《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第114話 「にじ」Ⅱ②
さっきやったように。
まるで、子供の遊戯のように。
僕らは、橫一列に手をつないでいた。
みんなの想いが、願いが、エネルギーになって、僕の機に流してくる。
みんなの顔を思い浮かべる。‥‥‥‥自然と10機の重子力エンジンは高鳴っていった。
「なにこれ‥‥‥‥」
「地響きだ‥‥」
マジカルカレントが、最大値を記録する。僕の背後に出現した時空の変異、その呼び名はまだ無い。
ただ、僕とカタフニアをつなげるエネルギー供給接點、外部把持ポイント「コーヌス・テレスコープ」が、溢れ出るエネルギーを持て余してバチバチとプラズマ炎を上げていた。
カタフニア、その砲門が、上空で仰角にそのを傾ける。
主砲と副砲、すべての砲門からが溢れ出てきた。
(((依さん。暖斗さんの能力をお借りしている今こそ、もっと【リンク】を。ふたりで手を取りあうのです‥‥今まさに。そして、永遠(とわ)に)))
「え?」
「どした? 依!?」
エンジンが繰り出す轟音の中、依の言葉は甘えるようだった。
「‥‥‥‥何でも、ないよ。‥‥ね? ‥‥‥‥わたしの『右手』重ねてもいい?」
「‥‥うん」
縦桿を握る僕の拳に、ふんわりと華奢な手が重ねられる。
依の手は暖かくて、らかかった。
手、だけじゃない。‥‥そう。‥‥‥‥々全部が重なった気がした。
最初はただ必死だった。同乗するの子15人を守ろうとした。
上手くいかなくて、逆に助けられもした。
何とか戦い続けて、今僕らは手をつないでいる。
今は、この15人だけじゃない。アマリアの子も、病院の人も。
島のみんなも、敵も。
できうるなら、この戦闘を見てる世界中のすべての人に、伝えたい。
そして、命をかけて守りたい存在も見つけた。
命をかける意味と、命をかける価値も知った。
その存在が「幸せであること」が「僕の幸せ」であることも。
僕の「右手」に添えられたこのかわいい手。その上にさらに左手をかぶせて。
僕らはうなずきあった。
そして、エンジンの咆哮はさらに猛獣のように増した。
*****
東方10國。ピメイ國、後方基地。
「カタフニアからビーム砲の発を確認! 撃ってきます‥‥!」
「撃ち落とせんか‥‥」
司令然とした人が天を仰いだ。
「駄目です。我々の戦艦もDMTも無力化されております。殘念ですが‥‥」
「『彼』はその砲口をらせ、『我』には打つ手なし、か。完敗だな」
まほろ市民病院から南へ2キロ。暖斗達が構築した防陣地。その上空、カタフニアから。まるで噴火のように。
幾條もの線が放たれて、空へと高く昇っていく。
ピメイ國だけではない。陣地と病院を囲む敵勢力。そのすべてに向けられたの刃。
「曲砲撃(パラボレーショット)! 弾道が‥‥高い。高度に上げてから曲げて來ます」
「何故? 何のために?」
「解析! あ‥‥基地全方面への無差別撃‥‥」
「‥‥‥‥そうか。幕引きか。今度こそ『侵略者には死を』と」
「著弾します‥‥!」
の束は、幾條にも細かく分かれながら、基地のあちこちに降り注いできた。流星雨のように。
先ほどの戦艦の攻撃は「最後通牒」。この攻撃は「引導」。
――――そう、侵略軍の誰もが理解していた。
「え?」
「あれ?」
各國の基地、その人々の上に、金の粒子が降り注いでいた。
戦場の塵埃にも似たそれは、命のやりとりの場に、ゆっくりと、花吹雪のように舞い降りていく。
ガンジス島の青天は、この日、黃い輝きに包まれていた。
「どうした。何故我々は生きている?」
ピメイ國陣地。
司令の男がオペレーターを問いただす。代わりにパイロットスーツを著た男が獨り言のように呟いた。
「これは‥‥‥‥ビームをシールドバリアで弾いたときの粒子では? ‥‥‥‥そうだ。相殺された素粒子立方『格子フテローマ』だ‥‥」
「‥‥なんだと?」
「‥‥推論です。‥‥‥‥敵は、わざと曲砲撃(パラボレーショット)を高く上げ、タイムラグを作った。――そして、その間に『メガマス』を敷き詰めた」
「つまり?」
「『メガマス』はさっきのフテローマ素粒子を、1メートル四方の立方に集積したものですよ。『サイコロ型バリア』、です。ビームを極端に山なりに撃って、その間にこの基地、いや敵軍のすべてに、サイコロバリアを敷き詰めた。砲撃から我々の命を救うために」
「自ら撃っておいて、それから守ってやった、だと!? 茶番そのものではないか」
意味がわからないと両肩をすくめる司令に、オペレーターの男が進み出る。
「曲砲撃を指す、『パラボレーショット』って、紘國由來の言葉ですよね‥‥。史上初めてビームを曲げたのが紘國でしたから。その『パラボレー』は、歐圏の言葉で『虹』という意味だそうです」
「ほほう。『虹』か。‥‥‥‥あの陣地にいるのは『紘國軍人』を自稱する中學生だったな‥‥」
「ええ。彼らからのメッセージかと」
「クソガキ共が。‥‥『オジサン達を、殺すなら何時でも殺せるよ。だけど僕らはそれをまない』といったところか。ふざけおって。軍人に侵攻の善悪を考える由(よし)もない。この島に來る前から、死命を頂く覚悟なぞできておるわ」
「まったく、許し難いです。正規軍人に向かって」
「『戦爭なんて止めて、空を見ろ』とでも言うんでしょうか? この虹と黃金の景を」
「なんだ? 貴様詩人だな‥‥? ‥‥こんな時に‥‥‥‥ふはは」
指揮は遠い目をした。
「だが、平和を、文明生活をしながら、綺麗事をまぶした こまっしゃくれた反戦をぶ糞鬼より良い。いく段かはな。あの陣地の年らは我々と同じ戦場にを曬し、軍事力という暴力裝置を背景とした上で自分達の主張を通そうとしておる。戦爭の本質だ」
口もとを歪ませて、にやりと笑う。
「‥‥‥‥クソガキには、違いないがな」
ピメイ國は、全將兵、紘國軍への投降を決めた。
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