《やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中》32
いつもどおりの目覚めだった。いや、ここ最近ばたばたしていたせいで、いつもよりすっきりしているかもしれない。
(お、起きたか……じゃあ俺、寢るから……)
(待てラーヴェ、説明しろ。どうなった)
(お前の回復で疲れてんだよ……嬢ちゃんに……聞け……いるから……)
あやしげな語尾がそのまま寢息に変わった。役に立たない育て親だと思いながら起き上がろうとして、違和に気づく。いつもの自分の部屋、寢臺だ。でも妙に隣がふくらんでいるような――がばっと布団をめくり、仰天した。
「ジル!? な、なななななんでここに……え、まさか僕が連れこんだ!? そんな、なんにも記憶がない!」
「……んみゃ……?」
妙に可らしい聲をあげたと思ったら、ばっと寢間著姿のジルが飛び起きた。ぎょっとしたハディスの膝の上に乗り、顔を覗きこんでくる。
「陛下、起きました!?」
「お、おおお起きたよ、君も起きたけど……」
「は!? どこもつらくないですか」
こつんと額をくっつけて、目を閉じたジルが靜かになる。んーと聲をあげたあと、またぱっちり目を開き、にっこり笑った。
「熱はないですね! よかったぁ……」
頭から空気が抜ける音が出た気がした。両手で顔を覆って、ハディスはうめく。
可い。一連の作、すべてが可い。
「陛下、どうしたんですか! まだ寢てたほうが」
「だ、大丈夫……ただ、僕のお嫁さんが可くて、可くて……!」
「あ、いつもの発作ですね。はい、息を吸って、吐いて」
「だいたいっなんで君がここにいるの!?」
よしよしと背中をなでていた手を止め、ジルが目をぱちぱちさせた。まるで自分が過剰反応しているみたいで、ハディスはむくれる。
「ぼ、僕の部屋で一緒に寢るのは、結婚してからって言ってたよね。これは反則じゃないかなって、僕は思います!」
「この非常時に何を寢ぼけたこと言ってるんですか。陛下に毒が盛られたんですよ? わたしが護衛するのは當然でしょう」
真顔で諭され、力しそうになった。
可くて強いお嫁さんは、出會ったときからそういうところがある。清々しいほどに筋は通っているのだが、もうしこう、緒というかこちらの気持ちもわかってほしい。
「ああ、でもそっか……そういえば僕、毒を……」
飲んだ、と口をらせかけて止める。毒を盛られたのだ、間違えてはいけない。
そしてどれだけ自分が不謹慎だったかに気づく。ジルにすれば、自分は毒を盛られて殺されかけたばかりなのだ。寢臺に潛り込んで護衛するというのは、彼にすれば當然のり行きなのだろう。
(どうなったのかな。まったく犯人がわかってない、なんてこともないと思うけど)
気を取り直し、ハディスは膝の上に乗ったジルに微笑む。
「ちょっと前後の記憶が飛んじゃってた、ごめん。でももうは大丈夫。あのお茶が毒だったのかな」
安心させるように言ったのに、見つめ合ったジルの反応は淡泊だった。
「……ふーん、そうですか」
「……。あ、ジルの護衛が困るとかそういうんじゃないよ! ただ正直、寢て起きたらジルがいたってじで、びっくりして」
「なんですか、一緒に寢てたくらいで、今更」
看病用にそろえられたテーブルから牛を見つけ、腰に手を當ててごくごくと飲んでいるジルが妙に勇ましい。
「でもそれだけうるさく言えるなら、本當に大丈夫そうですね」
飲み終えたコップをテーブルに置いて、ジルがハディスと向き合う。
「ご報告があります、陛下」
ああ、とハディスは微笑んだ。やっぱりハディスのお嫁さんは、期待を裏切らない。
「三公もヴィッセル殿下もえてまとめて今回の顛末を説明したいんですが、陛下も準備できますか」
「もちろん。……今更だけど僕、どれくらい寢てた?」
「半日とちょっとです」
「そうか。じゃあ一晩で解決しちゃったんだ」
「そりゃあ、陛下を狙う奴なんてほっとけませんから」
を張って自慢げにするお嫁さんが頼もしくて可くて、たまらない。手をばして抱き上げると、ぎゅっと抱きつかれた。
「守ってあげますからね、陛下」
きっと々あったのだろうなと、その仕草で知る。
「知ってるよ。朝ご飯は、君の大好きな苺ジャムのスコーンつけてあげる」
すごく、自分のために頑張ってくれたのだろうから。
本當ですか、と目を輝かせるジルは、いつだって自分の味方だ。無條件にそう信じ始めている自分がいる。
きっと今回も、ときめきで死んでしまうようなかっこいい姿を見せてくれるに違いない――と、思っていたのだが。
「今回の一件は、毒殺なんかじゃありません。ただの事故です」
わざわざ謁見の形を取った帝城の貴賓室で、竜妃は笑顔で言い放った。
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