《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》21話 深く靜かに侵攻せよのこと
深く靜かに侵攻せよのこと
「・・・正面にいます」
で小さく呟く。
それをけて、背後で金屬音がした。
「オーライ、確認した。避けて通れんなアレは・・・撃つぞ」
「了解」
軽く息を吸い込む音が聞こえ、バスンと消音された銃聲が響く。
「・・・ワンダウンだ」
その言葉通り、路地裏で佇んでいたゾンビの頭が毆られたように揺れた。
仰向けに倒れ込んだゾンビは、もうかない。
「・・・見える範囲にはもういませんね、進みましょう」
「この先も毎回こうだと助かるんだがな。では前を頼むぞ、イチロー」
「アイアイ・・・サー?」
「おいおい、私は君の上ではないよ」
じゃあどう答えればいいんだろう。
そんなことを考えながら、抜いた兜割を片手に持つ。
峰の部分を肩に擔ぎ、俺はゆっくりと路地の暗がりを歩き出した。
俺達の現在位置は、牙島の東地區。
海から上陸してすぐの住宅街だ。
そこら中にゾンビの気配がする。
見える範囲にはいないが、気を引き締めなければ。
何故、こんなことになっているのか。
それは今朝に遡る。
「なあイチロー、デートしないか?」
『防衛隊』を撃退してから數日後、朝っぱらからそんなことをアニーさんが言ってきた。
どうした急に・・・ああ、そういうことか。
「みゃん!?」
俺よりもよほど驚いた朝霞が、盛大にコーヒーを吹き出した。
「ぶえっ・・・みゃんじゃねえよお前・・・」
「あああ!ごめん!ごめんし!」
そしてそれは対面に座っていた俺に思い切りかかったのだった。
ううう・・・ミルクたっぷりだからかベタベタするう・・・
「きれいきれい・・・」
「わぷぷうぷ」
申し訳なさそうに俺の顔を拭く朝霞を、アニーさんはいつものようにニコニコしながら・・・いやニヤニヤしながら見ている。
「え・・・え?」
そして珍しいことに、神崎さんはパンを咥えたまま宇宙の真理にれたような顔で呆けている。
おお・・・背景に大宇宙が見える。
貴重な宇宙ネコ神崎さんだ。
「・・・東地區で、ですか?」
このままでは埒が明かないので、口を出す。
アニーさんはそれを聞いて面白くなさそうな顔をした。
なんだその顔。
イタズラに失敗した子供か何か?
「・・・なんだ、こういう所は気が回るなあ、イチロー」
開口一番にディスるのやめてくれませんか。
「普通に考えて、アニーさんみたいな人さんにいきなりデートを提案されるほどモテ男ではないんでねえ、俺」
「ちょちょちょい!にいちゃんはモテ男だし!あーし限定の!!」
朝霞が茶々をれてくるが、黙殺する。
お前限定のモテ男ってなんだと問い詰めたいが、黙殺する。
「ふふふ・・・さあ?それはどうかな?需要は意外とあるかもしれんぞ・・・なあ、リン」
「ふえぇっ!?あ、あの、あのう・・・そのう・・・」
水を向けられた神崎さんは目を白黒させている。
答えにくい質問を剛速球で投げるんじゃないの!
困ってるでしょ神崎さんが!!
「えーと、話を戻しますけど・・・東地區?東集落?の探索でいいんですよね?」
表記ゆれがひどい。
面倒臭いから東地區で統一しておこう。
「ああ、そうだよイチロー・・・キミの傷からの出も止まったし、ここらで部品集めを再開しようと思ってな」
「そりゃあいいですけど・・・現狀船があってもミサイルが降ってきますよ?」
漁船という足があっても、逃げようとしたらミサイルが飛んでくる。
あいにく俺は某大泥棒3代目の仲間である凄腕ガンマンではないので、飛んでくるミサイルを狙撃なんてできない。
漁船に対空機銃でも付いてれば別だが、もちろんそんなものはない。
「先に船だけでも完させておきたいんだ。準備はいくら早くしても困ることはないし、ミス式部がこちらに合流すれば作戦が始まるからな」
なるほど。
アニーさんは夏休みの宿題を先に終わらせるタイプと見た。
・・・俺?
いっつも最終日に20日分くらい絵日記を偽造していたよ。
意外とバリエーションを考えるのが辛くてな・・・
1回『今日は何もないいい1日だった』を12日間繰り返したら擔任の先生に死ぬほど怒られたなあ・・・
「なるほど、了解です。それじゃあ・・・」
「待って待ってアニーちゃん!あーし!あーしがにいちゃんと一緒に行くゥ!!」
ようやくデートとやらの真相に気付いたらしい朝霞が、ソファーのアニーさんに猛然とにじり寄った。
「まあ落ち著け」
「ぷぇ」
アニーさんは慌てず騒がず、片手で朝霞の頬を挾み摑んできを止めた。
うーむ、素早い。
「そうさせてやりたいのは山々なんだがな・・・東地區はいささか危険が多い。私が行く方がいいだろう、と思ってな」
「ぷぅうえ」
朝霞が何か言おうとしているが愉快な音しか出ていない。
もちもちの頬っぺただな・・・葵ちゃんといい勝負だ。
「そうですね・・・陸士長にドローンからの映像を見せてもらいましたが、ゾンビの數が多いです。突発的な戦闘に備えるとなると・・・朝霞さんではいささか厳しいかと」
宇宙ネコ狀態から復帰した神崎さんも、アニーさんに賛同している。
東地區は、龍宮への玄関口だ。
今はもう鍛治屋敷ボムで見る影もなさそうだが、竜神大橋との接続部がある。
店や施設も多い・・・ということは、人口も多いということだ。
そして人口が多いとなれば・・・當然、ゾンビも多い。
朝霞の近接格闘技能は、俺の指導でそこらのチンピラには後れを取らないだろう水準になっているが・・・
流石に多數のゾンビとの戦闘に連れて行くのは不安が殘る。
前の西地區と違い、完全に避けて通ることは難しそうだからな。
俺達南雲流がバグっているだけで、ゾンビとの近接戦闘は本來けっこう危険なのだ。
「現狀、船のパーツについての知識を有しているのは私とアサカだけ。そうなれば・・・私が行くしかあるまいよ」
まあ、そうなるわなあ。
「でしたら私がここの防衛を引き継げばいいわけですね。了解しました中・・・アニーさん」
今中尉って言いかけたな神崎さん。
そう呼ぶとアニーさん嫌がるからなあ。
もう辭めたからって。
待てよ・・・ということは今は俺と同じ無職なわけだ、アニーさん。
うーん、なんか親近が湧いてきた。
「というわけで、だ」
ようやくアニーさんの手から解放された朝霞の頭をでる。
「お前は頑張って船の組み立てをしておいてくれ」
「ぴぇ」
不意打ち気味だったからか、変な悲鳴を上げる朝霞に笑う。
「朝霞もねえちゃんも、安心してくれよ・・・神崎さんは俺が知る中で一番信頼できるボディーガードだ。もしも『防衛隊』が攻めてきても全員々にしてくれるさ」
會話に參加せずにニコニコしていたねえちゃんにも伝える。
こと防衛ならば、銃の腕がピカ一な神崎さんは無茶苦茶頼りになるからな。
「た、田中野さん・・・はい!はい!!不肖神崎凜、全力でここを防衛させていただきますっ!!」
なにやらしたように顔を紅させ、神崎さんはビシリと敬禮した。
・・・おかしいな?
俺が神崎さんを信頼してるってのは今までにも何度も伝えてるんだが・・・
そんなにすることだろうか?
「ぶー・・・にいちゃんカンザキサンと仲いいね~」
朝霞が水揚げされたフグみたいに顔を膨らませている。
うーん、パンパンだ。
「そりゃあそうだろう。ゾンビ騒が始まってからこっち、神崎さんには何度も何度も命を救われたし死線も潛り抜けてんだぜ?信頼が違うわ・・・ですよね?神崎さん」
言っている間にちょいと不安になってきた。
仲いいですよね?
相棒ですよね俺達?
「も、もちろんでしゅ!仲良し・・・仲良しです!とっても仲良しですっ!!とってもっ!!!」
よかった。
若干混しているようだが、やはり相棒だぜ。
「・・・むむ~」
安心していると、突如として朝霞が巻き付いてきた。
ウワーッ!?なんだ急に!?
凄い力だ!?
「うぐぐぐ、お前これ本當にどうなってんだよ・・・!!」
「えへへ~」
俺でもかなり力をいれないとほどけないんだぞ、これ!
後藤倫パイセンの関節技に比べればまだまだ甘いが、素人の力じゃねえ・・・!
「はっはっは、まったく・・・退屈しないなあ、ここは」
「いい話風にまとめてないで助けてくれませんかね・・・?」
アニーさんは、心から楽しそうに笑っていた。
畜生・・・なんだそのいい笑顔は!
たすけて!
と、いうわけで賑やかな朝は終わり・・・俺とアニーさんはボートに乗って出発した。
もちろん、東地區にるまでは俺が人力で漕いだ。
『防衛隊』の連中にケチつけられちゃたまんないからな。
アイツら、エンジン付きの船ならこそぎ回収していくらしいし。
『簡単な話さ。ここから逃がさないようにしているんだろう・・・建前上は危険だからと言っているがね』
と、アニーさんは言っていた。
住人が減ると接収できる食料の數が減るから嫌なんだろうか。
みみっちい話である。
そうして道中は何事もなく過ぎ、俺達は東地區の外れにある港に到著。
周囲にゾンビがいないことを確認して、上陸を開始した。
「そういえば、造船所ってどこにあるんです?」
路地の暗がりで、小聲で質問。
周囲にゾンビはいるが・・・聲が屆くほど近くにはいない。
今回はアニーさんが一緒に來てくれるので地図アプリを使っていない。
ここらで確認しておこうか。
「ふむ・・・そうだな、とりあえずそこの家にろうか。ここで語るのは々危険だからな」
戦闘服とマスクにを包み、サイレンサーのついたライフルを持ったアニーさんが振り向いた。
指で示されたのは、普通の一軒家だ。
この路地から、裏口にアクセスできそうだ。
見える範囲に何かゾンビがいるからな。
立ち話は免こうむりたい。
「了解です・・・じゃあ、俺が前に」
「ああ、頼む」
先頭を代わり、スタンバトンを片手に握って裏口の木戸に手をかける。
軽く引くと、抵抗がある。
・・・向こう側から鍵をかけているな。
木戸だから、そんなに強度のあるものではないだろう。
「っふ・・・!」
息を吐き、手に力を込める。
ゆっくりとだが、思い切り。
しばらく引くと、木戸の反対側から木材の軋む音が聞こえてきた。
・・・あまり大きな音を立てるわけにもいかんからな、慎重に慎重に・・・
ばきり、というが手に伝わってきた。
呆気ないほど簡単に木戸は開く。
木戸を軽く引き、慣で開かせる。
目に飛び込んできたのは、そこそこに綺麗な中庭だった。
レンガ造りの花壇と、犬小屋が見える。
「ついているな、住民はいないぞ」
「『元』住人がいるかもしれませんけどね」
かつては整えられていたようだが、今は雑草がかなりびている。
犬小屋の方も、ここ最近そこの主が利用した形跡はない。
・・・ゾンビ騒が始まってからすぐに、ここの持ち主は逃げ出したようだ。
庭に足を踏みれる。
いつでも使えるように、スタンバトンは起狀態だ。
さて、誰かいますかーっと・・・
―――いた。
庭の隅っこに、ぽつんとおばさんゾンビが佇んでいる。
庭仕事をしますよって格好をしているから、大分前にゾンビ化したんだな。
服に痕は無し、にも損傷はない。
一見普通の人間に見えるが、が異様に白い。
これは・・・急にゾンビになったっぽい個だな。
謎蟲・・・マジで訳が分からんな。
「っふ!」
二足目で跳ねる。
流石に接近に気付いたのか、おばさんが勢いよく俺の方へ振り返った。
その見開かれた目は、ゾンビらしく真っ赤だった。
うし、ゾンビ判定!
「ェグ・・・!?」
吠えようとしたそのに、スタンバトンの先端を軽くねじ込む。
同時にトリガーを握り込むと、チチ、と軽い音がした。
おばさんゾンビはびくりと肩を跳ねさせ・・・うつ伏せに地面に倒れ込んだ。
倒れ込んだことによって剝き出しになった延髄に、間髪れずにスタンバトンを突き立て、トリガー。
ゾンビはもう二度とくことはなかった。
素早く周囲を確認。
なくとも庭にはもうゾンビはいないようだ。
「オッケーです」
「鮮やかだな・・・ふふ、まるでのこなしが野獣のようだ」
褒めてるのかどうか微妙にわからん想を言いつつ、ライフルを構えたアニーさんも庭にってくる。
「ガーデニングか・・・今となっては贅沢な趣味だな」
「今ならジャガイモでも植えた方がいいですからね、花は食えないし」
面積があるなら花より団子である。
いつか純粋に花を楽しめる日がくればいいなあ・・・10年後とかかな?
それまで生きていれば、だがね。
「ふう・・・いやあ、空気が味しい」
侵した家の居間で、マスクをぐアニーさん。
いつもそんなマスクしてればそうだろうなあ。
クリアリングはもう済んでいるのでこの家はセーフゾーンである。
どうやらさっきのおばさんだけの住居のようだ。
ちなみに侵方法は、庭に面したガラス窓を鍵の所だけ謎の道で切り取るというものだった。
さすがアニーさん・・・元特殊部隊だけあってなんでもできるな。
「さてさて・・・これがマップだ」
戦闘服の懐から折り畳んだ地図が出てくる。
観客用のパンフレット・・・にしては正確っぽい。
地図本を切り取ったものだろうか。
「我々の上陸地點はここ」
指が地図の南端を示す。
ふむふむ。
「目的地がここだ」
白くて綺麗な指がつつっと移。
指した場所は地図の北端ギリギリであった。
『佐山造船』と書かれている。
「・・・真反対じゃないですかーやだー!」
「ははは、ウォーキングデートだな、イチロー」
なんだって丸々住宅地を突っ切って行かなきゃならんのだ。
東地區は海に面しているからボートでぐるっと迂回して、直接造船所にアクセスすればいい・・・あ。
「竜神大橋・・・!鍛治屋敷あの野郎・・・!!」
鍛治屋敷の嫁さんボムによって崩落した竜神大橋。
その殘骸が、おそらく海に即席の巖礁をこさえてしまったんだろう。
「その通りだ。橋を迂回するルートはかなりの大回りになってしまう・・・そして、そこまで迂回すれば・・・」
悪戯っぽく口元を歪めながら、アニーさんは指鉄砲を作って俺に向けた。
「BANG!・・・だ」
絵になるなあ。
こうした茶目っ気を出すと、途端にくも見える。
「そうか、中央地區から見えちゃうんですね」
ボート一艘にわざわざミサイルを使うとは考えにくいが、存在を知られるだけでも嫌だ。
「そうだ。それにミサイル以外にも向こうには長距離攻撃の手段がいくつもあるぞ?対裝甲に長距離狙撃ライフル、車両搭載の大口徑機関砲、攜行式導ミサイル、エトセトラエトセトラ・・・」
「うげぇ」
今までに戦ってきたどの相手よりも裝備が充実している。
避けれる手段があるなら、危ない橋を渡るのはやめておこうか・・・
「というわけで、諦めて市街地を突っ切ってこのまま北上だ」
「了解・・・そうそう楽はできない、か」
「まあ、持ち帰る荷もさほど多くはない。以前にキミとアサカが大は回収してくれたからな・・・持ってきたザックに収まる程度の量になるだろう、あればだがね」
よかった、どこぞの戦爭漫畫みたいにヤグラ組んでエンジン丸ごと運搬・・・とはなりそうにない。
朝霞に謝だな。
「これからはそんな暇なさそうだし・・・もうちょい時間ください」
懐から煙草の箱を取り出し、一本取る。
・・・と、アニーさんが手をこちらに差し出してきた。
はいはい。
「ふふ・・・もらい煙草が一番味い」
新たに取り出したものを渡し、火を點けてあげる。
俺も同じく火を點け、紫煙を楽しむ。
「今更ですけど、アニーさんも喫うんですね」
「本當に今更だな。軍隊時代は止めていたが、もうそんなことを気にする必要もない」
煙を吐き出しながらし笑うアニーさん。
「ですねえ、世界の方がクソなんだ・・・々テイクイットイージーで行きたいもんですな」
「ふふ、そうだな。そういえばこの周辺には確かストアがあったはずだ、帰りにしていこう」
やったぜ。
在庫は常に確保しときたいもんなあ。
「ゾンビ共の鼻が発達していなくて本當によかったな、イチロー」
「はは、確かに」
顔を見合わせて笑い、俺達は最後の煙草休憩を楽しんだ。
家を出て、また路地へ戻る。
耳をすませて周囲を索敵・・・うん、さっきと変わりはなさそうだ。
日中のノーマルゾンビは的にくからな。
「このまま路地を北上、水路に突き當たったら一旦止まるぞ」
「了解」
俺達がいる東地區にはメインストリートと呼ばれる大きな通りがある。
そこは商店街も兼ねていて人通り・・・もといゾンビ通りも多そうだ。
だからそれを避け、一本外れた裏路地を行くのである。
「前を頼む。急な接敵の場合は線から外れろ、第一は私が撃つ」
「了解、トリガーのタイミングはそっちに任せますよ」
「ふふ、リンとの探索で慣れているのか?」
「そりゃもう、相棒ですから」
靜かに歩きながら軽口を叩く。
景は代わり映えのない細い路地ばかりが続くが、油斷は。
晝のゾンビはほぼ音を立てないから、気を付けなければ。
「・・・この先、右の路地に・・・たぶんいます」
若干の違和。
十字に分かれた差點の右に気配がある。
「數はわかるか?」
「・・・いえ、手前で止まって鏡で確認します」
手でアニーさんを制し、俺だけ先行する。
差點ギリギリのところで、懐から手鏡を取り出す。
ちなみに朝霞が貸してくれたものだ。
音を立てないように、そっと手鏡だけを出す。
反された鏡面に映るのは・・・うお!
むっちゃ近くに1いる・・・そして奧に・・・3!
手前ももちろん、奧の方もすぐに気づかれそうな距離だ。
念のため差點の左側を確認。
・・・うん、かなり遠い所に2いる。
多の音では気付かれなさそうだ。
アニーさんの所まで戻り、現狀を報告。
作戦を立てる。
再び差點まで前進する。
俺が前だ。
「(・・・いきますよ)」
「(アイコピー)」
軽く息を吸い、一気に路地から飛び出す。
踏みしめたアスファルトが、音を立てた。
「ッガァ―――!」
手前のゾンビが俺の方を見て口を大きく開ける。
「っしぃい!!」
大きく踏み込みながら、両手を突き出す。
「ァアゴッ!?ゥウ!!」
吠えようと大きく開けた口に、兜割が侵。
奧を貫く。
ごきり、と手応え。
それをじた瞬間に、兜割に全重をかけて下に振る。
貫通した兜割に引かれ、ゾンビも倒れる。
さらに俺もを折り、地面に向かって伏せる形へ。
ゾンビと俺が倒れたのと同じくらいに、後方から消音された銃聲。
「ェエッ!」「ッバ!」
奧にいたゾンビ2が頭をのけ反らせ、後ろ向きに倒れる。
よし!
「ヘッドショット、ツーダウン・・・」
「ナイスです、アニーさん」
俺が突っ込んで手前を即仏させ、アニーさんが銃撃で殘りを仕留める。
即席作戦にしてはうまくいったな。
「殘弾は大丈夫ですか?」
「ああ、まだマガジンは4つある。拳銃もあるし、問題はない」
・・・この人も神崎さんもむっちゃ弾持って移するよな。
ゲームじゃないから重いはずなんだが・・・軍人さんってすげえ。
「反対側のゾンビは気付いてませんね、とっとと先に―――」
そこまで言った時、不意に背筋に寒気が走った。
気配の方向に顔を向ける。
・・・目的地の方角じゃないか。
「・・・どうした、イチロー」
「嫌な予がします・・・こっちへ」
ここはいささか開け過ぎだ。
アニーさんに聲をかけ、路地の先へ移を開始―――
「グルガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
しようとして、失敗。
さっき気配をじた方向から、凄まじい咆哮と。
「・・・アサルトライフル!」
アニーさんが言うように、多數の銃聲が聞こえた。
【書籍化&コミカライズ化】婚約破棄された飯炊き令嬢の私は冷酷公爵と専屬契約しました~ですが胃袋を摑んだ結果、冷たかった公爵様がどんどん優しくなっています~
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8 193じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出身の魔導士、通訳兼相棒の新米回復術士と一緒ずてツートな無詠唱魔術で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】
【2022年6月1日 本作が角川スニーカー文庫様より冬頃発売決定です!!】 「オーリン・ジョナゴールド君。悪いんだけど、今日づけでギルドを辭めてほしいの」 「わ――わのどごばまねんだすか!?」 巨大冒険者ギルド『イーストウィンド』の新米お茶汲み冒険者レジーナ・マイルズは、先輩であった中堅魔導士オーリン・ジョナゴールドがクビを言い渡される現場に遭遇する。 原因はオーリンの酷い訛り――何年経っても取れない訛り言葉では他の冒険者と意思疎通が取れず、パーティを危険に曬しかねないとのギルドマスター判斷だった。追放されることとなったオーリンは絶望し、意気消沈してイーストウィンドを出ていく。だがこの突然の追放劇の裏には、美貌のギルドマスター・マティルダの、なにか深い目論見があるようだった。 その後、ギルマス直々にオーリンへの隨行を命じられたレジーナは、クズスキルと言われていた【通訳】のスキルで、王都で唯一オーリンと意思疎通のできる人間となる。追放されたことを恨みに思い、腐って捨て鉢になるオーリンを必死になだめて勵ましているうちに、レジーナたちは同じイーストウィンドに所屬する評判の悪いS級冒険者・ヴァロンに絡まれてしまう。 小競り合いから激昂したヴァロンがレジーナを毆りつけようとした、その瞬間。 「【拒絶(マネ)】――」 オーリンの魔法が発動し、S級冒険者であるヴァロンを圧倒し始める。それは凄まじい研鑽を積んだ大魔導士でなければ扱うことの出來ない絶技・無詠唱魔法だった。何が起こっているの? この人は一體――!? 驚いているレジーナの前で、オーリンの非常識的かつ超人的な魔法が次々と炸裂し始めて――。 「アオモリの星コさなる」と心に決めて仮想世界アオモリから都會に出てきた、ズーズー弁丸出しで何言ってるかわからない田舎者青年魔導士と、クズスキル【通訳】で彼のパートナー兼通訳を務める都會系新米回復術士の、ギルドを追い出されてから始まるノレソレ痛快なみちのく冒険ファンタジー。
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