《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》29話 復讐するは我にあること(キャラ別視點あり)
復讐するは我にあること(キャラ別視點あり)
「俺の苗字が石川なのは、房の実家に婿りしてたからなんだよ」
石川さんが、海を見つめながらポツリと呟いた。
「辻井・・・実家にはな、絶縁されてたんだ。當たり前だよなあ、馬鹿やって、家業も継がねえで飛び出したんだからよ」
俺に言っているようで、その実そうではなさそうだ。
まるで、自分に語りかけているようだ。
半生を、再確認するように。
「実家を飛び出してからは・・・もうその日暮らしさ。土木作業員、客引き、コンビニ店員に・・・々やったっけなあ」
視線が空へ向けられる。
「半端に覚えた空手で、夜な夜な喧嘩ばっかりしてたぜ。絡まれればどんな喧嘩でも買った・・・相手が何人でも、こっちがズタボロになってもな」
隨分と刺激的な青春時代を送ったようだ。
天のフィジカルがあったから、生兵法でも大怪我しなかったんだろうな。
そういう人ってたまにいるし。
「で、だ。一丁前に天狗になってた所に・・・田宮先生がふらっとやってきたんだよ」
石川さんは懐かしむように笑う。
「ありゃあいつだったか・・・俺ァまだ17、8の小僧だった。その日も絡んできたヤーさんを龍宮の路地裏で4人ばかしぶん毆ったっけなあ・・・」
なにやら重要な話をしているとじたんだろう。
なーちゃんは、俺の膝に頭を乗せて吠えもしない。
「『弱い者ばかり毆って楽しいか?小僧』ってな・・・急に現れたんだ。著流し姿で、扇子なんか持ってよ」
うわあ・・・師匠はそういうことする、絶対する。
まるで目の前にいるように、あのニヤニヤ顔が容易に想像できる。
「頭にが昇った俺ァよ、爺でも関係ねえ、ぶっ飛ばしてやるって毆りかかって・・・気が付いたら地面に叩きつけられてた。あん時はもう、何が何だかわからなかったぜ」
毆りかかって地面・・・うーん、『隼』か?
それとも『廻転変(まわりてんぺん)』かな?
どっちにせよ路上でとんでもない技使うな、師匠。
相手によったら必殺級の威力だぞ。
まあ、石川さんがそれを使っても大丈夫な相手だと思ってたんだろうが。
「わからねえまま散々投げられて、毆られて蹴られて・・・気が付いたら朝だった。朝日が目に染みたっけなあ、あん時はよ」
容赦がねえなあ、師匠。
「そしたらよ、俺を見て田宮先生が言ったんだ。『の底まで腐ってはおらんな。真人間とは言わんが、多はマトモにしてやろう』ってな・・・その後は気が付いたら『貫水流』の道場に叩き込まれてたってわけだ」
人生がジェットコースター過ぎる。
ほんと、フットワーク軽いなあ・・・あの爺さん。
「それからは毎日死にかけるんじゃねえかってくらい扱かれてよ・・・は、とても夜に喧嘩に出かける気力なんざなかったぜ」
噂に聞く超実戦派の猛稽古か。
南雲流も大概だけど。
「道場主・・・石川先生にはその上仕事まで世話してもらってよ、有難くって涙が出らあ」
ん?
道場主が石川って・・・ひょっとして。
「ん?ああ・・・俺の房ってのは、石川先生の娘さ」
ってことは石川さん、実質的に道場の跡取りじゃん!
仕事も斡旋してるし、よっぽど気にられたんだなあ。
「そんな顔してるとこ悪いが、跡取りは房の兄貴だぜ」
・・・拙者、顔に出すぎ問題。
「まあいいさ。ほんと・・・俺のどこが気にったのか、姫奈は出來過ぎただったぜ・・・ああ、房の名前な」
その頃を思い出しているんだろうか、石川さんはらかい笑みを浮かべている。
幸せな時間だったんだろうなあ。
「姫奈は俺より6つも年下でよぉ・・・初めは妹分みたいなもんだと思ってたんだが、いつの間にか夫婦になっちまってた。いやあ、人生・・・わからねえもんだな」
今度は苦笑している。
奧さんの方が押しが強かったんだろうか。
石川さん、意外とに敷かれるじだったのかもな。
「そんなこんなで結婚して、すぐに息子が産まれた。俺みてえな屑にならねえように、優志(ゆうじ)っていう名前を付けたんだ・・・優しくて、一本筋のある男になってほしくってな」
そこまで言うと、石川さんは酒を暴にあおった。
「実家の方とも、姫奈が々仲立ちをしてくれてな・・・絶縁もナシになったんだ。今思うと、あの頃が俺の人生で一番・・・一番、幸せな時期だったなあ」
海へ視線を向けているが、石川さんは海を見ていない。
たぶん、この世のどこへも焦點は合っていないんだろう。
「―――あの日は・・・優志の、4歳の誕生日だった」
しばしの沈黙の後、石川さんは重々しく口を開いた。
「姫奈はご馳走を作るって張り切っててよ・・・朝、俺が仕事へ出る時に『定時で帰ってきなさいよ!』って念を押してたんだ。優志も寢ぼけ眼で、『とーちゃん、いってらっしゃい!』ってよぉ・・・珍しく見送ってくれたんだ、朝が弱いってのになあ・・・」
そこでまた沈黙。
地面に視線を落とし、石川さんは何かに耐えるように震えている。
「・・・あの日はよ、現場で事故があって若いのが病院に擔ぎ込まれたんだ。俺が責任者だったからよ、病院まで付き添って・・・もろもろの手続きが済んだ時にはもう夜だった」
石川さんはまた、酒瓶を呷る。
を鳴らし、しばらく口を開いたり閉じたりしている。
「―――家に帰って、玄関を開けたら・・・部屋ん中はの海だった。そして居間に・・・姫奈と優志が折り重なって倒れてたんだ」
臓腑を引き千切られているように、何かに耐えるような口調。
こうして思い出すだけでも辛いんだろう。
家に帰ったら妻子が無殘な姿に・・・想像するだけでも、が苦しくなる。
「義父と、警察に電話したところまでは覚えてるんだ。それから・・・まるで霞がかかったみてえに記憶が曖昧になっててよ」
頭を抱え、絞り出すように言う石川さん。
俺の膝にいるなーちゃんが、小さく鼻を鳴らした。
「・・・次に頭がはっきりした時には、2カ月経ってた。病院のベッドに寢かされてたんだ・・・中に管が繋がれてたぜ」
そのままの姿勢で、話は続く。
「後で警察経由で聞いたんだがな、犯人は強盜だけが目的じゃなくってよ・・・姫奈も狙ってたみてえなんだ、自慢じゃねえが、近所でも評判の人だったしな」
「優志を人質にして、姫奈を好きにしようとしてたら・・・優志が、暴れて噛みついたらしくってな、それで・・・それ、で」
言いよどむ石川さん。
これ以上、話させるのは酷か。
「・・・石川さん、辛いならもう」
「いや、気にしねえでくれ・・・ここでやめる方が辛い。結局キレた犯人は優志を殺し、その勢いで・・・止めにった姫奈も殺した」
あまりにも痛々しい様子なので聲をかけたが、手で制された。
仕切り直すように、石川さんは喋り出す。
「今でも全く覚えてねえんだが、電話をした後に・・・俺ァ犯人と鉢合わせしたらしいんだ。奴は2人を殺した後、行きがけの駄賃ってことで家をしてた、らしい」
犯人と會ってたのか。
じゃあ、その大怪我・・・犯人にやられたのかな。
「俺の通報をけて警察が駆けつけた時、俺は犯人に馬乗りになって毆り続けてた、らしい。もうちょっとで殺すところだったみてえでよ・・・俺の方が先に取っ捕まっちまった。あとちょっと、だったのにな・・・惜しい事、したぜ、本當に」
空を見上げて、石川さんは深く息を吐き出す。
その目には、暗い炎が宿っていた。
「これも覚えてねえんだが、俺は犯人にめった刺しにされてたんだとよ。退院できた時には、裁判やらなんやら、義父と実家が手続きをすっかり済ませてくれてた・・・まったく、けねえ」
なーちゃんが石川さんに寄っていく。
心配するように鼻を鳴らし、だらりと下がっているその手をしきりに舐めている。
「いい弁護士を雇ったんだろうなあ、『心ナンタラ』とかで、結局・・・速水は無期懲役になっちまった。・・・おかしいよなぁ?人間2人殺しといて、なんで奴は死刑にならねえんだ?おかしいよなぁ」
「ええ、本當に・・・本當におかしいですよ」
俺も、領國の糞野郎を思い出した。
アイツもなんで28人も殺して、まだのうのうと生きていやがるんだ。
被害者が大勢いて裁判が長引くのはわかる、わかるが・・・それでも納得できない。
「今でも悔やむんだ。もしあの日、俺が定時で帰ってたら・・・もしも若いのが事故に遭わなかったら・・・2人はまだ生きてたはずだ、ってなぁ・・・正面からカチ會えば、あんな屑のチンピラなんざ、瞬殺してやれたのに・・・そう、いつもいつも考えちまう」
「・・・俺も、俺もそうですよ。もしあの時一緒にいたら・・・ってね」
俺は石川さんと違ってガキだったし弱かったが・・・それでもそう思う。
たとえ死ぬことになっても、を張って彼を守れたんじゃないかって。
たらればの話だが、それでも・・・
「―――だからよ、俺ァ必ず奴を殺す。誰に止められようが、向こうに取り巻きが何人いようが関係ねえ、この手で・・・この手で奴の脳天を砕いてぶち殺してやる」
石川さんは、その大きな拳をぎちりと握りしめた。
真新しい拳ダコがいくつもある、その拳を。
今でも、稽古は欠かさず続けているらしい。
「義父は神的に弱って・・・急な病気で死んじまった。オヤジもオフクロももういねえ・・・だから、俺に殘されたのはソレしかねえんだ」
「訳知り顔で『復讐なんかしても、アイツらは喜ばねえ』なんてほざく輩が何人かいたよ。道場や職場の同期とかな・・・義理の兄貴、今の道場主にもそう言われた」
「ふざけるんじゃ・・・ふざけるんじゃねえや・・・!!」
がつん、と地面に落とされる拳。
「喜ばねえだ?當たり前だろう・・・んなことは言われなくてもわかってんだ!アイツらは・・・姫奈と優志は人の不幸を喜ぶような格じゃあなかった!!俺みたいな屑と違って!誰からも好かれるいい奴らだったんだ!!!」
再び、地面に拳が打ち込まれる。
驚くべきことに、い巖盤に激突しても・・・石川さんの拳はビクともしていなかった。
心配そうななーちゃんの頭を一でして、彼は恐ろしく低い聲を絞り出した。
「―――そんな優しい2人を、速水は殺したんだ。許せるかよ、これが」
まるで、地獄の底から響いてくるような聲だった。
を吐くように、絞り出した聲だった。
・・・俺も、領國のことを式部さんたちに話した時はこんなじだったんだろうなあ。
「田中野さんよ」
そこまで話すと、石川さんは俺を見た。
そのまま、流れるように土下座の勢へ。
「俺にできるこたあなんでも、なんでもする。だからよ・・・アンタらが『北』の連中と事を構える時は、俺も一枚嚙ませてくれ!この通りだ!!」
「い、石川さん、頭を上げてくださいよ・・・」
「いいや!『うん』と言うまで俺ァこのままだ!頼む!一生のお願いだ!・・・俺の人生には、もうこれしか殘っちゃいねえんだよ!!」
・・・參ったなあ、俺にはそんな裁量権はないんだが。
っていうか・・・
「あの、そもそもですね。俺はハナから石川さんを止めるつもりなんてサラサラないんですってば・・・さっきも言いましたよね?」
石川さんが森山(弟)級のクソ雑魚戦闘力なら話は違う。
あまりに実力差があると、足手まといになる。
これからかち合う『レッドキャップ』の場合、そうした綻びは味方全員を危険に曬すのだ。
だが、この人は違う。
俺が反対する理由なんてどこにもない。
「いいじゃないですか、復讐」
そう言うと、石川さんは顔を上げた。
「・・・俺たちの大事な人は、結局もう何したって戻ってきやしないんですよ」
夕暮れの教室を幻視する。
あの子を思い出す時は、いつだってこの景だ。
他にも々楽しい思い出はあるけれど、ここぞという時に思い出すのはあの景。
「だったら・・・何しても、戻って來ないんなら」
歯を噛み締め、あの子を想う。
小さいまま、永遠に時の止まったあの子を。
可能に満ちた未來へ、足を踏み出せなかったあの子を。
「復讐した方がスッキリするでしょ・・・それに何より」
思い出すあの子の表は、いつだって笑顔だ。
毎日が楽しくてしょうがない、世界がしくてしょうがない・・・そんな風に笑うだった。
「俺達からそれを奪った相手が、のうのうと生きてるなんて・・・我慢、できない。今この瞬間、呼吸しているのだって許せない」
その笑顔を、領國は奪った。
石川さんの家族の笑顔を、速水は奪った。
それが、許せるか。
社會通念や法律、モラルなんて知ったことか。
命は、命によってしか償えない。
いや、償いじゃない。
そうしないと、帳が合わないじゃないか。
「たとえ神や仏が許したって、俺は許しませんよ。もしもアイツが何かの間違いで刑期を終えてシャバに出て來て、罪を償ったんだって言われても・・・決して俺だけは許しません。世界中の人間に後ろ指を指されたって、絶対に許さない」
俺の表に思う所があったんだろう。
いつの間にか、石川さんは土下座を止めていた。
「―――やっちまいましょうよ、石川さん。俺たちの手で、外道共を地獄に叩き落としてやりましょう」
そう言って、俺は手を差し出した。
それを見た石川さんは、にやりと笑って俺の手を摑む。
「・・・おう、やってやろうじゃねえか!」
「ええ!」
夕に照らされて、俺達はく握手をわした。
なーちゃんは、どこか悲しそうにそんな俺たちを見つめていた。
「それじゃあよ、乾杯といこうや」
握手からしばらく経って、石川さんはそんなことを言い出した。
「俺たちは似たようなモンだ。いっちょ、親睦を兼ねてな」
そう言いつつ、石川さんはクーラーから酒瓶とコップを取り出す。
え、俺も飲むの?
「心配すんなって、ほんの形だけさ。俺ァ普通に飲むがね、田中野さんは怪我人だし舐めるくらいでいいだろう?」
その手に持つコップには、確かにほんのしだけ酒が注がれている。
うーむ、まあそれくらいなら・・・いいか。
「ホレよ・・・それじゃあ、お互いの大願就を祈願して・・・」
渡されたコップを持ち、酒瓶と打ち合わせる、
きん、と澄んだいい音がした。
「「乾杯!」」
生臭すぎる願いを持った俺たちは、同時に酒をあおった。
うわ、このお酒キッツ・・・あ、そういえば度數のこと、わす、れ・・・
そんな想を抱いたきり、俺の意識はゆっくりと闇へ沈んだ。
・
・
・
・
(神崎視點)
「おーい!誰でもいい!すまねえがちょっと手伝ってくれねえか!?」
荒川さんの家の庭で燻製機の準備をしている私に、砂浜の方から聲が聞こえてきた。
あの聲は・・・ご近所の石川さんだ。
田中野さんとは詩谷の頃に出會ったようで、こちらで再會してからもよく話しているのを見かける。
「はい、なんでしょう・・・か!?」
立ち上がった私の目に飛び込んできたのは、石川さんに肩を貸されて歩く、ぐったりした田中野さんの姿であった。
全の力が抜け、立っているのがやっとという狀態だ。
ひょっとして怪我が悪化したのか。
それとも事故か。
そんなことを瞬時に考えると同時に、私は走り出した。
「にいちゃんっ!?どしたのっ!?」
倉庫の方から朝霞さんも駆けだしたのが見える。
距離的には倉庫の方が近いので、あちらの方が早く著くだろう。
「ああ!朝霞ちゃんに自衛隊の姉ちゃんか!・・・いやあ、俺もここまで田中野さんが弱いとは思わなくてよ・・・」
石川さんはそう言いながら、申し訳なさそうに片手で頭を掻いている。
・・・弱い?
ひょっとして組手のようなものでもやったのだろうか。
石川さんは空手の実力者だと田中野さんが言っていた。
だが、果たしてあの狀態の田中野さんが組手など所するだろうか?
「にいちゃんっ!にいちゃんだいじょぶ!?イワおじさん!にいちゃんに何したし!!!」
いち早く石川さんの目の前に到著した朝霞さんが、猛然と食ってかかっている。
日頃から、田中野さんを兄のように慕ってべったりとくっ付いている彼。
彼のこととなると、周りが一切見えなくなってしまうらしい。
「いやあ・・・それがよお・・・」
石川さんが困ったように口を開いた瞬間。
「う?うぇええ~い!あさかじゃ~ん、げんきにしてりゅか~???」
肩を貸されて俯いていた田中野さんが、急に両手をばして朝霞さんの顔を摑んだ。
「にゅえっ!?に、にいちゃんちょっと・・・うぴゃあ!?くしゃい!!にいちゃんすっごい酒くしゃい!?」
「にゃんだよ~くしゃいとはひどいじゃないかあ~うりうりうり~」
田中野さんはそのまま朝霞さんをにぎゅっと抱きしめた。
・・・う、羨ましい!!
「にゃあああう!?嬉しいけどぉ!!嬉しいけどにいちゃんが変だよォ!!」
「みゃだそんにゃこといってるにょか~?うぅい~、ああ^~せかいがまわるんじゃあ^~」
田中野さんは朝霞さんに重を預け、わしゃわしゃと頭をでている。
・・・普段とはまるで様子が違う。
それに先程の朝霞さんの言葉・・・
「あの、石川さん・・・まさか田中野さんはお酒を?」
苦笑いをしている石川さんに聞く。
羨ましすぎるので、朝霞さんの方は極力見ないこととする。
「ん、ああ・・・ちょっと舐めるくらいの量を飲ませたんだけどよ。急に『うまい!うまい!』って騒ぎだして・・・まるで水みてえにガボガボ飲んじまってな」
ホレ、と言って石川さんが見せてきたのは、小さな酒のボトル。
・・・噓でしょう!?アルコール度數が55%ですって!?
この緑・・・叔父がいつだか飲んでいたのを見た記憶がある。
かなり強い酒らしく、ゆっくりゆっくりと飲んでいた。
・・・このキツいリキュールをそんなに一気に飲んだのですか、田中野さん!?
「これを一気に・・・急アルコール中毒が心配です!水を飲ませなければ!」
「すまねえな、姉ちゃん・・・てっきりいける口かと思ってよ・・・俺ァ他の荷を運んで來るんで、田中野さんを頼むぜ」
「はいっ!」
申し訳なさそうな石川さんを目に、私は家まで走った。
騒ぎを聞きつけてか、家からは千恵子さんと・・・式部陸士長が庭に出てきている。
「二等陸曹?何か問題でも・・・?」
「陸士長!ペットボトルに水を!田中野さんが過度な飲酒で酩酊狀態!」
「りょ、了解でありますっ!!」
すぐさま家に走り込む陸士長。
行が早くて助かる。
「あらあら~、そういえばいっくんはもうお酒が飲める年齢だったわねえ~」
どこか嬉しそうにする千恵子さん。
「田中野さんは、私が知る限り飲酒することはありませんでした!日頃から飲んでいない方は、加減が分からずに大変なことになる場合も多いのです!」
「あらあら、それじゃあお布団用意しておかなきゃだわ~、それにバケツも~」
千恵子さんはそう言うと、ゆっくりと家に戻って行った。
・・・が大きいというか、なんというか・・・
「お水でありますっ!」
陸士長が戻って來たので、すぐさま連れ立って向かった。
「ううう・・・にいちゃん、ほ、ほんとにだいじょぶぅ?」
「らいじょうぶらいじょうぶ~うへへ、あさかはいいこだなあ~よしよし~」
「あやややややや・・・あばばばばばば・・・」
「キュゥン・・・」
田中野さんたちの所に戻ると、彼は朝霞さんを抱きしめたまま地面に転がっている。
彼は抱きかかえられてで回され、真っ赤になって痙攣している。
その橫で、なーちゃんが心配そうに伏せている。
・・・とても、とても羨ましい!です!
「なんと・・・なんと!羨ましいでありますっ!!」
私よりもよほど素直な陸士長は、のままにんでいる。
そういう所は、純粋に尊敬する。
「おいおいおい、なんだこの狀況は・・・イチローがプレイボーイになっているぞ」
いつの間にか、私の橫にはアニーさんがいた。
「どうも、強いお酒を一気に飲んでしまったようで・・・」
「・・・idiot!怪我人の癖に、死にたいのかあいつは?」
形のいい眉を顰め、アニーさんはどこか嬉しそうにそう言った。
出來の悪い弟でも見ているようなじで。
「一朗太さん一朗太さん!はい!お水でありますよ!!」
「おみずぅ~?」
陸士長が駆け寄り、ペットボトルの封を切って田中野さんに差し出している。
「んあ~・・・てがふさがってましゅ、すんましぇん・・・のませてつかぁさい」
「ヒュゥエ!?」
田中野さんは、陸士長に向けて大きく口を開けた。
電撃に打たれたように、彼は妙な悲鳴を上げて大きく跳ねる。
「あ~・・・」
まるで餌を待つ雛鳥のように口を開けた、顔を真っ赤にした田中野さん。
・・・いつもと違って、フラフラしていて、ぽやぽやしていて・・・隙が多くて・・・!
た、大変かわいらしい!かわいらしいです!!
「ど、どどどど、どうぞぉ・・・」
若干腰が引けた陸士長が、ゆっくりと水を飲ませている。
田中野さんは味しそうに目を細め、されるがままだ・・・
「ふふ、なんともかわいらしいな・・・そうは思わないか、リン」
「ええ!ええ!とても!!」
思わず全力で同意してしまった。
それくらい、今の田中野さんは破壊力が高い。
「んぐ・・・ぷはぁ・・・おいしぃい~、ありがとうごじゃいます、しきぶさぁん」
「エンッ!?!?!?」
謎の聲を出したきり、陸士長はその場に腰を下ろした。
・・・その気持ちは、わかる。
「い、一朗太さん、あ、あの!とりあえず家に帰りましょう!こんな所で寢ると風邪を引くでありますから!!朝霞さん!手伝ってください!!」
「むりぃい・・・あーし、腰が抜けて立てないぃ・・・たしゅけてぇ・・・」
いかん、出遅れた!
私も行こう・・・!!
陸士長と力を合わせて2人を抱え上げ、田中野さんに両方から肩を貸す。
朝霞さんは本當に腰が抜けているようで、アニーさんが苦笑しながら背負っていた。
「にゃにから、にゃにまでぇ・・・おふたりともぉ、すみまっしぇん・・・」
夢うつつの狀態で、田中野さんは言う。
ううう・・・!顔が近いです!息がかかります!匂いもします!これ以上はが持ちません!!
「きっつい・・・コレきっついであります・・・二等陸曹、じぶ、自分はもう駄目かもしれません・・・!」
「・・・その気持ち、わかるわ陸士長・・・!これは、脅威ね・・・!」
肩越しに彼の溫をじる。
・・・田中野さんには申し訳ないけれど、ずっとこのままでいたいと思ってしまう・・・!
陸士長やアニーさんがいるおで、なんとか平靜を保っていられるけれど・・・!
「無防備一朗太さん・・・!強敵でありますぅ・・・!」
「ええ、本當に・・・!」
なんとか庭まで戻り、居間に田中野さんを運ぶべく窓に手をかけた時だった。
「かんざきしゃん・・・しきぶしゃん・・・いつも、いつもありがとうごじゃいます・・・おれ、おれもっと、もっとがんばりましゅから・・・みすてないで、くらしゃい」
「ひゅい!?」「~~~~~ッ!?」
なん、で!
なんでこのタイミングでそんなことを言うんですか!田中野さん!!
私達の理を々にする気ですか!!
悪魔ですかあなたはっ!!!
「あにーしゃんも・・・おてすう、おかけしましゅ・・・」
「はいはい、してるよイチロー」
アニーさんはなんてことないように返している。
お、大人だ・・・凄い。
「うううう・・・じ、自分はぁ、明日死んでもちょっぴり悔いが殘らないでありますう・・・」
「陸士長!足をかしなさい・・・!悔しいけど聞いては駄目!」
「ひゃいい・・・!」
その場に崩れ落ちたくなる気持ちに鞭打ちながら、私はひたすら足をかした。
「ふふ、まったく・・・馬鹿面だな」
居間に寢かされた田中野さんは、心から嬉しそうな顔をしてむにゃむにゃと寢言を呟いている。
そんな彼を見ながら、アニーさんが苦笑している。
「にゃむ・・・」
ついでとばかりに、朝霞さんはそので眠っている。
歩けるようになった瞬間には、もう布団に潛り込んでいた。
とても、とても羨ましい。
「二等陸曹・・・」
橫から、陸士長が神妙に聲をかけてきた。
「一朗太さんにお酒、飲ませるのは大変危険であります・・・気を付けましょう」
「ええ、本當に」
私は、そう答えることしかできなかった。
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