《親のり人形は自らその糸を切ろうとしている》俺達の知らない父親の素顔 ①

座面が橫にズレると、中から出て來たのは日記帳だった。

駿はそれを俺のところに持ってきた。

リビングで出て來た日記帳の表面をでてみた。まるで、ファンタジーアニメに出て來そうな分厚くデコボコしている日記帳だ。

ゆっくりと最初のページを開いて、聲に出して読み始めた。

“ここに俺がしてきた重大な罪を下記示す。日が経つにつれ辛くなるあの山の事故”

山の事故はあの山岳部であった事故のことだろう。

“あの事故より四人は離れ離れになってしまった。事故を間近で目撃した弟、そして一ノ瀬は俺が夏焼をわざと落としたと思い疎遠になっている。そう、俺は言い訳はしない。だって本當にワザと落としたのと同じ行為をしたのだから……”

「……お父さん……」

「大丈夫?」

俺は淺く頷きページをめくった。

“あの日、夏焼は子供が産まれたからと大喜びしていた。まだそれを知っていたのは俺と弟、そして一ノ瀬だけだ。お祝いをしたかった気持ちがあり、早く山に登って下見を済ませようと言った。しかし、下山途中急な悪天候に見舞われた。周りは霧で見えない。一度立ち止まるとすぐそばに崖が見えなかったため夏焼は足をらせた。俺は夏焼の腕を辛うじて摑んだ。でも風も強く俺の手も限界だった。”

「ごめん、読むの変わってくれる?」

「俺が読んで大丈夫?それか休もうか?」

「大丈夫、疲れただけ」

俺は小さな噓をついた。本當は読むのが怖くなってきた。今後どのような言葉が出てくるのか想像がつかなかったからだ。俺は震える手をぎゅっと握り駿にバレないように下に隠した。

“夏焼のが揺れていた。「俺の手を離せ」とぶ。一ノ瀬と弟の姿は微かに見えるが霧が濃いため助けを呼ぶことができない。離せるわけがない。夏焼はさらにんだ。「俺には莫大な生命保険がある。それを妻と子供に託したい。お前が死んだら俺の言が妻達に屆かないだろ。お前は生きて伝えてくれ!妻と子供にしていたと伝えてくれ。最後までありがとう」と”

お父さんも夏焼さんもどんな思いで手を握っていたのだろうか。お父さんは助けたい一心で、夏焼さんは助からないという斷念の思いで。その正反対の思いがお互い辛い結果を導いたのだろう。

“夏焼は俺の握った手の反対側の手の指を一つずつ解いて行こうとした。そして俺の手は力盡きた。夏焼の顔が遠くなり見えなくなってしまった。何ということだ。俺は何ということをしてしまったんだ”

そこで、日記は一度書き終わっていた。そのページには涙が落ちた跡がくっきり殘っていてお父さんがどんな思いでこの日記を書いたのか俺でもわかるような気がした。

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