お待たせしました！　キマイラ戦決著。

《――……取引？　何を言っておる――》

霊の世界……そこで放った私の言葉に、い霊が不思議そうな顔をする。

《――其方が我に與えると申すか。そんなことをせずとも、〝人〟はただむだけでよい。一つだけみを葉えよう――》

「大いなる霊ならそうなのでしょう。けれど、私のみは大きいの。みはたった一つだけど、大きいから申し訳がないのよ」

私がそう言ってニコリと微笑むと、霊は靜かに頷いた。

《――確かに過去、強な願いをした〝人〟もいた。だが我はその願いも葉えてきた。とある娘のすべてを手にれたいと願う子には、様々な願いを葉える神生命と契約する機會を與えた――》

この霊にとっては、人と悪魔を仲介したこともその程度のことなのね。

「私は幾つかの魔屬を纏めたいの。けれど、面倒なことであなたの手を煩わせたくないわ。だから私の考えを聞いてくださる？」

《――その程度、造作もないこと。すべての屬を纏めて”混沌”の屬に――》

「それに及びませんわ」

言い切る前に霊の言葉を切る。言い切ってしまったら確定するかもしれないし。

それに混沌の屬？　それって悪魔になってしまうのではなくて？　し興味もあるけれど、どうせ碌な事にはならないわ。醜いインプにでもされそうね。

「と闇以外の屬を二つに纏めて、〝雷〟と〝氷〟にしてほしいの」

私が希を述べると霊はわずかに眉を顰める。

《――それは確かに強だな。其方は二つの願いを言っている。それはならん――》

「でも、混ぜすぎれば混沌になってしまうわ。それに〝雷〟だけにすれば〝土〟が余ってしまうの」

《――それでも屬は二つに纏まるであろう。それ以上、何を求む――》

「私の願いは纏めること。それでは〝土〟を捨てることになってしまうの。せっかくの屬を捨ててしまう私のために、何かがしいと願うのは強かしら」

……きっと強ね。

〝〟と〝闇〟を捨てればもうし楽な渉はできるけど、その二つを失うと私は病んだを維持できない。その二つを強化することも考えたけど、私ではアリアのようにと闇を合わせることはできなかった。

〝〟と〝闇〟はアリアの力だから、私はそれを願わない。

《――それならば代わりに、其方が過去に封じた〝火〟をくれてやろう。一度封じたはまた初めから鍛えねばならぬが、代わりとしてはちょうど良い――》

役に立たなくなった屬を戻して、心臓を圧迫するだけの申し出に、私はニコリと微笑み返す。

「それでしたらその〝火〟を加えたら、上手く二つの屬にならない？」

《――だがそれでも願いは二つだ。それはどうにもならん――》

「いいえ。私〝土〟を失って、新しい〝火〟も失ってしまうのよ？」

これが本當のことのように真摯に騙る。

でも問題はないでしょう？　ルールなどあなた次第なのだから。

「この取引はあなたに何かを差し出すのではないの。失ってしまう私のために、あなたの慈悲がしいという、一つの願いを葉えるための〝取引〟よ」

＊＊＊

「――【麻痺(パラライズ)】――」

雷魔法レベル５の麻痺がキマイラを撃つ。さすがにこれだけ大きいと全部を止めることは不可能ね。

屬を雷だけにしたなら、もうし強化も出來たかもしれないけど、そうなるとまた余計なをもらって、命を減らしていたかもしれないもの。

でも、一瞬でも止まれば充分よ。

「――【氷の鞭(アイスウィップ)】――」

まだいている部位を氷の鞭が茨のように絡みついて床にい付ける。

「――【氷の嵐(アイスストーム)】――」

二重詠唱で使う氷の嵐が範囲を増して巨大なキマイラを包み込み、その全を瞬く間に凍らせていく。

でも――

バキンッ！！

『――ギィイガァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ！！』

麻痺して凍り付いた表が砕けるのも構わず、キマイラが側から無數の腕を生み出して氷を打ち砕く。

ランク７……本當にバケモノね。アリアやネコちゃんは闇竜をどうやって倒したのかしら？

でも、それでいい。

「アリアっ！！」

私は、もう一人じゃない。

「ハアァアアアアアアアッ！！」

『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ！！』

私を信じて力を溜めていたアリアとネコちゃんが、左右から飛び出して渾の攻撃を仕掛ける。

「――【拒絶世界】……【兇刃の舞(ダンシングリパー)】――っ！」

戦技である鉄の薔薇に戦技を重ねる捨ての一撃。

拒絶世界のが刃を伝わり、〝剣〟となった黒いナイフが、その素材となった竜の牙の如く、新たな手足を薙ぎ払うように切り飛ばす。

そして、ランク６であるネコちゃんの戦技が、守りを失ったキマイラのを深々と引き裂いた。

『ギィイイギャアアアアアアアアアアアアアアッ！！』

斷末魔のようなキマイラの咆吼が響く。でもまだ死んでいない。

あと一押しで勝てるとしても、その一押しが足りていなかった。キマイラは無數の獣の集合。たとえ死んでも、生きている部位がある限り死にはしない。

その生きている部位が攻撃を行った二人を狙う。戦技を放ったばかりのネコちゃんはけない。

アリアは戦技に戦技を重ねてもう戦える狀態じゃない。

その攻撃をけようとしているアリアの瞳が、敵であるキマイラではなく〝私〟を映していた。

私は一人じゃない。一人で戦う必要はもうなくなった。

私は冒険者となった。そしてこれが冒険者のパーティーなら、斥候のアリアは遊撃役だ。ネコちゃんはたぶん戦士になるでしょう。

二人ともパーティーでの役割は〝削り役〟だ。

では私は何？　私は〝魔師〟だ。パーティーの危険を減らすために知恵を巡らし、魔を使い分ける。魔師の一番重要なことは何か？

それは……圧倒的な〝破壊力〟だ。

自分を信じろ。出來ると信じろ。ここで出來なければ、アリアのために生きると誓ったあの想いも、アリアの心も無駄になる。

レベル５じゃ足りない。でも、私は攻撃を雷と氷に絞り、そのためかずっと止まっていた魔制のレベルが６になった。

自分の力しか信じていない私が【魂の茨(ソウルソーン)】を得たのは、レベルより上の魔を使うため。いずれ自分の力でその域まで辿り著けると、命の殘りがない私はその力を〝前借り〟できる能力をんだ。

そして今、そのときが來た。

私なら……出來る！

「――【雷の檻(ライトニングバインド)】――っ！」

雷の茨がキマイラの巨を絡め取り、消えることなく激しい稲妻でダメージを與え続ける。膨大な魔力消費に初めて魔力がなくなるのをじながら、それでも私は最後の一撃を撃ち放つ。

「――【凍結（フリーズ）】――っ！」

キマイラが真っ白に凍り付き――

ピキィイン…………

雷の戒めが凍結したキマイラを塵のように砕いて、氷の結晶が雪のようにダンジョンに舞う。

「これで……終わりよ」

【スノー】【種族：人族♀】【ランク６】1Up

【魔力値：34/660】20Up【力値：15/48】

【筋力：7（9）】【耐久：4（5）】【敏捷：14（18）】【用：10】

【Lv.3】

【魔法Lv.5】【闇魔法Lv.5】

【水魔法Lv.0】【火魔法Lv.0】【風魔法Lv.0】【土魔法Lv.0】

【氷魔法Lv.6】1Up【雷魔法Lv.6】1Up

【無屬魔法Lv.5】【生活魔法×6】【魔力制Lv.6】

【威圧Lv.5】【探知Lv.2】【異常耐Lv.3】【毒耐Lv.3】

【簡易鑑定】

【総合戦闘力：2376（魔攻撃力：4688）】456Up

ようやくキマイラと決著しました。微妙に長かったです。

なんでこれを後日譚で書こうとしたのか……

でもラストはもっと凄いことになる予定……

それはともかく、六月には書籍第６巻と、コミカライズ３巻が同月発売です。

詳しくは表紙の畫像と一緒に活報告に載せていますのでご覧ください！

今回は珍しいアリアの笑顔挿し絵付きです！

いつも誤字報告や応援、ありがとうございます。