《反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士〜心優しき悪役皇様のために蘇り、人生難易度ベリーハードな帝國ルートで覇道を歩む彼を幸せにする!〜【書籍化&コミカライズ決定!】》【112話】高潔な一匹狼(ペトラ視點)

林での大規模な模擬戦。

學園の半年に一度のペースで行われる重大行事。

フィルノーツ士學校の市有地である大規模な林を舞臺として、生徒同士が実戦を想定した真剣勝負を行う。

敵味方の指定はなく、誰かと手を組んでも良く、一人で黙々と戦うのも良い。

純粋な戦闘力だけではない。

その生徒の持つ総合力が試される、そんな試験の一つである。

単純な話、大きなグループに屬すのがこの模擬戦で勝ち抜く必勝法だ。當たり前のことだ。

戦いは數。

ないよりは多い方が勝率は高くなる。

孤立した生徒には不利に働き、人脈の広い生徒にはこれ以上ないくらいに楽しい試験となる。

……私は前者の不利になる方だ。

「あらあら、將來有なペトラさんじゃありませんか。ご機嫌はいかがかしら?」

「…………」

「ふっ、無視してられるのも今のうちですわ。模擬戦が始まったら、その生意気な顔を歪ませて差し上げますわよ」

當然、敵だらけの私にはこういう輩がこぞって集まってくる。

雑魚は雑魚なりに徒黨を組んで、私を潰しに來る。

始まる前から分かりきっている。だって、開始前からご丁寧に宣戦布告をぶつけてくるのだから。

普段から私を敵視している貴族令嬢たち。

名前は知らない。知りたくもない。

ただ、私は黙ってやられる程、弱くはない。

「……言いたいことはそれだけ?」

「は? 貴……ご自が置かれている狀況を理解していないの? 模擬戦が始まれば、私のお友達の皆様が貴を真っ先に狙うわ」

「それくらい分かるわよ。馬鹿みたいな確認をしないでしいわね」

「んなっ! 本當に生意気ですこと」

──集団で私を取り囲んで痛めつける。なるほど、姑息な貴族がやりそうなことね。でもどうせ、私に突っかかってくるのは、無能でどうしようもないくらいに弱っちい烏合の衆。

脅威でもなんでもないわね。

こんなやつの顔、いつまでも見ていると気分が悪くなる。

私は貴族令嬢に背を向ける。

「お待ちなさい! これまでの非禮を謝るのなら、許して差し上げないこともないわよ」

馬鹿らしい。

なんで私が謝るの?

悪いことなんて何一つとしてしていない。

貴族のプライドを傷付けたことは數多くあるかもしれないが、そんなのは向こうの都合でしかない。そんな茶番に私がわざわざ付き合う必要はない。

「……模擬戦で待っているわ」

無駄な問答は必要ない。

不満があるのなら、正面から戦いを挑んで來ればいいだけのこと。勝負の世界にけは不要。謝れば許すとか、許さないとか、そんな甘えたことを考えている人になんか負けない。

私は一人、林の中でその時を待った。

──嫌に靜かね。足音一つ聞こえてこないわ。

模擬戦開始の鐘が鳴った。

されども、付近に人の気配はじられない。

遠くの方では、魔の撃ち合いが行われていたり、鉄剣がぶつかり合うような金屬音が無機質に響いている。まさか、私の居る場所を把握しきれていないなんてことはないだろう。

フィルノーツ士學校への學を決めた者であれば、私の居場所を割り出すくらい容易いはずだ。

なにせ、隠れもしていない。

私は林の中に一人立っている。

敵対する者が現れるのをただ、ひたすらに待っている。

こんなに時間が経過したのに、きがないのはあり得ない。

そんなことを考えている時だった。

微かに魔の気配をじる。

ちょうど背後になる位置、距離はそれなりに離れているが、間違いなくその矛先はこちらに向いていた。

「ふっ!」

その場からすかさず離れる。

一秒も経過せず、その場所には大量の火球が降り注ぎ、一帯は真っ赤な炎に包まれた。

「へー、これを回避するなんて。流石は學年主席」

──やっと來たわね。

コツコツと靴の音を鳴らしながら歩いてくるのは、先程私に突っかかってきたのとはまた違う令嬢。

こっちは更に厄介な相手だ。

先程の令嬢とは違い、慈悲というものを知らない。徹底的に相手を痛ぶることが大好きな、貴族のお手本みたいなである。

の両脇には當然の如く取り巻きがおり、それをまた囲むようにして、魔科、騎士科の生徒がり混じるように配置されていた。

「ふふっ、どう? 今から泣かされる気分は」

「馬鹿じゃないの。負けるのは貴たちよ」

「言うじゃありませんか。その威勢がいつまで持つか楽しみですわね」

──心、私はかなり焦っていた。

想定以上に人數が多いのは、まだ些細なこと。

それよりも騎士科の生徒がこの一件に加擔していることが頭を悩ませる要因である。

純粋に魔だけの力比べであれば、私が負けることはほぼない。

でも、前衛に回れる相手が出現したなら、話は別だ。

遠隔から攻撃が中心となる魔師にとって、近接戦闘の得意な相手に近付かれてしまうとが無くなる。

だから、後衛に控える魔攻撃を回避しつつ、どんどんと前に出てくる剣士、槍使いなどが近付き過ぎないように牽制し続ける必要がある。

──面倒な相手ね。

相手方に手のひらを向ける。

逃げ場なんてものはないと知っているから、余計に引くという選択肢は選ばない。

令嬢は意地悪い笑みを浮かべて、鼻を鳴らした。

「勇気があるのですね。素晴らしいわ。……皆様、やってしまって構いませんよ」

ゾロゾロと前に歩いてくるのは、そうな鎧をに纏った騎士科の生徒たち。

「やってやろうじゃないの……」

私は、即座に魔を放つ準備を整えた。

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