《【書籍化】世界で唯一の魔法使いは、宮廷錬金師として幸せになります ※本當の力はです!》チョコレートマーケット(後編)
本日(2/24)書籍2巻の発売日です!
あとがきで書影を公開していますので、見てください〜!
とってもかわいいです!
次にレイナルド様が案してくださったのは、ホットチョコレートのお店だった。チョコレートの屋がかわいい屋臺を前に、教えてくださる。
「ここのホットチョコレートはいろんなアレンジがあって珍しいんだ。フィーネはどれにする?」
「わぁ……!」
メニューには様々な種類のホットチョコレートがのっていた。
マシュマロとチョコレートソースがけや、ホイップクリームとマーマレードジャムのせ。ホットチョコレート自にイチゴの果を混ぜてあるもの、お酒を選んで足せるメニュまであって、迷ってしまう。
「俺はビターチョコレートのシンプルなホットチョコレートにしようかな」
「すごく迷いますが……では、私はマシュマロのせにします……!」
注文すると、店員さんがなめらかなホットチョコレートがった大鍋からドリンクカップに注いでくれる。ふわりと漂ってくる芳醇な香りで幸せな気持ちになります……!
店員さんがトッピングをしてくれている間、レイナルド様は私の耳にを寄せ、こっそり教えてくれた。
「実は俺、あの大鍋のホットチョコレートの中に串に刺したイチゴやマシュマロをくぐらせて食べたいと思ったことがあるよ。子どものころだけど」
「ま、まさか、レイナルド様がそんなことをお考えに!?」
「もちろんやったことはないけどね」
「でも……とても楽しそうな案ですね」
距離にしドキドキしたけれど、悪戯っぽい笑みを浮かべるレイナルド様につられてつい笑ってしまう。
私はアカデミーへ學した後のレイナルド様しか知らない。屋臺の大鍋のホットチョコレートにお菓子をつけて食べたいだなんて、きっと本當に小さな頃の話なのだろう。
これまで知らなかったレイナルド様の一面に、くすぐったい気持ちになる。
そんなことを考えているうちにホットチョコレートができたみたい。人懐っこい笑顔の店員さんがカップをふたつ渡してくれた。
「できたよ。熱いから気をつけな」
「ありがとうございます」
さっそくできたてのホットチョコレートを二人で飲んでみる。ごくり。
わあ。濃厚な甘さがの隅々を満たしてあたたまります……!
寒さなんてどこかへいってしまいそうなおいしさにほっこりした私は、すっかり油斷してふにゃっと微笑んだ。
「レイナルド様、あたたまりますね」
「うん。あれ……フィーネ、口の端にマシュマロがついてる」
「!? お見苦しいところをお見せして申し訳ありません。今拭きます」
「もうし右かな。ううん、もっと下」
「とれましたか……?」
「ううん、まだ」
あわててハンカチで拭こうとしたけれど、なかなか取れなくて焦ってしまう。困ったようにこちらを眺めていたレイナルド様は、遠慮がちに私のの端へと指をばした。
「……ここ」
「!?」
の端と頬の、ぎりぎりの境目。一瞬だけ自分のものではない熱がふれた。
マシュマロのカケラをレイナルド様が自分の指で拭ってくださったのだ。そのことに気がついて心臓が跳ねる。
「仲がいいねえ」
「!?」
と同時に、屋臺の店員さんに冷やかすような言葉をかけられて私は目を丸くした。
「こっ、これで指を拭いてください!」
慌ててレイナルド様にハンカチを差し出し、マシュマロがついた指を拭いてもらう。自分の顔が赤くなっているのがわかって、レイナルド様と目が合わせられません……!
それをレイナルド様もわかってくださっているようだった。申し訳なさそうに告げてくる。
「……ごめん」
「い、いいいえ、あの、ありがとうございます。今のは、私が悪いんです」
なんだか不思議な張。すごく楽しいはずなのに、次の言葉が出てこない。
そのまま無言でホットチョコレートを飲み終わると、レイナルド様が「これ返してくるね」と言って私の手からカップをもっていってくださった。
アトリエで私を甘やかしてくださるのと同じ後ろ姿にホッとしたけれど、でも、まだ顔が熱い。
私たちはそのままチョコレートマーケットで一日を楽しんだ。
ホットチョコレートを飲んだときのドキドキした空気はすぐに消えて、お菓子を食べたり、特別なオブジェや音楽のパレードを見たりして過ごしたのだった。
楽しかった一日が終わると空は薄暗くなっていた。チョコレートマーケットにはとりどりの明かりが燈りはじめ、次第に幻想的な景に変わっていく。
「とっても綺麗ですね」
「ああ」
帰りの馬車を待つ間、イルミネーションをぼうっと見つめていると、レイナルド様がふと仰った。
「……今日はいろいろなチョコレートを食べたけど、昨日のフィーネのチョコレートが一番おいしかったかな」
「……!?」
ちょっと待っていただけますか。
私はレイナルド様の顔を凝視したまま固まった。そして、レイナルド様の言葉を頭の中で繰り返す。
フィーネのチョコレートが一番おいしかった……
フィーネのチョコレートが一番おいしかった……。
フィーネの、って私のチョコレート……?
つまり、レイナルド様は私が研究用に殘しておいた炭(・)を召し上がったということ……!?
やっと狀況を把握して青くなった私に、レイナルド様はキラッキラの微笑みを向けてくる。
「昨日、夕方にクライドと一緒にアトリエへ行ったんだ。そうしたら、ガラスドームの中にチョコレートがあったんだ」
ガトーショコラが焦げてんだ結果できた炭を、レイナルド様は燃料ではなくチョコレートだと認識してくださったようです。
「まさか、それを?」
「食べたよ。おいしかった」
「!?!?」
「すごいね。一人でお菓子を作ろうとするなんて。クライドも喜んで食べたよ。コーヒーに合うねって言いながら」
「……!?」
コーヒーに合うとかいう次元ではないと思います!
レイナルド様もクライド様もお優しい方。きっと、私が作ったから一生懸命食べてくださった気がする。こんなことになるのなら、研究用にとっておいたりせずに処分すればよかったです……!
まさかあれを召し上がっただなんて。申し訳なさで消えてしまいたい。
けれどなんとか気持ちを切り替えた私は、こぶしを握りレイナルド様に向き直る。
「レイナルド様、今度リベンジをさせてくださいますか?」
「いいけど、何の?」
「チョコレートの日の、です! 今日いろいろおいしいものを食べて學びましたから……!」
思わず聲のボリュームを上げれば、レイナルド様はびっくりするほど穏やかに微笑んでくださった。
「またフィーネが俺のためにチョコレートを作ってくれるんだ? 楽しみだな」
「!」
その言葉は、社辭令やお世辭だとは到底思えなくて。
チョコレートみたいな甘いまなざしに、さっきホットチョコレートを飲んだときのやり取りを思い出してしまった私は、また赤くなったのだった。
おしまい
お読みいただきありがとうございます。
本日、MFブックスさまより書籍2巻が発売になりました!
2巻のカバーもすごくかわいいので見てください……!
公式サイトから試し読みや購ができます!
https://mfbooks.jp/product/kyutei/322209001579.html
ぜひ書籍の応援をよろしくお願いします〜!
【書籍化】誤解された『身代わりの魔女』は、國王から最初の戀と最後の戀を捧げられる
【書籍化準備中】 秘密だけれど、ルピアは世界でただ一人の魔女だ。『相手の怪我や病気をその身に引き受ける』魔法が使える。そんな彼女は、初戀相手であるフェリクス王と結婚することになった。 彼のことを一途に思うルピアに、フェリクス王も魅かれるけれど……誤解から、彼女が裏切ったと考えて冷たく當たってしまう。 ルピアはそんな彼の命を救い、身代わりとなって深い眠りについた。 「……ルピア。君が私への思いを忘れても、私はずっと君を愛するし、必ず君を取り戻すから」 夫のことが大好きな妻と、妻のことがもっと大好きな夫の話。 あるいは、長い片思いで息も絶え絶えになった夫が、これでもかと妻を溺愛する話。
8 193こんなの望んでない!
仲違いしている谷中香織と中谷翔。香織は極度の腐女子でその中でも聲優syoの出ている作品が大好きだった。そのsyoは皆さんご察しの通り中谷であり中谷はこれを死んでもバレたくないのである。
8 133學生騎士と戀物語《パンドラボックス》
入學式とゆう大事な日に堂々と居眠りをしたり、授業を真面目に受けないこの物語の主人公 月影亜紀斗(つきかげあきと) ただ力を求めるだけの少女 月野蛍(つきのほたる) 彼のいる世界は自分の持つ固有スキルが強いほど権力があり、弱い者は権力がない。全てが力で決まる世界。 そんな世界で二人が起こす物語とは⁉︎青春ドタバタSFコメディー
8 185転生して帰って來た俺は 異世界で得た力を使って復讐する
*この作品は、8~9割は殘酷な描寫となります。苦手な方はご注意ください。 學生時代は酷い虐めに遭い、それが影響して大學に通えなくなってからは家族と揉めて絶縁を叩きつけられて獨りに。就職先はどれも劣悪な労働環境ばかりで、ブラック上司とそいつに迎合した同僚どもにいびられた挙句クビになった俺...杉山友聖(すぎやまゆうせい)は、何もかも嫌になって全て投げ捨てて無職の引きこもりになって......孤獨死して現実と本當の意味でお別れした...。 ――と思ったら異世界転生してしまい、俺に勇者としての素質があることに気付いた國王たちから魔王を討伐しろと命令されてしぶしぶ魔族たちと戦った末に魔王を討伐して異世界を平和にした。だがその後の王國側は俺は用済みだと冷たく言い放って追放して僅かな褒賞しか與えなかった。 だから俺は―――全てを壊して、殺して、滅ぼすことにした...! これは、転生して勇者となって最終的にチート級の強さを得た元無職の引きこもり兼元勇者による、全てへの復讐物語。 カクヨムにも同作品連載中 https://kakuyomu.jp エピソードタイトルに★マークがついてるのは、その回が過激な復讐描寫であることを表しています。
8 82加護とスキルでチートな異世界生活
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が學校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脫字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません 2018/11/8(木)から投稿を始めました。
8 126ダーティ・スー ~物語(せかい)を股にかける敵役~
ダーティ・スーとは、あらゆる異世界を股にかける汚れ役専門の転生者である。 彼は、様々な異世界に住まう主に素性の明るくない輩より依頼を受け、 一般的な物語であれば主人公になっているであろう者達の前に立ちはだかる。 政治は土足で蹴飛ばす。 説教は笑顔で聞き流す。 料理は全て食い盡くす。 転生悪役令嬢には悪魔のささやきを。 邪竜には首輪を。 復讐の元勇者には嫌がらせを。 今日も今日とて、ダーティ・スーは戦う。 彼ら“主人公”達の正義を検証する為に。
8 93