死の臭いはある。それは外気にれたの変臭ではなく、まして腐臭でもない。

例えば、想像してほしい。

罪人たちが処刑されるよりも前に死を啄む鳥たちが集まる景を。

――――簡単に想像する事が出來ただろ？

だから、きっと死には臭いがあるのだろう。

ベルトはそう考えている。そして同時に、自分はその臭いに鈍だと思っている。

戦場に生きた者に取って、隣人は簡単に死ぬ。

ベルトは死が近にあった。

そして殺意――――つまり人間の悪意が読み取れると言う事は、死に対して酷く鈍で――――

――――いや、本當にそうだろうか？

もしも、橫にいるメイルやマリアの死に対しても、本當に鈍でられるだろうか？

（そんなはずはない）

ベルトは必至に否定する。

しかし、目前に広がる景を前にして、死に対する鈍さを否定しきる事はできなかった。

それほどまでに――――それほどまでに――――

死が氾濫していた。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

「あの日、閉じ込められた先頭集団の救出作業が遅れた理由がこれよ」

マリアは布で仕切られた部で説明を始めた。

「先頭集団と《《最後尾》》……事件は同時、《《２か所》》で起きていた」

「こんな殘酷な事をどうして……」とメイルは顔を青く――――それでも目を背ける事はしなかった。

「どうして……」というメイルの言葉に対して、ベルトは別の事を思う。

（どうしてと言うより、どうやったのか？　それほどまでに、不可解な殺し方だ）

ベルトとメイルの目前にはが６つ。　最後尾を飛んでいた參加者たちだ。

その６つ――――いや６人の死は、この事件の異常を示すように手足が砕かれていた。

比喩ではない。

組技などで故意に手足を骨折される事を砕かれると表現する事が多い。

しかし、これは比喩表現などではなく本當に砕かれていた。

蕓作品の彫刻。巖や氷、あるいは大木などをハンマーとノミで削る。

それと同じだ。　それを犯人はの手足に施している。

この現場に殘された６人は、手足を原型を留めていないほどに――――砕かれていたのだ。

「――――」とベルトでも、言葉を飲み込むほどに凄慘。

だが、沸々と湧いてくる、怒りがあった。

（怒り……だが、この怒りの正は――――）

そんな時、メイルの言葉。まるでベルトの面を代弁するかのように――――

「許せません。こんなひどい事を――――絶対に」

だから気づく。　ベルトの怒りが何に由來しているのか……

（そうか。正義心……と言えば陳腐な言葉になってしまう。しかし、普段は眠っている純粋な正義心。それが揺り起されるほどに――――犯人の邪悪さ）

もしかしたら、それが表にでたのかもしれない。マリアは、

「２人共、今は參加者でしかないあなた達にこれを見せた理由。それは依頼をするためよ」

「依頼？」

「そう、私の夢。將來の目的は知っているでしょ？」

「あぁ」とベルトは納得した。マリアの目的は、冒険者ギルドの獨占を許さない事。

冒険者ギルドに変わるシステムを作り上げる事だった。

「だから、これは私からの依頼。この慘劇を起こした犯人を捕まえて、懲らしめてあげなさい」

その依頼をける事は背信行為。冒険者であるベルトとメイルが冒険者ギルドを裏切ることになる。それでも――――

「けましょう義兄さん」とメイルの強い意思。

「あぁ、けよう」とベルトも決斷する。

「２人共ありがとう。では――――これはマリア・フランチャイズからの依頼。この長距離ワイバーン競技の最中に行われた殺人を含む妨害行為の犯人を捕まえてください。期間は、競技再開の３日以です！」