《ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からのり上がり~》人はそれを忘れたって言うんだよ
集中する。
何処までも深く。
何処までも意識の奧へと沈み込むように。
こうか!?
「違います」
「アイタッ!? いい加減叩くのやめて貰えませんかね!?」
「白亜さんは口で言うよりもに叩き込んだ方が覚えが良いんですよ」
「いや、そんなことはないと思いますが?」
「統計が出てます」
ド畜生そんな風に言われたらなんにも言えない。
「ミコトも、それでは白亜さんと同じで力を纏って強化しただけですよ。天蓋は神力の厚みをもっと持たせて、力そのもので結界のようにけ、攻撃にも転用するのです」
私と同様、龍神の娘であるミコトは神力を持っている。
ここ數日の修行で【霊圧】スキルを獲得したミコトも、霊力をほんのし使えるようになったので、私と同じように天蓋を取得する為、一緒に修行している。
「はい」
そう。気や魔力での強化はあくまで強化に過ぎない。 これは仙力やマナ、鬼力や竜力であっても変わらない。
強化とは元からあるものを強くすることであり、それでは私のような奴は頭打ちになる。
それをどうにかする為に天蓋を教わっているのだから、天蓋はそれらとは別種の力ということが分かる。
天蓋はの強度に因らない、力そのものでり立つものだ。
と、言うか……。
「……すいません。なしてミコトは口頭注意で私はゲンコツ落とされますの?」
「……統計が出てますので」
「明らか過ぎる差別!?」
私も口頭注意で済ませてしい!
「ダメです」
「酷い!?」
「ほらハクちゃん。こうだよこう」
扱いの違いに喚いていると、天蓋を纏ったソウが後ろから抱き著いて來た。
「クソぅ。そんな簡単に出來ねーってばよ。って、あれ?」
「どうしたの?」
「いや、なんかじが違う?」
後ろから抱き著くソウに重を預けると、テアとの違いに気が付く。
「……おや? それは私のが小さいと言いたいのかな?」
「ちゃうがな」
小さいのは小さいので趣があるんですよ。って、そうじゃなくて。
「ソウの天蓋とテアの天蓋が違う気がすんだけど? 同じ技の個人差ってよりも、本からなんか違うじ? もっと言えば神力自ちょっと違う?」
今までは全く気が付かなかったが、何故か今になって急にそんな気がしてきた。
「思えば、個人の振り幅の範囲ではあるけど、鬼神と龍神のも全く質が違った気がするんだよね。今更だけど」
「……ハクちゃん。よく気が付けたね?」
「ってことはやっぱ違うの?」
「うん。それぞれ質が違うからね。普通は気が付けないよ」
なんとなく気になったから聞いたけど、どうやら普通は気が付かないレベルのようだ。
「質ってどういう事?」
「私は人間、テアさんはものすっごい神、鬼神は鬼で龍神は龍って事」
「全くわからん。ハクアは分かるか?」
「うーん……つまり、神力は力の行き著く先。気力、魔力、仙力にマナ。霊力も含めそのほか全ての力も神へと至る際に神力に転化、もしくは昇華するって事?」
「……いやー、だいぶ端折ったのによくそんな考えに至るね?」
「説明するなら端折ったりすんのやめて貰えません?」
どうやら合ってはいたらしい。
しかし頑張って理解したのに文句言われるとか酷すぎないだろうか?
「白亜さんの言う通り神力は培った力の行き著く先です。さて、ここで白亜さんならおかしなことに気がつきますよね?」
「おかしな事?」
「私とミコトの二人が神力を持ってる事でしょ」
「それはわしは父上からけ継ぎ、ハクアは───」
「駄神から直で奪った」
「う、うむ。今更だけど凄い事しとるな」
本當に今更だからそこにはれなくて良いんだよ。
「んで、ミコトの言う通りだけど、何が問題かって言うと、私達の神力は純粋に私達の力じゃないって事でしょ」
「ええ、そうです。ミコトは龍神の、白亜さんはシルフィンの力ですね。今後、ハクアさん達が自力でこの領域まで來ればその時は、今の神力と自の神力が溶け合い、更に強くなりますよ」
「ほほう」
「途方もない話じゃな」
「しかし質かぁ。私達はどうなんだろ?」
「白亜さんは勿論ですが、龍神の神力も質は高いですよ。白亜さんに至っては鬼と竜の質に、神獣としての力までありますしね」
「そうそう。ただの人間だった私よりも質は高いんだよ二人は」
「ほう。それで何が変わる?」
「んー、そうだね。神力は神になってからも力を付ける事で質は高く出來るけど、純粋に質───純度が高い方が威力や効果は高くなるね」
「魔力よりもマナの方が強いけど、扱い難しいじ?」
「厳には違いますが、理解としてはそれでも良いでしょう 。まあ、それと天蓋の習得には全く関係ありませんが」
「そうなん?」
「ええ、そうですね。屬の偏りと言えばわかりやすいですか?」
「ああ、天蓋として使ってる時の數値に変が出るだけか」
理攻撃、魔法攻撃、理防、魔法防それぞれに得意な部分が違って來るのだろう。
もしくは種族毎に特効が乗ったり、耐もあるかもしれない。そのほか考えられるのは屬の偏りなんかだろうか?
「うん。そんなじ」
「だから頭の中を読むのをやめろと言うに」
「とにかく使えるようにならねば分からぬという事か」
「だーね」
「テア様、サトコ様、しよろしいですか?」
話しながら修行を続けていると、そこにおばあちゃんがやって來た。
「どうかしましたか?」
「ええ、そろそろハクアちゃんとミコト様にはここに來た目的を果たして貰おうと思いまして」
「……遂にか」
そうかそうか、遂に來たか。うん、そっかー。
「……ハクア。雙龍の儀だよ」
「いやいやミコトさん。いちいちそんな事言わなくてもちゃんとハクアさんは理解していますのよ? ちょっと頭の片隅に追いやってたら、報さんが引きこもって出て來てくれなかっただけで」
「人はそれを忘れたって言うんだよハクちゃん」
「マジかよ。知らんかったわぁ」
「あらあらウフフ。ハクアちゃんったら、もう二度と忘れないようにしてあげましょうか?」
「あっ、大丈夫です。もう立派に前頭葉まで働きに來てるので」
「あら、意味はよくわからないけど殘念ね」  
危ない。
いつも通りの笑顔だけじゃなくて、の中でものすごいエネルギー溜めてたよ。あれ確実にふざけた事言い続けたらブレスコースだった。
「で、それって何すんの?」
「うっ、それはわしも知らん」
「なんだ。私と大して変わんないじゃん」
「わしはちゃんと覚えていたが?」
「その先知らないんだったらほぼ一緒一緒」
「納得いかない」
「世の中そんなもんだよ」
世知辛いね。
「じゃあおばあちゃん教え───」
直に従いその場を大きく飛び退る。
その次の瞬間、私が立っていた位置が発したように土煙を上げる。
「くかかかか。今のをよく避けたな!」
土煙の中、悪びれもせず現れたのは火龍王だ。
「やり過ぎだ」
そんな言葉と共に現れた地龍王。
しかしその目はこちらを見定めようとする意思がじられる。
「なんの音っすか!?」
火龍王の攻撃音を聞いて全員が集まり、シフィーもおばあちゃん達龍王の側へ付く。
そして───
「雙龍の儀の容は簡単よ。私達、龍王の出す試練に合格すれば良いだけなのだから」
こうして雙龍の儀が突然始まる事になったらしい。
それ絶対、簡単じゃないんですけど。
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