《ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく》410話「次の拠點へ」

「さて、行くか」

俺がべラム大陸へとやってきて二日が経過する。あれから特に目ぼしい報は得られなかったが、この大陸における周知の事実である報の真偽を確かめるには十分な果を得られた。

これ以上ここで報収集をしても新たな収穫は得られないと考えた俺は、思い切ってこの大陸の中心部となっている場所へと赴くことにしたのである。その場所とは……アルカディア皇國皇都【アヴァロン】だ。

アルカディアの中心として栄えていた都市アヴァロンだが、大陸統一を果たしてからはアヴァロンがべラム大陸における中心都市として栄華を極めているという噂らしい。

そこであれば、さらに詳しい報を得られると踏んだ俺は、すぐにソースティアを後にする決意をしたのだ。マリヘルやアロスの報によると、皇都までの道のりは長く各都市を通過することを視野にれるとソースティアから三ヶ月以上もかかってしまうという話だ。

さすがは大陸一つを手中に収めた國だけあって、メインシティに行くだけでもかなりの時間が掛かってしまうようだ。だが、そこはチートの力を使えばどうとでもなる。

俺には必殺の飛行魔法&瞬間移というファンタジーではお馴染みのチート能力があり、それを本気で駆使すれば數日で辿り著くことは難しくない。

しかしながら、それでは味気がなくはっきり言ってしまえばつまらない。アルカディア皇國の向を探るという表向き上の理由としては、一日でも早く敵の懐に潛り込み、報を得ることこそ優先されるべきものであるが、俺としてはアルカディアの向など知ったことではない。

モンスター農園を襲撃されたことは寢耳に水だったが、結果的に俺が出るまでもなく召喚獣たちやその配下のモンスターで対処できてしまったため、次に來られてもまた同じ悲慘な結果が待ちけているだろう。

となってくればだ。そんなスパイのようにこそこそとき回るより、未開の土地を観しながらの方がよほど建設的であると考えるのは至極當然の帰結だ。

「というわけで、ローランドのイケイケトラベルの始まり始まり~」

久しぶりのバラエティ乗りを口にしながら人目につかない場所へ移する。そして、姿を消す魔法と飛行魔法を使って次の街に向けて飛び立った。

いくら観目的とはいえ、四六時中徒歩で向かうとなると、それこそ皇都に到著する時間が長くなってしまう。せめて、都市から都市への移はできるだけ短する方向でいくため、飛行魔法は使っていくことにしたのだ。

ソースティアを出立し、そのまましばらく空の旅を続けていると、眼下に人影が見える。よく見ると、荷馬車が倒れており、その周囲を人が取り囲むような景が目に飛び込んできた。取り囲んでいる連中は武裝しており、どうやら盜賊らしい。

一方襲われているのは、行商途中の商人であり二組の男がいるようだ。見たところ一組は夫婦、もう一組はその子供のようで、家族で行商を行っていたらしい。護衛の冒険者も何人かいるが、それ以上に取り囲んでいる盜賊の數が多いため、多勢に無勢といった様子だ。

「せっかくの快適な空の旅を……ローランド航空ごっこをしていたというのに。俺を邪魔した罪は重いぞ」

このまま黙って見過ごすことも考えたが、このあとどういう末路が待っているのかは想像には難くない。それを考えれば、このまま放置して後味の悪い思いをすることにならないためにも、彼らを助けた方が俺としても神衛生上でも得をするということになる。てことで、レッツ人助け!

「沼になーれ、沼になーれ、沼になーれ」

俺は魔法を使い、盜賊たちの立っている場所のみ泥沼になる魔法を使う。その効果はすぐに現れ、沼に嵌った盜賊たちが慌てふためく。一何が起こったのか訳がわからないといった様子の行商人一同だったが、盜賊たちの首から下が完全に沼に浸かったところで、魔法を解除し抵抗できないよう地面に埋まった狀態で固定した。

突然のことに俺以外の全員が呆然とする中、正気を取り戻したのは盜賊たちだった。圧倒的有利な立場から一転して、の自由を奪われた狀態となってしまったのだ。しかも、その原因がわからず気付いた時には地面に埋まっていたという文字で説明しても不可解極まりない狀態であるのは間違いない。

そして、護衛の冒険者たちが依頼人の無事を確認すると、周囲を警戒する。盜賊たちを拘束したのが自分たち以外であることは明白であり、現狀助かったとはいえその助けた相手が味方であるとは限らない。自分たちを襲うために盜賊たちが邪魔だったということも考えられるのだ。

(まあ、今回は助けただけだけどな)

誰もいないことを確認した冒険者たちが、行商人を連れその場を離れる。盜賊たちが喚き散らす聲が響き渡るが、たった今まで自分たちを襲おうとしていた人間の言葉など聞くはずもなく、行商人一行は彼らを置き去りにして先に進んで行った。

それを確認した俺は、周囲の気配を探る。すると近くに狼型モンスターの群れがおり、ちょうど狩りの最中だったようで、獲を求めて移する姿があった。

俺が直接手を下しても良かったが、これ以上面倒を見切るのはさすがに嫌だったので、俺も先へと進むことにした。その後、盜賊たちがどうなったかは言うまでもない。南無~。

それから、しばらく航空ごっこを楽しんでいたが、この土地は治安が悪いらしく、次の街へ辿り著くまでの間に盜賊に襲われる一行を四回見かけた。三回が商人、一回が旅人で、そのうちの一回がもはや手遅れなぐらい悲慘なこととなっていたが、せめて盜賊だけなんとかしておくため、近くのモンスターをけしかけて始末した。

ちなみに、盜賊に襲われるイベントあるあるとしてよくあるエロい展開はなかった。ちょっとは期待していたが、そうそう人で巨というものはいないらしい。ファンタジーな世界とはいえ、現実はそれほど甘くはないということだな。

「こりゃあ、相當治安が悪いな。こんな狀態で、よく他の大陸に勢力をばそうという考えが浮かんだな。どうやら、この大陸の覇者は傲慢が過ぎるらしい」

國を統治するにあたり重要なこと、それは各拠點間の治安である。國民が生活していく上での資調達を拠點間で行う場合、それを妨げる要因として挙げられるのは盜賊だ。盜賊の出沒頻度が多ければ多い程そういったやり取りがスムーズに行われなくなり、放置すれば國を脅かしかねない問題へと発展する。

大陸という大規模な組織に発展したことで、隅々まで目が屆かなくなった。それによって、盜賊の出沒頻度が上昇し、拠點間での易に支障が出てしまうことで、國としての機能がしずつ鈍くなっていく。

その対応を行わなければならないのだが、これだけ頻繁に盜賊がいるとなれば、そういった対応を行っていないか、それ自に気付いていない可能がある。

「とにかく、次の街で報収集だ」

まだこの國に來てから日が淺いため、目ぼしい報を手にれられていない。次の街でそのあたりを詳しく調べてみることとし、次の街へと向かった。

余談だが、次の街まで到著するまでにさらに五組の盜賊と出會ったのだが、すべてなにかしらの対処をしたことを付け加えておく。

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