「ヘスティア。フリギアから伝言があるの」

広場にいるアシアが、ヘスティアに聲をかける。

「なにかしら？」

「博館の星開拓時代の宇宙戦闘機を広場中央に出準備してしいと」

「博館？　ああ置ね。別に構わないけど、ソピアーの技封印でかないガラクタよ？」

「うん。それでもいいって。ブリタニオンのウィスとエネルギーで出できるようにしてしいって」

「すぐに準備できるわ」

「かせたらアナザーレベル・シルエットの対処も楽になるだけどね」

「どんな戦闘機でもあれほどの戦闘力はないさ。數を揃える必要がある。そしてそうなった場合、こいつを保有している勢力が無雙するだけだ」

「兵開発は矛と盾の競爭だからね。そんなことはおそらく――フリギアのアテナが一番知っているはず」

「設計はヘラやヘパイトスが得意だったな。フェンネルの兵裝制はアテナの権能を引き継いでいる。アテナの真価は兵運用だ」

「準備できたわ」

闘技場跡に巨大な針のような戦闘機が姿を見せる。

「これまた懐かしいものを」

ハデスが目を細めて戦闘機を眺める。

針のような形狀はレーザーや荷電粒子砲対策だ。実弾も弾ける。裝甲はアナザーレベル・シルエットと同様に強固だ。

「出タイミングはフリギアから？」

「ええ。私経由で伝えるわ。――出はしない可能が高いけれど」

「そういうことね。りょーかい」

「質問はないの？」

「フリギアのアテナがやることでしょ。どっちにしろアレクサンドロスⅠは悲慘な運命しか待っていないに違いないわ」

「そうだな」

二人のアテナに対する信頼は盤石なようだった。

◆　◆　◆　◆　◆

「邪魔者は二人始末した。殘りはゴルディアスに張り付いている一機のみ」

バルバロイⅠは加速力を上げて、ゴルディアスの制中樞を追う。

「は？」

バルバロイゆえに反応が遅れた。ＭＣＳは彼に力を貸さない。

カラヌスの間近に、ゴルディアスの制中樞が迫っていた。

想像を絶する衝撃。アナザーレベル・シルエットに搭載されているＭＣＳですら衝撃を殺しきれない。

「制中樞が何故？　押し返す！」

カラヌスが制中樞を押し返そうとするが、加速がついた制中樞は止まらない。

相當な速度と推力を持っていた。

「押しているシルエットは現行のものに過ぎない。加速がついた程度ではこんな力など出せるはずがない！」

バルバロイⅠはカラヌスに分析を急がせる。

「制中樞の制が……　あのシルエットに委譲されている？　なぜだ！　あのシルエットのウィスもゴルディアス並みということか！」

不可解なことが起きていた。

ゴルディアスの制中樞は敵シルエットにあり、その膨大なエネルギーを推力に変えてカラヌスを押し続けている。

カラヌスの加速が落ちていたことも仇となった。結果的には二機のシルエットにしてやられたのだ。

「このままでは……　ブリタニオンにカラヌスを叩き付ける気か？」

意図を見抜いて絶するカラヌス。手加減などしていられない。出せる推力を全開にして、制中樞を押しとどめようとする。

「今頃気付いたか間抜け！　アレスのように挽き潰してくれる！　やっちゃえコウ！」

「お、おう」

人が変わったかのようなフリギアに若干引いているコウ。アレスとは確かアテナの兄の名ではなかったかと疑問に持つ。

「戦車の縦になら自信があるの！　ゴルディアスの制は私に任せて」

「頼もしい。しかし……　ゴルディアスの力を借りても、ブリタニオンまでには厳しい」

無限の電力と膨大なウィスがあるといえど、スラスターは現行技。出力にも限界がある。

「そんなもの使えなくても問題ありませんからね。合図したら、さっき教えたあれ(・・)をやって！」

「わかった！」

徐々に減速する制中樞。もうじき押し戻されるだろう。

「やっちゃえ！」

フリギアがい顔に見合わぬ冷徹な目でカラヌスを見據える。獲を狙う猛禽類を思わせるものだ。

「――【機制の火(メカニズム・ファイア)】

コウが宣言する。

五番機の機が蒼白く輝き始める。

カラヌスの全開出力にさえ匹敵する推力をもって、ゴルディアスの制中樞を押し続ける五番機だった。

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戦神アレスは扱いが意外と酷く、勝利の擬人化の割りに敗北も多い戦神です。ローマ神話のマルスは理想の青年であんなに立派なのに！

スパルタでは「勝利が逃げないよう」「アレスの心臓を鎖で縛っていた」と言われています。勝利の擬神化とは一……

日本語Wikipediaのマルスの項目から引用です。「しかし、疫病神のように思われて全く良い神話のないアレースに対し～」疫病神！

アレスの語源は「破滅」とか「呪い」だそうです。

新たな火【機制の火】。フリギアが勝利の神たる所以。

その意味と機能、そして対カラヌス戦は遂に佳境へ！　次回、お待ちください！

アレスは神話初の裁判被告！　アレスはアフロディーテと浮気してヘパイトスに吊される！　続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。

大変勵みになります！　気軽に想等もお待ちしております！