～沈黙の跡　シンク視點～

「これでおーしまいっ！！」

「倒すの……楽に、なってきた」

わたくしたちがSSランクとなってからおよそ３週間が経過いたしました。

この期間ネルフィーさんとわたくしはメアとチェリーのレベル上げのため沈黙の跡を再び周回しております。とはいってもボスであるアークキメラとは戦わず大量に魔を召喚するリッチまでの周回パターン。

最初はわたくしたちの手伝いが必要であったリッチの討伐も、今ではメアとチェリーの二人で攻略できるほどになっています。とはいっても、その戦闘能力はまだ想定していたところまでは到達できておりません。阿吽様に念話で報告したところ、恐らく高レベルであるわたくしたちが一緒に居るためそこまで多くの経験値が得られていないということでした。

「メア、チェリー。レベルはいくつになりましたか？」

「私は51だよー！」

「わたし、は55レベル……です」

二人とも大きくレベルは上がっていますがまだ進化には至っておらず、阿吽様の期待に応える事ができていません。

（このままではいけませんね……）

「ふたりとも、話があります」

「はーい！」

「なん、でしょうか？」

「もう５階層までの罠の位置や種類は把握しましたか？」

「うん！　大丈夫だよぉ！」

「であれば、殘りの１週間は二人で攻略をしなさい。その方がレベルも上がりやすいでしょうし、今後は二人で行することになります。互いの理解を深めて連攜をさらに強化するのです」

「わかり、ました」

「ではわたくしとネルフィーさんは幻影城に帰還しますので、予定の日になったら戻ってきなさい。それと……戻ってくるまでに必ず二人とも進化を果たすこと。これは絶対です」

「はい」

「うん！　がんばるっ！」

◇ ◇ ◇ ◇

二人を殘しネルフィーさんと念話で連絡後、幻影城へと帰還。

ネルフィーさんは途中から沈黙の跡で別行をとっていました。なんでもダンジョンにある罠を徹底的に調べ上げたいとの事です。ここの罠の構造も幻影城に組み込むつもりなのでしょう。

かく言う私もただ子守りをしていたというわけではありません。わたくしの管轄する幻影城３階層は量で侵者を処理するコンセプトです。これは沈黙の跡でリッチの階層を見ていたからこそ思いついたもの。であればその弱點なども周回攻略していくうちに自ずとわかってきます。

その弱點とは“広範囲魔法”。リッチのフロアと違うのは魔のランクですが、わたくしが召喚しようとしている魔も基本的には理攻撃や理防に優れた種類ばかり……。

ではどうすればよいか。わたくしなりの答えは防で補うというものです。青等級の防であっても魔法防に特化したものはそれなりにあります。それらを階層の魔に裝備させ、魔法に対する耐の底上げを図ります。

また各隊での連攜のみならず、全での連攜も行わなければなりませんね。これはボスのオークエンペラーやメア、チェリーに指揮をさせることを視野にれて更なる教育も行わなければなりません。

「あとは、私自の強化……ですわね」

イブルディアでの魔族襲撃の際にオルトロスと戦い、わたくし自の強みは分かりました。しかし、絶対的に足らないのです。阿吽様やキヌ様に並び立つには……。あの二人とわたくしとの間にはまだ大きな力の差があります。

それに後から聞きましたが、南部に出現したオルトロスを圧倒的な速度で倒したのは武京國將軍の側近で『白秋(びゃくしゅう)』と呼ばれる者だそうです。この世界にはわたくしよりも強いものがまだまだ居るという事を魔族襲撃でに沁みました。

しかし、わたくしたちのレベル帯ではこの周囲でそこまで多くの経験値を獲得できる狩場はありません。となると、當然次の進化を待つ余裕などあるはずもなく……、

「やはり……スキルと魔法が、強化の鍵……」

もう一度スキル構を見直し、新しいスキルの獲得のために試行錯誤をする必要もありそうです。

ということで、わたくしのステータスを今一度確認いたしましょう。

＜ステータス＞

【名前】深紅(シンク)

【種族】夜叉姫

【レベル】63（+2）

【狀態】

【屬】地・水

【HP（力）】12300/12300（+300）

【MP（魔力）】710/710（+30）

【STR（筋力）】80

【VIT（耐久）】149（+3）

【DEX（用）】40

【INT（知力）】71（+3）

【AGI（敏捷）】47

【稱號】従屬者

変幻自在

【スキル】

・勇猛果敢(ゆうもうかかん)

・興起(かんぷんこうき)

・ガードインパクト

・地屬魔法（Lv.6）

・水屬魔法（Lv.3）

・人化

・他種族言語理解

・挑発

・調理

・盾（Lv.5）

・斧（Lv.4）

もうが空くほど何度も見たスキル構。この中で何か見落としている事はないか、新しいことはできないか……。スキルや魔法の組み合わせを幾通りも模索し、実際に試す事が必要かもしれません。

「やはり、ガードインパクトや盾、斧あたりが……あら？　このスキルは……」

「シンクねぇさん、何やってるんっすか？」

「ぴゃぃっ！？　ド、ドレイク……。いつから居たのですか？」

「ちょっと前からっすけど？　ねぇさんが一人で何かを呟(つぶや)いてたから、気になって聲かけたっす！」

急に背後から聲を掛けられ、思わず変な聲が出てしまいました。

周囲に誰か居るのが分からない程集中していたようです。それに獨り言まで……。ここが幻影城のコアルームという安心もあったのかもしれませんが、これは不覚ですね。

ですが、ここにドレイクが來たのはタイミングが良かったかもしれません。

「ドレイク、一緒に行きますわよ」

「えっ……？　どこに？」

「試したいことがあります。久しぶりに二人で魔狩り(デート)と灑落込みましょう」

次話は5/5（金）投稿予定です♪