儂はイゼル。

己の強運に謝する者なり。

裏で汚い商売を共にしていた勇者協會がを暴されると困ると切り捨てに來たが、なんとここにきて奇跡が起きた。

まさか、初めて會う噂の年が儂のファンだったとは。

「聞けっフォレストエンドの民よ。最期に弁明の機會を貰い謝する！」

ざわつく愚民どもを一喝し、優しい目で必死になにかを願っている年を見た。

なにやらこの年は、尊敬する儂にまだ生きてほしいようだがこの狀況ではもう助からん。

しかしながら名聲だけはあの世に持っていくぞ。

そうとも、が死んでも名が生きればそれでよし。

「儂は勇者イゼル。先ほど読み上げられた罪狀には大きな誤解があるものの悲しいかな大筋では合っておる。諸君らの怒り最もであるから、この儂の命を持って償おう。ついては、この街の守護を誤解された勇者イゼルから、若き勇者エクスへと託したい。·····しかしっ部下だけは関係ない！どうか儂の命に免じて見逃してくれまいか」

「！？」

「ううーっ」

「誤解があった？そうなのか？」

ふふ、予想どおり愚かな部下が泣きだした。

愚かなる民もあっさりと騙されてざわついており稽だな。

「泣くな、部下よ。儂はこの世からいなくなるのだぞ。これからは後任のエクス君を儂だと思って頼りなさい。後は頼むぞエクス君」

「・・・・」

「ううっもがもが」

「イゼル、悪い奴じゃなかったのか？」

激した部下と愚民の聲は聞こえてくるが、ファンの年が無口になったのでどうしたのかとちらり。

んん？なんでこいつは嫌そうな顔をしているのだ。

「・・・嫌です」

「！！！！？」

なぜだ？

「死なないでください」

「ふふっ年よ。心配いらん。儂が死んでも君なら出來る。頑張りなさい」

年の優しそうな困っている瞳を見る。

「いえ！生きてこの街を護ってくださいっ」

「そうだな。儂もやりたい。だが民はそれをどう思うか？」

以前のようにやり直せるならそれに越したことは無いが、難しいだろう。

「ふっざけんなーっ！」

「甘すぎるっ」

「殺せえええええ」

タイムアップとばかり融通が利かない包帯男が縄を持って近づいてきた。

「イゼル、もう十分話しただろ」

「リョグめ。分かった。年も儂のことは諦めなさい」

再び口を封じられたがやるべきことはやり終えたと小さな充実をじながら、儂のことを敬してやまない年を見るとぷるぷると震えだした。

「嫌です。僕は働きたくないんです」

「もがっ？」

風向きが変わったような気がした。

もしかしてなにか重大な勘違いをしていのか？？

「すみません、職人長のドラドです。大魔導師様、発言の許可を！」

「どうぞ」

不味いぞ、こいつは儂を恨んでおる。

「私ら職人はそこの森林警備隊の隊長イゼルに騙されて外壁の上に何日も閉じ込められました。街を護るためという理由でやらされたエレキテルを回すだけの労働はまさに地獄。死刑の代わりにそれを彼らにやらせてはいかかがでしょうか？それなら民も納得するでしょう」

「いいですね！」

噓だろ、何を同意してるんだ年っ。

あれは我らの仕事ではない、スラム民にやらせるべきようなもの。

そんなことをさせられては儂の名譽が死ぬっ！

「ははは、イゼル良かったなあ！詳細は大魔導師様がお決めになるだろう。勇者としては死んだぞお前」

くそっ、職人長め。

し騙したくらいでに持って暗い目で見てきおった。

「でもっ休みは與えてください」

「····大魔導師様がそう仰るなら、的には？」

ははっ、ファンではなかったようだがしょせんは甘っちょろい年よ。

そうだな、儂らの場合なら1日働き1日休みぐらいが適正か。

教えてやりたいところだが話せないのが殘念だな。

「そうですね、月に1日あげてください」

「え？」

正気か？そんなのなすぎる！

職人だって引いておるし、よく考えなさい。

「あの、多すぎましたか？　でも去年は1年間休めなくて泣いてしまったので」

「い、いえ」

振り返り、良い事をしたつもりなのか曇りなき眼で褒めてしそうに見てくる。

震えが止まらん。

ワーカーホリックな年が、心配しながら狂った基準で神を殺しにきたではないか。

「大魔導師様。名案ですが、こいつらはずる賢くサボるかもしれません。監視はどうしましょう？」

くそっ職人め！また要らん事を。

イカれた年がまた何か考え始めてしまったぞ。

「うーん。そうだ！ハンドルを回すと食料が出てくるのはどうでしょう。それならサボれませんし」

「それは良いですね！」

「むがっ」

なんという鬼畜なアイデア。

「まだ心配が？」

「さすがは大魔導師様。すべてお見通しです。ただ、単調な生活はいくら犯罪者とはいえ辛そうだと思いまして。他にもお知恵があれば貸していただきたく」

「むがむがー！！」

やめろ。考えるな。お前はもう考えるな。

「・・・そうだ！　遊びも加えてみては？　回しても食事が出たり出なかったりすれば飽きないかも」

「素晴らしい。天才です」

「んごうっ！！」

それは駄目だ！

「えへへ。何かで読んだのかもしれません。詳しくは思い出せませんが」

「いやいや、さすがの知識力ですね」

「むぐーーっ！！」

この阿呆共め！

思い出せ。それは、サルを完全に破壊する実験って呼ばれているんだぞ。

「ありがとうございます！良かったです」

「それでは、私らは確率要素を加えた食料配給裝置の製作にあたります」

結末はこうだ。

最期には食料を求めて狂ったように一日中ハンドルを回し続ける未來が、やめろ！やめてくれ。

そんなの嫌だぁぁぁ。

「むきーーーっ！」