《反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士〜心優しき悪役皇様のために蘇り、人生難易度ベリーハードな帝國ルートで覇道を歩む彼を幸せにする!〜【書籍化&コミカライズ決定!】》【113話】救いの手(ペトラ視點)

林の一部では、今日一番の炎が広がる。

黒い煙が無數に立ち込め、まるで本の戦爭でもしているかのような雄びが響き続ける。

けれども、大規模な戦いとは決して言えないものであった。

「はぁ……!」

「──っ!」

剣士が振り回した長剣は、頬を掠めそうなくらいギリギリの所を通過。そのまま後方に飛び、距離を空けた。

相手はたった一人。

私だけだ。

にも関わらず、相手は殺してやろうと言わんばかりの豪快な攻撃を続けてくる。

「……痛っ!」

流石に全ての攻撃を避け続けるのは難しい。

「はは、唆るねぇ。もっと可い聲をあげてくれよ」

「黙れ……絶対に許さない!」

騎士科の生徒は、令嬢の協力者なだけあって、かなり格が破綻していた。

真正の屑。

こんなのが將來、國を守る騎士となるかもしれないと思うと反吐が出そうになる。

「そろそろ辛くなってきた頃合いでなくって?」

後方から腕を組みながら、高みの見をしている魔科の生徒は、時々魔を放ってくるだけではあるものの、厄介なことに変わりない。

でも、今すぐ私を倒すという訳でもないらしい。

私が逃げ回る様を楽しみたいようだ。

「く……っ!」

「おっと、ザックリ切っちまったわ。はは、悪い悪い」

流石に騎士科の生徒と比べたら、能力は劣る。

無遠慮に間合いを詰めてくる相手と戦う経験はないし、これ以上長引かせれば、傷が増えるだけでなく、最悪の場合……。

──魔師生命さえも、絶たれかねない。

「あらあら、とっても痛そうね」

嘲笑う聲が耳に纏わりついてくる。

ボヤけた景と相まって、気分は過去一番に良くないものであった。

切り裂かれた傷からが流れる。

腕を下へ下へと伝い、指先から地面にポタポタと雫が落ちる。

その様子を向こう側で楽しそうに笑う令嬢たち。

心底、腹が立った。

「で〜も。泣きながら土下座しても、許さないから♪」

好きなだけ痛めつけるのが向こうのみ。

けをかけられることなどはあり得ない。だから、この狀況から抜け出すのなら、私一人で目の前にいる全員を叩き潰す他ない。

立っているものやっとなくらい。

泣き言の一つや二つ、言いたいくらいに辛い。

けれども、ここで挫けてしまっては、一流の魔師には程遠い。王宮魔師となれば、この程度の苦難は幾度となく経験することになる。命を懸けた任務だって任されるだろう。ならば、學生同士のめ事レベルに苦しめられ、心折られているようではその領域には相応しくない。

──やるしかないわね。

誰かに負けたくない。

私は、こんなやつらに屈しない!

傷口を反対の手で抑えてつつ、私は集中力を高めた。

「うが……っ!」

「うっ……」

ヨロヨロと無警戒に接近してきた騎士科の生徒を潛ませておいた魔を即座に発し吹き飛ばす。

向こうは私に余力が殘っていないと思ったのか、も取れないまま強く地面に叩きつけられていた。

「ちょっと、何をしているんですの!」

「い……いだぃ……骨が折れてるかもしれな、い」

「もう、これだから騎士科の馬鹿どもは使えないんですの!」

運良く、騎士科の生徒を數人戦闘不能にさせることが出來た。

敵はまだ多いけれども、一矢報いれたことに変わりはない。

「ふん、烏合の衆とはこのことね。數で押せば勝てるなんて、甘いことを考えたものね」

口ではそう誇らしげに告げてみたものの、既にに與えられたダメージの蓄積によって限界に近かった。

によって、止、痛み止めなども同時進行で行ったためか、殘存魔力量も大きく削られている。流石に魔力が盡きてしまえば、逃げる他選択肢が無くなる。

魔力を溫存しながら、戦えればなんとか……なんて甘いことを考えていたが、そんなものはすぐに頭から消え去ることになった。

尾を巻いて逃げるなら、許してあげるけど?」

「馬鹿にしないでくださいまし! ただの數人倒せたくらいでいい気になってるんじゃなくて?」

対面に立つ令嬢がパッと手を上げると後方で待機していた騎士科の生徒、魔科の生徒が皆臨戦態勢になる。

煽り過ぎたためか、こちらにトドメを刺しにきたようだ。

ある意味これは、私の自業自得であるが、虛勢を張るより私に選択肢など無かったのだ。

「貴方たち、殺さない程度になんでもやっていいわ。喋れなくなるほどの恐怖を彼に植え付けなさい!」

これはいよいよヤバいかもしれない。

そう思い、出し惜しみしている場合ではないと必死に魔を練り上げる。

騎士科の生徒は、先程よりも數を増やしてこちらに駆けてくる。

科の生徒は、お遊びを終わりにして、本気の魔を発させようとしている。

騎士科の生徒の抜いた剣先、それから魔科の生徒が放った魔の雨が一に降り注いでくる。

私はありったけの魔で全てを弾き返してやろうとギリギリまで相手を引き付けた。

勿論、そんなことはほぼ不可能だ。

理攻撃と魔攻撃、その両方に対応するなど學生レベルでは出來るはずがない。

それを分かっていながらも、やれなければやられてしまうという意識が無理やりにでも突破口を切り拓くこうと脳に訴えてきた。

──今!

向こうの攻撃がこちらのれる──その剎那であった。

「おりゃぁぁぁぁっ──!」

騎士科の生徒を吹き飛ばす謎の影が間に割ってるようにして現れた。

剣と剣がぶつかり合い、金屬が火花を散らす音が響く。

何事かと。

私も、向かい側にいる令嬢たちも同じく思考を停止させてしまう。

よく見てみると、そこには一人の騎士科の生徒が立っていた。

茶髪でかなりガッチリとした男。

それが私とスティアーノの出會いであった。

「アンタ、無事か?」

「え、ええ……まあ」

「なら良かった。おい、寄ってたかって一人の、それもに攻撃を仕掛けるとは、騎士道の欠片もないじゃねぇか、ああ?」

スティアーノは私の前に立ち、庇うように剣を構えた。

    人が読んでいる<反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士〜心優しき悪役皇女様のために蘇り、人生難易度ベリーハードな帝國ルートで覇道を歩む彼女を幸せにする!〜【書籍化&コミカライズ決定!】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください