《反逆者として王國で処刑された隠れ最強騎士〜心優しき悪役皇様のために蘇り、人生難易度ベリーハードな帝國ルートで覇道を歩む彼を幸せにする!〜【書籍化&コミカライズ決定!】》【119話】強さの正
「何を言われようとも、こちらの選択を変える気はない」
敗北は許されない。
専屬騎士として、ヴァルトルーネ皇の顔に泥を塗ることにならないように常勝を続ける。
この男が何を考えているかは知らないが、彼の邪魔になるものならば、全て破壊し盡くしてやる。
「仕切り直しだ」
「……お好きにどうぞ」
多くを語る必要はない。
互いの主張が食い違い、譲れない何かがあるのならどうすればいいのかは簡単だ。
──勝者となって、己の主張を通せばいい。
幸い、目の前に立ちはだかる強敵は一人だけ。
外部からの介は恐らくほぼない。
向こうのスタンスが俺と似ていて、仲間を巻き込まないようにという意識が殘されている以上、実質的に一騎討ちにて勝敗が決する。
「悪いがここで死んでもらうぞ」
「死ぬ気はないよ。目的を達するまではね」
地下水道はあまり広くない。
回り込むということは出來ず、真正面から斬り込む以外の戦法は取れない。だから素直に正面から剣を構えて、そのまま突撃する。
向こうも迎え撃つようにこちらとの距離を詰めてくる。
怒濤の撃の音が地下水道に響く。
ただ剣をえ、互いの死力を盡くすのみ。
斷言しよう。
目の前のヴィーという男は間違いなく俺が戦ってきた敵の中でも、最強クラスだと思う。
きは常軌を逸したように素早くに富んでいる。
懐は広く開いているように見えるが、実際には隙などはなく、こちらをいけるための立ち回りでしかない。
幾重にも張られた罠が相手をわすように存在している。
「チッ……!」
──だから、決定打となる攻撃が中々通らない。
「どうした? まだまだ俺は余裕だぜ?」
「ほざけ……貴様を必ず殺してやる……!」
「本が出たな。専屬騎士」
足捌きにチラリと視線を向けると、やはり練のきであることが分かる。
戦い慣れている者でなければ、こうも軽快にかつ、迷いなく踏み込み、展開の早い攻撃を繰り出せることは不可能である。
組み伏せてでもその首を弾き落としてやりたい。
それくらいに弱點という弱點が見當たらないのだ。こちらのきに合わせて、同じようにいてくる。
速度を変化させ、タイミングをズラそうと畫策しても難なく適応してくるのが腹立たしい。
だからだろうか。
殺意が抑えきれない。
目の前に立ち塞がる邪魔者を中々排除できない自分への苛立ちが最高に達した時──ヴィーの周囲に纏わりついている嫌な気配をじ取った。
──ああ。そういうことか。
俺は一気にヴィーとの距離を詰めて一閃。
「────っ! コイツ、急に速いッ!?」
やっぱり。
ヴィーは急激な速度変化を的確に認識している。
俺が攻めるタイミングと引くタイミングを完璧に見抜いていた。
──普通なら、あり得ないことだ。
剣撃の速度を上げる。
ヴィーは俺の攻撃を必死の形相でけ流す。
一撃たりとも當たらないが、俺はその時點で確信した。
──コイツ。魔で俺のきを先読みしているな。
「はぁっ!」
「ぐっ……!」
渾の橫薙ぎで、ヴィーを吹き飛ばす。
彼はよろけながら、後方へと後退りし、息を荒げる。
「なんだよ……さっきまでは明らかにこっちが優勢だったのに」
余裕があるように見せかけているが、ヴィーは明らかに激しく消耗している。
──確かにコイツは強敵だが、勝てない相手じゃない。
周囲に張り巡らされた魔の痕跡。
そしてヴィーの疲れたような顔。
きの予測だけじゃない。
圧倒的な力強さも。
なきも。
一瞬のうちに起こる発的な敏捷力も。
──これら全てが、魔によって付與された偽の力。
そしてこの付近一帯に漂う不愉快な魔力の流れ。
俺の覚を狂わせて、ヴィーに致命的な一撃がらないようにする妨害魔。
これが彼の強さのカラクリ。
魔によって、自の全てのステータスを大幅に引き上げ、自分有利なフィールドで、俺を翻弄する。
──魔師の魔力が盡きるまで、俺はヴィー有利のフィールドで戦うことを強いられるということか。
でも。それさえ見破れれば、十分だ。
「お前は俺を圧倒し、自分がこの場を支配しているような気分に浸っているようだが……小賢しい細工をいくら張り巡らしたところで、俺は倒せないぞ?」
「──マジ、かよ。もう見破ったのか」
「何度も殺せる機會はあった。でもそのチャンスはことごとく潰された。きにフェイクをれた時も同様だ。だからこそ確信できた。お前は魔師の力を借りているから、俺と渡り合えているのだと」
あの時ペトラが持っていた魔道の故障も、ヴィーの仲間の魔師が展開した妨害魔が原因だろう。
この付近にはヴィー含め傭兵団の人間が戦いやすい空気が流れている。
「さっすが専屬騎士……強いだけじゃなくて聡明でもあると」
「まだ余裕そうだな」
「ああ。何故なら俺が有利な狀況は変わらないからな。俺たちの戦闘を補助してくれている魔は數時間は消えない。お前はこの空間にいる限り、俺には勝てないってことさ」
──まあ。そんなのどうでもいいがな。
魔師の力を借りて、俺と渡り合うヴィー。
だが大いなる力には必ず代償が発生する。
「…………はぁ……やっべ」
ヴィーは鼻元を抑え、ほんのしだけフラつく。
「魔による強化。戦闘時に使えば敵を圧倒できて、確かに有用だが……長時間強制的に能力を引き上げ続けたらどうなるか知っているか?」
そう告げた瞬間、ヴィーから余裕そうな雰囲気が消え失せた。
「…………」
「貴様はあと……何分戦えるんだろうな?」
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