《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》46話 息抜きは大事なこと
息抜きは大事なこと
ピンポン、と呼び鈴が鳴った。
ねえちゃん宅はソーラー発電なので、まだ電気の恩恵があるのだ。
「あらあら、お客様ね。ごめんなさいいっくん、代わりに出てもらえない?」
ぬか床をかき混ぜつつ、ねえちゃんは俺にそう聲をかける。
たしかに、その狀態じゃ來客の応対はできないな。
神崎さんは山へ柴・・・じゃない獣狩りに行ってて不在。
式部さんは古保利さんの所で偵察。
アニーさんは・・・うん、庭のベンチで寢ているな。
俺しかけないってわけか。
「ういうい」
「うやぁん・・・ぴえん」
いつものように晝寢しつつも俺の膝から離れない朝霞を剝がし、立ち上がる。
相変わらず面白い鳴き聲だな、コイツ。
「ピンポン鳴らすってことは石川さんじゃないよな・・・聲もしないからライアンさんじゃないし」
『センセイ!センセーイ!!』ってでっかい聲で呼ぶもんな、あの人。
玄関に向けて歩く。
『防衛隊』で俺達に何かしようってイキのいい奴は、仲良く揃って土の下だからそれもない。
はてさて、俺の知らないご近所さんかな?
傷まみれの顔に驚かれなきゃいいが。
「はいはーい、今開けまーす」
ガラス越しに見えるのは、迷彩っぽい。
・・・自衛隊か駐留軍だな。
ってことは何かの連絡要員か。
ライアンさんじゃないのはどうしてだろう。
土間に下り、鍵を開ける。
ガラガラと音を立てて開いていく扉の先に、見慣れた迷彩服。
「・・・は、はろー・・・ないすとぅ、みーちゅう?」
が、顔は一切見慣れていない人だった。
「Hi,samurai!!」
俺を見てぱっと笑ったのは、駐留軍の軍人さんだった。
それも、。
が褐なのは日焼けじゃなく、元々そういう人種の方なんだろう。
髪型は限りなく坊主に近いベリーショート。
気そうな目が、俺を見つめている。
ズボンは迷彩服だが、上半はなんとタンクトップ一枚。
ながら鍛え上げたが眩しい。
でも、出る所は・・・うん、すごい出ている。
セクハラ的な表現だが、そうとしか言いようがない。
「『こうして面と向かって話すのは初めてね?アラ、もっと厳ついかと思ってたら・・・カワイイ顔ね、年下かしら?』」
彼は俺にペラペラと話しているが、いくらなんでも早口過ぎる。
ぜんっぜん聞き取れない、文系を舐めないでいただきたい。
「『あー、えっと、私は、あー・・・すみません、もうすこし、喋る、ゆっくり、お願い?』」
ポンコツ脳細胞からなんとかして外國語を捻り出す。
「『あ、そうね。私ったら・・・ええと、日本語て難しいのよね~・・・キャシディが教えてくれたの、どんなだったかしら・・・』」
なんとか通じたのか、彼はし考え込むような素振りをした。
・・・この人も俺より長デッカイな。
おかしいなあ、俺・・・平均長よりは大分上なのに。
グローバルだとチビになっちまうのか。
「『あ、たぶんこれだったわ!』」
彼は何かを思い出したように笑い、俺の目を真っ直ぐ見つめて言った。
「カワイイヒト、コンバン、イッパツドウデスカ?」
・・・何が!?
何で俺、見知らぬ軍人にいきなり口説かれてんの!?
いや、口説くどころじゃねえ!?
完全に超ド級のセクハラだ!!
・・・彼の表から、スケベなじは一切読み取れない。
というと、この人が日本語を大間違いしているのはなんとなくわかる。
いや當たり前だろ、こんな真晝間から言うべき臺詞じゃないし。
・・・だが、俺には彼の言語的な間違いを正せる語學の才能はない。
どうしよう。
當の本人は『?』みたいな顔でこちらを見ている。
絶対に自分の言い間違いに気付いてないぞ、これ。
マジでどうしよう・・・
ええいままよ!
頑張れ、俺の語學力!!
「『あー・・・あなたの、日本語、間違い、それ、その、とっても、あの・・・』」
しどろもどろでなんとか言葉を絞り出した、次の瞬間だった。
「『―――おいおい、それは男が意中のを口説くための、それもかなりド直球で下品な夜のいだぞ?キミの日本語教師はモグリか、それともポルノスターか?』」
アニーさんが、俺の後ろから苦笑いと共に現れた。
きた!メイン外人さんきた!これでかつる!!
「『・・・マジ?』」
今リアリー?って言った!
これなら俺も知ってる!!
「『ああ、マジだ。うちの可いサムライを食べたくなるのはよくわかるが、明るいうちから盛るのはよくないぞ?』」
・・・サムライだけは何とか聞き取れたぞ。
もう読解する努力は放棄しよう。
アニーさんに丸投げだ。
「『ええええ!?ちょっと、わた、私そこまでビッチじゃないわ!確かに彼、好みの範疇だけど・・・でもでも、いきなりベッドに連れ込むつもりなんてないのよ?』」
「『おや、気が合うな。コイツは強くて優しい高級品だぞ・・・恐らくアッチも相當強い』」
「『・・・マジ?』」
またリアリーって言ってる!!
でもそれ以外は全然わかんない!!
「『試したことはないがな?しかし、ゾンビ共を正面に回して刀1本で暴れ回るタフガイだぞ?弱いわけがないだろう?』」
「『・・・フゥン、日本の男ってナヨナヨしてると思ってたけど、冗談抜きにサムライも生き殘ってるのね・・・ところであなたは?』」
「『アニーだ。この騒が起こる前に退役してバカンスと灑落こんでいたら本國に帰れなくなってな・・・おっと敬禮はいらないぞ、曹長』」
「『アラ、じゃあこのままでいいわね・・・お仲間か、あなたも災難ねえ』」
「『なあに、この國もそう悪くはない、悪くはないさ』」
・・・何やら合間合間に俺を見ながら盛り上がっている様子だ。
相変わらず早口過ぎてまったく聞き取れない。
・・・ところでお二人とも、なんで定期的に俺の間見るの?
特に訪問者のお姉さん・・・その、目が怖いんですけど?
時々野獣めいたが宿るんだが!?
「『參ったわ、連絡だけするつもりだったけど・・・味見したくなっちゃう』」
ひぃ!?
なんですか!?
目が怖いんですけど!ほんとに!!
「『彼・・・イチローには怖い怖い自衛が2人も張り付いているぞ?こっちの國でも大人気だからな』」
アニーさん・・・なんですかその目は。
「『フゥム、そんなに人気なのね・・・アニー、彼って著やせするタイプ?』」
「『ホラ、な』」
「うおお!?ちょっと!?いきなり何すんだアンタ!?どういう文脈が発生したもごごごご!?」
何を思ったかアニーさんは俺のTシャツを摑むなり、いきなりがせにかかった。
驚くべき早業で、気付いた時には顔にシャツが張り付いている。
ちなみに今日の柄は『12000までキッチリ回せ』である。
・・・おい!?マジで何が起こってるんだよ!?
「『ワオ、ワオワオワオ!なにこれ!すっごいセクシーじゃない!?まるで映畫で見たアクションスターだわ!!スカーフェイスもイカしてるし!!』」
「『ふふふ、気が合うな。さすが同國人だ』」
なんかセクシーって聞こえた!?
ナンデ!?俺のどこにも存在していない要素だぞおい!?
こんなド直球なセクハラ初めて遭遇した!!
俺がなら失神してるところですよ!アニーさん!!
「ちょっと!アニーさん何がどうなってるんですか!?アレですか!?なまっちろい男のを曬して笑いものにしてやろうって魂膽ですか!?」
俺もかなり鍛えてはいるが、さすがにライアンさんやオブライエンさんみたいな厚みはないからな。
骨格から変えないといけないから仕方ないじゃないか!!
「・・・イチローが貧弱なら、この國の男はほぼ貧弱まみれなんだがな。キミは本當に自分のことになると評価が一変するな」
「じゃあなんでこの狀況になってるんですか」
「彼、傷のあるに興するタチらしくてな。大いにセクシーだとさ・・・冗談だ、キミのは鍛え上げられていて本當にセクシーだよ。そら、何してるサムライ、褒められたら褒め返せ」
「ええ・・・あの、せ、センキュウ?あー・・・『あなたも、その、セクシーですよ?強そうで、大きくて?』」
「『あら!強そうなが好きなのサムライ!?フゥン・・・嬉しいわ!とっても!素敵よ!』」
俺のつたない外國語が通じたのか、彼は目を輝かせて喜んでいる・・・っぽい!
いや、返事の容わかんないもんな。
いやいやいや・・・なんで俺が褒め返してるの?
よくわからない。
いや、でも褒められたから褒め返さないといけなくって・・・?
あれ、よくわからなくなってきたな?
そもそもなんで俺がされてるの!?そこからやぞ!?
あとTシャツいい加減に返してくれませんかねえ!?
「・・・バーベキュー?」
「ハイ、ソウデス・・・『ねえアニー、合ってるわよね?また卑猥な言葉じゃないわよね?』」
「『心配するな、完璧に合っている。しかしキミの日本語教師は一度ぶん毆っておいた方がいいな』」
しばしのわちゃちゃの後、彼・・・名前は『エマ』さんだった・・・に告げられたのは、あまりにこの狀況に合っていない行事だった。
「要はだ、でかいドンパチが始まる前に・・・そう、思う存分楽しんでおこうということだな。私やここの一家も招待されているぞ」
なるほどね・・・
中央地區にかちこむまで、殘すところあと3日。
々羽目を外しても大丈夫な日程というわけか。
オンオフをきっちり分ける古保利さんらしいや。
「どうりでここ最近ライアンさんを見かけない訳だ」
文字通り野山を駆け巡って『材料』を集めているらしい。
まあ、招待と言うなら別に斷る理由もない。
大事の前の・・・楽しみだ。
「あー・・・『喜んで參加します、しい人』・・・かなぁあ!?」
言うや否や、俺はエマさんに抱きしめられた。
なんで!?アニーさんが『これから外人のと英語で話す時には最後にこれを付けろ』って言われたから言っただけなんだけど!?
うわぁ!いけどらかい!
いい匂いがするぅ!?
「『フフ、楽しみにしているわね。セクシーなサムライさん』」
エマさんは何事か俺の耳元で呟くと、軽く頬にキスをしてきた。
挨拶!挨拶ですよね!?
他の人に見られてなくてよかった・・・本當に。
朝霞とかに見つかったら頬に吸い付かれそうだ。
『挨拶だし!挨拶だし!』とか言いながら。
外人ってすげえや・・・
・・・ところでアニーさん、なんで笑い転げてるんですか。
あと、いい加減に俺のシャツ返してくれませんか!?
「『それじゃあね、待ってるから!』」
たぶんサヨナラ的なことを言いながら、エマさんは帰っていく。
うーん・・・背中も凄い筋だ。
さぞ鍛えているんだろう。
「・・・アニーさん、シャツ返してくださいよ」
土間に座り込んで肩を震わせているアニーさんに言う。
この野郎・・・じゃなくて郎!
俺で遊ぶのやめてもらっていいですかねえ!?
「ヒィヒィヒィ・・・っふは、くくくく・・・」
涙まで流しやがってからに・・・!!
そんなに俺が面白いか!!
男相手でも最近はセクハラが立するんやぞ!!
「いやいや、すまないな、し悪ふざけが過ぎたようだ、くふふふ・・・」
「しぃ?かなりの間違いじゃ・・・あ」
笑いながらTシャツを差し出すアニーさんの後ろに、タオルケットを抱えたままの朝霞がいる。
完全に起きているわけじゃない、寢起きってじの顔だ。
・・・まずい、これはまずいぞ。
目だけが、爛々と輝いている。
飛び掛かる寸前の、食獣の目だ。
「朝霞、朝霞どうどう、落ち著け、ハウス!ハウス!」
「にいちゃぁん!!」
「グワーッ!?!?!?」
どうにもならんかった。
瞬く間に距離を詰めた朝霞に、俺は抗うすべをすべて失って巻き付かれた。
そしてアニーさんは、今度こそ土間に転がって大聲でゲラゲラ笑い始めるのだった。
「ガッデム!ファッキュー!!」
「はははは!特に後半はむところだはははははははは!!!!」
俺のなけなしの罵倒すら聞き流し、アニーさんはのような顔で笑い続けるのだった。
たすけて!だれかたすけて!!
「ふわぁあ!にいちゃん!すごい!あーしこんなバーベキュー初めて見た!!」
時刻は夕方。
招かれた俺たちは、富士見邸の玄関を潛った。
目を輝かせた朝霞が言うように、広い富士見邸の庭には・・・大掛かりなバーベキューセットが所狹しと並べられている。
「あらあら、凄いわねえ・・・あの外人さんたち、隨分頑張ったのね」
ねえちゃんが呟く。
「鹿、豬・・・それに山鳥ですね。彼らの狩猟技は高水準なようです」
神崎さんが心したように続けた。
たしかに、俺には何のかわからん塊の數々が、現在進行形で超味そうな匂いを周囲に撒き散らしている。
「アゥン!バゥウ!ギャン!キュゥウン!!」
鼻の良さからか、なーちゃんはもうだいぶ前からの匂いでバグっている。
涎・・・涎が凄いや。
もうのことしか考えてない、絶対。
リードがなかったら突撃してそう。
「ヨウコソ!センセーッ!!」
何故か上半でエプロンを付けたライアンさんが、満面の笑みで寄ってきた。
・・・ツッコミどころが多すぎる!!
アレか?を焼きっぱなしで暑いからか!?
じゃあもう上半でいいじゃんか!!
なんでエプロンを付けるんですか!!
「・・・ふむ、イチローもアレを著ないか?いや著るべきだな」
「なんでさ」
「にいちゃんがエプロン!?エプロン!?」
「何で二回言うの朝霞」
アニーさんは時々本気かそうじゃないか全然わからん。
いや時々じゃない、いつもか。
俺をどうしたいんだよこの人は。
「あ、ああ~・・・お招きいただいて、ありがとうございます?」
「イエイエ!タノシンデクダサーイ!!オスキナトコ、ドーゾ!!!」
・・・というわけなので、ライアンさんに導されつつ庭にる。
おお!新鮮な野菜もたくさんあるじゃないか!
焼いた野菜もいいが、生でも齧りたいな!
軍人さんたちがキャッキャしている中の、空いているところへ行く。
簡易チェアがあったので、遠慮なく座ることにした。
俺たちが最後の客だったのか、焼けているが係っぽい人たちの手によって切られ始めていく。
・・・今気付いたが石川さんもいるじゃん。
何故かまな板の上に置かれたデッカイ・・・スズキを捌いている。
あそこだけ魚河岸だぞ、空間が。
「ふむふむ、立食で好きなように・・・か。國を思い出すなあ」
アニーさんは懐かしそうにしている。
「お!そうだった・・・」
そして、家から持ってきたやけに大きいリュックサックを地面に下ろし、中を探っている。
アレ気になってたんだよな。
アニーさんの私だと思うけど・・・何だろう。
「『勇敢なる兵士諸君!今回はお招きありがとう!!』」
何を言っているかわからんが、その聲に軍人さんたちが一斉にこちらを向く。
アニーさんはリュックを持ったまま立ち上がると、片腕をその中から出す。
そこには、あまり詳しくない俺でも知っている國産のウィスキーが握られていた。
ちらりと見えたそのリュックには、まだまだ酒瓶らしきものが詰め込まれている。
おいおい、まさか全部酒かよ!?
「『ささやかながら私から返禮を用意した!佐殿も今日ばかりは許してくれるだろうさ!さあ乾杯だ!激戦と・・・遠からぬ勝利に!!』」
「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!」」」
割れんばかりの歓聲が周囲に響く。
軍人さんたちは心から嬉しそうに、そして遠くにいたオブライエンさんは苦笑いで頷いている。
どうやら許可は出たみたいだ。
本日は無禮講なり、だ。
「・・・朝霞さんと田中野さんは駄目ですからね!」
「そうであります!駄目であります!!」
「そうだよにいちゃん!だめだかんね!!」
・・・なんで俺だけ!?
いや別に飲みたくはないけどさあ!?
おい!式部さんどっから出てきたんだ!?
気配もなかったぞ!?
ともあれ、こうしてバーベキューの火ぶたは切って落とされた。
・・・コレで合ってるのかな、表現。
「ふぃいちゅん!もれもおみいいももも!!!(訳・にいちゃん!これおいしいよ!)」
「・・・お前の前世はタコと犬だと思ってたが、そこにハムスターまで加わるのか・・・」
朝霞がその頬をパンッパンに膨らまして食いを詰め込んでいる。
誰も取らねえってのに・・・お里が知れますわよ!?
あ、後ろのねえちゃんがすっごい怒ってる。
笑顔だけどわかる。
「朝霞、いつも言ってるでしょう・・・食べを、口にれたまま、喋っちゃ、ダメだって」
「んぎゅむ・・・」
肩を摑まれ、そのことに気付いた朝霞は面白いように顔を変えた。
すげえ、人間の顔ってあそこまで急激に青くなるんだな。
朝霞も見た目は人なんだが、いかんせん面が子供っぽすぎるのがなあ・・・
オヤジさんもアニキもいなくて児退行でもしちまったんだろうか。
「飲み込んでから喋りなさいね?あんまりお行儀が悪いと、いっくんに嫌われちゃうわよ?」
それ今更だと思うな、俺。
そして嫌いにはならんぞ、ねえちゃん。
まあドン引きはするけどさ。
「~~~~~~!!」
朝霞が涙目で俺を見てくる。
「・・・心配せんでも、そう簡単に見限りはせんさ。ただ、腹壊すといけないからな・・・飯は逃げないからゆっくり食うんだぞ」
そう言うと、朝霞は目を輝かせて何度も頷く。
・・・ねえちゃんよ、どっちかというと俺は風呂への突撃リピートこそやめさせてほしいんだがね?
朝霞がとかを飲み込むのに必死になっているのを目に、周囲を見渡す。
「『いっぱい食えよワン公!畜生、ガキの頃飼ってたライラを思い出しちまう・・・うう、アイツはいい犬だった!世界で一番の犬だったんだ!!』」
「『飲み過ぎじゃないのかジョージ?・・・ああ、お嬢さん、この馬鹿はほっといて腹いっぱいおあがり』」
「ハウ!ヒャン!モモウ!!」
・・・なーちゃんが屈強な軍人さんに囲まれて、軽く焼いただけのを無茶苦茶食わされてる。
何故か片方の軍人さんは號泣しながら新しいをドッグボウルに放り込んでいる。
よくわからんが、いい人そうだから大丈夫そうだ。
なーちゃんの尾、大回転してるし。
「おう!アンタいける口じゃねえか!刺も日本酒もいいもんだろ?」
「オイシイ!ワサビダイスキ!!サケ!!アイラービュ!!!」
「がははは!飲みねえ飲みねえっ!!」
「FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!」
ライアンさんが刺と日本酒をとんでもない勢いで食ったり飲んだりしている。
隣の石川さんも酔っているが、包丁を握る手はいささかの衰えもない。
・・・なんか新鮮。
あの二人、何かよくわからんが仲良くなったみたいだ。
石川さんの作る刺は評判のようで、おっかなびっくり口にれた軍人さんたちが目を輝かせている。
それ以外の刺が苦手な人たちも、焼いた新鮮な魚介類に舌鼓を打っているようだ。
結構な人だかりが見える。
「・・・が、やはり・・・です。こちら・・・手薄・・・」
「フム・・・OK、ヤハリ・・・」
古保利さんとオブライエンさんは、から離れた所で何やら談中のようだ。
作戦の再確認か、それとも別か。
指揮二人はこんな時でも仕事とは離れられないようだ。
・・・いや、よく見たら1本ずつ酒瓶握ってるな!?
それ1人で飲むの!?
度數とんでもないけど!?
・・・どうやら、息抜き自はできているらしいな。
「・・・難敵ですね、本當に」
「・・・で、ありますよ」
おや、神崎さんと式部さんだ。
2人で靜かに飲んでいるようだ。
飲めるんだな、酒。
俺はからっきしだからちょいと羨ましい。
あの2人も何の話をしているんだか。
真面目だから作戦について・・・かな?
なんにせよ、リフレッシュになってくれればいいんだが。
「コンバンワ!」
「うおお!?」
などと考えていると、急に抱き著かれた。
朝霞がもう復活したのか・・・と思って振り返ると。
「あ、ああ・・・ぐっどいぶにんぐ、ミスエマ」
晝間のエマさんだった。
彼は結構飲んでいるようで、赤い顔をしている。
「『嬉しい!名前覚えてくれたのね、イチロー!』」
「もがぐぐぐぐ」
何が嬉しいのか、エマさんは俺をその・・・満な母に押し付けた。
息ができない!死ぬ!!
なんとか顔をかし、危険地帯から出する。
今気付いたが、エマさん以外にも何人かいるようだ。
彼の後ろには、同じくらい屈強で・・・なおかつ人な軍人さんたちが、4人。
正確には3人か。
だって1人はベロベロに酔っぱらったアニーさんだもん。
「『例のサムライね!顔赤くしちゃって、かわいい!』」
「『でもほら見てみなよ、あの腕!バッキバキじゃん!』」
「『にゅははは!しょうだりょうしょうだりょう!イチローはカッコいいんだ!!』」
・・・言葉はわからんが、アニーさんがかつてないほど酔っているのはわかる。
大丈夫ですか?足が小鹿並にガックガクなんですけども。
久しぶりの飲酒でバグってない?
「『ねえ!アタシのこと覚えてる!?』・・・アー、オボエテマス?ワタシ?」
エマさんに引き続き、今度は金髪ショートカットの軍人さんが寄って來て俺の顔を摑んだ。
ヒエッ!?なんですか!?
「コレ!コレ!」
言うや否や、その人はタンクトップを豪快にズラす。
おおおおい!?嫁り前(推定)が何してんだ!?
見えちゃうでしょ!何もかもが!!
・・・が、鎖骨周囲にられた包帯が目にる。
「・・・あー・・・『大きい黒いゾンビ、攻撃された、人?』」
「ソウソウ!ソウデス!アナタノ、オカゲサマ!ワタシ、イキテル!!」
ネオゾンビに裝甲で攻撃されてた軍人さんの1人、か?
この様子を見る限り、傷は深くなかったようだ。
「『ち、違う、ます。アレ、運がよかった・・・だけ。すいません、の、傷、すいません』」
だが、包帯から覗くその合跡は痛々しい。
顔ではないとはいえ、消えない傷を作ってしまった。
あの時、俺がもうし早く走れていたら・・・
「・・・ワオ」
そう言うと、彼は目を真ん丸に見開いた。
何やら予想外だったらしい。
「『・・・ねえアニー、エマ、この人さ・・・やっばい、ちょっと、やっばいよ?』」
何やらアニーさんたちに問いかけているようだ。
誰がデンジャーですって?
「『ねえ・・・サムライさん。キミってさ、キミって本當に・・・いい男なのね』」
金髪さんはまた何か言うと、エマさんに抱えられたままの俺の頬にそっと口付けた。
うおおおい!?今日は挨拶が多いなあ!?
心臓が発しちゃうからやめヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!?!?!?
神崎さんと式部さんがこっち見てるゥ!?!?!?
無実です!俺は無実なんです!!
セクハラじゃありませんから!ねえ!そんな目で俺を見ないで!見ないで!!
「『・・・どうしよ、アタシちょっと本気になりそう。エマ、2人で倉庫に引っ張り込まない?この今世紀最高にいい男』」
「『アハ!いいねキャシディ!久しぶりに燃えてきたかもしんない!今夜は眠れない・・・いや、案外寢かしてもらえないのはこっちかも!!』」
「『確かに!いいカタナ持ってそうだしね!!』」
エマさんと金髪さんはキャッキャと嬉しそうだ。
嬉しそうだが・・・その、俺を見る目が凄い怖い。
俺を殺そうって訳じゃなさそうだが、それでも怖い。
何か本能的に危機をじる。
俺の本能が全力で警鐘を鳴らしている、気がする!!
「『だ~めだぁ!!』」
「むぎゅふ!?」
ベロベロのアニーさんが俺をエマさんから奪い取って抱きしめてきた。
いい匂いは特にしない!超酒臭い!!
「『おい曹長ども~!私は元中尉だぞう!一発目は上に譲れえ?なあにイチローなら二発でも十発でも余裕だからな!東洋の神だ!!』」
「『なーにが上よ!とっくに退役済みの癖に!』」
「『うっそ・・・マジで!?そんなにスゴイのサムライって!?』」
俺を抱え込んだまま、アニーさんはどこかへ行こうとしている。
えっ!?なんで倉庫の方向に俺を!?
「『ふふふぅ、こんなこともあろうかと思って『レインコート』は予備も含めて40個はあるんだぞ!これなら兇悪サムライ〇〇〇も大丈夫だろう!ははははは!!』」
「『わーい中尉殿!一生ついて行きます!!』」
「『イチローったら挙不審でかわいい~!』
ちょっと!何が始まるんですか!!
凄く嫌な予がする!!すごく!!
助けて!誰か助けて!!
ひどく都合の悪いことが起ころうとしているぞ!!!
結局、倉庫に引きずり込まれる寸前に俺は出できた。
とんでもなく恐ろしい笑顔をした神崎さんと式部さんによって。
軍人さんたちはばつの悪そうな顔をしていたが、異変に気付いて朝霞に巻き付かれた俺に笑顔で手を振っていた。
『マタコンドネ!』『イツデモOK!!』
などと口々にんでいたが。
・・・鈍い俺でも最後にはなんとなく察していたが、貞の危機はなんとか回避されたようだ。
アニーさんは酒癖が悪い、それと軍人さんも。
無職覚えた。
あと、客観的に見て全然悪くない俺に対する自衛2名の視線が恐ろしい。
・・・今回はマジで俺無罪では!?
一何があったのか、綺麗な土下座の勢で睡するアニーさんと、その前に仁王立ちする神崎さんたちを見ながら・・・俺は忘れていた煙草に火を點けた。
さて・・・楽しいことは終わり、鉄火場が、來る。
【書籍化】キッチンカー『デリ・ジョイ』―車窓から異世界へ美味いもの密輸販売中!―【コミカライズ】
.。゜+..。゜+.書籍発売中!TOブックス様よりイラストはゆき哉様で発売中! コミカライズ化決定!白泉社様マンガparkにて11月下旬、漫畫家水晶零先生で公開です!。.。゜+..。゜+お読みくださる皆様のおかげです。ありがとうございます! 勤め先のお弁當屋が放火されて無職になった透瀬 了(すくせ とおる)22歳。 経験と伝手を使ってキッチンカー『デリ・ジョイ』を開店する。借りた拠點が好條件だったせいで繁盛するが、ある日、換気のために開けた窓から異世界男子が覗きこんで來た。弁當と言っても理解されず、思わず試食させたら効果抜群!餌付け乙!興味と好奇心で異世界交流を始めるが、別の拠點で営業していたら、そこでもまた別の異世界へ窓が繋がっていた!まったり異世界交流のはずが、実は大波亂の幕開けだった…。 注:キッチンカーではありますが、お持ち帰りがメインです。立ち食いOK!ゴミだけは各自で処分ねがいま……じゃなかった。料理メインでも戀愛メインでもありません。異世界若者三人の異文化(料理)交流がメインです。
8 126【書籍化】天才錬金術師は気ままに旅する~世界最高の元宮廷錬金術師はポーション技術の衰退した未來に目覚め、無自覚に人助けをしていたら、いつの間にか聖女さま扱いされていた件
※書籍化が決まりました! ありがとうございます! 宮廷錬金術師として働く少女セイ・ファート。 彼女は最年少で宮廷入りした期待の新人。 世界最高の錬金術師を師匠に持ち、若くして最高峰の技術と知識を持った彼女の將來は、明るいはずだった。 しかし5年経った現在、彼女は激務に追われ、上司からいびられ、殘業の日々を送っていた。 そんなある日、王都をモンスターの群れが襲う。 セイは自分の隠し工房に逃げ込むが、なかなかモンスターは去って行かない。 食糧も盡きようとしていたので、セイは薬で仮死狀態となる。 そして次に目覚めると、セイは500年後の未來に転生していた。王都はすでに滅んでおり、自分を知るものは誰もいない狀態。 「これでもう殘業とはおさらばよ! あたしは自由に旅をする!」 自由を手に入れたセイはのんびりと、未來の世界を観光することになる。 だが彼女は知らない。この世界ではポーション技術が衰退していることを。自分の作る下級ポーションですら、超希少であることを。 セイは旅をしていくうちに、【聖女様】として噂になっていくのだが、彼女は全く気づかないのだった。
8 172【コミカライズ配信中】アラフォー冒険者、伝説となる ~SSランクの娘に強化されたらSSSランクになりました~
【コミックス1巻 好評発売中です!!】 平凡な冒険者ヴォルフは、謎の女に赤子を託される。 赤子を自分の娘にしたヴォルフは、冒険者を引退し、のんびり暮らしていた。 15年後、最強勇者となるまで成長したパパ大好き娘レミニアは、王宮に仕えることに。 離れて暮らす父親を心配した過保護な娘は、こっそりヴォルフを物攻、物防、魔防、敏捷性、自動回復すべてMAXまで高めた無敵の冒険者へと強化する。 そんなこと全く知らないヴォルフは、成り行き上仕方なくドラゴンを殺し、すると大公から士官の話を持ちかけられ、大賢者にすらその力を認められる。 本人たちの意図せぬところで、辺境の平凡な冒険者ヴォルフの名は、徐々に世界へと広まっていくのだった。 ※ おかげさまで日間総合2位! 週間総合3位! ※ 舊題『最強勇者となった娘に強化された平凡なおっさんは、無敵の冒険者となり伝説を歩む。』
8 138最弱の異世界転移者《スキルの種と龍の宿主》
高校2年の主人公、十 灰利(つなし かいり)は、ある日突然集団で異世界に召喚されてしまう。 そこにある理不盡な、絶望の數々。 最弱が、全力で這い上がり理不盡を覆すストーリー。
8 94魔術で成績が決まる學園で魔法を使って學園最強
いじめの辛さに耐えてかねて自殺してしまった主人公カルド。そしたら神に君は自殺者10000人記念だからと転生させてもらった。そこは魔術で人生が決まる世界その中でどうやって生きていくのか
8 88同志スターリンは美少女です!?
歴史にその悪名を知らしめるスターリンは美少女になりました。その中身は日本の元社會人ですが、何の因果か女の子スターリンの中身になりました。 なので、第二の祖國、ソビエト社會主義共和國連邦。通稱USSRを戦禍から守っていこうと思います。 やることの多いソ連ですが、まずは國內のゴミ掃除から始めましょう。 いや、割とマジで國內の腐敗がヤバイのです。本當に、頭を抱えるくらいに真剣に。 あと、スターリンの著しいイメージ崩壊があります。 *意味不明な謎技術も登場します(戦力には関係ありませんが、ある意味チートかも)
8 165