《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》特別編 大木政宗はそこそこ靜かに暮らしたい

特別編 大木政宗はそこそこ靜かに暮らしたい

「どこ行きやがったあの野郎!!」

「探せ!!まだそこらへんにいるはずだ!!」

「逃がすんじゃねえぞ!!」

・・・いませんよ~、僕はいませんよ~

やあみんな、僕の名前は大木政宗。

未來の超有名配信者を目指す、ちょっとのあるナイスガイさ。

今日は趣向を変えて久しぶりに街中の探索畫を撮影するために、結構遠出したんだけど・・・

―――現在、どう見ても頭の悪そうなチンピラ集団に追い回されております。

はあ、どうしてこうなった。

まだここからけそうもないので、ちょっと回想シーンでもれておこうかな。

「あら大木さん、その恰好ってことは今日はお出かけですね?」

「あっはい。し遠出する予定なんですよ~」

いつものように起床し、支度を整えて高柳運送に向かった。

今日は遠征するので、出発報告をするためにね。

報連相はしっかりしないと。

勝手知ったる門を開けると、丁度畑仕事を終えて社屋にろうとしている七塚原さん夫婦に出會った。

子供たちはまだ夢の中かな・・・早朝だし。

「おまーも、いい加減自由人じゃのう・・・まあ、が守れとるけぇ大丈夫じゃろうが」

奧さんのさんに続き、方言のキツイ七塚原さんが心配そうに聲をかけてくれた。

七塚原さん、相変わらずでっかいなあ。

ほんとに僕や田中野さんと同じ人類なんだろうか。

「へへへ・・・どこかの田中野さんと違って僕はすーぐに逃げますんでね」

「そっちの方が長生きできるけぇな、普通は」

田中野さんが牙島に封印・・・じゃなかった隔離されてからしばらく時間が経つ。

早いうちに連絡ができるようになったので、子供たちもようやく落ち著いてきた。

・・・神崎さんや式部さんが向こうに行ったってのもあるんだけどね。

子供たち、田中野さんのことは大好きだけど・・・最近気付きつつあるんだよね。

『あ、この人は無茶ばっかりするタイプの人なんだ』ってね。

だから、ストッパー役の神崎さんたちがいれば安心って考えてるんだと思う。

通信機越しとはいえ聲が聞こえるからか、サクラちゃんも落ち著いてきたし。

連絡取れるまで、ほんっとにかわいそうだったなあ・・・璃子ちゃんも同じようなじだったけれど。

されてるねえ、田中野さん。

「その田中野さんなんですけど、親戚のギャルとか謎の外人を引っ掛けたってマジなんですか?」

「凜ちゃんが言ってましたから本當ですねっ!んふふ・・・春ですねえむーさん!」

「とっとと誰かとくっ付きゃいいんじゃけどのう」

ギャル參戦!!外人參戦!!

・・・あの人は死にかけてまで一何をやってるんだろう。

自己評価が恐ろしいくらい低いのが悪いよね。

「無自覚すぎるんですよ、田中野さんは。ある程度なんでもできるし、クソ強いし、カッコいいし、それでいて基本優しいんですからねえ・・・そりゃ、モテますって」

でも『俺がモテる?がはは、ないない』なんて心の底から信じ込んでいるある意味ヤバい人だ。

自分でも言ってたけど、頭のネジも吹き飛んでるし。

「そうですねっ、田中野さんはむーさんの次くらいにはかっこいいですもんねっ!」

さんの場合、1位と2位の間にマリアナ海くらいの隔絶があると思うな。

「ソッチ以外にゃあ、そこそこ鼻も効くんじゃが・・・あればっかりはのう。いっそのこと神崎さん辺りが告白でもすりゃあ、さすがに気付くんじゃろうが」

「つっても神崎さんも神崎さんで奧手じゃないですか。付き合いは短いですけど、式部さんもその口でしょ?・・・まあ、式部さんは盲目的というか妄信的というか・・・」

あれは崇拝に近いだと思うなあ。

まあね?わかるよ?

思春期に、危うくレイプされそうな所を、縁もゆかりもない男が八面六臂の大暴れして助けてくれたんだしさ。

しかも田中野さんは傷だらけになって院したって言うし・・・完全に王子様じゃん。

そりゃあ惚れるよ。

田中野さんはいたいけな緒をズタズタにした責任を取るべきだと思う。

前に式部さんにこっそり聞いたことがあるんだ。

『ライバル多いですよ』ってさ。

・・・そしたらなんて言ったと思う?

『ふふぅふ・・・當たり前であります!田中野さんは最高の男でありますから!自分は、その末席にでも加えていただければいいのであります!!』

・・・どう思う?この覚悟の決まり様は。

ハーレム容認派ですよあの人。

やったね田中野さん・・・でも、あの人にとってそれがいいのか悪いのかってことだよねえ。

でも・・・ぶっちゃけそれ以外でうまく収まる未來が見えないんだよね。

強く生きてね、田中野さん。

「む、カメラ小僧もいる。3人集まって何かの悪だくみ?」

うわあ・・・後藤倫さんも出てきた。

・・・そういえばこの人はどうなんだろう?

憎からずは思ってるはずなんだけど・・・聞くのがコワイ。

質問の仕方を間違えたら肩くらいポンと抜かれそう。

そういえば『あの人、俺への當たりがキツすぎない?』なんて、田中野さんは言ってたけどさあ・・・そこそこ長い付き合いだから最近わかったことがある。

いやいや甘々でしょ、ぶっちゃけじゃれてるようなもんじゃないですか。

田中野さんと同じこと、もしもそこら辺の人間がやったらなんて考えると・・・ひぃい、想像もしたくないや。

「田中野さんがモテモテってお話ですよっ、綾ちゃん!うっふふ~」

「・・・田中が?またでも引っ掛けたの?」

うひぃ・・・後藤倫さんの目が怖いぃ。

こういう質問はさん以外だとマジで鬼門だね。

七塚原さんなんて何も言わないように気を付けてるっぽいし。

かしこい。

僕も見習おう。

「いっそのこと、綾ちゃんも牙島に行ったらどうですかっ?」

「ふ、ふむ・・・向こうもいいじにきな臭くなってるって聞いてるから、遊びに行くのもいいかも」

「うーん!素直じゃないんですからっ!」

さんが後藤倫さんに抱き著いた。

・・・すっご。

何にとは言わないけど、後藤倫さんの頭が埋まってるや。

が凄い。

「むむむい!もももも!!」

に埋まった後藤倫さんが何やら抗議している。

「・・・じゃ、じゃあ、僕はそろそろ出発しますんで~。お土産持って帰ってきますね~」

これ以上ここにいても何もいいことはなさそうだ。

大木政宗はクールに去るぜ。

「おう、気を付けて行くんで。おまーはひ弱なんじゃけえな」

そう言って、七塚原さんが手を振ってくれた。

ひ弱・・・ひ弱ねえ。

そりゃね!南雲流に比べたら大の人類はひ弱ですよね!!

ツッコミを口に出さず、僕はとっとと出発することにした。

相変わらずさんの母に挾まれている後藤倫さんが何か言っていたような気もするけど、どうせ甘いモノを持って來いって言ってるんだろうさ。

もちろん、最優先で確保しますよ僕は。

まだ死にたくないんでね。

さーて、今日も元気に畫撮影といきますか!

というわけで車のバイクを駆り、龍宮のビル街へやってきた僕。

田中野さんたちがやべー奴らを掃除してくれたおかげで、龍宮の危険度は若干マシになっている。

『若干』だけどねー。

ヤクザとか『みらいの家』がトップクラスにヤバかっただけで、チンピラはまだまだいる。

元々半グレだったようなのとか、世界がこうなってからヒャッハーしているような連中だ。

ま、僕はそういう人種には鼻が利くから、遭遇しないように気を付けているんだけどね。

今日の撮影の趣向は『ビル街の探索』

イイモノが殘ってそうな場所を、実況中継しながら歩き回るんだ。

車は有料駐車場の片隅に隠して、歩きで探索する。

もちろん防犯対策は萬全。

僕の持ってるキー以外でエンジンをかけようとすると、非合法レベルの電流が流れまーす。

そのままこんがり死が出來上がるって寸法だよ。

「それでは、今日の探索開始でーす。さてさて、サバイバルに役立つものは見つかるんでしょうか・・・」

首元のマイクに小聲で話しつつ、僕は探索を開始する。

周囲にゾンビの気配が無さそうな時は直接、ゾンビがいる時は編集で音聲を付け足す方式。

これが一番楽だよね。

景気のいい効果音なんかもふんだんに使ったりしてさ。

世界がヤバくなる前に音聲素材いっぱい買っててよかったぁ。

「むむっ!正面に見えるのは・・・和菓子の『ミツマタ』です!これは期待大・・・甘味の在庫がありそうですねー!」

ビルの谷間に、和菓子屋発見!

・・・ま、元々リサーチはしてたけどね。

畫にはライブも重要だと思うの。

「知ってましたか皆さん?蜂の賞味期限ってむっちゃ長いんですよ~?サバイバルには最適!」

そう言いつつ、マイクを切る。

この先は無音だ。

後でスリリングなBGMも追加で編集編集っと。

和菓子屋に向かいながら、左腕に裝著したスリングショットをいつでも撃てるように組み立てる。

ベアリング弾を裝填し、発制は完了。

街路樹の影に隠れ、しゃがむ。

軽く息を吸い込んで弓を引き、窓に向かって発

3発続けざまに窓ガラスに弾がめり込み、がしゃんと音を立てて盛大に割れる。

すると、店の奧で何かがいた。

「ガアアアアアアアッ!!!」「ゴゴゴガガガガガガガ!!!!」「ギャババババババババアバ!!!」

すぐさま割れたガラスから、道にゾンビが3お出ましだ。

・・・店の中にはあれだけかなー?

しばらく待っておかわりがいないのを確認し、スリングショットを別の方向へ向ける。

次に裝填しているのは・・・薬品をゴニョゴニョして作った癇癪玉みたいなもの。

店から遠く離れた場所を狙って放つと、赤い玉が放線を描いて飛んでいく。

それが地面に落ちると、ぱぁんという景気のいい破裂音がした。

「ガアアアアアアアアアアアアッ!!!!」「グオ!!グオオオオオオオオオ!!!」「アギャアギャギャアギャギャギャ!!!!」

ゾンビ共は元気に音の方向へダッシュ。

それを見ながら、そのもっと先へもう1発撃つ。

再び鳴り響く破裂音に、ゾンビはお行儀よく並んで走り去っていった。

おー速い速い。

・・・よしよし、後続はいないね。

周囲からのおかわりもゼロ・・・っと。

進もう進もう。

「見てくださいよ皆さん!ほとんど手つかずの狀態です!うはぁ~、寶の山ですねえこれは!イェイイェイ!!」

はさっきのゾンビ以外はいなかったみたい。

店員さんだったのかな、あのゾンビ3は。

うーん、開店時間が遅い店は平和でいいよね。

ゾンビ発生は、今まで僕が調べた限りだと午前9時30分から10時までの間の可能が高い。

驚くべきことに、龍宮、詩谷、それに秋月・・・直線距離で10キロ前後離れていてもタイムラグはないんだ。

こうなると他府県どころか、全世界でもさほどズレていない可能もある。

完全に人知を超えてるよねえ、この現象。

・・・ま、僕は研究者でもないし、これを研究するつもりもない。

推察は無限にできるけど、暇つぶし以外の何でもないよね。

原因を究明したって死んだ人が生き返るわけでも、ゾンビが人間に戻るわけでもないしさあ。

さてさて、甘味を収集しますかね~。

こんなのいくらあってもいいですからね!

それになにより、後藤倫さんの機嫌も良くなるし!

どこに地雷があるかわからないあの人には甘味を獻上するに限るのだ!

・・・後藤倫さん、子供とには優しいけど男には驚くほど厳しいし。

田中野さんとか七塚原さんは例外みたいなもんだよ。

僕は・・・まあなんとか殺さないでいてくれるだけマシ、かな。

あの人すっごい人だもんね。

昔何か嫌なことでもあったのかなあ、男絡みで。

・・・田中野さんへの態度を見るに、同好きって訳じゃないと思うけども。

し、賞味期限の長いものを手持ちのリュックへ詰め込んでいく。

和菓子って乾いたタイプだと長持ちするんだなあ。

ちなみに取れるだけ取って行くけど、撮影するのは最初だけである。

後々文句言われるかもしれないからねー。

ゾンビ殺害も基本的に撮影しないし。

コンプライアンス的にヤバいかもしんないし。

畫をネットに上げた未來に、『よくもウチのお父さんを~!!!』とかとんでもない炎上をする可能も無きにしも非ず。

だから畫だけ見たら、僕はひたすらコソコソ探索だけしてる超運のいい人間に見えることだろう。

ふふふ、これも戦略なのだ。

・・・あれ、よくよく考えたら資を調達するのも広義的には竊盜になるのかな?

うーん、カルネアデスの板的な解釈で許されないかな?

まだまだネット復活までは間があるし、そこらへんはよくよく考えるとするかな~。

甘味でパンッパンになったリュックを背負い、和菓子屋を出る。

やったね!これでしばらくは困らないぞ~!

・・・今思えばこれが悪かった。

対後藤倫さん用の最終兵を回収できたことで、僕は注意散漫になってたんだ。

近所のビルの影から僕をじっと見ている集団に、気付かないほど。

「・・・なんでしょうか?」

バイクまで帰る途中。

気が付けば、僕は四方を取り囲まれていた。

前方を塞がれて立ち止まったら、周囲に気付いたのだ。

アホ面で質問しながら、さっと視線を走らせる。

クッソ!噓でしょ!?

10人以上いるじゃん!!

どいつもこいつも薄汚れた格好をして、手には・・・ウワォ!殺意が高そうなハンドメイドの武持ってるゥ!!

釘バットって絶滅危懼種じゃなかったの!?

「お前さァ、どこに住んでんの?」

正面の男・・・ボッサボサの長髪を生やした明らかにチンピラっぽいそいつが話しかけてきた。

その顔はニヤニヤと締まりがなく、僕を徹頭徹尾馬鹿にしている雰囲気が伝わってくる。

・・・住所が目的か~。

これはちょっとヤバいなあ。

今僕の持ってる資を狙ってるなら、最悪の場合荷を全部あげちゃえば解決する。

しかし、奴らはどうやら僕の住んでるところに興味がおありのご様子。

面倒臭いなあ・・・

「あ、龍宮コミュニティセンターです、ハイ。避難所になってまして・・・」

ノータイムで答える。

ちなみに田中野さんたちが大暴れして壊滅した『みらいの家』の舊本拠地である。

「オイふざけんなよ?そこ、変なシューキョーの奴らが住んでてグンタイに皆殺しにされたって知ってるんだからな?」

あらら・・・意外と報通ですなあ。

ガッデム!!

「あのあの、っていうか僕の住所なんか知ってどうするん・・・」

「うるせえよ!!いいからとっとと喋れよボケ!!今度噓ついたらぶっ殺すぞゴラァ!!!」

男は苛立ったように手に持った釘バットを地面に叩きつけた。

周囲の人間は「また始まったよ~w」みたいなことを呟いている。

うーん、彼らは暴力に馴れてるね~。

たぶん僕みたいなキャをスナック覚でボッコボコにしてるんだろうなあ。

「ま、ままま待ってください!ごめんなさい!ちょ、ちょっと待って・・・!」

「おう!早くしろやグズゥ!!」

揺したフリをしながら対応すると、男は上機嫌になった。

・・・田中野さんたちなら笑しながら皆殺しにできるんだろうけど。

―――僕はホラ、策を弄するタイプなんで。

「あのあのあの・・・これ、どうぞ!」

頭を下げる振りをしながら、腰のベルトに裝著していたパイプを取り・・・下手投げで放り投げた。

「・・・は?」

それを思わず男がけ取った瞬間、僕はヘルメットのバイザーを下ろす。

本日は晴天だけど、それを上回る量が出現した。

「アッ!?」「ギャ!?」「いいいい!?!?」

周囲から聞こえる悲鳴をよそに、僕は真っ直ぐ走り出す。

「あああ!?なんっ!?ああ!!ああああああああ!!!!!!目ェエエエエエ!?!?」

大木式閃手りゅう弾のお味はどうですかな?

ありあわせの材料で作ったものだけど、威力はそこらへんの軍隊品と大差はないんですよ?

超至近距離でそれを見つめてしまった男の橫を通り過ぎる。

「あがやあああああ!?あああああ!!あああがああああ!?!?!」

いっけな~い!

足がって大木式ドラゴンブーツで弁慶の泣き所を思いっきり蹴飛ばしちゃった☆

ごめんね、錆びた釘が大量に配置してあるから痛かったでしょ?

破傷風に気を付けてね!!

視力を一時的に失い、足まで蹴られた男は倒れ込んで意味不明な悲鳴をあげている。

よっしゃ!この隙に逃げろや逃げろーい!!

「待てやゴラァ!?」

「トウジ!?おいトウジ大丈夫かよ!?」

「目が見えねえ・・・あの野郎ぶっ殺してやる!!」

おやおや、結構立ち直りが早い。

たぶん僕の真後ろにいた連中だなあ。

大木ボディが目隠しになってあんまり効果がなかったっぽいね!

「すいませ~ん!特に許さなくてもいいで~す!!」

ダッシュしながら後方へ向けてびつつ、リュックの紐に連結されていたガチャガチャのカプセルを引き抜く。

「これ!お詫びの印でええええっす!!!!」

それをポイと後方に放り投げ、運不足のに鞭を打って加速。

急げ!

頑張れ大木フット!!

遅れると死ぬぞ~!!

きっかり2秒後、音と悲鳴を聞きながらビル街の路地へ逃げ込んだ。

ふう、間に合った。

遅れると僕まで金屬片で針鼠になっちゃうからね。

・・・というわけで回想終わり。

現在僕は路地にあるごみ箱にスニーキングミッションをかましている。

やめとけばよかった、ここ超臭い。

何これ、オイル専用のごみ箱かしら???

あの後ここに逃げ込んだまではよかったんだ。

僕にとっての計算違い。

それは、チンピラが予想をはるかに超える大所帯だったってことかなあ。

あの後奴らは何らかの手段で応援を呼んだっぽい。

気付けばこのビル街のそこかしこで怒號が鳴り響いている。

全部確認したわけじゃあないけど、なく見積もっても元気な馬鹿が30人くらいいる気がする。

うーん・・・まずった。

こんなに人がいるとは思わなかったなあ。

腐っても県庁所在地。

チンピラの生息數も中々の水準だねえ。

どうしたもんか。

僕が七塚原さんとか田中野さん級の無雙マンなら、『大木一番乗り!!』とか絶しつつ皆殺しにできると思うんだけども。

悲しいかな、ゲームに出てくる一般兵よりも弱いステータスなのだ。

誇れるべきは武生産能力だけ。

「さてさーて」

ゴミ箱の暗闇の中で、スマホを起

地図アプリを立ち上げる。

えっと・・・この路地がここで、あのビルがあそこ・・・

ふむふむ、我が車の隠し場所は・・・ここか。

うーん、地味に遠いなあ。

でも、ここから徒歩で帰れる距離じゃないからね、仕方ないね。

スマホをしまい、耳をすませる。

怒號が元気に聞こえてくる。

まーだまだ周辺にいるなあ。

路地っていうか地上は無理っぽいね。

ふむ、疲れるから嫌だけど・・・『上』に行くかあ。

「わはー・・・いるいる」

ゴミ箱から出し、近くにあった非常階段をひいこら登ったビルの屋上。

僕は、そこからおっかなびっくり顔を出していた。

上から見下ろす風景の中、チンピラたちは迷路の実験をするマウスよろしく駆け回っている。

いっぱいいるなあ・・・暇なのかな?

っていうか、全員聲デカすぎでしょ。

ゾンビがいたら真っ先に見つかっちゃうよ。

ここらへん、チンピラはいるけどゾンビはあんまりいないのかなあ・・・変なの。

「オイ!!いたか!?」

「クッソ!いねえよ!」

「あんなモヤシに舐められてほっとけるかよ!!トウジに怪我させやがって・・・!!」

眼下で喧々諤々進行中でありまーす。

むーん、面子とかいうしょうもない概念に縛られておりますな・・・

僕なんかにかかずらっても損するだけだと思うけどねえ・・・退き際を把握できないってアワレですらある。

とは言えいつまでもここにいても仕方ない。

えーと、アレはどこにいったかなっと・・・あったあった。

手りゅう弾がマウントされている反対側のパイプを取る。

「うーん・・・っせ!!」

ボタンを押し、できるだけ遠くに放り投げる。

よーし!相手の人數も多いしここは出大サービスというこうかな!!

それから追加で5本ばかしポイポイしておく。

「えっと~、こっちか」

アプリで方角を確認し、バイクの方面へ歩き出す。

手元のデジタル時計で秒數を確認・・・っと。

「おい、なんだこr」

誰かが僕のプレゼントを拾ったのか、臺詞が途切れると同時に音。

空気がビリビリと振する。

・・・普通、落ちてきた明らかに妖しい鉄パイプ拾う?

それを皮切りに、ビル街は音と風で大騒ぎになった。

時間20秒・・・よし!ぴったりだ。

威力がちょっち大きいからね、逃げる時間も見とかないと。

悲鳴と怒號を背後に聞きながら、僕はルンルン気分で非常階段を下りた。

「・・・というわけで!今日もなんとか生き殘りました~!次回のアキヤマTVまで~シ―ユーアゲインッ!!」

車を軽快に走らせながら、本日分の畫を締めくくる。

・・・よし!今回はこんなモノかなあ。

バックミラーで確認すると、さっきまでいたビル街から薄く煙が上がっているのが見えた。

ありゃりゃ、何かに引火でもしたかな?

でもビルしかないし・・・ボヤ程度で収まるか。

さすがにバイクを追いかけてくるガッツのある連中はいないようだ。

畫にはできないけど、隠し武は山ほど搭載しているのでむしろバイクの方が安全まであるんだけどね。

今回はビル群と和菓子屋探索かあ・・・ちょっと尺が短いかなあ?

えーと、そういえば最近撮ってないし・・・帰りにコンビニでもしておこうかな。

週刊誌とかはだいたい誰にも取られてないし、暇つぶし用の漫畫雑誌でも探そうかなあ。

そんなことを考えていると、ミラーに影が。

すわチンピラの追跡か・・・と思ったら自衛隊の車両だった。

えっと、あの番號は・・・神楽のやつだね。

追い越される時に手を振ると、運転席の人が振り返してくれた。

あ、六郷さんとチェイスくんだ。

彼らもこっちに來てるんだなあ。

パトロールかな?

・・・いや、ビル街の発を見て追っかけてきたのかもしれない。

僕はたぶん無実です!たぶん!!

そこにチンピラがいたので!!!

「お仕事お疲れ様でーす!」

「バウ!ウォオン!!」

そうぶと、チェイスくんの元気な聲が返ってきた。

うーん、世はなべて事もなし・・・今日も々あったけど最終的に生きてるから平和でした、まる。

明日もそこそこ頑張るぞい!

なお、高柳運送に帰還して甘味を提供したらみんな大喜びだった。

特に後藤倫さんが。

ああいう時はかわいらしいんだよね、普通に。

年相応ってじでさ。

いつもあれならモテるんじゃないかなあ~・・・

え?僕はどうだって?

・・・パス!!!

田中野さん頑張って!!!!!!!!!!!

    人が読んでいる<【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください