《やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中》40
花が降るなんて初めて見た。手のひらに落ちてきた花は、きらきら輝いている。まるで魔法がかかっているみたいだ。
「――雪の花か」
隣で座っていたジェラルドのつぶやきに、橫を見た。
ナターリエたちがいるのは、舞臺が見下ろせる帝城の外壁上だ。城壁なので決して快適ではないが、賓客たちが観覧用に座り心地のいい椅子はもちろんのこと、足元は絨毯まで用意されている。
「雪の花? それは竜の花よ」
「同じものだ。クレイトスでは雪の花と呼ぶ」
ジェラルドも振ってきた花を手のひらに乗せ、じっと見ている。
「我が國で唯一、魔力で咲かない花だ。きちんと水をやり、日に當て、料をやらねば、枯れて終わる。しかも冬にしか咲かない。まるでラーヴェ帝國の植のようだ、空からこちらに逃げてきたに違いない――という意味をこめて雪の花と名づけられたと聞いている。クレイトスではほとんど見られなくなっているが、こちらでは魔力で咲くんだな。母が好きな花だった」
母。その単語に、つい、どちらの――と考えてしまう。
クレイトス王家のを知っているからだ。それを誤魔化すように、無理に明るく話題を変えた。
「そういうの多いわよね、ラーヴェとクレイトス。対稱に作られているというか……もとは同じだったみたい」
「くだらない」
手のひらの白い花を握りつぶし、ジェラルドが立ち上がった。ナターリエは慌てて腰を浮かし、追いかける。
「ちょっと、勝手にどこいくのよ!」
「戻るなら文句はないだろう。誰が親善大使だったか知らないが、私の姿は確認したはずだ」
「それは、そうだけど……」
ナターリエたちとは遠く離れた、けれどかろうじて見える席に、兄の姿があった。兄もこちらを見ていた――と思う。決して目は合わせてくれなかったけれど。
そう遠くない距離にいるフリーダの心配そうな視線に頷き返し、ナターリエは早足で進むジェラルドの背中を小走りで追いかけた。一度きりの案で道順を覚えたらしく、足取りに迷いはない。ひやりとするが、ともかく竜の花冠祭においてクレイトスの要求には応じた。けれど、狀況が好転しているようにじない。
ジェラルドがにぎりつぶした花が、まぶたの裏に焼き付いている。
(……弱気になってどうするの。そう簡単にうまくいくわけないじゃない)
ずっとずっと睨み合ってきた國だ。自分が産まれる前にも、クレイトスとの小競り合いがあったと聞いている。留學なんて建前がとれるだけでも十分ではないか。
だが、いったいどれくらいの時間が殘っているのだろう。
ジェラルドにはまだ伏せられているが、クレイトスは彼の妹が王になる準備を進めている。正式にこちらに通達がきたのだから、もうほとんど回しも終わっているのだろう。つまり、もうしで彼は王太子でなくなる。
そのとき、彼はどうするのだろうか。妹から――あるいは、神から解放されるのだろうか。
それは果たして喜ばしいことなのかどうなのか。
背中を押すように、風が吹いた。彼が閉じこめられる塔と城壁とをつなぐこの橋は、下が崖のようになっており、高さがあるのだ。竜も近い。
「……あの、あのね。私、あなたのお父様から、預かっているものが、あって……」
塔のり口の鉄格子前で早足だったジェラルドが止まり、振り向く。
ナターリエの決意を遮るように、大きな影が覆った。え、と目を見開く。竜だ。
真っ黒の――でも黒竜ではない。逆のせいでそう見えるだけだ。でも目まで真っ黒に染まっている。いや、そもそも目ではないのかもしれない。底なしのだ。
何より、その上に乗っているのは。
「見つけたぞ、ナターリエ」
「お父様……っどうして!?」
竜が咆哮し、橋が踏み潰され、真ん中から崩れ落ちる。まともに風に煽られ、ナターリエは塔側の通路に倒れこんだ。だがすぐ顔をあげてジェラルドの位置を確認する。塔のり口手前、ナターリエと同じくほんの數歩しかなくなった足場にしゃがむようにして彼はいた。怪訝そうに、竜と上空から飛び降りてきた父親――前皇帝メルオニスを見ている。
ジェラルドの計畫ではない。そう判斷して、ナターリエも視線をメルオニスに戻す。
分斷された橋の向こうは、竜の背になって見えない。
「お前さえ手にればまだ芽はある」
なんの話かわからない。數年ぶりに見る父親だったが、やつれて髪を振りし笑っている姿は、とても正気だと思えなかった。
どうしてここに、なぜ自分が。
疑問は渦巻いたが、それどころではない。ジェラルドがいるのだ。もし逃げられたら、自分では止めるがない。
「お、お父様。今は、クレイトスの王太子がいらっしゃいます。話ならあとで――」
「何が王太子だ。もうすぐフェイリス王が王に即位するのだろう」
背後でジェラルドが息を呑む気配がじ取れた。最悪だ。
ナターリエが振り返ったときにはもう、ジェラルドは竜の攻撃で吹き飛ばされた兵士の剣を握っていた。騒ぎを聞きつけた塔の方から出てきた兵に、その切っ先を向ける。逃げる気だ。
「待って、行かないで! 話すから、ちゃんと――っ」
だがすぐに父親に髪をつかまれ、羽い締めにされてしまった。いい加減、腹が立ってきてナターリエは父親をにらむ。
「お父様、いい加減に――」
「案ずるな。もはや戦爭は起きない。ラーヴェ皇族はクレイトス王族と同じになるのだから」
さわり、と背後から腹をでられて、悪寒が走った。
「余はお前の父ではない。お前の父は、余の父だ。意味がわかるか?」
ジェラルドが最後の兵の剣を弾き飛ばし、蹴りをれて沈ませ、橋の壁に飛び乗る。せめて聲をあげて、危機を知らせねばならなかった。でも聲が出ない。
「これはお前の母親が教えてくれたことでな。お前が十四になる前にハディスが戻ってきたせいで、ずいぶん手間取った。後宮の妃どもも、嫉妬から邪魔をしよって」
おそろしいことが、今、自分のに降りかかろうとしている。
その始まりを告げるように、なぜか空に花火があがった。
「お前は余と兄妹なのだよ、ナターリエ。これで天剣が手にる、兄が妹を犯して護剣を授かるように、余の手に天剣が! 竜帝の証が手にるのだ!」
首をつかまれ、通路に押し倒されていた。抵抗しなければいけないのに、力がらない。耳からった言葉の意味が、頭をすり抜けていく。
「さあ余に天剣を授けろ、ナターリエ。我が妹よ」
クレイトス王族のを、ナターリエは知っている。兄と妹が結ばれて、ずっと続いてきた家系だ。それを竜神の呪いだと、クレイトスの現國王は笑った。どういうを抱けばいいかわからなかった。今、自分が當事者になるこの瞬間でさえ、わからないままだ。
「余を竜帝にしろ、こので。神クレイトスのように……!」
ただひとつだけわかる。
ジェラルドとは、きっともう二度と會えない。
――だから、さらに上から重なった影が誰なのか、わからなかった。
「畜生が」
もう一度、花火が真晝の空に弾ける。ナターリエに覆い被さったメルオニスのを、ジェラルドの剣が刺し貫いた。
國民的歌手のクーデレ美少女との戀愛フラグが丈夫すぎる〜距離を置いてるのに、なんで俺が助けたことになってるんだ!?
三度も振られて女性不信に陥った主人公は良い人を辭めて、ある歌い手にハマりのめり込む。 オタクになって高校生活を送る中、時に女子に嫌われようと構うことなく過ごすのだが、その行動がなぜか1人の女子を救うことに繋がって……? その女子は隣の席の地味な女の子、山田さん。だけどその正體は主人公の憧れの歌い手だった! そんなことを知らずに過ごす主人公。トラウマのせいで女子から距離を置くため行動するのだが、全部裏目に出て、山田さんからの好感度がどんどん上がっていってしまう。周りからも二人はいい感じだと見られるようになり、外堀まで埋まっていく始末。 なんでこうなるんだ……!
8 156俺はショートヘア女王が大嫌い
主人公が繰り広げるありきたりな學園ラブコメ! 學園のアイドル的存在、坂木 亜実(さかのき あみ)の本性を知ってしまった主人公が理想の青春を目指すために東奔西走する!! リア充でも非リアでもないザ•普通の主人公、荒井 海七渡(あらい みなと)は、ショートカットの美少女と付き合うという野望があった。そんな野望を胸に高校へ入學。 しかし、現実は非情。高校1年の間はただ黙々と普通の生活を送る。 2年にあがり、クラス替え。そこで荒井は、校內で知らない人はいないと言われる程の超絶美少女、坂木 亜実と同じクラスになる。 だがやはり、現実は非情だった。坂木 亜実の正體はただの毒舌ドS野郎だった……
8 136休止中
ごく普通の一般高校生…でもないか… よくいる學校の地味ーズの[魔壁 勇] 天使より悪魔押しの廚二病… 異世界勇者ライフを満喫!…とおもいきや! とまぁ異世界系の小説です!初心者ですがよかったら! ※二作目で【我輩はモンスターである。名前はまだない。】を投稿中です。そちらもよかったら!
8 107感傷
悲しみ、怒り、喜びなどの 人間の感情を話の軸にした短編小説集。 「犠牲」 とあるきっかけで殺人を犯してしまった遠藤翔 (えんどうしょう) その殺人の真相を伝えるための逃走劇 そして事件の真相を追う1人の若き記者、水無月憐奈の物語 「メッセージ」 20歳の誕生日の日、家に帰ると郵便受けに手紙が入っていた。 その內容は驚くべきものだった。 「犠牲」のその後を描いたAnother Story 「ニセモノカゾク」 當たり前が當たり前じゃない。 僕は親の顔を覚えていない。 ここに居るのは知らない親です。 家族の形が崩壊していく様を描いた物語
8 168覇王の息子 異世界を馳せる
官渡の戦いで曹操、討ち死に!? 袁紹軍に包囲された宮殿。曹操の後継者 曹丕は死を覚悟していた。 しかし、袁紹軍の包囲網を突破し曹丕を救った者がいた。 その者の名前は関羽。 夜通し逃げ走った2人がついた先は 魔法と呼ばれる幻術が存在し、モンスターと呼ばれる魑魅魍魎が存在する世界だった。 そんな世界で曹丕は、覇王として復権を目指して進んでいく。
8 100異世界戦線の隊長はちびっ子隊長⁈
今作の主人公の青年は、産まれながら20歳で生きる事は不可能だと言われていた。 青年は幼少の頃から、いつ死ぬのか怯えて生きてきた。悔いは無いように生きていた。 だが、毎日生きている実感が持てなかった。それでも何か生きた証を殘そうと必死で生きていた。 そして、20歳になると青年は息を引き取った。 もちらん青年にはやりたい事が沢山あった、だから死後も満足に成仏すら出來なかった。そんな時だった、何処からともなく聲が聞こえてきた。「もう一度生きる機會を與える」と、そして青年の眼が覚めると、青年は赤ん坊になっており、その世界は自分の知っている世界とは全く異なる世界だった…
8 149