《異世界から日本に帰ってきたけど、やっぱりダンジョンにりたい! えっ、18歳未満は止だって? だったらひとまずは、魔法學院に通ってパーティーメンバーを育しようか》336 ルシファーさんの地球環境講座
今回は読者の皆様の常識を本から覆す容となっております。こんな考え方もあるんだと気楽にけ取ってもらえれば幸いです。
鈴が諸都市を巡って魔王城に戻ってきてから5日後、ようやく日本に戻る日を迎えている。
それぞれの街を巡ってからも鈴の激務は続き、水路改修の手配や食糧配給の詳細なり行きを細部まで確認しているうちに、いつの間にか予定していた滯在日程の最終日を迎えていた。
魔王城の正面り口から鈴とクルトワが登場すると、見送りの貴族や城に仕えている面々から一斉に名殘惜しげな歓聲が上がる。
「大魔王様、またのお越しを待っております」
「大魔王様あっての魔王城、いつでもお戻りください」
「1日も早いお戻りを首を長くして待っておりまする」
このような聲に見送られて、鈴とクルトワは無蓋の馬車に乗り込んでいく。敢えて屋がない馬車にしたのは、見送りの際に顔を見せようという鈴の配慮に他ならない。
「それでは大魔王様のご出発だ。皆の者、忠誠を示せ!」
エリザベスの聲に従って、その場の全員が右手をに當てて片膝立ちの姿勢をとる。もちろん彼らの視線は大魔王の姿をその目に焼き付けようとして一瞬たりとも無蓋馬車から離れることはない。
「それでは出発!」
號令がかかると騎馬隊に先導された2臺の馬車が靜々とき始める。鈴とクルトワが乗る馬車の右にはエリザベス、左にはフィリップが騎乗姿で付き従っている。宰相と親衛騎士団長が直々に馬車の護衛を務めるなど、長い歴史を保つナズディア王國にあってもさすがに前代未聞の出來事。これには鈴がすでに魔王城、ひいては魔族全になくてはならない存在に昇り詰めているが窺える。現に一部の大魔王信者からはある意味神格化されているという噂も聞こえてくる。
馬車の列が魔王城の門を抜けてナズディアポリスの街中を走り出すと、驚いたことに往來の両側には住民たちがビッシリと待ち構えている。どうやらこの日大魔王様が出立するという話がどこかから洩れたせいで、ひと目でいいからその姿を目に焼き付けようという住民たちが群れしているらしい。もちろん彼らは食糧配給をすでにけ取っており、どうしても一言お禮をしたいとこうして集まっているよう。
「大魔王様… なんておしい」
「しい上に慈悲深いお方だ」
「困窮していた我らに食料を配ってくださった命の恩人だ」
「大魔王様、深く謝いたします」
このような聲がひっきりなしに飛んでくる中を馬車は進んでいく。クルトワは場慣れしているところがあって住民の聲に笑顔を向けながらごく自然に手を振るのだが、このような狀況に不慣れな鈴は表が強張ったままぎこちない手つき。人前での演説などの際は実に堂々と自らの意見を述べるのだが、想を振り撒くのは格的に苦手なのかもしれない。
人々の見送りをけながら街中を進む馬車は、ついに街の外を區切る門前に到著する。
「大魔王様、私の見送りはここまでです。日本に戻ってもどうかご息災でお過ごしくださいませ」
「エリザベス、しばらくは忙しいでしょうけど、私が不在の間はあなたに任せます」
「しかと承りました。再びのお越しをお待ちしております」
「ええ、なるべく早いうちに戻ってくるわ」
宰相としての仕事がギッシリ詰まっているエリザベスは、さすがにここまでの見送りが時間的に限界だったよう。というかスケジュールを無理やり何とかして門までやってきている。彼は下馬して騎士の禮を執りつ再びき出す馬車を見送る。心ではこのまますべての仕事を放り出して一緒に日本についていきたいところだが、鈴に不在の間の諸々を任された以上そうもいかない。涙を呑んで遠ざかる馬車を見送るしかなかった。
門を抜けるとあとはダンジョンまで40分といったところ。フィリップ直屬の騎士団鋭に守られながら街道を順調に進んでいく。鈴たちの無蓋馬車に続く聡史たちが乗り込む馬車では、明日香ちゃんが何やら上機嫌な様子。口にそこ出さないがその心は…
(いやいや、やっと日本に戻れますよ~。ずっとお菓子で我慢していましたけど、帰ったら思いっ切りパフェを味わえます)
知ってた… というよりも明日香ちゃんがニヘラ~とだらしない笑みを浮かべている時は大抵甘~いが絡んでいると睨んで間違いない。それよりもあれだけ大量に持ち込んだお菓子が今や特大リュックにも両手に下げていた旅行鞄の中にも全く見當たらない。きれいに空っぽになっているのは、昨夜のうちにクルトワと二人でお菓子パーティーを開催したせいだろう。
ダンジョンのり口に到著すると、鈴たちはフィリップやダンジョンの警備を擔當する兵士たちの見送りをけながら中へと消えていく。そのまま一気に最下層へと進んで、無事に日本へと戻っていくのだった。
◇◇◇◇◇
日本側の出口にあたる那須ダンジョンの外に出た一行は、久しぶりに日本の見慣れた風景にようやく戻ってきたという慨に浸っている。だがこの二人の行は早かった。明日香ちゃんとクルトワは疾風迅雷の勢いでダンジョン管理事務所に向かうとそのまま飲食コーナーへ一目散。
「フルーツパフェをお願いします」
「チョコレートパフェにしますよ~」
運ばれてきたパフェに舌鼓を打っている。久しぶりの大好にありつけた様子を生暖かい目で見つめる聡史と鈴。仕方がないので二人も席に著いて軽食を注文している。もちろんすでに學院長に帰還の連絡をれているので、もうしばらくすると迎えの車がやってくるはず。那須からヘリで飛べば1時間程度で伊勢原に到著する。
「忙しかったけど、ようやく日本に戻ってこれたわね」
「あっという間の3週間だったな」
本日は日本のカレンダーでいうと月曜日。1週間が始まったばかりの日に戻ってきた一行は、このまま魔法學院に向かって日常の日々を送ることになる。異世界でも々と忙しかったが、こうして戻ってきてからも忙しない毎日が続くと予想される。
軽く食事を摂っている間に迎えのワゴン車が到著して、そのまま那須分屯地へ。そこからすでにフライトの準備を終えているヘリに乗り込んで、一路魔法學院へと向かう。
伊勢原でヘリを降りて再びワゴン車に乗り込んだ一行が魔法學院に到著すると、正門脇には桜とペットたち、カレン、ブルーホライズン、彌生と咲という顔れがズラリと待っている。どうやら學院長から聡史たちの帰還の報がカレンに齎されたらしい。そのおかげもあって、こうして授業を放り出して出迎えに集まっている。
「お兄様、鈴ちゃん、お帰りなさいませ」
「桜、ただいま。學院で変わったことはなかったか?」
「平穏を絵に描いたような日々でしたわ」
確かに聡史たちが異世界に赴いてから今日まで特筆すべき事件などは起きておらず、學院生はあと3週間後に迫った魔法學院対抗戦に向けてより一層厳しい訓練にを投じている。変わったことといえば、桜のレベルが上昇した點くらいだろうか。
桜に続いて今度はカレンが…
「聡史さん、鈴さん、お帰りなさい」
「カレン、わざわざ出迎えてくれて嬉しいわ」
などと答える鈴の表には、隠しきれない優越に満ちている。ひょっとしてカレンに対してマウントを取りたいのだろうか?
「鈴さん、その表は異世界にいる間に何かいいことでもあったんですか?」
「それがね… ちょっと耳を貸してもらえるかしら」
鈴がカレンの耳元でゴニョゴニョ話し出している。その容は當然聡史に手料理を振舞ってもらったり、同じベッドで寢たり… 要は自慢話がしたいらしい。だがカレンは鈴の話に対して全くの無表。多なりとも悔しがる態度を期待した鈴としては、なんだか肩かしを食らったがある。
「鈴さん、子供じゃないんですからそんなつまらない話で優越に浸らないでくださいね。聡史さんと同じベッドで寢たとはいっても、どうせ朝起きてみたら抱き枕を抱えていたっていうオチでしょうに」
「カレン、なんで知っているのよ!」
「出発の前に聡史さんが真剣な表で抱き枕をネット通販で眺めていたので、私が一番良さそうな品を選んであげたんですよ」
「なんですって! ということは私はカレンの手の平で踴らされていたということ?」
「まあ、いいじゃないですか。抱き心地は良かったでしょう。私が選んだ抱き枕」
「ぐぬぬ」
せっかくマウントをとれるとウキウキしていた鈴だが、どうやら今回はカレンが一枚上手のよう。完全に行を読まれていた鈴は、二の句が継げずに悔しそうにを噛み締めている。大魔王様と神様のマウント合戦が繰り広げられている橫では、ブルーホライズンたちが一斉に聡史に向かって飛び付いてくる。特にちびっこトリオがいつになく積極的に聡史に抱き著いて、絶対に手放すものかと両腕に力を込める。
「おい、ほのか。そんな思いっきり師匠に抱き著いたら私がり込む隙間がないじゃないか」
「フン、晴ちゃんたちに気で敵わない分、私たちはより直接的な行を取るまでですからね」
晴同様ちびっこトリオに弾き出された真と渚もこれには呆れ顔。お気で敵わないと見て三人を完全にブロックするとは、ちびっこトリオも中々やりおる。抱き著かれて離れようとしないちびっこトリオに聡史はやや閉口した表だが、そんなことはお構いなしに彼たちはグイグイ攻め込む姿勢を隠そうともしない。
ようやくブルーホライズンの熱烈歓迎から解放された聡史を待っているのはこの二人。
「聡史お兄さん、先輩たちに囲まれて鼻の下がび切っています」
やや軽蔑気味の表で聡史にダメ出しを突き付ける彌生。その橫には指抜きグローブを嵌めた咲が…
「クックック、悠久なる大魔導士がこうして迎えに出てやったにも拘らず、ここまで後回しにするとは良い度。邪悪なる暗黒龍の封印を解いた姿をその目で確かめるがよい」
「久しぶりにその廚2セリフを聞いてなんだか懐かしい気になってくるが、いい加減にヤメるんだ」
ペシッ
「痛~い」
聡史に頭をはたかれて涙目になっている咲だが、こうして久しぶりのお約束の遣り取りが出來てなんだか嬉しそう。ジト目で聡史を見つめる彌生とは全くの好対照な様子。
「彌生、俺がいない間何か変わったことはなかったか?」
「特にはない。桜ちゃんからの余計なおせっかいもなかった」
「そうか、それならよかった」
「それから咲ちゃんに々教えてもらって、魔力循環は完璧に出來るようになった。あとファイアーボールが3回に1回は的に當たるくらいに上達している」
「そうか、その調子で頑張るんだぞ。それから咲も彌生の面倒を見てくれてありがとうな」
「クックック、この悠久なる大魔導士の手に掛かれば造作もないこと」
「いくら久しぶりだからといってそこまで廚2病を全開にすることないだろう。いいから普通に喋ってくれ」
どうやら咲的には聡史が不在の間廚2セリフを思いっきりぶつける相手がいないせいでストレスが溜まっていたらしい。聡史の顔を見た途端にダムが決壊したかの勢いで廚2言語が飛び出して止められなくなっている模様。
こうして歓迎の儀を終えると、一同が校舎に向かって歩き始める。その頃ワゴン車の中では…
「明日香ちゃん、とっても外に出にくい狀況なんですが」
「ク、クルトワさん、困りましたよ~。出迎えの人たちがすっかりいなくなってから誰にも顔を合わせずに寮に戻ろうと思っていたのに、桜ちゃんたちがまだ殘っていますよ~」
「殘っているだけならいいんですけど、なんだかこっちを睨み付けて仁王立ちしているような気がします」
「両脇に立っているポチさんとタマさんも、なんだか獲が巣から這い出てくるのを待っているような眼をしていますよ~」
どうやらお菓子食べ放題だった明日香ちゃんとクルトワの二人には「このまま桜と出くわすのは不味いんじゃないか」という自覚があるらしい。そこにをかけて、桜がワゴン車の前に仁王立ちしている現在の狀況というのは、いかにもこの二人にとっては好ましくないといえるだろう。というか、最悪の事態とまで言い切れそう。
だが車で不安をにする両名にとって無慈悲な宣告が下される。
「明日香ちゃんとクルトワさん、ワゴン車の中でゴニョゴニョ喋っている聲は丸聞こえですわ。観念して早く外に出なさい。素直に自首してくればひょっとしたら溫の沙汰が下るかもしれませんから」
「明日香ちゃん、思いっきり桜ちゃんに気付かれています」
「こうなったら覚悟を決めて外に出るしかないですよ~」
「そうですよね。桜ちゃんもきっと私たちに理解を示してくれますよね」
「そういうことなので、クルトワさんから先に出てくださいよ~」
ここまできても明日香ちゃんはまだ悪足搔きをするつもりらしい。クルトワを先に外に出してその隙を突いてこの場から逃げ出そうなどと、よからぬ企みを巡らしている模様。自分が助かるためだったら平気で仲間を売ろうとするなんて、明日香ちゃんは中々の鬼畜といえよう。桜流のダイエットの過酷さが骨に染みてわかっているとはいえ、こんな考え方はゲスの極みと評して差し支えなさそう。ただ明日香ちゃんにしても言い訳の一つや二つはある。桜による地獄のダイエットに引き込まれるくらいなら、仲間の一人くらい平気で売り付けてやるというのはもとより覚悟の上という気持ちのよう。
だがそんな明日香ちゃんの足掻きは無駄に終わる。クルトワが一歩ワゴン車の外に出た瞬間、桜から目で合図をけた天狐と玉藻の前はサッとドアの両脇に散開して絶対に逃がすまいという位置取り。これではアリ1匹這い出る隙間もない。あっさり捕まったクルトワ同様に、明日香ちゃんも玉藻の前に首っこを摑まれて柄を拘束される。
「桜ちゃん、見逃してくださいよ~」
「夏が終わったばかりなのに、まさか季節外れの雪ダルマが2も登場するとは思ってもみませんでしたわ」
必死に懇願する明日香ちゃんに桜の冷たい視線が突き刺さる。ちなみにクルトワはすでに抵抗を諦めている模様。
そして桜の目に映る二人の姿は雪ダルマというか… どちらかというと〇シュランタイヤのマスコットキャラクターのようなブクブクの三段腹。異世界に大量に持ち込んだクッキーやチョコレートをバクバク食べ切ったツケが一気にその型に現れている。それだけならまだしも、毎晩ダンジョン産の高級でステーキ三昧だったこともあって、一日おきのダンジョン詣ででは消費しきれない程のカロリーを摂取していた。これほど自業自得という言葉がピッタリ當てはまる例はなかなか見當たらないかも。
「お二人とも、異世界に旅立つ前に伝えておいたのを覚えていますか? 『もし太って帰ってきたらボクサー並みの減量を経験させてあげます』と宣告していたはずですわ」
「桜ちゃんの目が屆かないからって調子に乗りました」
「桜ちゃん、過激なダイエットなんてに悪いですよ~。時間を掛けて徐々に重を減らしていきましょう」
などと意味不明な供述を繰り返す両名。だが増えてしまったものは仕方がない。というよりも完全に危険水域を突破している。レッドアラートに両足を突っ込んでいるので、標準重に戻るまではデザート抜きで頑張ってもらうしかなさそう。
ということで學院に戻ってきて早々に演習服に著替えてグランドを走らされる明日香ちゃんとクルトワ。桜の監視の目がっているので一切手抜きが出來ない厳しい狀況にを置いている。
◇◇◇◇◇
そして翌日… 桜による強制ダイエットがいよいよ本格的に始まって明日香ちゃんとクルトワがヒーヒー言っているのをよそに、ここ第ゼロ屋演習場では1、2年生Eクラスの魔法使いたちによる訓練が行われている。すでに魔法學院対抗戦まで3週間を切っていることもあって、出場が決まっている生徒たちは気合いがった表で的に向かって魔法をぶつけている。
そんな姿を橫目にしてベンチで腰を下ろして何やら喋っている聡史と鈴。
「鈴、ナズディア王國に関する報告書は進んでいるのか?」
「今週中には提出するつもりで気合いをれて作しているわ。何しろ人材の派遣を含む大掛かりな援助を要請するわけだし」
「あれだけの土木工事を完したんだから、それを生かせるように々な職種の人たちを派遣してもらえるといいな」
「そうよね~… できれば私が直接手出しをするのはこれで最後にして、あとは魔族たちが自分の手で國造りを出來るように支援してもらいたいわ」
鈴としてもはひとつしかない。魔法學院に籍を置いている以上そうそう度々異世界に赴くわけにもいかないのが実。そこで日本政府に掛け合って農業や土木の専門家を百人単位で派遣してもらおうと考えている。予算だけでなくて人材も送り込むとなると、これは政府にとっても相當に大掛かりなプロジェクトとなるのは想定の上。そのためにはキッチリとした報告書を書き上げて提出しなければならない。
「そうだよな~… 未開拓の土地はたくさんあっても、そこを開発していく技が追い付かないんじゃ寶の持ち腐れだよな。日本とは違って國土が広い上に人口がないんだから、それなりに開発が進めば食料増産もすぐに可能となりそうだし」
「でも課題は多いわ。日本ほど気候が恵まれているわけではないから、灌漑設備がどうしても必要になってくるのよ」
「そうだよな~。日本は梅雨もあるし、夏の臺風シーズンにはこれでもかという合に雨が降ってくれるもんな」
「その分自然災害に関しては念りな準備が必要でしょうけどね」
まあ日本が置かれている自然環境に関して今更いちいち説明も不要だろう。臺風だけではなくて地震や火山噴火に関しては世界有數の數を誇るのが日本という國のり立ちといっても過言ではない。
このような話をしているうちに、聡史の脳裏にとある話題が閃く。それは近頃日本だけでなくない世界中を巻き込んだ論爭になっているある事象に関する事柄。
「鈴、そういえば最近地球溫暖化が深刻になっていると耳にするけど、溫暖化によって日本や世界がける影響ってどうなっているんだ?」
「あら、聡史君にしては面白い話題を口にするのね。とはいっても私もそこまで溫暖化について詳しく知っているわけじゃないわ。せっかくだしルシファーに訊いてみようかしら」
「そこまで大袈裟にしたい話じゃなかったんだけど」
聡史としては何気なく口にしてみただけの話題だったのに、鈴はあっという間にこの場でルシファーさんを召喚した模様。その瞳が銀に変わり、上から目線の態度はいつもの通り。
「若造、急に我を呼び出すとは一何の用件であるか?」
「いや、俺が呼び出したわけじゃないから。ともあれせっかく出てきたんだから、地球溫暖化についてルシファーさんの見解を訊きたい」
「ふむ、億単位の年數を基準とするならば、地球という星は60億年後には太の膨張に飲み込まれて消滅する運命にある。その意味では溫暖化に向かっているといっても良いであろう」
「そんな気の遠くなるような年月の話をしているんじゃない。そうじゃなくって地球自が溫室ガスの影響で暖まって人間が住めなくなるという話をしているんだ」
「なにをバカなことを申しておるのだ? 地球が溫暖化すると人間が住めなくなるなど起こり得ぬわ。もし今住んでいる場所が暑くて住みにくいのであれば、より北極や南極に近い場所に移住すればよかろう。ほれ、シベリアやカナダの北部などには手付かずの広大な大地があるだろうて。氷が溶ければ南極大陸も人が住めるようになるぞ」
「そうならないように今各國が二酸化炭素の排出を規制して溫暖化を食い止めようとしているんだって」
「まったく無駄な努力だ。そもそも地球全の環境は人の手でコントロール可能な代ではない。先程申した億年単位の変化に加えて、數百萬年、數十萬年、數萬年単位で様々な気候変の要因が存在する。人間が二酸化炭素の排出を規制したところで、所詮は何も出來ないに等しい」
「ということは、人間は地球の環境に対して全くの無力なのか?」
「然り。そもそも溫暖化を喜ぶべきであって、真に恐ろしいのは寒冷化に他ならぬゆえな」
「それってどういうことなんだ? なんだか頭がこんがらがってきたぞ」
「そなたは氷河期について知っておるか?」
「そん時代があったことは何となく知っている」
「氷河期とは地球全が寒冷化してまともに植すら生育できぬような過酷な環境。必然的に生にとっては死と隣り合わせとなる。現在の地球はその氷河期における間氷期に相當する時代。つまり一時的に寒冷化が緩んで溫暖な気候が広がっているといえよう」
「えっ、そうだったのか。氷河期なんてすっかり終わっているものだと思っていた」
「そんなはずはなかろうて。現にこの日本でも江戸時代には急激な寒冷化が何度も訪れて度々飢饉が起きておったぞ。數百年単位で考えただけでもようやく訪れた間氷期なのだ。これを歓迎せぬとはどういう神経なのか理解に苦しむ」
「すまない。全然知らなかった」
「を知らぬにも程があるな。そもそもこの地球において生がもっとも繁栄した時代はいつだと考えているのか?」
「現在じゃないのか?」
「ちがうな。生がもっとも繁栄をしたのは古生代から中生代。カンブリア発とそなたらが呼んでいる生の種類が驚異的に増加した時代から恐竜が我が顔で闊歩していた時期が、地球上では最も生學的な種の多様が見られた。その頃の大気中の二酸化炭素濃度は現在の千倍から二千倍で、平均気溫は3度~5度高かったと記録されておる」
「現在と全然違う環境じゃないか。そんな時代があったんだ」
「気溫が高くて二酸化炭素が富なほうが生にとっては過ごしやすい環境という証拠といえよう」
「今地球上ではその二酸化炭素の排出を制限しようというきがあるんだけど」
「まことに愚かしい考えに過ぎぬな。人間の活で大気中に放出される二酸化炭素など海洋から自然に放たれる量の10分の1に過ぎぬ。その2割を削減したところで、いかほどばかりの影響があると思うのだ?」
「これだけ努力をしてもぜんぜん大したことないんだな。それよりも二酸化炭素って減らすべきだとずっと思い込んできたけど、そうじゃないってことなのか?」
「そもそもそなたらのはいかような質でできておるのだ? 大半は水と炭素だぞ。植が二酸化炭素と太と水によって合をおこなって得た栄養素をに取りれて生きているというのに、その大元となる二酸化炭素を減らそうとは笑止千萬。自らの栄養源を斷っているに等しい愚かな行為だと思わぬか?」
「その通りかもしれない」
「生とは中々深い存在でな。必要以上に栄養素をに取り込んではそのをより強固なものにしようとする。その結果として大量の炭素を保持したままその壽命が盡きて地中や海中に沒することとなる。そうなると長い年月の間に炭素は地中や海中で眠りに就いて地表には姿を現さなくなる。その結果として徐々に二酸化炭素の濃度が下がり寒冷化を招くというサイクルを繰り返すのだ。もし仮に二酸化炭素濃度が現在の3分の1にまで下がったら植は合をできなくなり、地球上には生の大量死を招く恐ろしい結果となる」
「ということは俺たちは二酸化炭素を増やす努力をしないといけないのか?」
「左様。地球全の生の絶滅を招かぬためには、地中に眠っておる炭素を大気中に開放する必要がある」
現在世間に伝わっている常識とは真逆の説を唱えるルシファーさん。聡史は目を白黒しながらも、その話に聞きっている。
「だったらなぜこんなにも聲高に溫暖化に警鐘を鳴らす聲が広がっているんだ?」
「簡単な話。何者かが世論を誤った方向に無理やりに捻じ曲げて、人々の考えを真理とは真逆に向かわせようと意図しているに決まっておろう」
「間違ったことを実行させようと企む黒幕がいるってことか」
「ここまで説明をしてやれば、そなたもその黒幕に気が付いておるであろう」
「もしかしてレプティリアンか?」
「おそらくそうであろう。科學者の理論數値モデルに造した定數を代させて導き出した回答が獨り歩きしているのが現狀の世論といえよう。そもそも溫暖化が進めば環境が良くなるはずのヨーロッパ… ことに北歐の人間が溫暖化対策への取り組みに熱心などとは、笑い話にもなりはせぬ」
確かに現狀では気候が厳しい北歐の人々がやけに溫暖化対策に賛しているのは不可解にじる。もしかして彼らは氷の上に取り殘されたシロクマに深い同を寄せているのだろうか? シロクマのためだったら自分たちはどうなってもいいという深い自己犠牲の神に溢れているのだろうか? おそらくは違うだろう。繰り返しマスコミによって流される溫暖化の危機にいわば洗脳狀態に置かれていると考えるのがしっくりくるはず。
ではなぜ北歐の人々を洗脳の急先鋒にしていったのか。おそらくは溫暖化を歓迎する空気をあらかじめ一掃しようという魂膽が隠されているようにじられる。そういえばヨットで大西洋を橫斷したグ〇タさんって今は何をしているのだろうか?
「なるほど、小學校で勉強する生の知識があったら二酸化炭素の排出を規制するなんて馬鹿げた話だとすぐに分かるはずなのに… なんだか今まですっかり騙された気分だ」
「誤った考えはマスコミの洗脳の結果だと気付けば、そなたはひとつ利口になったといえよう」
自分の頭で考えずにテレビで報じられる報を鵜呑みにするとこうなるという、聡史にとっては大きな反省事項的な認識のよう。それにしてもなぜレプティリアンはこのような誤った考え方を盛んに喧伝するのか… この點については未だに聡史はもう一つ納得がいっていない表。
「ルシファーさん、こんなウソ報を流すレプティリアンの目的は何だ?」
「決まっておる。地球人口を減らすことの一點に盡きるだろう」
「何のために?」
「以前にも教えたと思うが、覚えてはおらぬのか? 人間を家畜として扱うには、ヤツらにとっては5億人くらいの規模が適正というわけだ。そなたはジョージアガイドストーンを知っておるか?」
「なんだそれは?」
「1980年代にアメリカのジョージア州のある場所に建てられたストーンサークル狀のモニュメント。そこには地球の人口を5億人にするなどの他に宗教的な文言が刻まれておる。興味を惹くのは複數の言語が刻まれたモニュメントには英語、スペイン語の他に中國語やヒンディー語など8つの言語があった。だがそこには日本語の表記は見當たらなかった」
「それが何を意味するんだ?」
「レプティリアンは日本人をひとりも生かす考えはないという決意表明と捉えるのが妥當」
「ずいぶん日本人に反を抱いているんだな」
「ムーの子孫に対する並々ならぬ敵意がいまだに強いのであろう。あちらが敵対してくる以上、日本としても何かしらの対策を立てねばなるまいて」
「それもそうだな。あちら側が著々と手を打ってくる以上は、俺たちもそうそう安閑としてはいられないな」
「その通り。いずれは全面対決となるやもしれぬゆえ、努々準備を怠らぬようにな」
「ああ、わかったよ」
そう言い殘してルシファーさんは鈴の意識の奧に消えていく。それに代わって今度は鈴自のパーソナリティーが浮かび上がってくる。
「はぁ~… ルシファーたら、相変わらずとんでもないことを言い出すわね」
「ああ、確かにな。でも間違ったことはひとつも言っていない気がする」
「ああ見えても銀河を統括する神様のようなものだし。の見方は人間界の常識をはるかに超えてはいるけど、論理的に間違ってはいないという認識は私もじているわ」
「ということは、俺たちが考えている以上にレプティリアンの手は日常のあらゆる方面にびているというわけだな」
「そうね。だから私たちもこれまで常識だと考えていた事柄も疑ってかからないといけないかもしれないわ」
「面倒な世の中だ」
「今さら嘆いても仕方がないでしょう。現にダンジョンなんてものが存在する以上は、私たちの手で何とかしないといけないんだから」
「その時が來たら、ぜひとも桜をけし掛けよう」
「いいわね。桜ちゃんだったらヨダレを垂らしながら飛び掛かっていきそうよ」
深刻な問題をルシファーさんから突き付けられても、最後は桜の話題で笑い飛ばす二人であった。
地球溫暖化へのアンチテーゼというべきルシファーさんのお言葉。もちろんこの意見に賛できないという方がいらっしゃるのはわかっておりますが、植の立場だったら年々薄くなっていく二酸化炭素濃度に四苦八苦していると考えられるのではないでしょうか。別に作者自が特定の思想や宗教的な何かに囚われているわけではありません。ただ理に基づいた科學的に考えてこのような発想に至った次第です。このくらいぶっ飛んだ発想がないと小説など書けない… そのようにけ取っていただけると嬉しいです。この続きは出來上がり次第投稿します。どうぞお楽しみに!
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