高速移を行うベルトを狙うように地面から、魔力の氷柱が突き上げてくる。

だが、ベルトが減速することはない。

生まれたばかりの氷柱を足場にして、立的な走行を――――

「ダメっ！　そこは罠です！」とメイルの聲。

聲に応じるよう、ベルトは反的に空中でを捻り、踏みつけようとした氷柱を回避した。すると――――

「氷柱が溶解した……だと？　罠も仕掛けていたのか？」

それでも「すまない。ありがとう」とメイルに手を上げる余裕があるベルト。

「やっぱり、が読めない魔導生は苦手だな。罠が読みづらい――――おっと！」

著地したによる膠著時間を狙ってゴーレムの拳がベルトを狙う。

ベルトは回避と同時に――――≪魂喰いソウルイーター≫

魔力の刃をスライムゴーレムに叩き込む。

まるで袈裟斬りとけたかのように、肩から斜めに切り込みがる。

だが――――

「スライムの再生能力か。本當に厄介な機能が満載のゴーレムだ」

実を言えば、この時點でベルトはスライムゴーレムの倒し方を考えついていた。

（接近して直接的な攻撃を與えようとすれば、コイツはゴーレムからスライムの質に変化する。敵を餌として捕食しようと閉じ込めてくる……スライムゴーレムの習と言って良いが、それが弱點だ）

ベルトの真骨頂は、超高速移からの多彩な打撃技ではない。

猛毒。

自らで調合して生み出す數々の猛毒。　もはや、ベルトのは猛毒の貯蔵庫と言っても良い。

（簡単に倒すなら、コイツのに飛び込んでスライムのを毒殺すればいい。けど――――）

スライムゴーレムの猛攻を避け続ける。

猛攻とは？。

巨大なゴーレムので拳を振るうだけではない。

スライムであるの一部を氷柱に擬態させた罠。

凍り付いた球を投げつけてくるかと思えば、それが分裂したスライムに変化して襲い掛かって來る。

攻撃は短調ではなく、時間と共に複雑さを増して行く。

それらを踴るように回避しながら、ベルトは後衛を見た。

ゴッドフリートは詠唱を行っている。　時折、スライムゴーレムの攻撃の余波が彼に向かっているが、それをメイルが防障壁で弾いていた。

（――――けど、初対面のはずに湧き上がる嫌悪。その反面、強さに対しては奇妙な信頼がある。だから、ここは――――）

「任せるぞ！」

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あぁ、苦しい。汗なんぞ何年ぶりに流す？

熱い……この仮初の、剝ぎ取ってしまいたい。そう思うほどの熱を伴っている。

これから放つのは正確に一撃で殲滅する魔法じゃ

一撃で殲滅する威力と？

馬鹿ななど……魔力を抑えて制するなぞ、ワシの苦手分野ではないか？

ワシの本分は破壊の権化――――それを、なぜワシは楽しいと思っている？

これは夢――――一夜だけの夢祭りの如く、魔界の神々が起こす戯れ。

ならば、良し。　今は、今だけは、この戯れに興じよう。

その量くらいはある。なんせ、ワシは―――――

大魔王　シナトラ

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彼の膨大な魔力は、參加者に配られる凡庸の杖を変化させている。

まるで魔導王が振るう伝説の杖のように兇悪な変貌。

そして、今も彼の口から綴られるのは詠唱。

それは、滅びの詠唱だ。

『焦土の大地を生み出すは地獄の火愴――――』

『灰塵は生まれ舞う　これよりは死を運ぶ殘滓となりて――――』

『――――全てを滅せよ』

ゴッドフリードは詠唱を終える。　後は発の言葉を加えるのみ。

「今から放つぞ」との聲はベルトには不要だった。

離れた位置から拳を振るう――――≪致命的な一撃クリティカルストライク≫

鎧のようなゴーレムのが、のように波紋を生み出す。

理的な衝撃をけて、反的にが溶解したのだろう。

そのタイミングを逃すシナトラではない。

『炎《イグニス》』

スライムゴーレムを取り囲むように出現した魔法陣が複數。

宙を浮いている。　そう認識した直後だった。

赤く変した魔法陣。　同時に紅の閃がスライムゴーレムを襲う。

ゴーレム起のための魔力文字を消し去り、それだけではなく予備に隠されていた複數の魔力文字を正確に貫いた。

それと同時に、本であるスライムの核すらも――――

破壊した。