《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》

僕が1人で歩いている時に限って、古賀千聖は積極的に聲をかけてくる。

「あ、楓君。こんなところで會うなんて、めずらしいね。もしよかったら、私と一緒に遊びに行かない?」

こういう時に限って誰もいないもんだから、僕自、どう対応したらいいものか、わからなくなってしまう。

せめて香奈姉ちゃんか奈緒さんがいれば、スムーズなんだけど……。

それに千聖の服裝を見れば、デートに行く気まんまんだ。

ピンクを基調としたチュニックに白のミニスカート。そして、黒のニーソックスに合わせるようなおしゃれな靴。

普段著にしては出來過ぎである。

「千聖さん。悪いんだけど今日は……。そんなに暇じゃなくて……」

「噓だよね、それ。ホントは西田先輩とデートの約束をしてるんでしょ?」

千聖は、僕の噓にも敏なのか、それでも笑顔でそう言ってくる。

怒ってはいないみたいだが……。

なんというか。

今日は、誰かと會う約束も、一緒に出かける約束もしてないし。

本當のことを言っても、たぶん信じてはもらえないだろうな。きっと──

「そんな約束は……。今日は、買いが終わったら家でベースの練習を……」

「やっぱり暇なんじゃない! だったら、私と付き合いなさいよ!」

千聖は、ギュッと腕にしがみついてくる。

の態度からして、離すつもりはないみたいだ。

どうしよう。

特にデートとかの約束はしてないから、財布の中はほとんどないし……。

僕は、正直に言うことにした。

「持ち合わせがないんだ。悪いんだけど……」

「デートのお金くらい、私が出すわよ。だから付き合って?」

通常なら、そこまで言わせて付き合わない男は、まずいないだろう。

しょうがない。

に付き合ってあげようかな。

どこまで行くつもりなのかわからないけど。

「わかった。どこに行くのか気になるけど、その前に僕の買いを──」

「ダメ。買いに付き合ったら、まっすぐ帰るしかなくなるじゃない。悪いけど、買いは後にして」

千聖は、ムッとした表でそう言う。

僕の買いをあっさりと拒否するのは、賢いと言うべきかなんというか。

大した買いじゃないんだけどなぁ。

「買いもダメなの? 一、どこに行くつもりなの?」

「それは、來てみてからのお楽しみかな。ここで言っちゃったら、つまんないじゃない」

軽くウィンクをして言われてもな。

いとは思うけど、それ以上のは芽生えないよ。

だけど千聖さんと一緒に行くしかないわけで──

「わかったよ。千聖さんに、付き合うよ」

ここまでくると、もう諦めるしかない。

しかし、それでも納得してくれないのか、僕の口元に指を添える。

「千聖、でしょ? 私と付き合うんだから、そう呼ばないと──」

「え、でも……」

「でももかかしもないよ。私がそう呼んでって言ってるんだから、そう呼んでよ」

「う~ん……。そう呼んでって言われても……。なかなか呼びにくいかも……」

「仕方ないなぁ。目的地に著くまでには、ちゃんと慣れてよね」

そんな拗ねなくても……。

僕と一緒に歩くよりも、他の人と一緒に歩いた方が、まだ千聖のためになるんじゃないのかな。

そうは思ったが、僕は敢えて口には出さなかった。

やってきたのは、ショッピングモールにある洋服店だった。

いつもは香奈姉ちゃんとかと一緒にやってくる場所だ。

「僕と一緒に來たかった場所って、ここの事なの?」

「楓君と來たかったのは、ここだけじゃないんだけど……。とりあえず、ね」

「そっか。ここだけじゃないんだ」

それを聞いて、ちょっと安心した僕がいる。

僕的には、はやく自分の買いをして家に帰りたいんだけど、千聖はそれを許さないだろう。

「ホントは、楓君と一緒に行きたいところはたくさんあるんだからね。西田先輩がついてこなければ今頃──」

「ん? なにか言った?」

僕は、思案げな表を浮かべてそう聞いていた。

最後の方の言葉は、小さな聲で言ったためか、よく聞こえなかったのだ。

香奈姉ちゃんのことを言ったような気がしたが……。気のせいか。

「なんでもないわよ。…ほら。これなんかどうかな?」

話題を切り替えるようにして、千聖は手近にあった洋服を手に取り、僕に見せてくる。

見せてきたのは、水のおしゃれな洋服にピンクのミニスカートだった。

やっぱりミニスカートは外さないんだな。

きっと彼アピールがしたいんだろう。

あざといって言われれば、そのとおりかもしれないが。

「うん。いいんじゃないかな」

僕は、微笑を浮かべてそう言っていた。

の子には相のないようにという常識が染み付いているからだ。

の子を見ると、どうしても香奈姉ちゃんの姿が重なってしまう。

それは千聖を見ても変わらない。

々、言いたいことはあるけど。まぁ、楓君がそう思ってくれてるんなら、何も言わないでおこうかな」

千聖は、しだけ不満そうな表でそう言った。

僕、なにか失禮なことを言っただろうか。

普通に返答をしただけなんだけど……。

なにを思ったのかは知らないが、千聖は試著室へと向かう。

千聖とのデートでは、そういったの機微が難しかったりする。

一応、僕も千聖が向かっていった試著室の前に行くことにする。

そして、試著室のカーテンが開いた。

そこには、千聖が選んだ洋服に著替えた彼の姿があった。

「どうかな? 似合っているかな?」

は、張した面持ちでそう言ってくる。

僕のことを信用したのかな。

とにかく。

千聖には、正直に想を言った方が良さそうだ。

「とてもよく似合っているよ」

「ホントに? 建前とかで言ってるんじゃなくて?」

「こういうのは、本音でしか言えないよ」

「そっか。本音か。ちょっと嬉しいかも──」

千聖は、そう言って嬉しそうな顔をする。

その自然な表が可かったりするんだけど……。直にそう言ったら、逆に怒り出しそうなのでやめておく。

その後、千聖は試著した服を購して、洋服店を後にする。

これでデートは終わりかなって思っていたんだけど、そうはいかなかったみたいだ。

「…さてと。次はどこに行こっかなぁ」

千聖は、僕の手を握ったままそう言っていた。

離す気はなさそうだ。

「どこに行くか決めてなかったんだね」

「そんなの當たり前じゃない。どこかに行くって決めていていたら、それこそつまんないでしょ」

「まぁ、計畫的にくっていう意味では、たしかにつまんないけど……」

「デートっていうのはね。目的地を決めてくよりも、自然な流れでいた方が楽しいに決まってるのよ」

「なるほどね」

千聖に言われて、改めてわかる気がする。

目的地を決めて行く時って、どこか作業的になってしまうんだよな。

僕も、どちらかと言えば、彼側に行き先を任せている事の方が多いし。

香奈姉ちゃんも、自然な流れで僕と一緒に歩いているんだろうか。

「さぁ、行こっか?」

「どこに?」

「どこでもいいじゃん! 行こう」

「うん」

僕は、千聖に手を引っ張られ、歩いていく。

こうして見ると、の子にリードしてもらってるようにじるが、し違う。

僕が先に歩いてしまうと、強引なじがして嫌なのだ。

基本的には、なにも変わらない。

香奈姉ちゃんも、僕の手を引いて歩く時って同じ気持ちなんだろうか。

どうにもわからない。

やっぱりの子をエスコートするのは大変だなって思う、今日この頃である。

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