《親のり人形は自らその糸を切ろうとしている》さようなら、俺達 ③
車椅子を漕ぐタイヤってこんな重たかったっけ?
先生に會いにいくその手はとても重たかった。
行きたくない。なにも聞きたくない。でも、行かなければならない。もし行かなかったら駿のことは夢だったんだ。そう思わないといけなくなる。
そう、また一人っきりの生活に逆戻りになる。
これは俺の希だ。
駿のことを聞きたい。出來るだけ報がしい。
俺は事故の後、一人で悲しいこと辛いこと全てを抱え込んできた。それが本當にしんどかった。誰かに話したい、話す相手がいない。もし話ができたとしても、好きな家族が戻ることはない。
わかってる。わかってるけど……。
その重くくなった心を軽くしてくれたのは、アクセサリー作りだった。
自分の辛さは自分にしかわからない。
だからこそ自分でしか出來ないことがたくさんある。
駿にも前に進んでしい。
それだけだった。
待ち合わせ場所に著くと、先生が手を振ってくれ先に待っていてくれた。
あ、このじ……。
前に駿と待ち合わせで、焼屋に行った時手を振ってくれてたっけ。
どことなく似てるなぁ。
「ここまで來るの大変じゃなかったですか?」
「大丈夫です。しずつ外には出てるので」
「駿のおかげですか?」
そうなのかな。改めて言われると恥ずかしくなった。
「駿とはどんな経緯で出會い、仲良くなったのかかなり興味があります。家でいつも一人だったので。あ、いきましょうか」
明らかに高そうな高級料理店。
改めてお店の外裝を見るとお金足りるかなぁと、心配になり鞄を強く抱きしめてしまった。
中にると綺麗なの人が二人、店を案をしてくれた。料亭の配慮だろうか?
トイレに近いところの個室へ案された。
車椅子でも大丈夫そうな広いトイレだ。
「なんか、ありがとうございます先生。こんなとこ初めてで張します。」
「いつもの行きつけでね。コースにしたけど大丈夫かな?」
サラッと嫌味なく行きつけって言ったな……。俺も言ってみたい。
大丈夫です。なんて返事をしたがなにが大丈夫かもわからず……。
ここで“コースって何円するんですか”なんて失禮な質問もできず、とりあえず々とドキドキしている。
「駿は元気にしてる?」
「……今は一緒にいてなくて。」
「なんで?」
「喧嘩したから。」
「喧嘩?言い合いになったの?」
「まぁ……」
俺は首を傾げ、先生から視線を逸らした。
「駿が言い合いね……」
ぼそっと呟く。
「家にいてた時は言い合いがなくて。特に駿からの発言はなかったなぁ。いつも“はいはい”って返事していた」
驚いた。
俺といた時は積極的に話しかけてるじだったから。
俺が先生の話に頷いていると、いつの間にかコース料理が機の上にキレイに並べられていた。
「俺は醫者になる前、研修醫の時に家を出て行った。その時駿が初めて泣いたんだ。行かないでって。それまで自己主張がなかったから心苦しかったよ。でもあの家からはすぐ出て行きたかったからね。今は幸せだよ。」
「駿はいつ頃家を出たんですか?」
「……知らないなぁ」
「知らない?連絡は?」
「頻繁にはしてないかな。正直、兄弟が何人いたかも知らないし。家族で旅行もご飯も食べたことないよ」
「え?」
料理を食べていた手が止まった。
同じ家にいて、兄弟が何人いてるかわからないとかありえるのか?家族がどんな人か知らなかったってことか?
どういう生活をしていたんだ……。
「俺が出て行った時、駿は高校一年生だった。俺が何故出ていくことを知っていたかわからない。でもその顔は今でも目に焼き付いている。病院で再開した時も髪のを変えていたが、顔は全然変わらなかったよ。唯一、家にいた時と変わったことは目の輝きだ」
「目の輝き?」
目が輝いて、、たかな?
あんまり気がつかなかった。
「家にいた時、目は死んだ魚のようだったよ。ま、俺もあの家にいる時はそうだったかもしれない。」
先生はしため息をつき、料理を一口口に運んだ。
「ところで駿はいつ出て行ったの?なんか二人で病院に來た時は駿が白咲さんに惚れてるようなじだったけど」
「ほ……惚れてる!?」
「はははっ。まぁカップルに見えたってことだよ。」
他の人から見たらそんなふうに見えるのか?
確かに距離バグってたかもしれないけど。
「えっと……」
「なんでも言ってよ。大概のことは驚かないよ」
先生はニコニコしながら、今度は日本酒を一口飲んだ。
そりゃ、ここまで聞いてるじでは大概の経験をしてそうだから驚かなさそうだよ。
でも、俺が聞きたいのは“駿はお姉さんと関係あったんですか?”てサラッと聞けるか?
まぁまぁな弾発言だぞ。
いや、聞くことに躊躇っている場合じゃない。
駿をしでも知りたくてここに來たんだろ。
でもと心は正直で下を向くと手が震えていた。
まで言葉が出てるのに、発言できない。
変な冷や汗も出る。
一度大きく息を吸って、吐いた。
「あの……」
たった二文字言うのも聲が震えていた。
視線を前に向けると、先生と目線が合った。
今までの話とは空気が違う。
それは先生も察してくれたと思う。
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