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アルの問いかけに、ジュリアンさんが答えはじめる。

「屋敷で、し遠くからではあったが、それらしき男を見た。顔は見えなかったが、この國では見慣れない、布をまきつけたような服を著ていた。しかも、肩に鳥をのせていた」

「鳥…？」

「ああ、いかにも怪しくて匂うだろ？　で、俺は、イザベル嬢に鳥をつれた男のことをそれとなく聞いた。が、しゃべりたがらない。どうやら、侯爵に口止めされているようだった」

「それで？　どうせ、仕掛けで口をわらせたんだろう？」

アルが當然のように言った。

「おい、アル、その言い方はやめろ。ライラちゃんに軽蔑されるじゃないか。ライラちゃん、安心して。俺はライラちゃんの兄として、恥ずべきことはしてないからね？　ただ、ターゲットをほめまくって、いい気にさせただけだから。それで、君のことは何でも知りたい…みたいなことを言うと、々しゃべってくれたってわけ」

そう言って、私ににっこりと微笑みかけてくるジュリアンさん。

ターゲットって…。本當に筆頭公爵家のご子息なの…？

「あの、ジュリアンさん、なんだか小説にでてくる偵みたいですね…」

と、思わず、口にだしてしまう私。

「うわ、ライラちゃんに褒められた！」

いや、褒めてない…。そう思った瞬間、アルも同じことを言った。

「は？！　褒めてないだろ？！　それに、どう考えても、それは仕掛けだ。まあ、いい。で、あの、なんて言ったんだ？」

眉間にしわをよせながら、アルが聞いた。

「イザベル嬢が言うには、男は異國の占星師。數年前から、グリシア侯爵が信頼し、相談事などをしている。この國に來たときは、いつも、グリシア侯爵の屋敷に滯在するようだ。今も、１か月前からこの國にきて、グリシア侯爵の屋敷に滯在している。イザベル嬢の口ぶりから、イザベル嬢自もその男のことを信頼しているように思えた」

「なるほど…。屋敷に滯在させるほど、グリシア侯爵の信用を得ているのなら、侯爵のみを葉えてきたということ。人には言えない事をしてきたんだろう。つまり、占星は表向きだな。ジュリアンの予想通り、呪者か。…そう言えば、グリシア侯爵ともめていたロス侯爵が原因不明の病で倒れたのは先月…。調べる必要があるな」

「ああ。俺も気になって、グリシア侯爵が邪魔に思うだろう貴族を片っ端から調べた。すると、この數年で、他にも數人、原因不明の病で倒れたものがいる」

それを聞くと、アルは考え込むように黙った。

私はさっきからずっと気になっていることを、ジュリアンさんに聞いてみた。

「あの、ジュリアンさん…。その呪者の肩にのっていた鳥。どんな鳥でしたか？」

「あ、やっぱり、気になる？　ライラちゃん？」

ジュリアンさんの目が、きらりとる。

私はうなずいた。

特殊な植を育てているとはいえ、庭には鳥がくる。

邪気から生まれた植なので、私は大丈夫でも、他の生きものに害があったらいけない。そう思って、注意深く観察しているうちに、鳥が好きになっていた。

異國の鳥についても、図録をとりよせたり、書をよんだりした。

そのなかで、思い出したのは、呪に毒を持つ鳥を使っていたという異國の書。

今は絶滅したはずの鳥だけれど、似たような鳥がいたとしたら…。

呪者が肩にのせてまで、常に一緒にいる鳥。気になるよね…。

「実は、俺も気になって、調べているんだ。でも、まだわからない。俺が見たのは、男の肩にのった鳥の後ろ姿。の大きさは、その男の頭くらい。はのを連想する赤に黒い模様のようなものが見えた。見間違いかもしれないけれど、その黒い模様が、いているような気がしたんだよね…」

そこまで話した瞬間、ジュリアンさんの右手に絡みついている黒い煙が、ずりずりとうごめき始めた。

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