《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》
夏の季節。
この時期は、バンド活にも熱がるから、んな意味で気と力が必要な時だ。
しかし、裝はなぁ。
いくらガールズバンドになるからって、僕に裝させるなんてのはんな意味で恥ずかしい。
ゴスロリ風の黒の洋裝は、男が著るにはさすがに目のやり場に困ってしまう。
黒のタイツが、なんとか誤魔化せているみたいだが。
僕の場合、そこまで筋質じゃないのがまだ救いだ。
「よく似合っているよ。弟くん」
「やっぱり、楓君がいないと張り合いがないかも」
香奈姉ちゃんだけでなく奈緒さんまでそう言ってくるとは……。
もうそろそろ、僕が『男』であることをまわりに言ってしまってもいいんじゃないのか。
いつまでも隠し通せるものでもないのに……。
「楓君が『男』であることは、ここのライブハウスの人たちは知っているからね。だから、なにも心配はいらないしね」
「え? それって……」
「あ……」
沙先輩は、ここで問題発言をしてしまう。
それは、口が裂けても言えないような事だったんだろう。
沙先輩は、咄嗟に口元に手を添える。
僕も思わずハッとなって、香奈姉ちゃんを見る。
「あの……。香奈姉ちゃん。それは一どういう──」
「あー。これは、その……。弟くんが裝するっていう條件でね。このバンドに參加させるっていう約束をしたっていうか」
「誰と?」
「そこまでは……」
「もしかして……」
「弟くんが考えるようなことじゃないよ。あくまでも、私たちが勝手にしたことだから──」
もはや、しどろもどろである。
香奈姉ちゃんがこんな風になるのは、めずらしいくらいだ。
僕は、ここにいるみんなを見て…とりあえず一息つく。
「ごめんね、楓君。もしかして、嫌だった?」
ここで理恵先輩が、申し訳なさそうに訊いてくる。
そう言われてしまったら、はっきりと拒絶できない自分がいる。
「嫌じゃないよ。みんなと一緒にバンドができるのは楽しいし」
「そうだよね。楽しいよね? 私たちも、弟くんと一緒にバンドができるのって、とても嬉しい気持ちになるよ」
香奈姉ちゃんは、とても嬉しそうに顔を綻ばせ、頬を赤くしてそう言った。
香奈姉ちゃんの気持ちは、僕にもよくわかる。だけどこれは……。
「………」
僕は、なんとも言えない表になってしまう。
みんなにバレてるって、それっても蓋もない話じゃん。
奈緒さんは、無防備にも僕のに抱きついてくる。
「まぁまぁ。香奈にとっては、楓君と一緒にバンド活ができることが嬉しいんだから。あまり責めないであげて?」
「うん。責める気はないけど……」
奈緒さんなりのスキンシップのつもりなんだろう。
香奈姉ちゃんは、みんなを元気づけるために笑顔で言った。
「さぁ、次のライブも頑張ろう!」
「「おー!」」
沙先輩と奈緒さんが賛同する。
そんな中、當然のことながら僕は乗り気ではないわけで……。
「香奈ちゃんと奈緒ちゃんが靜かにしてる限り、大丈夫だから。楓君のことは、今までどおり、わたしたちがフォローするね」
理恵先輩は、僕の手をギュッと握ってくる。
その言葉が、地味にとてもありがたい。
「うん。ありがとう」
僕は、理恵先輩にお禮を言っていた。
人間、時にはあきらめも肝心なのかな。
やっぱり歌っている時の香奈姉ちゃんは、とても眩しく、輝いて映るな。
そんなことを思えてしまうのは、僕だけだろうか。
やっぱり香奈姉ちゃんの隣でベースを弾いているからだろうと思う。
こんな時にも香奈姉ちゃんは、歌いながらも何気ない所作で僕の近くに來て、しの間だけ見つめてくる。
『大丈夫。その調子だよ。頑張って』
そんなことを訴えかけるような視線だった。
もちろん、そんな時の香奈姉ちゃんに普段の甘々な雰囲気はなく、むしろ凜々しくじてしまう。
僕もしっかりしなくちゃ。
香奈姉ちゃんは、いつもと変わらぬ歌聲でみんなの心を魅了していた。
ここから聴いていても引き込まれてしまうくらいに香奈姉ちゃんの歌聲は、とてもき通っていて綺麗だ。
僕はうまくやれてるだろうか。
みんなの足を引っ張っていないだろうか。
こんなことを考えたのは最初の頃だけで、今となってはもう慣れたものだ。
僕は、最後まで気を抜かないようにしっかりとベースを弾いていく。
ズレないようにみんなと合わせながら──
今日のライブをなんとか終えて楽屋に戻ると、みんなイスに座って一息吐いていた。
「今日のライブは、とてもよかったね。次も頑張ろう!」
香奈姉ちゃんは、まだ元気なのか僕の前までやってきて手を握ってくる。
一応、労いのつもりなんだろう。
「うん」
僕は、微笑を浮かべて頷いていた。
なにも反応しないのは、香奈姉ちゃんに悪いと思ったからだ。
みんなは、どう思っているんだろうか。
奈緒さんは、なにを思ったのか履いていたニーソックスをぎ始める。
スカートの丈は短いため、ちょっとしたきで中の下著が見えてしまうんだけど……。
そして、素足になると開放的なじになったのか綺麗な両腳をみんなの目の前に曬す。
ちょっとはしたない気もするが、そこは仕方がない。
相手は奈緒さんだ。
普通に見れば、じゅうぶんに可いのに……。
ちなみに、ちらりと見えてしまった下著のはピンクだった。
「特に楓君は、頑張ってたね。あたしも負けていられないなって思ってしまったよ」
「僕は別に……。奈緒さんがあまりにも一生懸命だったから、僕も──」
「そうそう。奈緒ちゃんだって頑張ったのに、そんな言い方はね。どうせ香奈ちゃんに負けたくないって思ったんでしょ?」
沙先輩は、その場で胡座をかいて座りだす。
沙先輩の場合は、ドラム擔當ということもあり、スカートの中はスパッツだから、見られても平気なんだろう。
まったくと言っていいほど恥ずかしげがない。
「あたしは…いつもどおりのことをしただけだよ。みんなはどうだったの?」
「私はねぇ……。まぁ、いつもどおりだったかな。全力だったよ。ドラムは、手を抜けないからね」
「わたしも、全力だったよ」
理恵先輩は、そう言って近くにいる沙先輩に抱きついていた。
そうしているととあるが楽屋の中にってくる。
金髪をポニーテールにしている。結城紗奈さんだ。
「みんなお疲れ様。今日は、ありがとうね」
紗奈さんは、休憩中の僕たちに気を遣ってか、笑顔でお禮を言った。
ちょっと短いけど、休憩は終わりかな。
香奈姉ちゃんは、笑顔で紗奈さんに言った。
「いえ。こちらこそ、ありがとうございます。今日も、無事にライブをやる事ができました」
「みんな、さすがだね。こんな時でも、落ち著いて演奏できるなんて──」
紗奈さんは、驚いた様子でそう言う。
「こんな時? それは一?」
対して香奈姉ちゃんは、とても思案げな様子だ。
それを払拭するように紗奈さんは説明する。
「うん。今日はね。実はプロの人がやってきてたんだよ」
「そうなんだ。どうりで今日は、いつもよりか靜かだなって思ったよ」
「それで本題なんだけど──」
「あー。ちょっと、今の段階ではリクエストには応えられないかも……」
「どうして? もしかしたら、プロになれるかもしれないんだよ? ここで棒に振ったら二度と──」
「気持ちはわかるんだけど……。私たちには、進路のことがあるから」
香奈姉ちゃんは、はっきりとそう言っていた。
たしかに、今のところプロになるだなんて考えはない。
行けるところまでは行くつもりではあるけど。
「進路? 大學に行くつもりなの?」
紗奈さんは、驚いた様子で香奈姉ちゃんたちに訊いていた。
香奈姉ちゃんは、僕の腕にギュッとしがみついて言う。
「はい。高校では、弟くんとの時間があまり共有できなかったから……。大學では、なるべく一緒の時間を過ごしたいんです」
「そっか。それじゃ、バンド活は『引退』って事でいいのかな?」
「ううん。バンド活は、今までどおり続けていくつもりだよ。勉強しながらだから、ちょっと大変だけど、できるものは積極的にやっていきたいなって」
「そういうことなら、香奈ちゃんには頼めないか……。ちょっと殘念だなぁ」
「ごめんなさい」
「香奈ちゃんが謝る必要はないよ。悪いのは香奈ちゃんが言う『弟くん』だから」
紗奈さんは、なぜか僕の方に視線を向けていた。
もしかして睨んでる?
そんな目で見られても……。
しかし、そんな時は奈緒さんが頼りになったりする。
「楓君が悪いわけではないよ。あたしたちには、まだ時期尚早なだけだよ。たしかに、これはチャンスなんだろうけど……」
「そう思うでしょ? だからこそ、リーダーである香奈ちゃんの意見が聞きたいなって思ってたんだけど──」
「まぁ、やれるだけのことはやりたいっていう気持ちは私たちにはあるんだけど。タイミングがね……。進學のための勉強もしなきゃいけないから……。どうしてもね」
魅力的な話なのはたしかだけど、香奈姉ちゃん自も板挾みの狀態みたいだ。
僕のことは、あまり関係がない気もするが……。
「そういうことなら、仕方ないか……。また今度ね」
紗奈さんは、苦笑いをしてそう言って楽屋を後にした。
香奈姉ちゃんたちは、それを黙って見送る。
「まぁ、仕方ないよね」
しばらくしてから、奈緒さんが口を開いた。
奈緒さん自、プロにはなりたいという夢があるんだろうけど。
進學のことを言われたら、なんとも言えない狀況なんだろう。
それに対する反応は、それぞれ違うようにも思えるけれど。
なくとも、今は仕方がないと思う。
なんといっても、タイミングが悪い。
「うん。今はね。プロの人からスカウトされて喜ぶよりも、進學のことを考えないと──」
「そうだね」
「わたしも、香奈ちゃんと同意見かな」
沙先輩と理恵先輩は、自分の進路を再確認するかのようにそう言っていた。
僕的には、香奈姉ちゃんがむようなタイミングで行ければ良いと思っているが……。
香奈姉ちゃんって、どちらかというと現実主義者だからな。
そういうことにも、堅実になる。
それで失敗するなんてことは、ないだろうし。
だから奈緒さんも、ついてきてるんだろうな。
「僕は、香奈姉ちゃんの判斷に任せるよ」
僕は、無難にもそう言っていた。
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