《遙か夢こうのデウス・エクス・マキナ》第十章 第三話 巨人の戦槌、蒼星の銀紙
地上から観測している楓たちにとってはまるで大量の流星群が星空の一部に集中して流れているように見えるのだが、その実はすべてディザスター・ギガスの學兵の砲撃である。
もちろんその標的となっているのはマキナである。
「ふっ、ほっ、でやぁっ!」
襲い掛かるの奔流を避けたり弾いたりと忙しなくく、現在ギガスはマキナ同様恐らくフィックスドスターモードへと形態移行している。そのため裝甲同士に隙間ができ、打たれ弱くなっているもののそれはマキナの場合であってギガスも同様かは分からない。
まず近づくことすらできていないのだ、そこが問題である。被弾するのは避けたいイゼ、遠距離から対抗する武もなく近づかなければならないがこの猛攻撃の中をくぐらなければならない。
「ふぅぅぅ…やるしかない!」
急制をかけそのまま180度回転、そのままスラスターを全噴しながらギガスに向かって突貫する。クロスメードは叩き切ることを前提としている構造のため、に沿って橫に構える。前方からは弾が次から次へと飛んでくるもなんとかをひねったりスラスターによる噴による微調整によって弾の隣を掠るように進んでいく。
ギガスの懐まで潛り込むと勢いそのままにクロスメードを一閃、その攻撃は見事に當たり頭部裝甲の端の部分をひしゃげさせることに功。だがそれだけだ。
すぐさま次の攻撃を繰り出さんとクロスメードを振り下ろすと戦斧が迫りクロスメードとせめぎ合う形となる、徐々に押されていくのはマキナ。やはり出力ではギガスのほうが上なのだろう、純粋な力押しでは勝てないことが分かってくる。
そこでノックズがやっていたように一回力を抜きクロスメードを傾けることにより力の向きをそらす、するとするっと抜けるように戦斧はマキナの後方へと抜けていく。すぐさま三叉の槍や新たに取り出したであろう片手が飛んでくるが、なるべく被弾を最小限にするよう裝甲の山なりになっている部分を使い攻撃を反らすことにより被害を最小限に抑える。
その際、腰のチャフグレネードに當たったのか辺り一帯にチャフがばらまかれる。するとギガスのきが再び鈍くなったのである。
「…?」
そんな折、楓から通信がる。
「イゼ、分かったよ!」
「な、何が?」
「そいつの挙と腕部の設計図の神経部分を見てて気づいたの、そいつは數世代前のAIを搭載してる。だからチャフもすごい有効的なうえに流的な行はできないはず!」
そういえばと思い今までのギガスの行を思い出してみるとどちらかと言えば直線的な行が多く搦手を使ってくることもなかった、機のスペックが非常に大きいから搦手すら必要なかったということなのかは分からないが。
人が乗っているわけでもなく、遠隔で作されてるわけでもなく。AIが制しているのであれば話が早い、このチャフの撒かれた空間で戦えば有利に戦えるのだ。そう思っているのも束の間、目の前のギガスから大量の煙が噴き出す。
「うわっ、ぷ!?」
煙の中すぐさまレーダーでギガスの行を注視する、ギガスは6本の腕を大きく広げ反らし煙を吐き続けている。そのままがっしりと摑みかかるように攻撃されて致命傷を負うのは避けたいため仕方なく煙とチャフが渦巻く空間から離する。
煙を吐き出す時間はそう長くなかった、煙が晴れるころにはチャフは飛んでしまいほとんど効果を発揮しないほど散らばってしまった。
ギガスのから発せられる熱量を一気に放出し、その勢いで出た蒸気等を噴出することによって周辺のチャフを吹き飛ばしたのだろう。これではいくらチャフグレネードを使ったところで意味がない、といっても殘っているチャフグレネードは一つだけなのだが。
「楓…チャフ、駄目そう」
「…みたいね。…こちらから何か支援できないか々模索してみるからもうちょっとの間頑張って!」
「了解!」
通信が一時的に終わると同時にギガスがき出す。戦斧と片手が振るわれそれを難なく避けるマキナ、だが避けた先には三叉の槍。クロスメードの腹でけるも先ほどのようにけ流しきれず吹き飛ばされてしまう。
吹き飛ばしたマキナを追撃するようにギガスによる弾が迫りくる。避けようにもすぐさまその場からけるような姿勢ではなかったので、全を隠すのは無理だが一部でもと思いクロスメードのに隠れる。クロスメードやはみ出た裝甲に被弾した際の振がビシバシと伝わってくる。
弾の一部エネルギーはマキナの機に取り込まれるものの全てを吸収できるわけではない、ダメージは徐々に蓄積していく。モニターを見るとコーティング層が徐々に削れていっているのが分かる。
弾の雨あられが止みクロスメードから顔を覗くとすぐそこまでギガスが接近しておりそれぞれの武を振り下ろすところだった。
「んなっ、早い!?」
すぐさまクロスメードを構えその場から全力で後退する。ブンと目の前をギガスの武が振り下ろされていく、振り下ろされる武を追いかけるように前転。勢いのままにクロスメードを振り下ろす、その攻撃は當たったものの鈍い音を立てるだけで終わった。
ゆらりとギガスの眼が揺れる、何か來る。そう考えたイゼはクロスメードを構える、ギガスは大きく片手を振り上げるのだがマキナに當てるにはリーチが足りていない。何をするのか構えているとギガスは片手を投げつけてきたのである、AIでも迷うことがあったのかと考えるもすぐさまクロスメードで片手の軌道をそらし宇宙の彼方に片手が飛んでいくのを確認する。
「…?なんで投げたんだ、武を減らさなきゃいけない何かがあった?」
その疑問の答えはすぐ訪れることとなった、ここからは見えにくいがギガスが三叉槍を自らの背中のバックパックらしき部分に火花を散らしながら差し込んでいるのが確認できた。
ある程度のところまで差し込み終わると、そのまま先ほど片手を持っていた現在空いている手を一緒に使い一気に上に引っ張る。すると勢いよくバックパックらしきものが取り外れギガスが構えているそれは巨大なハンマーとなった。
巨大なハンマーを構えたギガスはそのままこちらへと突進してくる上、途中でくるくると回転し始める。ハンマーにはどうやらバックパックだった名殘かスラスターが毆打面の各4隅、合計8か所ついておりその片面のスラスターを駆させ一撃の重さを増加させているのだろう。
また鈍重なハンマーには似合わず素早いきでこちらへと一直線に接近し、回避しようとしていたマキナの裝甲を叩く。ドゴンという音と衝撃が走りマキナの裝甲がひしゃげ、ひびがる。
「ぐっ…!!」
マキナは大きく吹っ飛ばされ大きく勢を崩される、そこに追い打ちをかけるように弾が飛來する。先ほどのハンマーによる攻撃に加え弾による攻撃により縦席に簡易警告が表示される。
「こんのぉ…よくも!これでもくらえ!」
撃圧砲をギガスに向けカウントダウンを開始する、ギガスはその攻撃を察知したのか回避しようとき始める。だが外すまいとイゼはマキナをギガスへと接近させる。
「遅い!」
バックパックスラスターを武に回したがために宙域における移速度が低下しているのが目に見えて分かる。カウントダウンの後撃圧砲から蒼いがギガスへと向けて放たれる、避けることが不可能と考えたギガスは腕裝甲の分厚い部分を盾にしける。裝甲が熱で焼け徐々に赤化するも完全に溶かすまでには至らなかった。
蒼いが止み、腕でをどけたギガス目の前にはマキナが接近しておりその拳をこちらへと向けていた。その手には何かが握られており。
「どりゃあああ!」
ガコンと音と共にひん曲がった頭部裝甲の隙間にマキナの拳がり込む。
「ふんっ!」
手に握っていた何かを握りつぶす、するとギガスの頭部裝甲の中でそれが発しチャフが頭部裝甲に張り付く。そう、握っていたものはチャフグレネードであったのである。頭部裝甲で発したチャフグレネードはぺたぺたとギガスの頭部裝甲に張り付きAIで稼働しているギガスの思考を狂わせ視界を奪う。
すぐさまマキナはその場を離する、ギガスはチャフを再び吹き飛ばさんと溜まった熱を放出し煙を上げる。だが頭部裝甲で発したためにうまくはがれず頭部裝甲に留まったままになってしまっているのである、そのためさらにギガスのAIを狂わせることとなった。
「今だ!」
イゼはクロスメードをギガスの頭部へと向けて勢いをつけ振り下ろす、何度も何度も。どんどんとギガスの頭部はひしゃげていき徐々にその形が歪になる、その間ギガスはマキナを引き剝がさんと武を振るうも視界を防がれ思考の鈍った狀態ではすはなかった。そしてとどめと言わんばかりにイゼは首筋に向けてパイルバンカーを打ち込み、そしてギガスは。
きを止めたのであった。
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