《反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士〜心優しき悪役皇様のために蘇り、人生難易度ベリーハードな帝國ルートで覇道を歩む彼を幸せにする!〜【書籍化&コミカライズ決定!】》【117話】最悪の予

「……はぁ。魔道が機能しないわ」

他部隊との連絡のために使っていた魔道が突如として使いにならなくなった。

ペトラは手に持った魔道を軽く振り、再び耳に當てるが顔は優れない。

「使い方間違ってんじゃないのか?」

「そんなわけないでしょ……ほらやっぱり、いてない。故障かしら?」

「けどよ。その魔道結構新しめなやつだよな?」

「ええ、ほんの數週間前から実用されてる最先端の魔道よ。従來の通信用魔道に改良を重ねて、簡単には壊れない。かつ、音質の向上もしている優れね」

「の、割にすぐ壊れたな」

「不思議よね……」

「不思議だな」

魔道の故障……それは特段不思議なことではない。

どのような道にも壽命はある。

不良品であったために予定より早く壊れてしまうものだってある。

しかしながら、その魔道は確認したところそんな簡単に壊れる代ではなかった。

加えて、外部に損傷も見えない。

よく磨かれた新品そのもの。

「なあ、アル。魔道の修理とかってやれたりしないのか?」

ペトラが魔道を振り回している橫で、スティアーノはそんな無茶振りをしてくる。

「無理だな。戦闘面はそこそこやれる自信があるが、俺は何でもできる萬能屋じゃない。の修理は専門外だ」

「この魔道の製作は、特設新鋭軍の開発部門が総力を結集させて作り上げた傑作。そこらの技者にだって修理は難しいわよ」

どうやら完全新作のようだ。

ならば、尚更俺たちにはどうすることもできない。

「んじゃ、どうする?」

「一度戻って、別働隊との合流をした方がいいだろうな。通信手段が無くなった以上、闇雲に進み続けるのはリスクが高い」

「アルがそう言うなら……戻った方がいいのかもな」

俺たちとは別にいているペトラの部隊は來た道を戻った先で探索を続けている。

魔道の余剰分がそちらにあるはずだから、それをけ取り再びここに來る。

それが現時點での最善策だ。

「確かに、連絡手段がないまま進むのは危険だものね」

「そういうことだ」

踵を返し、引き返そうとした時。

地面が大きく揺れた。

「────!」

「きゃっ、何?」

「なんだよ、これ? ……地震?」

揺れはすぐに収まった。

しかし、不可解なことに変わりはない。

ヴァルカン帝國の地盤は大陸の中でも特にいことで有名だ。

加えて、この付近では地震は數十年以上起こったという事例は聞いたことがない。

──それに、揺れ方が普通の地震とはほんのしだけ違うような気がした。

これは単なる地震ではない。

「スティアーノ、ペトラ、今すぐ元來た道を引き返せ」

俺はこの揺れを知っている。

ディルスト地方での激戦の最中にこれと同様の揺れをじたことがある。

そう、あの白蛇が出現した時と同じ揺れ方だ。

「ちょっと、どういうことか説明しなさいよ!」

「殘してきた兵たちが危ない。付近に強敵が潛んでいるかもしれない!」

「強敵?」

「……ああ、そいつは人を丸呑みにするくらいに大きく、レシュフェルト王國、ひいてはスヴェル教団と繋がっている可能も高い」

過去に対峙した怪が地下水道の中を徘徊していると考えると、恐ろしくて堪らない。

あの一戦において、俺は確かに白蛇を窮地に追い込んだ。

生と死の狹間にあの怪を立たせることが出來たのだ。

だが俺は、それ以上踏み込むことをしなかった。

白蛇の死を──終わりを確立させなかった。

リスクとリターン。

その両方を考えた時、己に降りかかる不利益が大きいから……そう思い込むことで、やつを見逃した。

だが、そんな上辺だけの理屈に意味などない。

此度の戦い。

もしも白蛇と再度ぶつかり合っても、俺はあの白蛇を殺すことは出來ないかもしれない。実力が伴っていないとか、そんな単純な理由ではない。

説明の難しい何かが、頑なに白蛇を殺そうとする俺の意思を封じ込めてくるのだ。

それに立地も悪い。

──もしこの狹い地下水道で接敵したら、き回らない分勝てる確率は下がる。

「……二人はすぐに引き返して、兵たちを集めて地下水道から出してくれ。別働隊にも連絡を通すんだ」

「おい待てよ。アル、お前はどうするんだよ!」

「俺は……」

仲間の死が頭に浮かぶ。

白蛇に無慈悲に食い散らかされる景が、生々しい鮮が地下水道の壁中にべったりとぶち撒けられる。

そんな悲劇を起こしてなるものか。

「俺は前に進む。別に何もなければいい。だが……もしもあの怪がこの場所に來ているのなら、俺にはやつを止める責任がある」

殺せる確証はない。

それでも立ち向かうのなら、俺以外に適任者がいないのも事実。

ペトラとスティアーノは特設新鋭軍の中でも実力はかなり上位の部分にるが、リーノスがあの白蛇に太刀打ち出來ずに終わった景が頭に殘っている。

この二人でも、かなり厳しいはずだ。

「アル、それ本気で言ってんのか?」

「ああ」

「一人で勝てる相手なのか?」

「……分からない」

「なら、俺たちも……!」

「それでも、二人には戻ってしい」

この場所にあの白蛇が出現した場合、単獨でこの場所に赴いているということは考えられない。

スヴェル教団、あるいはレシュフェルト王國の者が手を引いているはずだ。

大群を相手にするなら、兵たちをかすことのできる優秀な指揮が必要だ。

そしてそれは俺じゃない。

ペトラやスティアーノ。

彼らは特設新鋭軍での戦闘訓練を積み、軍の指揮に関しては相當上達している。

一見すれば、白蛇が最大の脅威に思えるが、その他有象無象の敵が出現した場合、そちらの対処も疎かにしてはならない。

「頼む。もし不穏な存在がいているのだとしたら、二人にその対処をしてもらいたい」

「アル……」

「それが最善だ。この國を害する者たちに対抗するには、なるべく早急な対応が必要なんだ」

スティアーノは引き下がる様子を見せない。

けれども、ペトラはスティアーノの肩を強く摑む。

「スティアーノ、行くわよ」

「いや、行くって……アルに一人で行かせる気かよ?」

「そうよ。その通りよ」

「なんで……!」

「それがアルディアの選択だからよ。私たちはその実力をちゃんと知っている。スティアーノ、アンタにも分かるでしょ?」

スティアーノは下を向き、強く拳を握り締めた。

それが俺を心配してくれてのことだとよく伝わってくる。

こいつはそういう男だ。

誰々が強いとか、弱いとか、そういう単純な理屈で関わる人への対応を変えることがない。常に仲間のを案じることが出來て、誰かのために戦える。

──そして、場合によっては誰かのために死ぬことも厭わない。

それくらいスティアーノは俺には勿ないくらいに良い男なのだ。

「アルディア。時間がないんじゃないの?」

ペトラはこちらを睨むように視線を送ってくる。

「ああ、そうだな」

「じゃあ行きなさい。私はスティアーノを連れて戻るから」

ペトラは嫌がるスティアーノの首っこを摑み、引っ張りながら暗がりへと消えてゆく。

「おい、ペトラ!」

「抵抗するな!」

「あだっ……蹴ることないだろ」

「アンタがうるさいからよ。大人しく戻るわよ」

は彼で仲間想いだ。

俺の実力を買ってくれている。

ペトラもここで俺だけを前に進ませるということには、あまり納得してはないのだと思う。それでも、ここで行かせてくれるのは、俺のことを信じてくれているからだと思う。

「悪いな、二人とも……」

ペトラ、スティアーノの姿が見えなくなるまで俺は、二人が戻って行くのを眺め、それから空気の重い前方へと向き直った。

『書籍版もよろしくお願い致します!』

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