《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》26話 帰路と千客萬來のこと

帰路と千客萬來のこと

「帰ったぞ、イチロー」

「おつでーす」

「オツデス・・・?なんだそれは」

「ああいや、お疲れ様ですってことで・・・」

「ふむん・・・正しい日本語を使えよ、イチロー」

「ハイ」

神崎さんへの連絡が済んで、ソファーでうとうとしていたらアニーさんが帰ってきた。

結構な長話になってしまった。

『大丈夫ですか!?大丈夫なんですか!?』って、大分心配してくれたなあ。

腕も足もあるから大丈夫です、なんて答えたら『當たり前でしょう!!怒りますよ!!!!!』って言われた。

もう怒ってるじゃん・・・帰宅後が心配である。

そして今はアニーさんにジト目でダメ出しをされた。

そうだよな、外人さんなんだよな・・・

日本語上手すぎて忘れてたわ。

気を付けよう。

何を気を付けたらいいかわからない事だけが悩みである。

悩みは増える一方であるなあ。

「それで・・・船のパーツの方はどうですか?」

「ふふん・・・これを見ろ」

アニーさんはのようなドヤ顔をして、両手に抱えた段ボールを見せつけてきた。

ここからは角度的に見えないが、ぎっしりと中が詰まっていそうだ。

「ここは當たりだった。初期からゾンビが多かったせいで、ほぼ手付かずの狀況だったらしい」

「おお!ってことは・・・」

「ああ、これでとりあえずパーツは揃った。後は船に組み込むだけというわけだ」

やったぜ!

これで第一目標はクリアだ!

これまで々あったなあ・・・

「ま、完してもミサイルをなんとかせねばならんがな」

「ですよねー」

・・・これからも々あるなあ。

くそう。

恨むぜ『レッドキャップ』よ。

「っていうかミサイル陣地?でしたっけ。アレどうするんですか・・・さすがにそんな厳戒態勢に突っ込むのは無理ですよ、俺」

ラストなサムライ映畫のエンディングみたいに雄々しくハチの巣になって死んでしまう。

アレはカッコいいとは思うが、自分がやりたいとは全く思わない。

「ふふん、サムライでも難しいか?」

「サムライには『スーパーヒーロー』の意味は含まれてませんからね」

できるもんなら俺も無敵のとか目からビームとか出したいよ。

あとブレード波とか。

「実はリュウグウの・・・コホリ?と作戦を練っていてな。ミス式部経由で」

「はえー・・・もうそんな所まで」

いつの間に古保利さんと連絡を・・・

「ああ、向こうはどこだかのダムを確保するミッションの途中のようだが、それが終わり次第こちらへ注力してくれると言っていてな」

「あー・・・ダム、そんなこともあったなあ」

俺が參加するはずだった作戦だ。

鍛治屋敷とのアレで半死半生になってここへ來てすっかり忘れていた。

向こうはもう開始しているんだなあ。

なんか、申し訳ない。

まあ、俺1人いなくてもなんとかなるんじゃなかろうか?

あっちには職業軍人さんもわんさかいるし。

ライアンさん元気かなあ。

森山さんと鷹目さんのカップルも、仲良くしてるかなあ。

「遠い目をしている所申し訳ないが・・・歩けるか?イチロー」

「んえ?ああ、ちょっと考え事をしていただけなんで。うーんと・・・」

腕をグルグル回しながら立ち上がり、続けて足の狀態も確認する。

・・・う、ちょいと包帯がひきつるな。

だがまあ、こんくらいなら。

「大丈夫か?もし辛いようならおぶって運ぶが?」

「いやいや、流石にそこまでしてもらうわけにはいかないですよ。飛んだり跳ねたりしなけりゃ大丈夫です」

アニーさんがとんでもないことを提案してきたので慌てて否定する。

それだと荷持てないから往復することになるじゃん・・・

さすがにそんなことはさせられないし、何より恥ずかしくて俺が死んでしまう。

汗やらやらでべとべとのインナーを我慢して羽織り、防弾ベストを著る。

そして先程大活躍した兜割と『魂喰』を・・・おおお!?

「マジかよ・・・」

改めて確認すると、兜割になくない損傷が見える。

柄の部分は大丈夫だが、特に・・・先端から中ほどにかけての部分がまるで刃こぼれを起こしたようにでこぼこになっている。

・・・ネオゾンビの腕ソードをいなしてた時の傷だな、こりゃあ。

なんてこった、あの刃っていうか裝甲どれだけ鋭いんだよ。

ううむ、今すぐぶっ壊れるほどの損傷ではないけど・・・これは気を付けておかんとなあ。

ここが本土なら、すぐにモンドのおっちゃんとこに持っていくんだがなあ・・・

「・・・アレをいなし続けてソレなら、むしろ軽い損傷ではないのか?後ろから見ていたが、凄まじいきだったぞ」

「見てたんですか・・・お恥ずかしい。いや、これ借りなんですよねえ・・・今度おっちゃんに會ったら土下座して謝ろうそうしよう・・・」

「そうなのか?まあ、私ほどのいいを守るためにそうなったのだから誇るがいい。貸主もきっとそう言うだろうさ!」

アニーさんはドヤ顔で俺にサムズアップした。

・・・凄い自信だ。

いやまあ、確かにすっごい人だけども。

「・・・おい、冗談だ!なんとか言えよイチロー・・・これじゃあ私が馬鹿みたいじゃないか!まったく・・・そういう所だぞ!?」

「イタァイ!?」

サムズアップが手刀に変わり、俺のに軽い突きがった。

理不盡!!

「と、とにかくそろそろ行くぞ」

「は、はい・・・あの、荷

「―――私が怪我人に運搬を頼むアホだと言いたいのかキミは?」

「ハイ、スミマセン」

睨まれた。

これ以上藪をつつくと八岐大蛇とか〇龍とか出てきそう。

粛々と帰り支度を始めよう。

特にイベントもなく『佐山造船』を後にした俺たちは、來た時とは別ルートを通って帰還の途についている。

さっきは住宅街裏側通過ルートで、今回はメインストリートを突っ切るルートだ。

「うお・・・まるで殺現場だ」

そう、『レッドキャップ』がネオゾンビを當初戦わせて?いた辺りである。

明らかに弾らしきもので破壊されたスーパーのなれの果て。

そして、広い駐車場には・・・奴らが『刈り取った』ゾンビのだけが殘されている。

「ふむ・・・見ろこの傷を。よくもまあ・・・その程度の傷で済んだな、お互いに」

アニーさんが言う通り、ゾンビの死?はどれもこれも叩き潰されたようにグシャグシャになっている。

まるでアレだ・・・ビルとかを壊す鉄球でぶん毆られたみたいな有様になっている。

手足が吹き飛んだり、が破裂したり。

うーわ、これはB級ゾンビ映畫も真っ青だな。

「ですねえ。アニーさんの拳銃のおですよ」

「役に立ってよかったよ。コイツは私の最後の切り札というやつだ・・・それにしても、今更だが死やゾンビにじないなイチロー」

「ええまあ・・・憾ながら慣れちゃいましたよ。いて襲ってこないなら死の方がマシですし」

は何もしてこない。

ゾンビの方が脅威だ。

「ははは、同だ・・・慣れねば死ぬしかないしな」

アニーさんは乾いた笑いをこぼして足を進めた。

我ながらすさんだもんだ。

だが、ゾンビ騒以前にもこんなメンタリティだったような気がする。

どうりで生き辛かったわけだ、俺は。

「む、こいつは」

アニーさんがガードレールにへばりついた死を見つけた。

あ、こいつってネオゾンビに毆られてた軍人じゃん。

背骨なんて最初から存在しませんよ・・・みたいなを発揮している。

こりゃ、毆られた瞬間に死んでるな。

ある意味幸せな死に方なのかもしれん。

アニーさんはおもむろにしゃがみ込んでべりっと死をガードレールから剝がし、々はみ出た何かに頓著することもなくしている。

ためらいが一切ない。

俺もゲームとかならそうするけどさ。

「知り合いですか?」

「ああ、オークシー軍曹だ。本國からの付き合いだな」

そう言うアニーさんは無表

やはり、古くからの仲間だから何か思う所があるんだろう。

「私をレイプしようとした1人だ。ざまぁみろ」

・・・思う所、あったなあ。

金玉再起不能にされた奴だったか。

「そ、そうですか」

「ああ。もっともコイツは前からをジロジロ眺めてきた奴だからな・・・正直、いつかは襲ってくると思っていた」

ドライである。

だが、まあそうだろうな。

俺が同じ立場でもそう思うだろう。

「さて・・・弾倉と、ナイフ、レーション・・・お、痛み止めと消毒剤か、儲けものだな。はは、死になった方が役に立つなぁ、軍曹?」

結構いいものがあったようで、アニーさんはご機嫌である。

だがその表は、死とガードレールに挾まれて破壊されたライフルを見て曇った。

「はー・・・無能が。ライフル一つ守れんのか、レイプ犯め」

アニーさんは冷たく吐き捨て、死の頭を思い切り蹴り飛ばした。

蹴られた勢いで、ヘルメットがサッカーボールの如くすっ飛んでいった。

ヒエッ・・・!

「時間を取らせたな、イチロー。さあ行くか」

「アイアイ・・・アニーさん!!」

「ふふ、なんだそれは・・・ははは!」

何がツボにはまったのか、アニーさんはケラケラと笑い出した。

そんなあどけない表を見て、俺は思った。

この人には・・・いや、この人『にも』逆らわないようにしよう。

俺はそう固く心に誓った。

・・・あれぇ?逆らえない人が増えていくぞお?

フシギダナー・・・

「おっと、あそこにし寄り道していくぞ」

しばらく無人の道路に沿って歩いていると、アニーさんが立ち止まる。

が指差す先には、こじんまりしたドラッグストアがあった。

全國に展開している大規模地チェーン店だ。

見た所中は荒らされていないようだ。

ここの區畫は本當に手付かずなんだな。

「俺の手當の薬品類ですか?申し訳ない・・・」

さっき々足りないって言ってたもんな。

手間を取らせちゃうなあ。

「いや?それについてはチエコさんの家に在庫がある。あそこは細々としたものを補充するだけだ、りでね」

「そうなんですか、じゃあ俺も・・・」

手伝いましょうか、と言おうとしてアニーさんの表に気付く。

なんだかとてもニヤニヤとしている。

「ふぅん?いやまあ・・・イチローがいいなら構わないんだがね、イチローがいいなら」

「・・・何がご用で?」

嫌な予がする。

さっきみたいに俺を心配しているじじゃない。

なんというか・・・セクハラをするオッサンみたいな雰囲気をじる。

「薬品類は私が確保するから・・・そうだな、イチローがそれほど言うなら選んでもらおうか?」

「え、選ぶ?」

アニーさんはニヤニヤしながらドラッグストアの中を指差した。

「私と、リンの分をな」

その指の先にあるコーナーには、こう書かれていた。

『   用 下 著 』と。

「おっと、あまり派手なのや布が薄いものは選んでくれるなよ?ちなみに私のサイズだが―――」

「―――田中野一朗太!ここで防衛の任務に従事するであります!!!!!!!」

とんでもない報をもらいそうになったので、それに割ってった。

ホラ見ろ俺の馬鹿!!

藪をつついたらとんでもないモンスターが飛び出してきたじゃねえか!!!!

っていうかドラッグストアにそんなとんでもないタイプの下著はないでしょ!!!!!

「ははは、殘念だ殘念だ・・・それでは留守番よろしく」

「・・・ハイ」

俺は馬鹿だ。

もう不用意な発言は慎もう・・・

軽やかにドラッグストアに向かうアニーさんの背中を見送りながら、俺は長い溜息をついた。

周囲を警戒しながらアニーさんを待っていると、15分くらいで彼は帰ってきた。

々な薬品とその・・・下著を、ドラッグストアで調達したであろうエコバッグに詰め込んで。

ちょっと!けてますよ!?

もっとの濃いバッグなかったんですか!?

「大漁大漁・・・というやつだ。おや、興味津々だな・・・見るかイチロー?」

「謹んでお斷りします。まだ死にたくないので」

「ふふ、なんだこんなモノくらい。が著ていなければただの布切れだろう?」

ただの布切れが致死量になるんですよ!!

そんなことを言っても何にもならんので、俺達は早々に移を再開した。

アニーさんは拳銃を握り、回収したパーツや先程のモノを詰め込んでパンパンになったザックを背負っている。

その足取りに重そうなじは見られない。

丈夫な足腰・・・流石軍人さんであるなあ。

一方、俺といえば武しか持っていない。

これはいけない。

いけないが・・・ここで『持ちますよ?』なんて言えばどうなる?

まず間違いなく、アニーさんは下著だけを手渡してくるだろう。

俺でもわかる、この人はそういうことする、絶対する。

なので最近やっとしは空気が読めるようになった俺は、何も喋らずに粛々と歩くことにした。

「靜かだな。あの特殊ゾンビの聲には、それ以外の個引する効果でもあるのだろう」

「地區中まっしぐらってじでしたもんねえ・・・うまいこと利用できればゾンビを導できそうですけど」

海の上で大音量で鳴らして、片っ端からゾンビを水させるとか。

それができればかなり住みやすい土地が戻ってくるが・・・

「奴らがそんな平和的な利用をすると思うか?」

「ないです」

むしろ真逆の使い方とかしそう。

敵の陣地にぶち込んで吠えさせるとかしそう。

「それに奴らも制には苦労していたしな。なにしろ相手はゾンビ、我々とは違う存在だ・・・そうそう上手くいくものかよ」

の調教でも失敗して食い殺される人、いるもんなあ」

なかなか思い通りにはいかないか。

とかくこの世はままならぬってやつだ。

そんな話をしていると、の匂いが風に乗ってやってきた。

お、もうそろそろかな?

來た時とは道が違うからよくわからんな。

「もうしで港に出るな」

「やった。早く帰って風呂にりたいですねえ」

「わかっているとは思うがキミは止だぞ?汗は・・・どうせ何も言わなくてもアサカが嬉々として拭いてくれるだろうさ」

容易に想像ができる。

自分でできるんだけどなあ・・・

なんでこの歳になってJKに介護されにゃならんのだ。

もっと・・・50年くらい後なら甘んじてれたんだが。

「嫌だと言うなら私とリンでやるが?」

「救いはないんですか・・・?」

「何を言う?平常な世界ならそれなりの金を払ってやってもらうことだぞ?たちにを拭かれるんだ・・・男の夢だろう?イチロー?」

「そんな石油がいっぱい出る國の王様みたいな夢はないです」

隙あらばからかってくるなあ、この人。

今までにいなかったタイプだ。

対処法が全く分からない。

たぶん死ぬまでわからないんじゃないかな?

『いいか小僧、男はな、ある意味一生には勝てん。勝とうとも思わんがな、わしは』

いつだったか師匠が言ってたなあ。

うん、俺も同

はなから勝てる勝負じゃないんだよ。

そんな時だった。

「―――ッ!」

「アニーさん、今・・・」

先程までの空気が一瞬で変わる。

俺達は即座に道路わきの街路樹に隠れた。

車の音が、聞こえた。

息を殺して耳を澄ます。

アニーさんも同じようにしている。

「・・・中央地區、からだな」

「ええ」

ゾンビも何もいないので、音が聞き取りやすい。

容易に方向が特定できた。

「・・・おそらく6臺、ね。隨分本気だな」

中央地區の方角から、重なり合ったエンジン音が聞こえてくる。

普通の乗用車ではない。

もっと大きく、馬力のある音だ。

「イチロー、通信機の電源を切れ。ないとは思うが電波を辿られる危険がある」

「了解です・・・あ」

ポケットから通信機を取り出して電源を切った時に、俺は気付いた。

「あのゾンビが俺たちに気付いた理由って、もしかして・・・」

「・・・考えたくないが、念頭にはれておこうか。もしそうだとしたら出鱈目だが、な」

電波を察知してた・・・のか?

あのアンテナの件もあるし、あながち間違いではないかもしれない。

あの時は気付けなかったが、もしそうなら気を付ける必要がある。

「行くぞ、を屈めてメインストリートに出ないようにな」

「ラジャラジャ」

通信機をポケットに戻し、靜かに移を再開する。

奴らの目的は十中八九ネオゾンビの死骸だろうが、見つかったら何をされるかわからん。

アイツの死は路地の方にあるから、こっちには來ないだろうが。

いや來ないでください、流石にこの狀態で銃持ちの軍人に喧嘩を売れるほど馬鹿ではない。

そんなことを考えながら、音を立てないように早歩きでアニーさんについて行くことにした。

「あの、俺が漕ぎ・・・」

「ほう?下著が見たいだと?」

「言ってないですおとなしくしてます、はい」

俺達は『レッドキャップ』に見つかることもなくボートにたどり著き、音を立てないようにオールを使用して離した。

現在、もう東地區からは見えない場所にいる。

なお、ずっと漕いでいるのはアニーさんだ。

どうやら怪我人である俺にオールを任せる気は頭ないらしい。

これ以上言えばマジで下著の博覧會が始まりそうなので、もう黙る。

「奴ら、やっぱり住宅地に一直線でしたね」

「ああ、やはりあのヘルメットに発信機を仕込んでいたんだろう。おかげで我々は無事に出できたというわけだ」

あのエンジン音はメインストリートに來ることもなく、俺達が大暴れした住宅地へ消えていった。

帰るルートを決めたアニーさん、流石である。

ヘルメットぶっ壊さなくてよかった・・・壊れてたら俺たちの方まで探しに來そうだしな。

「でもこれで、俺達っていうか敵対してる存在に気が付かれましたよね」

「まあ仕方があるまい、不可抗力だ。どうせいつかは発見されるんだしな・・・しかしジエイタイをせっつく必要があるな、これは」

アニーさんは力強く船を漕ぎながら言う。

うーん・・・手伝いたい・・・でもダメ!

言ったらダメだ一朗太!!

「まあ、とにかくイチローは療養だ、療養。今回の探索でしいものは手にったしな」

「はぁい」

ですよねー・・・

先にを治しておかんとなあ。

また戦う度に傷が開いてたら目も當てられない。

いっそのこと接著剤ででもくっ付けばいいのになあ。

「おや、忠犬がいるぞイチロー」

「へ?」

気付けばもうねえちゃんの家のすぐそばまで帰っていた。

アニーさんに言われて振り返ると、砂浜には影が・・・2つ。

「おっかえりー!おっかえりー!!」

「バウ!!ウォオーン!!!」

ピョンピョンと飛び跳ねる朝霞と、同じように飛び跳ねるなーちゃんがいた。

「確かに、忠犬ですね・・・ただいま朝霞ァ!!服を著ろ馬鹿野郎ォ!!!!!!」

「上は著てるしーっ!!!!」

いつものようにラフすぎる格好の朝霞に、俺はとりあえず怒鳴ることにした。

「夜空が綺麗だなあ、なーちゃん」

「ワウ!」

「こんな日はお魚もスヤスヤだろうなあ、なーちゃん」

「バウ!ワン!」

「・・・タバコ吸っちゃダメかな?」

「ウルルルル・・・!!!」

「はーい、お姫様」

「ワフ!」

ベンチに座っている。

夕焼けはとっくに終わって、満點の星が頭上で輝いていた。

現在の俺は、上半の狀態だ。

なんでかって?

帰るなりアニーさんに傷という傷をい直されたからだよ。

薬局から回収した薬品のおか、あまり痛みはないけど・・・熱を持って気持ち悪いからな、涼んでいるというわけだ。

案の定ではあるが、朝霞によって俺の上半は綺麗に拭かれている。

自分でできるって言ったんだが、聞かない上にアイツ最後には泣くんだもん・・・

神崎さんにも無茶苦茶心配かけちまったし、反省しないとな。

なお、包帯は彼が巻いてくれた。

そちらも自分でできるって言ったんだが、凄い怖い顔で無視されました。

男田中野、泣く子と地蔵?とには勝てん。

「平和っていつ來るのかな、なーちゃん」

俺の膝にでっかいを投げ出してリラックスしているなーちゃんをで・・・ようとして逃げられた。

え!?ショック・・・消毒臭いのかな?

「ハルルルルルル・・・!!!」

かと思えば、なーちゃんは海の方を見て唸り始めた。

ああ、いつものアレか。

式部さんもよくこんな暗い海に潛れるよなあ・・・?

ん・・・?

波打ち際の方角から、ざぱりと音。

それが、『複數』

「なーちゃん、下がってろ・・・!」

ベンチに立てかけた『魂喰』を引っ摑み、ベルトへ差す。

そのまま、間髪れずに鯉口を切って抜刀した。

その間にも何度か音は続き・・・やがて足音へ変わる。

その足音も複數だ。

家の方へ走って行ったなーちゃんを確認し、ベンチの裏へ。

このまま倉庫方面に回り込んで、敵なら奇襲を・・・と、考えた時だった。

「やあ、お久しぶりだね田中野くん。とりあえずその超騒なのしまってくれない?」

闇の中から見知った顔・・・古保利さんが出てきたのだ。

足音から逆算した到著より、大分早い。

っていうか足音立ててないなこりゃ・・・流石である。

「どうも、古保利さん・・・今回は大所帯ですねえ」

俺は納刀しながら、古保利さんの後方へ目を向けた。

そこには、ニコニコした顔の式部さんと・・・顔をゴーグルで隠した何人もの自衛隊員がいた。

「ははは、そろそろ僕たちもこうかと思ってね・・・お邪魔していい?」

変わらぬ笑いをたたえながら、古保利さんはそう言った。

・・・こいつは、賑やかになりそうだなあ。

「(かかかか・・・帰って來るなり一朗太さんがセクシーであります!!眼福!!これは眼福でありますぅう・・・!!!!)」

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