《【WEB版】灼熱の魔様の楽しい溫泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の溫泉帝國を築きます~【書籍化+コミカライズ】》342.魔様、逆境をチャンスに変えて、あれを発明するよ!
「ねぇ、私を殺して? あなたを出してあげるから」
誰かを犠牲にしてでも、生き殘ること。
それは仕方がないことなのかもしれない。
でも、私はびたい。
そんなのは嫌だって。
私は自分のために誰かを殺したくもないし、死なせたくもない。
助かる道をギリギリまで探したいって。
それに、殺してほしいって言うあなたも助けてあげたいよ。
「そう、それなら死ねば? この偽善者」
その聲は私の返事に気を悪くしたような聲。
それから先は何も聞こえなくなる。
「あはははは、死ねっ! これでアタシが選ばれる! 新しい世界の“頭(ヘッド)”に!」
その代わりに聖王様の聲が響く。
それはまるで何かに憑りつかれたような、そんな聲に聞こえた。
中の骨が軋みを上げ、いよいよ意識が飛ぼうとしていた時のことだった。
「白銀死の薔薇(サラトガ・サラトガ)!!」
ずどぉおんっと音を立てて、私を摑んでいた腕が破壊される。
「よく、持ちこたえたな、ユオ!」
そして、そこに現れたのはイリスちゃんだった。
どういうわけか分からないが、私を助けに來てくれたのだ。
「アスモデウス、やっと會えたな。私の友人に害をなすものは皆殺しだっ!」
彼は聖王様をぎりっとにらみつけると、そのまま特大の魔法を放出。
聖王様と戦し始める。
「シュガーショック……!!」
私のはもうほとんどボロボロで歩く力も殘ってはいない。
そう思っていたのだが、シュガーショックが助けに來てくれた。
だけど、しがみつく力すら殘っておらず、シュガーショックのに支えてもらうだけになる。
「地獄の聖王をナメんなよ!! ああ!?」
「この愚か者がぁああああ!」
目の前には激戦としか言いようのない、聖王様とイリスちゃんの戦い。
お互い、目を三角にして凄まじいまでの魔法を発。
聖王様は雷か何かを出現させて攻撃しているようだ。
轟音にがすくみ、足が震える。
あの雷にあたったら今の私じゃひとたまりもないだろう。
「強い……」
二人の力はほとんど互角であるかのように思えた。
イリスちゃんの華麗な薔薇の魔法は聖王様の攻撃をことごとく防いだ。
逆に、聖王様の黒い雷をイリスちゃんは魔法で難なく回避する。
でも、それは危ういバランスであるように見える。
この狀況って何だっけ、えーと、故事に言うところのベラミスの剣だっけ、それだ。
かつて実力の拮抗する二人の戦士がいた。
しかし、ある日、一方の剣をほんのしだけ重くしたら、そちらは敗れてしまったという。
つまり、この狀況、ほんのしの油斷や隙で一変してしまうのだ。
そして、イリスちゃんにとって、一番のネックは私の存在ってことになる。
事実、彼は私に攻撃が向かないように戦っているわけで。
「テメー、まだ生きていたのかぁああああっ! 神々の黒雷(インフェルノサンダー)!」
私を見つけた聖王様は怒りの形相で魔法を放つ。
真っ黒い稲妻!
それはまばたきをする間に飛んでくる。
「ユオっ!」
「がるるるるっ!」
一瞬の出來事だった。
私目がけて飛んできた魔法からイリスちゃんとシュガーショックがを呈して私を守ってくれたのだ。
が焼き焦げたようなにおい。
目の前には煙を上げる、イリスちゃんたちの姿が。
「……ちぃっ、無様な姿を曬したな。ユオ、お前だけでも逃げるのだ、仲間が待っているはず」
イリスちゃんは苦しそうに呼吸をしながら苦笑いをする。
その顔は悪く、明らかに致命傷に近い一撃をもらった様子。
シュガーショックはぜぇぜぇと呼吸するだけで、唸り聲さえあげられない。
「イリスちゃん……、シュガーショック……」
私をかばってくれた二人を前に、涙がとめどなく流れる。
そのしい命が途切れかけようとしていることに。
だけど、私は諦めない。
絶対に助けて見せるから!
思い切り息を吸い、口から熱線を出す態勢を整える。
この事態を打開するためにはなりふりなんてかまってられない!
「あ……れ……?」
怒りに燃えた瞬間だった。
私は自分のに熱が戻ってきたのをじる。
熱だ。
溫かな私、本當の私。
次の瞬間にはが膨らんでいくような覚。
これって!
もしかして!!
メテオたちが例の水晶を破壊したってこと!?
「うわわわわっ!?」
気づいた時には服がはじけ飛び、すっぽんぽんになっていた。
慌てて空間袋から服を取り出し、ささーっと著替える。
ララ伝の瞬間著替えである。
「ヒゲ助、私にお湯をかけて!」
さらには空間袋からお湯を盛大に浴びせてもらう。
頭の中のクラクラを除去するためである。
服はびしょびしょだけど、すぐに乾くし、問題なし!
「勝ち名のりをあげるのには、まだ早いわよっ! 私が相手になるわっ!」
そして、勝ち誇る聖王様に言うのだ。
元の姿に戻った私はすこぶる気持ちがよかった。
熱が中を駆け巡り、何にも負けないような覚がある。
「テ、テメー、どういうことだ!? どうして元の姿に!?」
私が生きていること、それどころか、復活していることに気づいた聖王様は慌てたような聲。
だけど、すぐに気を取り直して、こちらに攻撃を仕掛けてくる。
例の真っ黒い稲妻で。
だけど、熱鎧に守られた私には効かないのだ。
魔法が効かない理由はさっぱり分からない。
もちろん、効き目がゼロではない。
稲妻を浴びると、がじわじわピリピリする覚はある。
だけど、それだけなのだ。
……ん?
ひょっとして、この稲妻の覚って溫泉と相がいいんじゃないの!?
「ヒゲ助、お湯で私を包んでっ!」
「今でがんすか!?」
「今よっ!」
私の指示に従って、ヒゲ助はお湯を私に出。
それは今までの普通のお湯ではなく、私を包むように空中を取り囲んでいた。
私は水の球の中にって、首から上だけを出しているじである。
ふぅううう、気持ちいい。
さぁ、聖王様、雷をよろしく!
「水に見を包んで、何をふざけている!? 貴様、戦いを汚すなあぁああああ!」
激昂とともに黒い雷の攻撃が私を襲う。
次の瞬間!
私はじる!
これまでにない、刺激をっ!
中を貫く、びりびり震える覚。
しだけ恐怖をじるけど、不快じゃない。
これはアリ!
大アリだよっ!
むしろ、気持ちいい!
私の筋を癒し、背骨から神経から癒していく覚。
「これ、溫泉に導しなきゃ……!」
このビリビリは若いに大ヒット間違いなし。
私は深く確信するのだった。
◇ 三人の剣聖、ついに暗黒水晶を破壊します!
「なっかなか、やりますねっ!」
「ぬわりゃああああ! 激々打破!」
ハンナとクレイモアは真っ黒い腕を真っ向から打ち合う。
無數の腕のきはまるで弾丸のように早く、目で追うことさえ難しい。
それらをこの二人の剣聖は弾く、弾く、弾き返す!
それでも黒い水晶に決定打を叩き込むことはできないでいた。
「な、なんだありゃあ!? 水晶が自己修復してやがる!?」
さらに悪いことには、水晶の亀裂にも黒い腕が集まって修復を始めていることだ。
まるで生きているかのような挙にドレスはうすら寒いものをじる。
カルラと燃え吉による攻撃もあとしだけ足りない。
「あとしなんですけど、きついですね!」
「ここで負けるわけにはいかないのだよっ! ララさんと約束したのだっ!」
ハンナとクレイモアはよく持ちこたえてはいた。
しかし、それはあくまでも互角の戦い。
ほんのしの打撃でもれば、狀況は一変するはずだった。
「ふむ、難儀なやつじゃのぉ」
そこに現れたのは、剣聖のサンライズ。
かつてリース王國を襲った未曾有の危機をことごとく防いだ伝説の英雄。
辺境で年老いて、そのまま死ぬはずだった幻の英雄。
しかし、溫泉の力を借りた彼は全盛期に近い輝きを取り戻していた。
「ハンナ、クレイモア、見せ場はもらうぞい!」
サンライズの剣が水晶を一閃する!
水平に両斷された水晶は黒いを垂らす。
それはまるで魔神ののようで、サンライズは眉間にシワを寄せる。
それもつかの間、水晶は々に砕けていくのだった。
【魔様の手にれたもの】
雷溫泉:電流をお湯に流して気持ちよくさせるという、普通じゃ考えられない発想のお湯。高電圧過ぎると死ぬので注意。若いに大ヒットするかは大いに謎である。
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「ベラミスの剣……!? 作者、眠明書房大全を見やがったな」
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