヴェタ》ッ!!!!』
中から溢れる悪意。
「『このじ……偽神クトゥルフと同じようなッ』」
その悪意は実を持ち、その戦場をうごめきまわる。
『ぎゃぁぁあああああああ』
『ぐぁぉぉおおおおお……』
救世裝騎ヒムヌスの放った悪意が天使裝騎ブァッサーゴとグイソンを捕えると貪り喰い始めた。
それは救世裝騎ヒムヌスの遠隔捕食。
捕えた"生"を貪り、そして主の元に霊力を持ち帰る。
「ナンなのよコイツら! とっととくたばってプロスィーム!」
「うわぁ、わたくしお化けは苦手なのである!!」
「だぁもう、悔い改めなさい!」
「エルゼ先輩にあってるぅ~。メイスいいなぁ」
「捕まったらヤバいっていうのにマイペース過ぎでしょアンタたち!!」
『敵も、味方も、お構いなしですか――!』
『仕様無し。迎撃するぞ天使グレモリー』
『もちろんです、天使マルコシアス』
悪意《ソレ》は敵も味方もお構いなしに手近にある生命を吸収しはじめる。
悪意《ソレ》にれられた草木も消えゆき、その貪さは無差別だ。
「あらぁ~。どぉやら、制に失敗したよぉですねぇ」
不意にどこかで聞き覚えのあるやる気のなさそうな聲が聞こえた。
空から翼をはためかせ舞い降りた2の裝騎神。
「あ、H&S」
「纏めないでください!」
裝騎神ハラリエルとサンダルフォンだった。
「うわ、天使だ! 帰れ!!」
「帰りません!」
「しょーじきぃ、帰りたぁい」
骨に嫌そうな表を浮かべるタルウィに、骨に帰りたがるハラリエル。
そんな2人を見るとサンダルフォンは頭が痛くなる。
「今までナニしてたのアンタら!?」
「我々天使は上からの指令が出ないとけないんです。自由な悪魔とは違ってね」
「まぁ、ある種のぉお役所ですからぁね」
「てーコトは、上からの指令が!?」
「はい。スヴェト教団は偽神クトゥルフ……いいえ、世界神ルドライエフの制に失敗しました。ですので、可能な限り貴方に助力し、ヤツを討伐せよとのことです」
『待て、アレは偽神クトゥルフと同じものだっていうのか!?』
サンダルフォンの言葉に天使裝騎アモンが疑問をんだ。
「そうです」
サンダルフォンはきっぱりと斷言する。
「救世裝騎ヒムヌス――いえ、それ以前に天使裝騎や偽神裝騎は全て同一の存在である世界神ルドライエフの力を利用したものです」
『まさか……』
「『本當ですフェリパさん。恐らくスヴェト教団は救世裝騎ヒムヌスを作り出す為の前として偽神裝騎を作り上げた』」
『然り』
天使裝騎マルコシアスがスズメの推論を完全に肯定した。
『強大過ぎるクトゥルフの力。傍目には偽神、邪神に見えるが、その本質は純然たる意思の力なり。偽神裝騎こそは偽神の本質を得るが為の濾過作業の過程にて生み出されし出來損ないだ』
「偽神クトゥルフが純粋な存在ってーコト? ワタシはアイツと戦った。でも、そんなじはゼンゼン――」
「スヴェト教団の考えは全く持って正しいです。それが我らの主が今回の件を看過した理由の一つでもあります」
サンダルフォンは言った。
「"彼"は本來、別の世界を形作る偉大なる存在。我らが主と同じ、いわゆる神と信仰される存在でした。しかし、"彼"の世界の人々は"彼"に対する信仰を忘れ、貶めた。その結果、邪悪に墜ちたのが今の世界神ルドライエフなのです」
「ウチらの上司が言うにはぁ、"頭が固すぎて狂ってしまった弱もの"らしいですけどねぇ~」
「ですから、もしも"彼"が持つ悪意を削ぎ落し、純然たる力として利用できればそれこそスヴェトのむ新世界《ノヴィー・スヴェト》、新たな人類の姿と言うのも夢ではなかったのかもしれません。しかし――」
サンダルフォンは邪悪に歪み、暴れまわる救世裝騎ヒムヌスに悲痛なまなざしを向ける。
「やはり、世界神ルドライエフの強過ぎる人間に対する悪意はそう簡単に消せるものではなかったようですね。それに……これはマズそうですよ」
「ナッ、これは――――!?」
「くぅう、なんだ?」
ビェトカがゲルダが、それにŠÁRKAのメンバーのきが一瞬鈍った。
それは不意に響いた耳鳴りの所為だった。
耳のから頭の中をかき回されるような覚。
「『このじは……!?』」
聖霊裝騎スパロー・アナーヒターは救世裝騎ヒムヌスから放たれた力をでじ取る。
その力はじわじわと範囲を広げていく。
どんどん、どんどんと範囲が広がっていく。
「ぐぅう、な、何でありますかっ。頭が……」
「ポップ……く、平気!?」
「な、なんとか……これ、は?」
影響をけているのは何も人間たちだけではなかった。
『Ghhhhh……』
『Ahhh……』
フニャトやチトセと言った鳥獣にも見るからに影響が出ている。
『我らは平気だが……何だ、この寒さは』
『「スズメ、浄化の力を」』
「『分かった。聖流の浄花の輝跡《ホドナー・モツナー・アナーヒター》!』」
聖霊裝騎スパロー・アナーヒターがの霊子を舞い散らせると、耳鳴りがし軽くなる。
『「アナヒトの守護で軽減した。でも、気は抜かないで」』
『スズメさん、救世裝騎ヒムヌスから不思議な波が……いえ、違う。この波を出しているのは……シャダイコンピュータ?』
「『なるほど。それが新世界を創るための最後の仕上げってことなんですね』」
「スズメ――いや、スパロー! どういうこと!?」
「『を守りながら聴きなさい。あのシャダイコンピュータは人々の意識を融合させる為の補助裝置だと言うことです』」
スパローのは言う。
「『ビェトカとイザナは見たでしょう? あの生きののようなブラックボックスを』」
壁が脈するシャダイコンピュータの地下。
それは確かに、一個の生――そののようだった。
「『シャダイコンピュータの起源はマルクト神國建國以前に遡るわ。建國以前、この地には1つの共同《コミューン》が存在しました。1人の王に導かれる共同が』」
「國名の由來にもなった賢人、マルクトだな」
「『賢人マルクトを中心とした共同はやがて王國《マルクト》となり栄えたけれど、人である限り王はやがて死を迎えます。優秀な王を失った國民は、どうしたと思いますか?』」
「次の王を立てるしかないジャン」
「いえ……なるほどね。國民はマルクト王を"死なせなかった"のね」
「『その通り。シャダイコンピュータの基礎、ブラックボックスと言うのは厳重に保存されたマルクト王の脳なんです。それだけじゃない、當時の人々はやがて世に現れた"賢者"と呼ばれた人々の脳を取り込み、更にその度を高めていった』」
「その結果が、あのの壁に包まれたブラックボックスってことね」
マルクト王や多くの賢者の脳を結合、培養し、1個のデータベースとする技。
「『問題は、その技を作り上げたのが當時のマルクト人ではない、という事ね』」
聖霊裝騎スパロー・アナーヒターがその瞳を救世裝騎ヒムヌスへと向ける。
「『これは"私"が験した"過去"から見た推論ですけど……その意識統合システムを作り上げたのは預言者ペトラ――――いいえ、彼に取りついている"古代人"。つまりは、スヴェト教の始祖達です』」
スパローの推論は正しかった。
そもそも、スヴェト教という宗教自が人々の信仰を1つに集め、新世界という名の霊的存在へ昇華するために作られたものだった。
『そうだッ、そうだそうだそうだそうだッ!! 我らが悲願、太古よりの悲願ッ、この時を待ッた、何年も何十年も何百年も何千年もッ!!』
「『救世裝騎ヒムヌスーーいえ、預言者ペトラ……』」
怒りと侮蔑と執念と悲哀が混ざり合ったような預言者ペトラの言葉が救世裝騎ヒムヌスから吐き出される。
『失敗に終わった最初の計畫から待った! 待ち続けたッ!! を失い、魂のみとなってなお、式《ズプーソプ》の中に潛み待った!! ハハ、ハハハハ、ハハハハハハハハ、まさか我らが式《ズプーソプ》を世界中に張り巡らせてくれるとは、まさか、ハハッ、思いもしなかったぞ!!!!!』
「世界中で原因不明の意識障害ですって!?」
仲間からった報にローラのび聲が響いた。
『始まった。始まった始まった。もう我らでは対処できない!! まさか、まさかこんな結末になるとはッ。ハハッ、ハハハハハハハハ!!!!』
「『シャダイコンピュータのリンクシステムを通じて救世裝騎ヒムヌスの悪意が世界中に伝染している』」
「最悪ですね……私たちはこの事態を避けるために――――この星を糧にした世界神ルドライエフの復活を止めるために派遣されたというのに」
「いやぁ、まさかぁ人の作ったネットワークを利用してぇ一気に生命力を吸収しようとはぁ。おどろきもものきさんしょのきぃですよぉ」
「ですが――まだ手遅れではないはずです。ヒムヌスを倒せば――倒すことが出來ればいいはずです」
「ったく、結局ソレしかナイってワケね! スズメ!!」
「『もちろんですよ。ŠÁRKA、DO BOJE(ド・ボイェ)!!』」
救世裝騎ヒムヌスの放つ悪意を避けながら、聖霊裝騎スパロー・アナーヒターが駆け抜ける。
「ワタシ達はスズメの援護を!」
「ったく、こんなのどこを叩けばいいんだか」
「『一先ず、削って削って削ります!』」
ŠÁRKAの援護をけながら聖霊裝騎スパロー・アナーヒターが両使短剣サモロストで悪意の一片を引き裂いた。
「甘き毒を(スラドキー・イェット)!!」
「アタノカゼ……ッ!」
救世裝騎ヒムヌスのを駆けあがる聖霊裝騎スパロー・アナーヒター。
その行く手を阻む悪意を、裝騎ピトフーイDが、裝士フーシーが撃ち滅ぼす。
「『ペトラさんっ! こんな結末、アナタだってんではいないはずです! 教えてください、どうすれば止められるのか!』」
『無駄だ無駄だ無駄だ―― 予《よ》が力、止められまい! 人間共にィ、止められまいッ!』
「まさか……ルドライエフの意思が?」
サンダルフォンから焦りが含まれた聲がれる。
『く(エルゼ)、く(エルゼ)、鋭く墜ちよ(エーレメンテ・エルゼ)』
救世裝騎ヒムヌス――いや、異界墮神ルドライエフのからうねる手のような末端《モノ》が現れ、大きく口を開いた。
その中から放たれたのは固く沢があり寶石のように輝く巖石の氷柱。
「『ムニェシーツ・ジェザチュカ!』」
一塊を斬り裂く聖霊裝騎スパロー・アナーヒターだが、これ以上先には進ませまいとするように輝巖柱が立て続けに襲ってくる。
『ぜよ(エルゼ)、ぜよ(エルゼ)、鋭くぜよ(エーレメンテ・エルゼ)』
くような異界墮神ルドライエフの言葉に従い、輝巖柱が分裂し雨のように降り注いだ。
「『マズいっ』」
『天使裝騎アモンの炎は強く強かに燃え上がる!!』
突如、輝巖柱の雨が炎に巻かれ蒸発する。
「『フェリパさん!』」
『わたしも一緒に行かせてもらうよ! この戦いはわたし達がケジメを付けないといけない、わたし達使徒が!』
『我らし理想郷――其が悪意に飲まれたならば……斷ち切ろう。我が手で』
「『シモーヌさん』」
天使裝騎アモンの炎が弾け、天使裝騎マルコシアスの魔力槍が走る。
『奏でよ(オーパー)、奏でよ(オーパー)、滅びを歌え《エーレメンテ・オーパー》』
次なる言葉に従い、末端から放たれたのは強烈な霊力の波。
悪意を混ぜ込まれたその波は、強烈な熱量と破壊力を持つ。
『コウズロ・歪転――――っ!』
不意に悪意の波が突風に煽られたようにブレはじめ、明後日の方向へとその首を向けた。
『霊力型の攻撃ならわたしがっ』
「『ありがとう、マチアちゃん! うおっと!!』」
いきなりの引っ張られるような覚に、スズメは思わず聲を上げる。
瞬間、聖霊裝騎スパロー・アナーヒターの足元を紙一重で末端が通り過ぎていった。
『集中ダ……気ヲ抜くな…………』
聖霊裝騎スパロー・アナーヒターを引っ張ったのは天使裝騎グラーシャ・ラボラス。
「『ジュダさんにはお世話になりっぱなしですね』」
『…………人の世話なド、した事ナイ』
天使裝騎グラーシャ・ラボラスは不想にそういうと、そのを霧散化させ消える。
「我がむは劫火なり――いけ!!」
「フッ、まさかこんなのと戦うことになるなんて。人生まだまだ何があるかわからないわね」
「カラスバ先輩でこんなだと……わたしの人生、どーなるんでしょう……」
「金の矢(ズラティー・シープ)! レオシュっ!!」
「うん、葬送行進曲《スムテチュニー・ポホド》!」
ŠÁRKAも全力で異界墮神ルドライエフの末端を削りながら本へ攻撃を仕掛けている。
だがそれでも一向に勝機が見えない。
いや、それだけではない。
「U ČERTA(クソが)!!、あのデカブツ! 全然消耗してるように見えないジャン!!」
終ぞビェトカが悪態をついた。
「『マチアちゃんはアズルの流れが分かるんですよね。何かわかることはありませんか?』」
『それが……何か力のようなものがルドライエフに流れ込んでいってるのは視える、んですけど……』
「『マチアちゃん?』」
『うぅ……ぐぅ…………ッ』
突如、天使裝騎グレモリーがき聲を上げる。
「『マチアちゃん!』」
『だ、大丈夫、です……視る、には――し、悪意が大きすぎますけど……わ、分かり、ます。これは、まるで世界中から、力を集めてる――ような』
『無理は厳。天使グレモリー、抑えろ』
『はい……』
「世界中から力を集めている……という事はやっぱり――」
「ローラ、ナンか分かったの!?」
「分かったというか、いえ、そうね、當然の事じゃない」
「『ローラさん、教えてください』」
「分かったわ。ルドライエフは天使裝騎グレモリーの言う通り世界中から力を集めている。シャダイコンピュータを経由してね」
「そう言えばルドライエフはシャダイのネットワークを利用して、世界中に悪意を送り込んでいるのだったな……そしてそれは逆もまた然り、ということか」
ゲルダの言葉にローラは頷く。
「それにさっき預言者が言ったでしょう。シャダイのリンクシステムは意識統合式を利用したものだって。てことは、初めから意識やエネルギーを一か所に集める為のものだったってことでしょう?」
「『確かにそうですね。と、言うことは――――ルドライエフを倒すには』」
「シャダイコンピュータを……完全に破壊しなさい」
ローラはどこか苦し気にだが、聲を振り絞って言った。
シャダイコンピュータを基礎としたネットワークに依存している現社會。
もしもそれが失われればどれだけの被害が出るかは計り知れない。
それでも――
「あのルドライエフとか言うやつが、完全復活するよりは良い未來が來るわ」
「『それしか――――なさそうですね』」
聖霊裝騎スパロー・アナーヒターは両使短剣サモロストを握り手により一層力を込める。
「『シャダイを壊すとなれば――目標は上じゃなくて……』」
そして見據えるは、異界墮神ルドライエフの足元。
シャダイコンピュータのブラックボックスだ。
聖霊裝騎スパロー・アナーヒターがそれを破壊する為、降下しようとしたその時だった。
『待ってくださいッ!』
天使裝騎グレモリーの聲が響き渡る。
決意を込めた強い、とても強い聲。
その聲に聖霊裝騎スパロー・アナーヒターは足を止めた。
『もしかしたら、シャダイコンピュータを破壊しなくても……はぁ、ルドライエフを、倒す方法があるかもしれません』
「『マチアちゃんまさか、もう一回"視た"んじゃ――!』」
激しくれた呼吸を整えるように、必死で息をするような天使裝騎グレモリーの聲にスズメは察する。
スズメの言う通り、天使裝騎グレモリーはもう一度"視て"いた。
異界墮神ルドライエフの力を削ぎ――止めを刺す為の方法を探す為に。
『ルドライエフはシャダイコンピュータと繋がっている――ですけど、それはどうやって繋がっているのか……わたしは疑問にじました。それで視たんです――もう一度』
天使裝騎グレモリーが視たのは、異界墮神ルドライエフに流れ込む力の奔流。
その流れがある一か所に集まっていることに天使裝騎グレモリーは気付いた。
そしてその一か所に、何か強力な力の塊のようなものがあることに。
「力の塊…………もしかすると、知恵の実……」
イザナの言葉にスズメとビェトカは思い出す。
シャダイコンピュータの中央に置かれていた寶玉。
もしかしたらアレは、シャダイコンピュータと同期する為の一種のプログラム――その基礎となっているのではないかと。
『プログラムなのか無線機なのか、はたまた別の何かなのかはわかりませんけど――きっと、それを壊せば……』
「あのデカブツの回復能力を消せるはず! ってコトね!!」
『はい。大まかではありますけど位置は視えました。ですからそれを――破壊します』
「『マチアちゃん、私も手伝います!』」
『いえ、ここはわたし達に任せてください』
スズメの協力を天使裝騎グレモリーは斷る。
「『でも――――』」
『大丈夫、わたし達みんなで行くさ』
『然り。我ら使徒4人――全力をもって任を全うさせてもらう』
『ソうだ……スズメは萬が一――打ちらシた時ヲ考えロ……トドメだ。任せル』
「『フェリパさん、シモーヌさん、ジュダさん……?』」
何故だろう。
スズメは違和を覚える。
どこか知ってるような予。
なぜか知ってるような悪寒。
この覚は……?
『スズメくんは援護を頼むよ!! 目標はあのの辺りで良いんだよね?』
『はい! わたし達使徒の力――見せつけましょう』
『『我らが真世界の為に《ザ・プラヴヂヴェーホ・スヴェタ》!』』
聲高々に天使裝騎アモン、グレモリー、マルコシアス、グラーシャ・ラボラスが異界墮神ルドライエフの元目掛けて駆け出した。
「『…………わかり、ましたっ!』」
炎が揺らめき、アズルの波が揺れ、鋭い魔力が走り、獣の刃が閃く。
「隊長(カピターン)達を進ませる為……撃ち抜くよ」
「Sweet Dream! これで終わりにしましょう!」
「私達も微力ながらお手伝いを! ハラリエル!!」
「はいはぁい。ヘックス的なやついきまぁー」
「天使に負けんなぁ! ファイアトルネード!!」
「ゼロレイ……」
各所でが閃き、必死の戦いをじさせた。
奏でられる戦歌を背に天使裝騎達はついに目標の異界墮神ルドライエフ――その元へ到達した。
『天使裝騎アモンの炎は眩く、気高く、いと高く――――ッ!!』
霊子杖ワセトを高く掲げる天使裝騎アモン。
その周囲に集うは強烈な熱波。
熱は炎となり炎はとなる。
大地に降りた小太とさえ思える灼熱は、今まで見せた天使裝騎アモンの炎の中でも最大級だ。
瞬間、小太は収し――――ぜた。
『Goaaaaaarrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!!!』
異界墮神ルドライエフは獣のような聲を上げる。
天使裝騎アモンの放った一撃は確かに異界墮神ルドライエフのを大きく吹き飛ばした。
本來の人の形から大きく外れ、まるで一個の地形のように雑に抉り取られたの中にり輝く寶玉が舞う。
『標的――仕留める』
『アア……一瞬ダ』
それこそが知恵の実。
天使裝騎マルコシアスとグラーシャ・ラボラスは駆けた。
知恵の実を自らの槍で、爪で破壊せんと。
だが――――
『修復が――――早、早すぎます!』
『何!?』
その槍が、その爪が、知恵の実を砕くよりも圧倒的に早く知恵のの周囲を悪意が満たした。
知恵の実に流れ込む悪意の波から天使裝騎マルコシアスとグラーシャ・ラボラスが逃れる暇すらない。
『お願い――――間に合って!! コウズロ・歪刻!』
異界墮神ルドライエフの悪意に飲まれた天使裝騎マルコシアスとグラーシャ・ラボラスだったが、そのまま異界墮神ルドライエフの一部となることは避けられた。
天使裝騎グレモリーが必死の力を振り絞り、2を守ったのだ。
「『シモーヌさん、ジュダさん、大丈夫ですか!?』」
『嗚呼。戦闘続行は容易い』
「『やっぱり、私も攻撃に加わった方が――――』」
『ヨい……あと一手。策ガァアあるゥ』
「『あと一手?』」
『いやぁ、最初はコレやろうと思ってたんだけどね。ただ、リスクが高いから代替案にしたんだけどそう簡単にはいかないようだ』
天使裝騎達の攻撃は失敗に終わった。
しかし、4はまだあきらめてはいない。
『やっぱり……この手を使うしか、無いんですね』
ただしだけ、寂しそうに天使裝騎グレモリーが呟く。
「『待ってください、その手は一どんな――』」
『なぁーにお姉さん達に任せなさいって。萬が一取りこぼしちゃった時は止めを頼むよ!』
「『フェリパさん!』」
『天使マルコシアス――アナタの背中を貸してください』
『承認』
『もう一撃行くよ――天使裝騎アモンの炎、其は天上の館にて永久《とこしえ》に……輝き、奉れ、むは、未來……ッ!!』
灼熱の輝きが明滅した。
そして三つ四つ、五つ六つと強大な発力をめた小太が異界墮神ルドライエフに炸裂する。
大きく抉れる異界墮神ルドライエフだがまたもや超高速で悪意を束ね、そのを再構築し始めた。
『我が槍は揺らめく魔力――鋭き霊力――冷たきアズル……貫こう、一切合切!』
異界墮神ルドライエフの修復仕掛けの元に突き立てられたのは天使裝騎マルコシアスの魔力槍。
それは攻撃の為ではなく楔となる為。
『わたしの魔力、わたしの霊力、わたしの全力、わたしのする者の為に捧げましょう……コウズロ・無限の』
天使裝騎マルコシアスの背に乗った天使裝騎グレモリーが、槍を伝い自らの力を異界墮神ルドライエフの傷口へと注ぎ込む。
徐々に槍先が異界墮神ルドライエフの元へと食い込んでいく。
天使裝騎グレモリーのアズルコントロール能力の応用で、ほぼ神である異界墮神ルドライエフの霊力を押しのけているのだった。
そこに一気に力を加えた天使裝騎マルコシアスによって、異界墮神ルドライエフは元を切り拓かれた。
『逝こウ……我の目の前ニはが満ちてイルゥウ…………此れガ、希、初めテだ……じるのハ』
傷口を抉り、天使裝騎グラーシャ・ラボラスが霧散化すると異界墮神ルドライエフのの中へとりこむ。
『もっとこじ開けるよ!』
天使裝騎マルコシアスの橫に並び、天使裝騎アモンも必死で傷口を開いた。
『GOOOOOORRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!!!!』
それは傷の痛みを嘆いているのだろうか、異界墮神ルドライエフが耳をつんざく悲鳴を上げたその瞬間。
今まで天使裝騎達を押し返そうとしていた異界墮神ルドライエフの悪意が、逆に4を取り込み始める。
『これはマズイのかな? それとも、はは、好都合?』
『どっちにしても、中に飛び込む算段なんです! なんだかわたし、ワクワクしてきました。なんででしょうね。こんな時に!』
『確かにな。此処で我ら華々しく世界を救う、か』
『殺すコトしカ知らなかっタわれガァ、世界、救ウ……ソレは、とてモよい事ダ……』
『うん、それじゃあ好都合ってことで! うん、うんうん。いいね』
大きく口を開けるように、異界墮神ルドライエフの悪意が広がる。
それは天使裝騎アモンを、グレモリーを、マルコシアスを、グラーシャ・ラボラスを自らのに迎えれ、頬張ろうとしているように。
『これが……最期、ですね。ですけど、人生を終わらせるには――これ以上ない幕引きです!』
『そうだね』
『肯定』
『アァ……』
『みんなの所に行きましょう……きっと待ってる筈です。最期まで必死に戦ったわたし達を。きっと歓迎してくれる筈です。だから――』
瞬間、天使裝騎グレモリーの視界が漆黒の壁に閉ざされた。
『え……?』
宙を落下する自らのに天使裝騎グレモリーは事態を把握できない。
遠ざかっていく異界墮神ルドライエフに手をばす。
わたしは、わたしもあそこで――最期を……
瞬間、異界墮神ルドライエフが眩い、どこか神々しさすらじる虹のを放ち、消滅した。
異界墮神ルドライエフは天使裝騎アモン、マルコシアス、グラーシャ・ラボラスによる決死の行でこの世界から姿を消した。
霧散化し、ある種のアズルとなった天使裝騎グラーシャ・ラボラスを、天使裝騎マルコシアスが開けたからにれ、そこに天使裝騎アモンの炎で著火するという文字通り自攻撃だったようだ。
「気化弾ならぬ霊化弾ね」
とはローラさんの言。
その後、異界墮神ルドライエフとの戦闘映像やそれに至る経緯、スヴェト教団起源派が行っていた天使と悪魔の自作自演などが世に公表され私とビェトカの指名手配は無事解かれることとなった。
もちろんそれだけでは憲兵や國軍に対する戦闘行為が完全に許されるわけではなかったが、異界墮神ルドライエフの撃退に貢獻したという名目で恩赦をけることになり、実質無罪で解放された。
スヴェト教団起源派に屬していた人々はその多くが行方不明となっているが、その理由は言わなくても分かるだろう。
中には事件後に失蹤した司祭達もおり、若干の心配はあるものの、そういう調査はローラさんやアラモード先輩達の仕事だ。
そして、使徒で唯一の生き殘りとなったマチアちゃんは……
「スズメさん! そんなしょっちゅうお見舞いに來なくてもいいのに……」
「今日は新弾の発売日だからね。買ってきましたよ」
「買って來たって箱でですか!?」
カナン中央総合病院。
マチアちゃんは療養と検査を兼ねてこの病院に院している。
「そのカートンになるかも」
「カートンはヤバいですよ!」
私はマチアちゃんの足元へと目を向ける。
「マチアちゃん、足は大丈夫……?」
マチアちゃんは首を橫に振った。
どうやら、天使裝騎化の影響で元々下半が悪かったらしい。
それが前回の戦い――力を使いすぎたという事もあってついに半不隨に。
醫師の診察では自もボロボロで、正直油斷できない狀況みたいだ。
「なんでわたしだけ……生き殘っちゃったんでしょう」
ポツりとマチアが呟く。
私はあの時の狀況をマチアちゃんから聞いていた。
だからその気持ちはよく分かる。
でも同時に、シモーヌさん達の気持ちも分かる気がした。
「やっぱり、生きてしかったんですよ」
「みんないなくなっちゃって、歩けなくなって、それにいつまで生きられるかも分からないのに……なんで生きないといけないのかな」
「それは……わからない、けど」
ここで気休めを言ったところで何の意味もない。
ならば――しだけでも、マチアちゃんが生きる為の希になれたらと思った。
「私はマチアちゃんが生きていてくれて、とっても嬉しかった」
生きているということ、生かされてるということ、その奇跡に気付けるまで。
「やっぱりカートンで買ってこようかなぁ」
「なんで!?」
「楽しんだもの勝ちだからですよ。人生も、カードゲームも!」
「ぷっ――そうですね。わたしも一緒にいきます」
「それじゃあ――」
「「HRÁT(フラート)!!!!」」
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