《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第6章 1983年 プラス20 – 始まりから20年後 〜 1 髭と眼鏡と……真実と(3)

1 髭と眼鏡と……真実と(3)

もちろん時間はいくらでもあったし、何よりちゃんとした真相を知りたかった。

だから言われるままに頷いていると、それから十分足らずで、いかにも高級そうな小料理屋に連れて行かれる。好き嫌いはないかと問われて、特にないと答えたところで和室の襖がスッと開いた。現れたのは板前らしき老年の男で、聞けばこの店の主人だという。

きっと、よほどの上客なのだ。そんな印象をたっぷり見せて、二人のやりとりがササッと終わった。ビールの注文と、あとは「いつものじで……」と口にして、彼は真剣な顔を剛志へ向ける。

「実は名井さん、わたしはあなたのことをずっと探していたんですよ。どうしても一度お目にかかりたくて、あなたの住んでいた世田谷のアパートを見つけましたが、そこにはもう、あなたは住んでいなかった」

きっとその時にはすでに、剛志は病院に擔ぎ込まれていたのだろう。

それからの短い間、飲みが運ばれてくるまでに剛志は何度も衝撃をけた。

彼はそこで改めて自己紹介し、続けて亡くなったという兄について話し出した。そしてその人こそが、剛志の記憶にある酒の弱い方、だったのだ。

「兄は、あなたの企畫したミニスカートを、一萬著以上生産していたんです」

「どうして……そんな量を?」

「きっと、絶対に売れると信じていたのでしょう。ところがまるで売れなかった。あなたがお辭めになった後、彼なりにいろんなところに売り込んではいたようです。しかしどの小売店も、あんな短いスカートが売れるなんて思ってはくれない。それはそうですよね。膝小僧なんて丸出しで、長によってはさらにその上だって出てしまうんだから……」

ところがある日、突然銀座のデパートから電話がったらしいのだ。

「兄はね、取引先に自宅の番號を伝えていたんです。たまたま家にいたわたしが電話に出ましてね、サイズは他にあるかって言うんで、わたしは事実を正直に伝えたんですよ。そうしたら、各各サイズ十著ずつ送れって言ってくる。まあその時は、正直半信半疑でしたよ。まさか、いたずら電話か? なんてことまで考えましたから……」

もちろん、いたずらなどではなかった。さらにそれから一年ほどの間に、有名どころのメーカーが次々とミニスカートを扱い始める。

「最初はね、発送を工場で対応していたんです。ああ、そうそう、実はわたしの叔父が福島で製工場をやっていましてね、兄はそこに製の発注をしていたんです。だから注した叔父が怒っちゃって大変でしたよ。工場に積み上げられた製品の寫真を送りつけて、いつまで預かっていればいいんだってカンカンでした。兄は叔父に生地屋から直接生地を買わせていたんで、その支払いだってけっこうな額になりますから、まあ當然といえば當然ですよね」

そこまでは、目の前のグラスを見つめながらの聲だった。

ところが急に顔を上げ、剛志の顔をじっと見つめた。

「だけどそんな時、いきなり銀座から追加注文がって、それから徐々に、他からも新規の注文がり出すんです。きっとね、名井さんが最初に売り込んだ場所がよかったんでしょう。なんと言っても銀座ですからね、日本中の業界人が注目している。そしてなんたって、あの有名な歌手があれを著てテレビで歌ってくれて、それがもう、まさに決定打でしたよ……」

ミニスカートはあっという間にブームとなって、當然その頃には他社からも、似たようなスカートが次々と発売された。

「そのおかげで、叔父の工場は大きくなりましたし、わたしも兄の會社を復活させて、まあなんとか……今日に至っているというわけです」

それもこれもミニスカートのおかげだと、彼は何度も頭を下げて、剛志の両手を握りしめた。

この男こそ、元の時代で世話になっていた小柳社長だったのだ。

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