《【WEB版】灼熱の魔様の楽しい溫泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の溫泉帝國を築きます~【書籍化+コミカライズ】》331.魔様、聖王國に狙いをロックオン! さぁ、リリを奪還しましょう!

「リリさんがサジタリアスで襲われて拐されました! クレイモアは負傷したみたいです!」

屋敷の溫泉で骨を休めていると、ハンナが駆け込んできた。

の知らせはとんでもないものだった。

リリは辺境伯のところで厳重に警備されていたはず。

クレイモアなら、どんな奴が相手でも撃退できると踏んでいたのに。

を傷つけるような化けがいたってことらしい。

「ご主人様、急いで皆を集めましょう!」

ララはいつになく真剣そのものといった表

私は無言でそれに頷くのだった。

「村のみんな、永遠の聖、リリたんがさらわれたでぇええっ! 心は青年、はオッサンの仕業やぁあああ!」

「目撃者によると、黒い狼もおったそうやで! 犯人は聖王國やん!」

どういうわけか、溫泉リゾートのホールにて會議がひらかれることになった。

メテオのアジテーションに従って、村人や冒険者たちはヒートアップする。

「聖王國をぶっつぶせっ!」

「戦いの時間だぁあああ!」

「魔様に逆らうものは地獄行きだぁあああ!」

村のみんなは大きな聲で怒聲をあげる。

メテオいわく、みんなのやる気をアップさせるためって言うけど、これやりすぎじゃない?

あと、村人たちは私が子供になっているのを知ってるみたいだけど、驚いている様子はないようだ。

ララが「魔様にはよくあること」と説得したらしい。

いや、簡単に納得しないでよ、そんなこと!

「えーと、とりあえずわかっていることを整理するわよ!」

報を整理すると、大のことが見えてきた。

狙われたのは、リリのスキル授與が終わった後の祝賀會だったとのこと。

襲ってきたのは、あのモフモフの黒い狼、そして、対抗戦にも出てきた黒づくめの男と吸鬼のの子だったらしい。

もっとも、襲撃をけた部屋にいた人々はほとんどが失神していたらしい。

私たちが聞いているのは、かろうじて意識のあったクレイモアの報である。

もしかしたら、他にも悪者がいたのかもしれない。

「あの男、許せません! 私が叩き切ります!」

一番の怒りを見せていたのはハンナである。

は対抗戦であのオッサンとなからず因縁を抱えている。

自分のライバルとみなしているクレイモアへの狼藉に激しい怒りをじているのだろう。

戦闘狂のハンナにしては珍しい反応だ。

しずつ長しているのかもしれない。

「しかし、正々堂々と拐しに來るって、相當、アホなんちゃう?」

「そやな、完全に自分たちの仕業やって言いたいんかも」

メテオとクエイクが言うことは、もっともな話だった。

拐って普通、バレないようにやるべきことなんじゃないだろうか。

「そうですね、まるでっているかのような行為です」

ララは顎に手を當てながら真剣な表で、言葉を続ける。

「犯人は聖王國であり、攻め込んでしいとでも言うかのようですね。もちろん、今回の犯人は聖王國ではあると思いますが、このままでは戦爭が起きるでしょう」

ララの口から出た、戦爭の文字に背筋が急速に冷たくなる。

それはおとぎ話ではなく、現実の話である。

あの辺境伯はリリのことを溺しているし、激怒しているはず。

この間と同じように、リリを奪還するために騎士団を派遣するだろう。

しかも、相手は聖王國という大きな國を相手にするわけで、私たちの場合とは桁が違う。

ザスーラ連合國全から兵隊を募って、大規模に派遣する可能も高い。

つまり、ザスーラ連合國VS聖王國という戦爭の危機が迫っているのだ。

リリを奪われた辺境伯の悲しみと怒りはよく理解できる。

だけど、このまま戦爭が起きてしまうのは非常に危険だ。

「そんなん負けるに決まってるやん! あいつら魔を使うんやで? 結果はどうあれ、人死にがめっちゃ出ることになるで」

「うわぁ、うちのお母ちゃん、棺桶屋にジョブチェンジするやろな」

真剣そのもののメテオ。

その空気をしだけ茶化すクエイク。

二人の表は曇ったままである。

たちも戦爭が近づいていることに気づいているのだ。

そして、それはもう殆ど避けることができないということを。

「問題は、私たちはどうすべきかってことよね?」

そう、他人がどうくかについて考えることも大切だけど、一番は私たちがどうくか決めることだ。

私たちにとってもリリは大切な仲間であり、友達である。

そんな彼を失うなんてことは絶対に嫌だ。

「リリを取り戻すわよ! ついでに例の水晶を壊しちゃおう!」

私は皆の前で今後の方針を宣言する。

一つ目はリリの奪還である。

そして、もう一つはハマスさんの言っていた、黒い水晶とやらを壊して、私の姿を元に戻すこと。

いつまでも子どもの姿でいるのは嬉しいことじゃない。

鋭で忍び込むとはいえ、相手はかなり危険だ。

もしかしたら、待ち構えているかもしれないし。

「ハマスさん、聖王國に詳しいのはあなたしかいないわ。一緒に戦ってくれる?」

私はさきほどから黙ったままのハマスさんに聲をかける。

は言わずと知れた聖王國の元幹部である。

味方になってくれれば、大きな力になってくれるだろう。

もっとも、あの聖王様を未だに捨てきれていない部分があるとは思うけど。

「……わかった。クレイモア様の仇、私が討たせてもらおう!」

ハマスさんは重々しく頷き、し涙に詰まりながらそんなことを言う。

いや、クレイモアは死んでないよ?

普通にサジタリアスの病院に院しているらしいし。

「次は、ドレスとメテオ、二人は水晶の破壊工作員よ! 一緒に忍び込んで!」

「おうよ、仕事を途中で投げ出すのは心苦しいが、リリのためだ! やってやるぜ!」

「ひぃいいい!? なんで、うちがぁああ!?」

水晶の破壊にはドレスとメテオの二人を任命する。

たちはいつぞやの魔族との戦いの時も、世界樹に取り付けられた魔道みたいなのを破壊してくれた経験がある。

ドレスは言わずもがなだけど、メテオの鑑定眼には一目置いているのだ。

たぶんきっと、今回も上手くやれそうな気がする。

「頼りにされるのは嬉しいけどなぁ。さすがに二人は心もとないで」

それでも渋い顔をするメテオ。

確かに護衛がいないと危ないよね。

さて、どうしようか?

「カルラ、出番よ。今回は一緒に行ってちょうだい」

「……ひ」

「大丈夫? 熱がある?」

「大丈夫、全部殺す」

部屋の片隅でぼーっとしているカルラを発見した私は彼に護衛役をお願いする。

ならば並大抵の敵はやっつけちゃうだろう。

頑張ってもらいたくて手をぎゅっと握ったら、やる気を出したのか顔が真っ赤になった。

別に殺さなくてもいいんだけどね。

「あとは燃え吉、ドレスと一緒に行ってね。頑張って」

「わ、わかったでやんす!」

最後のメンバーは燃え吉だ。

いつもドレスによって何だかよく分からない人形みたいなのにっているけど、その力はまさに化け級である。

護衛役としては十分だろう。

「じゃあ、リリの奪還チームだけど、まずは私が出るわ。そして、ハンナ、頑張ってくれる?」

次のメンバー分けはリリを奪還するためのメンバーだ。

これはもう鋭で行くしかない。

黒い水晶を壊すのは力がいると思うけど、奪還チームは裏に行するわけで派手なきはいらない。

人數はなければない方がいい。

「もちろんですよっ!」

ハンナは快い返事をしてくれる。

とてもありがたい。

「ご主人様、私をお忘れですけど?」

ララは真剣そのものといった表である。

確かにララがいてくれるととても助かる。

だけど、彼にはもっと大切な役割があるのだ。

「ララ、あなたはサジタリアスに行って、辺境伯を説得して! 戦爭をなんとかして止めてちょうだい!」

「し、しかし、ご主人様、相手が話を聞くか分かりませんが」

そう、彼の役割はサジタリアス辺境伯の出兵をなんとしても食い止めること。

このまま世界が戦爭に陥るのは非常にまずい。

ララにそのことを伝えるも、彼は首を縦には降らない。

戦爭を止めるのは現実的とは思えないと彼は言うのだ。

「そこをなんとかして。私が、いや、灼熱の魔がリリは絶対に取り戻すって約束するって言っていいから!」

そこで私はずーっと認めたくなかった、灼熱の魔という名前を出すことにした。

私は魔じゃない。

魔力ゼロだし。

だけど、誰かの説得に使えるのなら、それで傷つく人を減らせるのなら、魔にだってなってもいい。

「……分かりました。そこまで仰るなら命を賭して、止めてまいりましょう」

ララは私の決意を汲んで、了承してくれる。

私だって彼と一緒にいたい。

離れ離れになるのは嫌だ。

だけど、こんなことを任せられるのは彼しかいないわけで。

「クエイク。あなたはフレアさんのところに行って、サジタリアスに防衛部隊を送るように説得して。きっと、聖王國が攻めてくるから」

「わ、わかりました! やったぁ、一番、平和そうな役割やん!」

次の外はクエイクである。

はザスーラ連合國の有力者であるフレアさんの娘だ。

任せておいて間違いないだろう。

メテオが「えぇええ!? ここは長のうちを信頼するべきちゃうん」などと言うけど、卻下である。

はフレアさんと反目しがちだし。

やっぱり日頃の行いがモノを言うのだ。

「最後にエリクサー。クサツに行って、ヨイヨイに守りを固めるように伝えて! その後は第一魔王國にも行ってくれると助かるわ」

「わ、わかったのじゃ!」

そして、最後に聲をかけるのはエリクサーだ。

には先日までお世話になったヨイヨイやデューンさんのところに行ってもらうことにした。

特にクサツは聖王國に最も近い。

もしかしたら、第一魔王様の國に攻めてくる可能もある。

あの聖王って人、本當に見境がないのだ。

とにもかくにも、警戒してもらわなきゃいけない。

水晶を破壊するチームが、ハマスさん、ドレス、メテオ、カルラ、燃え吉。

リリを奪還するチームが私、ハンナ、シュガーショック。

サジタリアスの説得にララ、フレアさんの所にクエイク、魔族の國にエリクサー。

ふぅむ、リリの奪還チームがちょっと手薄かなぁ。

せめてクレイモアがいてくれればよかったのだけど、怪我をしてるのなら仕方がない。

それに彼はサジタリアス騎士団の所屬なのだ。

元気になってもサジタリアスを防衛するって言う仕事があるはずだし。

「あ、ヒゲ助いるじゃん。あんたも來なさい!」

村人を見回していると、ドレスの隣に水の霊であるヒゲ助がいるのを発見した。

水を自在にる、ナマズみたいな奴である。

化けみたいになった時は厄介だったけど、今では流れる溫泉の溫泉職人なのである。

「ひぃいいい? おいらでがんす!?」

突然、聲をかけられたことにびっくりしたのか、ヒゲ助は素っ頓狂な聲をあげる。

この間まで溫泉工事に參加してたみたいだけど、今回は頑張ってもらおう。

あとは村の防衛だけど、虹ぃにょと冒険者チーム、そしてハンターさんに任せよう。

村長さん、早く帰ってきてほしい。

「魔様ぁああ、村の防衛は任せてください!」

「攻めてきたら返り討ちにしてやりますわぁああ!」

村人たちからも頼りがいのある言葉が返ってきた。

よぉし、このメンバーで乗りこむよっ!

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「戦力が結構、欠けてるけど大丈夫なの?」

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