《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》優しい逸話なんて欠片もないよ

兵衛の戦いを唖然とみている者がいた。

【永遠の火】を創り出したヘスティア本人である。

「な、なんですか。あの事象は! 時間に干渉していますよ!」

ヘスティアが首を振る。いくらプロメテウスの火とはいえ、そんなことは不可能なはずだった。

ハデスはさして驚きはしていない。

「ネメシス星系における超AIの定義。演算による空間干渉機能が備わっているAIといえるな。ゼウスや私、そしてプロメテウスならば僅かながら時間への干渉も可能だ」

「しかしあれはシルエットですよ? いくらフェンネルOSが超AIの量産型とはいえ……」

「何事も例外はあるものだよ。なあ。アシア?」

「そうね」

意味ありげなハデスに素っ気なく応じるアシア。

「パイロットは相當な修羅場をくぐり抜いたのだろう。あの潛在能力は人とフェンネルが為した、一種の到達點ともいえるな」

ハデスは微笑む。通常のパイロットでは不可能な蕓當だ。

「大した人間だ。アシアの願い。本來はウーティスの復號時間を與えるもの。それがどうだ。アナザーレベル・シルエットの右腕部まで無力化させ、大いに減速した。フリギアのアテナが學習する時間まで稼いだのだ」

「ヒョウエもバルトも私の願いを聞いてくれた。あとはコウに託すのみ」

アシアは険しい表で、虛空を睨んでいる。

吹き飛ばされたバルトと兵衛はMCSの保護機能で生きているだろう。本來の機能は宇宙空間用出カプセル。リアクターが破壊されても一ヶ月は生存可能だ。

「フリギアは制中樞から手を離せば処理能力は大きく劣る。生まれたばかりの超AIで何ができるか」

「コウが【永遠の火】を使えないなら、どうやってアレクサンドロスⅠとカラヌスを退けるかな。五番機にも私がいるけど、混しているよ。早くフリギアをブリタニオンへ転送すればいいのに……」

フリギアがなかなか五番機の後部座席から離れない。そのせいでアシアが焦れている様子だ。

「アテナもまた計略の神。カラヌス対処を考えているかもな」

「現行技では無理よ。たとえ【プロメテウスの火】でもね」

ヘスティアは楽観できない。アナザーレベル・シルエットは現ネメシス星系で達人二人がかりでも遠く及ばない強大な敵。神のだだ。

できることは関節の隙間に刃を差し込む程度。それさえも神業ゆえに為した奇蹟。

「私と五番機もリンクしているけど、今はまだフリギアの狙いがわからないの」

「ろくなことを考えていないはずだ。フリギアの中はアテナだぞ」

「いえてる」

星開拓時代のアテナを思い出し、同時にため息をつくハデスとヘスティアだった。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「くどいようですが改めて確認です。カラヌスを撃破する方法はあるんです。代償は伴いますが」

フリギアがコウに切り出した。

「どんな方法なんだ?」

「ゴルディアスの中樞を私が開きます。あなたが乗り込み、アレクサンドロス三世の概念を持つことです。――ただしその場合、私はディオニソスの祖母でもある神レアの概念、マグナ・マーテルに引っ張られてしまい、キュベレーたるフリギアに寄ります」

「そんな手段は取らない」

「ですよね。このゴルディアス制中樞に私が取り込まれると上書きされてキュベレーになります。ご注意を」

「なんだと。なんとかしないとな……」

「では手持ちにあるカードを用いて手段を実行しましょうアシア。そろそろ私、貓被るのやめてもいいですか?」

『いいよ。ムズムズするから素でいきましょ、フリギア。貴方はそんなおしとやかな格ではないでしょ』

「え?」

なんのことかわからないコウが二人の顔を互に見る。

「心外です。毒舌ですねアシア。――さあ。コウ。本気でいきますね。あのバルバロイを始末しないと、私の気がすみませんから!」

「あ、ああ」

雰囲気が一変したフリギアのアテナに困を隠せないコウ。

冷たい視線の先にはカラヌスがいる。

はとても勝ち気なようだ。バルバロイに対する敵意を隠そうともしない。

「アシアと私をこんな目に遭わせるなんて許せません。ぶっ殺します」

「アシア。アテナとは…… 怖い神なのか?」

守護を権能とする神というイメージしかなかったコウが、フリギアの変貌に絶句し、アシアに問いかけた。

『ギリシャ神話勉強し直したほうがいいコウ。アテナに優しい逸話なんて欠片もないよ』

「え? 意外と優しいよ? 私のモチーフ!」

心外とばかりに驚くフリギア。

「そういうことにしときましょうか。あなたの企みはなに?」

取り合わないアシア。いささか冷ややかだ

「やっぱりアシアに毒がある…… これもヘルメスやバルバロイのせいですね。やっぱりぶち殺そう!」

ぶつぶつと騒なことを五番機の後部座席で呟いているフリギア。

どっちにしろ騒な神だったのではないかと騙された気分になるコウだが、ポーカーフェイスを貫くことにした。

「おっといけない。――企みもなにも。敵が星開拓時代のなら、より星開拓時代のをぶつけたらよくない? ガワがないだけで戦(・)車(・)でしょう? 私なら制できるますよ!」

フリギアはモニタ越しに、ゴルディアス制中樞を指し示した。

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!

優しい逸話がないと斷言されたアテナですが、ゼウスよりはあります。比較対象が悪い?

オデュッセウスは本人どころか息子まで手助けしていますので、お気にりの人間には加護を與えまくる質ですね。

敵対した者や気にらない者は化けに変えたり発狂させたりとやりたい放題。ハデスたちが「あのアテナだ」という理由は星開拓時代の超AIアテナもまた同様に々やらかしてそうですね。

アシアの「欠片もない」とはさすがに言い過ぎですw

超AI定義の明言は初出かも? 演算によって(時)空間干渉が超AIの定義の一つです。星管理AIもそうですが、気候など干渉できなければ管理できませんしね。

アストライアが元超AI、端末に過ぎないというのは空間干渉能力を喪失しているからです。

ヘスティアはアストライア程度の処理能力に落ちていますが超AIの機能は殘っているのでプロメテウスを召喚したりビジョンがより高度です。

時間干渉は四柱。ゼウス、ハデス、ポセイドン、プロメテウス。とはいっても歴史の流れを変えるほどはどの超AIも有していません。有していたなら原初の超AIソピアーたちが地球を改変しているはずです。

機能なので処理能力の高さも影響しますが、「機能が備わっているかどうか」です。

オケアノスもありませんし、ヘルメスの大目標の一つはこの能力を手にれるためです。

オデュッセウスには優しいアテナ? 兄弟には容赦ない! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。

大変勵みになります! 気軽に想等もお待ちしております!

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