《親のり人形は自らその糸を切ろうとしている》俺達は一からスタートする ④
「ちょっと待ってて」
駿は鍵田さんに返事をして、二階に上がって行った。
……二階を見つめると鍵田さんと駿が何か話していた。
……長い……
待ち続けると、やっと二人が下に降りて來た。鍵田さんは額に汗を流しながら、笑顔で領収書を出して來た。
「ありがとうございます!貴方があの白咲宗一郎さんの息子さんでしたか。お父さんに目元そっくりで男前なのはお父さん譲りですね」
「え?」
鍵田さんは高笑いして、帰る支度をしていた。なんで俺のお父さんの名前を知ってるんだ?
「鍵田さんは昔、律のお父さんが教師をしてた時の先輩だったんだって」
「なんでわかったの?“白咲”なんてそんな珍しい苗字じゃないよね?」
「書斎の鍵が開いた時、部屋の中が目にったんだ?そしたら目の前に富士山のポスターが大きく飾られていて。鍵田さんがあのポスターは律のお父さんが通っていた學校の山岳部が絆を深めるために作ったポスターだよって教えてくれたんだ」
何故あのポスターが飾られていたのか、駿は俺のことそしてお父さんのことを知っている範囲で鍵田さんに説明してくれたらしい。
俺は実際に見ていないが、それはそれは綺麗な富士山のポスターだったみたいだ。
しドアを開けただけで目にるそのポスターは鍵田さんも駿もしたと言っていた。
「いやー世間は狹いですな。山岳部の事故も通事故も本當に悲しい事故で……。山岳部の時も責任をじて白咲君は教論を辭めました。『夏焼が崖から落ちる顔と聲が今だに頭に殘る』って言ってね」
お父さんはその時どんな心境だったのだろうか。
俺には到底わからない。
「あの……」
駿は棚に飾ってあった四人の寫真を鍵田さんに見せた。
「これが夏焼さんですよね。夏焼さんは奧さんがいたみたいなんですが、お子様は?」
「子供……?あー、亡くなったよ。奧さんが妊娠中に夏焼があの事故にあってストレスでお腹の中で亡くなったって」
「夏焼さんが事故にあってすぐ……ですか?」
「いや、そこまではわからんなぁ。ごめんよ」
鍵田さんは、首を橫に傾げて頭を掻き出した。駿は手を橫に振ってお禮を言っていた。鍵田さんが出て行ったあと、駿は寫真立てから寫真を取り出した。そして俺に寫真の裏を見せてくれた。
“最後の四人の寫真。あの事件より汚れた子供にこれを託すことにする。あきらの命はこの手の中に”
「これ、前に俺が見つけたんだ。だから、夏焼さんに子供がいたらなにか知ってるかなぁて思って」
「駿、たぶんこれお父さんの字だよ」
「え?」
「この縦にばして跳ねるところ、特徴的だからわかる。これは俺のお父さんの字だよ」
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