《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》38話 南集落防衛線のこと 前編

南集落防衛戦のこと 前編

「あなたが隊長さんですか。俺は石川巖太(いしかわ・がんた)っちゅうもんです・・・この度は、よろしくお願いします」

「ああどうも、古保利文明三等陸佐です。急なお願いをしてしまって申し訳ありません」

「いいえ、こちらにも得るものがありますので」

石川さんと古保利さんが頭を下げあっている。

・・・二人とも余所行きってじの喋り方だ。

そして、両方ともさりげなくお互いの付きや重心を確認してる・・・っぽい。

顔合わせが済んだ古保利さんは、俺の方へ寄って來るなり一言。

「田中野くん・・・うん、期待以上だよ。キミには達人を引き付ける磁力的なサムシングが備わっているらしい」

そうして自分の部下の方へ去って行った。

嫌だよそんな能力。

もっとこう・・・目からビームとか手から氣功波とかそういうのをお願いしたい。

というわけで、石川さんが二つ返事で參戦を快諾してくれたのでその足で富士見邸に戻って來たのだ。

ブリーフィングは終了したのか、既に家の外には自衛隊と駐留軍の皆様が整列している。

「センセイ!オキヲツケテ!」

「ライアンさんも!」

どうやら駐留軍はもう出発するらしく、綺麗な隊列を組んで歩いて行った。

その最後尾で、『たぶん』ライアンさんが手を振っている。

「おいおい、何だよありゃあ・・・まるでSF映畫じゃねえか」

俺の橫で石川さんがそう言うように、駐留軍はその全員が異形の姿・・・というか、以前中央図書館に救援に向かった時のようなアーマー姿である。

あの、鉄板をくっつけた鎧みたいなやつだ。

いや・・・若干あの時のものより洗練されて、全的に軽そうに見える。

バージョンアップ版かな?

どちらにせよまだ重そうである。

そして、彼らの背中にマウントされているのは例の電気シールド。

腰には俺が使っているスタンバトンの2倍くらいあるが下がっている。

・・・銃がなくても十分戦えそうだけどなあ。

「隨分と強そうじゃねえか」

「俺はアレを著て歩けてる時點で凄いと思いますけどね」

その頼もしい背中を見送っていると、聲をかけられた。

「一朗太さん!石川さん!お待たせいたしました!」

「今日はよろしくお願いします」

式部さんと神崎さんが完全武裝の狀態でやってきた。

2人ともビシッと決まっている。

うーむ、頼もしい。

これ俺いらないかもしれんでござるな?

・・・あ、この戦いは銃止だった。

やっぱ俺も頑張らないといかん。

「えっと、これからどうすれば?」

「はい!自分がご案するであります!三等陸佐から仰せつかっておりますので!」

俺がそう聞くと、式部さんはを張って敬禮した。

「田中野さんたちには遊撃としていてもらことになります。詳しいことは現地にてご説明します」

神崎さんがそう補足してくる。

・・・ふむ、遊撃。

よかった、それなら邪魔になることはなさそうだ。

いきなり団しろって言われても無理だもん。

こと集団行においては、俺は軍隊の足元にも及ばない。

協調皆無だし。

「好きに暴れろってか。へへ、やりやすくっていいやな」

石川さんは気合十分というじだ。

「・・・あの、今更ですけど今回相手をすることになる黒ゾンビっての、石川さんはご存じです?が真っ黒で中にカニの殻みたいなもんが付いてる連中なんですけど」

「おう、龍宮で嫌ってほど相手にしたぜ。この手甲と腳絆作ったのもそいつが原因さ・・・かってえもんなあ、アイツら」

・・・経験済みだったか。

じゃあ俺から言うことは何もないな。

「では、我々も行くであります!」

式部さんが拳を振り上げて、先導するように歩き出す。

俺も後に続こうとして、彼の腰にあるものを見て思わずきを止めた。

式部さんの後ろ腰には、1対の・・・なんだろう、短剣のようなものが差して刺さっている。

獨特な形狀の握り手の部分には革が巻かれており、剝き出しの両刃は鋭く研がれている。

長さは・・・1尺ちょいってとこかな。

あれが式部さんの近接ウェポンか。

「なんだいありゃあ、サイでもねえな・・・知ってるかい、田中野さん」

「いや、俺にもわからな・・・あ、待てよ」

式部さんの流派は『降魔不流』

流派名の由來は、その名の通り不明王から來ている。

加えて、出自が教系の修験道から変化したのなら・・・

「なるほど、武にアレンジされた『三鈷杵』いや・・・『三鈷剣』か、アレ」

「サンコショ?サンコケン?」

「ええ、お坊さんの使う仏ですよ。古代インドでは僧が攜帯する護用の武だったって説もあるやつです」

三鈷杵ってのは字の如く、握り手の両端に付いた『鈷』と呼ばれる部分が3つあるを差す。

式部さんのものはそのうち1つが剣のようにびている『三鈷剣』ってやつだ。

分類上はナイフ・・・になるんだろうか。

「ホラ、不明王の像が握ってる剣があるでしょ?アレですよアレ」

にはアレは違うものだけど、説明が難しいのでパス。

「・・・世界は広ェな。あんな武今まで見たことねえ」

俺も存在としては知っていたが、マジで兵運用してる流派があったなんてな。

さすがは『降魔不流』ってとこか?

「田中野さん!博識ですね!」

神崎さんが興している。

こういう時にもブレないなこの人。

ある意味頼もしいぞ。

「はは、無駄知識だけはよく知ってるんですよ」

特に明日役に立つわけでもないトリビアばかり覚えている自覚がある。

しかし三鈷剣とは珍しい・・・へえ、仏とは違って鋼で鍛えているんだな。

戦闘に使うんだから當たり前だが・・・アレでどんな戦い方をするんだろうか。

よく斬れそうに研いであるが・・・両刃だから斬り方も多彩なんだろうな。

「がはは、おいおい田中野さんよォ。いくら気になるからって真晝間っからのケツを眺め過ぎだぜ?」

石川さんが恐ろしいことを言いつつ肩を叩いてきた。

「んなっ!?ちちち違いますよ!誤解!誤解です俺はただ―――」

とんでもない名譽棄損だ!

人をそんなアグレッシブな変態扱いしないでいただきたい!社會的に死んでしまう!社會の方は先に死んでるけど!!

っていうかあなたも見てたでしょ!武の方!!

「(お・・・)」

・・・ホラぁ!後方の神崎さんから殺気が飛んできたぞ!

違うんです!冤罪なんです!弁護士を呼んでください!!

「お!おし!おでありますかっ!?え、ええと・・・ええとええとその・・・」

式部さん!やめて!そんな真っ赤な顔で俺を見ないで!

無茶苦茶怒っていらっしゃるぞ!!どうしてくれるんですか石川さんこの野郎!!

訴えるのは世界が平和になってからでお願いします!!

その前に示談で何とか勘弁してください!!

「ととととにかく早く行きましょうってば!いやー戦の予沸き躍るなー!今宵の虎徹はに飢えているなー!!」

「田中野さんの差し料に長曽禰虎徹は含まれていませんが?そして今は晝間ですが?おですか?おに興味がおありなんですか?」

冷靜なツッコミと口撃をれてくる神崎さんに恐怖を覚えながら、俺は式部さんすら追い越して歩き出した。

大丈夫!方向はわかってるから大丈夫!!

ヒィ!神崎さんむっちゃ速足で追いかけてくるじゃん!!俺が何したってんだ!!

「ええとぉ、そのぉ、じぶ、自分は一朗太さんになら、そのぉ、お見せすることはやぶさかではありませんがぁ・・・きゅ、急には困るでありますぅう・・・」

「・・・なあ、俺から焚きつけといてなんだけどよ。2人とももういねえぞ、姉ちゃん」

「・・・なんとっ!?あああ、待っていただきたいであります!ご案!ご案をさせてしいでありますう!!」

「夏も近ェのにまた春が來てんなァ・・・いやもう常春じゃねえか、へへへ」

酷い冤罪をけつつ、先に出発した駐留軍の部隊に追いつくことができた。

そこは、小さい山の麓だった。

位置的にはたぶん、この山によって中央地區と南地區が區切られているんだろう。

厳重に門で封鎖された坑道のり口が見える。

以前朝霞と行った場所と違って、こっちはちゃんと管理されてるみたいだ。

今は迎撃のために開け放たれているが。

「・・・あの山の上にちょこっと見えるのが壁と電気柵かあ」

「ええ、元々は山中の害獣が人里に下りてこないようにするためのものらしいです」

やっと殺気を消してくれた神崎さんが説明してくれる。

なるほどなあ・・・『防衛隊』がイージーモードになるわけだわ。

電気うんぬん以前に、ゾンビ共が自分から山越えをする可能はなさそうだし・・・しても電気で死ぬ、と。

「っていうか『防衛隊』の連中いないじゃん・・・いても邪魔になるだけだけど」

ここから見える山頂の壁部分はどう見ても無人です、ありがとうございます。

「電気柵の管理は公民館でも行えるようですので、ここまで出向くのが面倒なのでしょう」

あきれたように神崎さんが言う。

・・・あいつら、前に『俺たちは壁で戦って~』なんて言ってたが、とんだ噓つきじゃねえかよ。

ろくに來てすらいないとは思わなかった。

「・・・まあ、余計な足手まといが増えなくてよかったという所じゃないですかね」

「そうですね・・・それに、田中野さんがいれば大丈夫です!」

「やめてください俺は巨大人型兵とかじゃないんですから・・・大多數の相手は駐留軍に任せますよ」

信頼が重すぎる件について。

神崎さんの俺に対する謎評価は信頼の証だろうけど・・・俺なんかになあ。

・・・いやいや、謙遜は過ぎれば皮だってアニーさんにも言われたな。

この期に及んで、マイナス思考は無しでいこう。

「やあ、いらっしゃい・・・最終防衛ラインにようこそ」

部下と何やら話していた古保利さんがこちらへ寄ってくる。

「あれ?式部ちゃんと空手家さんは?」

「・・・あれぇ?」

そういえばどこ・・・あ!競歩で追い抜かしてたんだった。

さっきの冤罪セクハラを忘れてくれてるといいけど・・・

「三等陸佐!遅れました!」

あ、來た來た。

石川さんも一緒だな。

「よし、これでそろったね。おほん、それでは本作戦の最終確認を行います」

ぶった様子の古保利さんではあるが、俺と石川さんはこれが最初の説明なんですけど・・・まあいいか。

「ここから見える坑道り口あるでしょ?これからゾンビが出てくるのはあそこね。我々はここで防陣地を構してそれにあたるってわけ」

・・・超シンプル。

だが、デカい音が出る重火弾は使用止。

嫌な縛りプレイだ。

「んで、田中野くんと石川氏、それに神崎ちゃんと式部ちゃんは遊撃。的に言うと、盾の封鎖から出た奴をぶん毆ったり、盾持ちがヤバくなったらウチの部下みたいに救援に行ってもらいたい・・・ってこと」

「なるほど」

「坑道の出口は駐留軍が頑張って塞ぐけど、隊員が圧死しない程度に後ろに逃がすからね。そいつらが反転して襲ってきたらぶん毆ってね」

「了解です」

わかりやすくって助かる。

いや、団とか無理だもん。

「・・・で、いつごろゾンビ共はこっちに來そうですか?」

「ぶっちゃけ、あと5分もない」

なんでさ。

ゾンビってオンリーじゃ・・・いや待てよ、推定黒以上だったわアイツら。

「モニタリングしてるけど、オリンピック選手も真っ青な速度で走中って反応が出てる。空気の匂いを辿っているのか、それともそれ以外かはわかんないけどね」

「確認された數は最低20、最高30であります」

式部さんが補足説明をしてくれる。

では最悪を想定して・・・30と考えておこうか。

「駐留軍は5人1組の合計4グループで當たる。前後左右に分散してね」

ふむふむ。

ま、そうするしかないだろうな。

坑道の中で戦うとか絶対嫌だ。

ただでさえ暗い上に・・・アイツら黒いし。

「あと、追加報ね。奴らの速度、龍宮で確認されたのよりも大分速いよ」

「・・・俺もやり合った強化型黒ゾンビってことですか」

造船所の個みたいなもんだな。

微妙に速くてやり辛かったが、今は使い慣れている兜割もあるし問題はない。

「そいじゃ、よろしくね~」

いつも通り軽いじで手を振りながら、古保利さんは駐留軍の方へ戻って行った。

「こっちの戦法は・・・うん、神崎さん以外突撃で。神崎さんは撃てそうなら後方からバンバン撃っちゃってください」

消音裝置があるなら問題はない。

奴らの裝甲に拳銃は通用しないが、神崎さんなら目を狙える。

「石川さん、神崎さんの援護はそりゃもう凄いですから安心して暴れてもらっていいですよ」

「おう、そうか。そいつはいいや・・・信頼してんのなあ」

「ええ、銃の腕前は空前絶後。俺も今まで何度も命を助けられあだだだだだだだだ」

神崎さんやめてください背中を抓るのは・・・ええ!?式部さんだぁ!?

「じぶ・・・自分も骨砕の覚悟で頑張りますのでっ!のでっ!!」

「まず俺の背中が砕されそうなんですがそれは!?アアアアアアア!?」

助けて神崎さ・・・いない!!

どこ行った!?

「あ、あの陸士長・・・あの、その辺で・・・」

「何でありますかっ!余裕でありますかっ!」

抓りからは解放されたが、なにやら神崎さんと式部さんが言い爭っていらっしゃる。

・・・なんでぇ?

これから鉄火場なんでそういうのは勘弁していただけると・・・

「―――おい、來るぜ」

どうしようかと思っていると、石川さんが真剣な聲を出した。

見ると、坑道出口が騒がしい。

駐留軍の人たちが、一糸れぬきで盾を展開して整列している。

「田中野さんよ、初手は俺がもらうぜ。『使える』ってとこ、見せとかねえとな」

前へ進みながら、石川さんが呟く。

その背中から、薄く殺気が放出されている。

気合十分だ。

「それはいいですけど、本番はまだまだ先なんですから無理はしない方がいいですよ」

「がはは、毎回毎回大怪我してる田中野さんに言われちゃあ世話ねえな」

「ぐう」

ぐうの音しか出ない。

説得力が我ながらゼロである。

「・・・來るであります」

腰から雙剣を引き抜いて、俺の橫で構える式部さん。

「援護はお任せを」

背後の神崎さんも、拳銃を構える気配がした。

俺もそれに合わせ、兜割を引き抜いて持つ。

坑道の出口から、何かが高速で走るような音が聞こえてきた。

重い・・・人間にはあり得ないような重い足音が。

「stand by!!! keep position!!!!」

全員アーマー裝備なんでどの人かわからんが、オブライエンさんが何事か指示をぶ。

すぐさま、駐留軍全員の空気が変わった。

重心が前方向に寄り、一斉に片手でスタンバトンを引き抜く。

・・・いよいよ、か。

「グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」「ガガガッガガッガガッガガガガ!!!」「ゴオオガアアアアアアアアアアッ!!!!!」

最早聞き馴れつつある咆哮。

それが、坑道の奧から聞こえてくる。

邪魔にならない程度の距離を開け、盾の背後に陣取る。

兜割の握りを確かめた瞬間、坑道の闇から1目が弾丸のように現れた。

「ガッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

龍宮の黒ゾンビよりも明らかに鋭角で構された裝甲を持つ黒ゾンビ。

それが、盾に激突して痙攣を始めた。

「ガガッガガガガガガッガガ!?!?」

姿はちょっと強そうになっても、電気には弱いらしい。

安心した。

駐留軍の方は何の揺も見せず、隊列を離れることもない。

「ッギ!?・・・アァア、ア」

痙攣を続ける黒ゾンビの首に、隣の盾持ちからスタンバトンが突き込まれた。

一層大きい痙攣を見せ、黒ゾンビは地響きを立てて倒れ込む。

それを喜ぶ間もなく、次々と殺到する影。

新たな1が、盾に激突する。

「ギュルッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

痙攣する新手に、後続が激突する・・・が、さほどダメージは負っていないようだ。

後ろの方は、仲間を押しながら手を出鱈目に振り回して元気である。

・・・全員芋づる式に電、とはいかんのか。

アレか?黒になると若干電気に強くなるのか

あ、でもノーマルゾンビでも腕とかにはあんまり効果的じゃなかったよなあ・・・

俺がそんなどうでもいいことを考えている間にも、ところてんよろしくどんどん黒ゾンビが坑道の出口に詰まっていく。

初めは余裕そうだった盾持ちさんたちも、じりじりと押されて下がりつつある。

どんどん來るからな、ポジションをれ替える暇もなさそうだ。

「―――1抜けるよ!!」

古保利さんの聲とほぼ同時に、黒ゾンビが盾を飛び越えた。

無力化された仲間を足場にジャンプしたらしい。

くっそ、やっぱり若干賢いと厄介だな!

「來なァ!!!」

石川さんが両こぶしを打ち鳴らし、大聲を出す。

「ギャバ!!ギャガガッガアアアアアアアアアアアア!!!!!」

それがよかったのか、著地した黒ゾンビはこちらを見て雄たけびを上げた。

盾を背後から襲う素振りも見せずに、すぐさまダッシュ。

瞬く間に距離がまってく。

「コォォォォォ・・・っふ!!」

息吹、と呼ばれる呼吸法。

石川さんの全から殺気が放出され、臨戦態勢に。

「ゴオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

猛然と走る黒ゾンビは、大口を開けて吠えながら両手を振り上げた。

その手には、鋭利な形狀の裝甲がずらりと並んでいる。

「―――ッ!!」

黒ゾンビが間合いにった瞬間、石川さんの足元が土煙を上げた。

重心を崩すことない、超高速の踏み込みによって。

「ッゲ!?」

気付けば、黒ゾンビの口に手甲の拳が突き刺さっている。

その衝撃によって、黒ゾンビは強制的にブレーキ。

まるで自車がぶつかったような音が、周囲に響く。

なんという、拳速。

そして・・・威力だ。

「ッセイ!ッハ!!」

口にめり込んだ右拳が引かれると同時に、今度は鳩尾に左正拳。

裝甲に一瞬でヒビがり、再度加速した右拳が丸に突き刺さった。

「ギャッバ!?バア!?」

鳩尾への打撃によって、黒ゾンビの頭が下がる。

「ちぇりあぁ!!!!!」

その後頭部に、鋭く肘が叩き込まれた。

ごぎ、という何ともいえない音が響く。

「ァ・・・」

聲をらして前のめりに倒れ込んだ黒ゾンビは、もう二度とくことはなかった。

後頭部は、見るも無殘に破壊されている。

・・・つっよ。

こうしてマジで戦うのを見るのは初めてだが・・・石川さん、つっよ。

うわー・・・詩谷で會った時に敵対してなくってよかったー・・・

懐にり込まれたら即死だぜ、あんな連撃。

見間違いじゃなければ全部の攻撃で衝撃波が背後に『抜けて』いる。

あれはただの力自慢にはできない技だ。

そう、技。

後藤倫先輩のような技だ。

・・・恐ろしい使い手だなあ、石川さんも。

「田中野さんよぉ!気を付けな!どういうわけかこいつら・・・龍宮の連中よりもいぜ!本當なら初撃で首持ってくつもりだったんだ!」

やっぱりねー・・・そんな気はしてた。

中央地區の病院特製の黒ゾンビ・・・次から次へと新型がお目見えか。

ネオゾンビじゃないだけましだと思うことにする。

「新手であります!!」

式部さんがそう言いつつ走り出す。

進行方向には、またもやジャンプで盾を逃れた黒ゾンビ。

「ここは自分に!!」

慌てて追いかけようとしたらそう制止されてしまった。

・・・何が起こってもいいようにちょっと近くにいよう。

「大丈夫ですよ、田中野さん・・・陸士長の力量は私が保証します。何度も組手しましたから」

俺が知らないところでなんか楽しそうなことやってんなあ。

「神崎さんが言うなら大丈夫ですね」

「たっ田中野さんはいささか私を信用しすぎではないでしょうか!?」

神崎さんは慌ててそう言うが、それブーメランだと思うな、俺。

「ゴガアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

新手が式部さんを見つけ、加速する。

もさらに走る速度を上げ―――

「ゲゲウゥ!?!?!?」

黒ゾンビの、をスライディングのような姿勢でくぐった。

しかも、両方寸分たがわぬ度で剣を振りながら。

その斬撃は黒ゾンビの両足・・・それもアキレス腱を切斷したようだ。

黒ゾンビは急に利かなくなった足をもつれさせ、地面に倒れる。

「っし・・・っは!!」

をくぐった式部さんは、そのまま後方宙返り。

落下の勢いを乗せた剣は、正確に黒ゾンビの延髄を貫いた。

・・・はえ~、なんだあの軽業。

まさにニンジャ・・・!!

「一朗太さん一朗太さん!どうでありましたか!」

嬉しそうにまみれの雙剣を持ったまま、式部さんがこちらへ駆けてくる。

どうって・・・凄いっていう想しか出てこないよ〇トラッシュ・・・

「來ますよ!田中野さん!!」

呆けかけていた俺は、神崎さんの聲に何とか気を引き締めるのだった。

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