《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》47話 暗闇の中の憎しみとのこと

暗闇の中の憎しみとのこと

「Move forward!」

オブライエンさんの號令と共に、先頭の駐留軍がき出した。

駐留軍の兵士さんたちの姿は、大きく二種類に分けられる。

通常通りの迷彩服にを包み、ライフルを持った姿。

そして、迷彩服は一緒だが・・・その背中にバカでかい重そうな袋を背負い、さらに個人用の荷車らしきものを曳いている姿だ。

前者は遊撃兵、後者は裝甲兵・・・と、當初の俺は思ったが違う。

『逆』である。

重い鉄板の裝甲を運搬しているのは、遊撃兵だ。

なぜなら、裝甲兵たちは向こうに到著次第それを著て大暴れする必要がある。

の段階で疲れていては、本番の戦闘では使いにならないという理由からだそうだ。

確かにそうだよなあ。

「我々も行きましょう」

駐留軍が暗闇に消えていくのに合わせ、神崎さんが言う。

俺たちは・・・古保利さんの言葉を借りれば『チーム田中野』が歩くのは、最後尾だ。

まあ、そうだよな。

ぶっちゃけこの段階で俺達に仕事はないし。

「了解です・・・暗闇ピクニックとは震えるなあ」

暗視裝置を貸してもらっているとはいえ、それでも怖いもんは怖い。

幽霊は・・・幽霊は出ないでくれよ・・・

何度も言うが毆って倒せない敵は南雲流の対象外なのだよ。

・・・ワンチャン『魂喰』ならいけるかもしれんがな。

「一朗太さん一朗太さん、自分が手をお引きしましょうか?」

式部さんの気遣いに苦笑いで手を振り、俺は覚悟を決めてゴーグルを裝著した。

何故か彼は大層嬉しそうではあるが、この段階で手を煩わせるわけにはいかない。

・・・さあ、いよいよだ。

古保利さんの説明をけてきっかり1週間後、俺達は以前の坑道へ集合した。

特に急事態も発生しなかったので、予定通りだ。

この1週間は楽しかったなあ・・・特に、駐留軍主催のバーベキューパーティーが。

いや、俺の貞がヤバいことになったのは問題だが、それを差し引いてもアレは楽しいモノであった。

駐留軍や自衛隊の、普段付き合いがない人たちとも話せたし・・・それなりに友好的になったと思う。

あの軍人さんたちとか、なーちゃんを號泣しながら可がっていたジョンさんという犬好きの軍人さんとか。

なお、古保利さん直屬の部下である方々はバーベキュー中でも顔を曬すことはなかった。

徹底して個人の特定を避けるところは、ある意味古保利さんや式部さんよりニンジャらしいと言える。

さらに追加だが、アニーさんはあの晩のことを全く覚えていなかった。

どうも、久しぶりの同國人との飲み會でいささか・・・いや、かなりはっちゃけていたみたいだ。

翌日、自分が何をしたかということを神崎さん辺りから聞いたんだろう。

凄まじい二日酔いに苦しんでいる狀態で俺の元を訪れ、

『・・・私は、久しぶりに死にたくなっている。お願いだイチロー、優しく頭をでてくれ』

そう、かわいいお願い事をする程度には打ちのめされていた。

結果として被害者であるはずの俺は、膝枕をしつつ加害者であるはずのアニーさんをめる・・・という、なんとも不思議なことをする羽目になった

羨ましがって突撃してこようとする朝霞は、ねえちゃんによって拘束されていた。

「・・・またやりたいなあ、バーベキュー」

坑道の暗がりを暗視裝置の緑の視界で確認しながら、ぽつりと呟く。

素晴らしき哉、人生ってやつだ。

楽しみがあれば、結構人は辛くても生きていけるものだ。

「がはは、田中野さんは外人のねえちゃん達にモテモテだったもんなあ。最後の方なんか小屋に引っ張り込まれそうになってたしよぉ」

「ちがっ!?そこじゃないですよ!?」

橫にいる石川さんがとんでもないことを言ってきた。

俺は純粋にバーベキューが楽しかったのであって・・・!

それにしても引きずり込まれなくて本當によかった・・・

あの人たち、俺の何を気にったと言うのだろうか。

神崎さんたちが助けてくれなかったら、結構本気で気絶させなきゃいけなかったかもしれん。

みんな力超強かったんだもん・・・男顔負けだよ。

「・・・ソウナノデスカ?」

「・・・ふふぅふ」

陣の反応がコワイ!!

完全にセクハラオヤジを見る反応じゃないかこれは!

「強い男はモテるからよぉ、田中野さんの時代が來たぜ?」

「嫌ですよそんな殺伐としたマッポー時代・・・でも、それなら石川さんもモテモテじゃないですか」

「俺みたいな辛気臭いのは嫌だとよ、がはは」

がははじゃない!

他人事だと思いやがってこの人は・・・!

今更ながら、結構愉快というか格が悪いというか・・・石川さん『も』結構癖のある人らしい。

俺の周りの達人連中に、品行方正な人間がいたためしがない。

・・・あ、六帖先輩がいたな。

あと七塚原先輩。

・・・後藤倫先輩?ハハハハ、ご冗談を。

おっと、そんな話をしている間に・・・坑道の分岐にたどり著いていたらしい。

最前列では自衛隊が何やらしている。

封鎖されているであろう箇所をどうこうしているんだろう。

必然的に、俺達は駐留軍の最後尾へ追いついてしまった。

「『あらイチロー!相変わらずセクシーね!』」

・・・暗視裝置越しに、俺へと振り返る姿。

「『・・・あ、あなたもセクシーですよ、エマさん』」

バーベキューで俺を小屋へ引っ張り込んで『仲良く』しようとしていた軍人さんだ。

が何の荷も背負っていないことから、今回も裝甲を纏う側なのだろうと推測できる。

そして、その橫には同じく軽裝の・・・

「『ハイ!サムライ!・・・あ、私汗臭くないかしら?制汗剤使ったんだけど・・・』ホンジツ、ハ、オヒガラモ、ヨクー?」

・・・ここ地下なんだけど。

エマさんの橫で俺に投げキッスをしている軍人。

にとんでもなく卑猥な日本語を教えた、キャシディさんである。

「『それは、あの、不適切ですね』」

キャシディさんの言を見るに、彼もあまり日本語に通しているというわけではないようだ。

その証拠に、『カワイイヒト~』の本來の意味をアニーさんに教えられた彼は、俺が見てもわかるほどに真っ赤になって狼狽していた。

涙目ですらあった。

「『あー・・・自分は決して初対面の男をベッドにうようなふしだらな人間ではない!』そう喚いている』」

と、ベロベロのアニーさんが補足する程度には・・・通常の貞観念をお持ちらしい。

に例の卑猥ワードを教えたのは、既に退役していた先輩軍人さんらしい。

・・・どうやらこの問題のは深いらしい。

別に解決する気もないけれど。

っていうか、會って一日の男を小屋に引っ張り込むのはふしだらなのでは?無職は訝しんだ。

「・・・モテる男は辛いねえ?」

「・・・黙権を行使します」

ニヤつく石川さんにそう返す。

・・・そして背後は見ない。

『絶対に振り返ってはいけない』は、怪談ではよくあるが。

幽霊絡みでなくとも、またあるのだ。

「『・・・うふ、見る目があるお仲間がいたようね、エマ?』」

「『そりゃそうでしょ、こんないい男放っておかれるわけないじゃない、キャシディ?』」

エマさんたちは何やら楽しそうに話し込んでいる。

・・・何故か背後の気配が濃くなった。

神崎さんたちは英語がわかるので、何やら気にでも障ったのだろうか。

ともあれ、俺は気にしないことにする。

藪をつついて八岐大蛇を出す趣味はないのだ、うん。

「ひええ・・・後藤倫先輩がいたらキッツイだろうなあ」

黒々と口を開ける、更なる地下へのり口。

坑道から繋がっているそこは、暗視裝置があってもなお暗い。

封鎖されていた扉を開け、自衛隊の皆様によって整えられた『通路』

それは・・・縄梯子だった。

「古保利さんは問題なく使えるって言ってたが・・・うん、そりゃ間違ってないけどさあ・・・」

てっきり螺旋階段とか簡易エレベーターみたいなもんがあると思ってたんだが・・・まさか縄梯子とは。

以前は何かしらの裝置があったんだろうが、撤去されたんだろうなあ。

と、そんなことを考えながらおっかなびっくり縄梯子を下りる。

怖すぎるので下は見ないことにする。

周囲を確認すると・・・俺は素人なので詳しくはわからんが、いきなり崩落するような事態は考えにくい、気がする。

「い、一朗太さん、上はみな、見ないでくださいねっ!」

「下を見ると足がすくみますから、橫を見てください!」

「・・・?は、はあ」

陣は何を気にしているんだろうか。

別にスカートを履いているわけでもないだろうに・・・まあ、見るなと言われて見るつもりもないけれど。

ぶっちゃけそんな余裕もない。

揺れる縄梯子と悪戦苦闘することしばし。

ようやく地面についた時にはホッとした。

「うわあ、年季がってるなあ」

壁の組み方や通路の様子が、さっきまで歩いていた上層部とは明らかに違う。

今から100年以上前っていう歴史をじる。

例えば上層には機能しないとはいえライトがあったが、こっちはランプだ。

壁や周囲に配置されている看板に書かれた文字も、古めかしいし・・・何やら違和

あ、橫書きの方向が違うのか。

ちょっとした社會科見學みたいでちょっと楽しい。

普段なら安全面とかで絶対にれない空間だろうし。

「この後はまっすぐ歩きゃいいんだったか?」

「ええ、ゆるやかな登りになってるらしいですよ」

俺に聞く石川さんの聲は、普段と変わりなく聞こえる。

が、俺にはわかる。

「・・・おっと、すまねえ。ちょいとれ込み過ぎてたぜ」

この坑道にってから、もしかしたらもっと前から。

―――石川さんの全から、殺気が薄くれ出している。

もしかしたら、中央地區には・・・『速水』が、石川さんの仇敵がいるかもしれないからだろう。

奴はただの元犯罪者。

あの集団の中で、それほど重寶されるほどの存在とは思えない。

「田中野さんは・・・普通なんだな」

「ええ、俺の『相手』はどっちも・・・中央地區にはいないでしょうから」

俺が普段通りなのは言葉の通りだ。

中央地區に、鍛治屋敷や領國は確認されていない。

速水も確認はされていないが、両者には絶対的な差が存在する。

まず鍛治屋敷だが・・・奴は『レッドキャップ』と協力関係にあると見て間違いない。

言わば対等の関係だ、三下のチンピラと同じ場所で歩哨として働いているはずがない。

さらに、大木くんが奴から聞いたという『北の輸送船』というワード。

これらの報 から、突発的に視察に來るようなことはあっても・・・俺たちの攻撃開始予定時刻である夜にいるはずはないだろう。

次に、領國だ。

奴も、ある意味『レッドキャップ』とは協力関係にあると推測できる。

なぜなら・・・糞悪いが、奴は『天才科學者』だ。

とっ捕まるまで數々の特許や新理論を考え出した・・・一種の天才だ。

・・・俺は奴がこの世で一番嫌いだし、可能なら一刻も早くぶち殺してやりたいが、イコール奴を過小評価するつもりもない。

よって、奴らが彼の稀有な頭脳を中央地區で・・・チンピラと同じように放置しているとは思えない。

以上のことから、今回俺の『仇敵』と『怨敵』は中央地區にいないだろう・・・ということは容易に想像できる。

俺が落ち著いて見えているなら、そのせいだろう。

―――俺が命を懸けるべきは、この戦いじゃない。

もちろん、この戦いに手を抜くつもりはない。

それは、俺を協力者としてくれた古保利さんやオブライエンさんへの手酷い裏切りになる。

だが、死にかけても・・・神崎さんには怒られるだろうが、『死んでも』倒すべき敵はいない。

そりゃあミサイル陣地は重要な拠點だ。

防衛にも、攻撃にも、そして侵攻にも役に立つ。

そこの防衛が三下だけで構されているわけではないだろう。

『レッドキャップ』の兵士もいるだろうし、腕自慢のアウトローも配置されているだろう。

しかし、『レッドキャップ』の主目的は『研究開発』だ。

人為的に、ゾンビを制可能な兵にするための・・・吐き気を催す実験。

それを、本拠地である北地區で行っているんだろう。

ミサイル陣地はあくまで『ついで』だ。

他から橫槍をれられないための。

奴らが考える『完全』が完すれば、悪い冗談よろしく『ミサイル宅配便』に使用するだろうが。

「・・・あんたは、隨分落ち著いてるように見えるぜ」

石川さんの視線がこちらへ向く。

無駄話をする程度には、坑道の安全は確保されているからな。

視界に障害も、崩落の危険も、ましてや死もゾンビもいない。

「こんなしょうもないことでマウントを取るつもりはありませんけどね・・・『年季』じゃないですか?」

「年季・・・?」

答えを想定していなかったように、石川さんは虛を突かれた顔をした。

後ろは・・・うん、神崎さんたちは何やら真剣な顔で話し込んでいる。

長・・・まさか金髪・・・」「褐・・・筋・・・」

・・・マジで何の話してんの?

髪染めか日焼けの話かな?

まあいいや。

らの注意が俺に向いていないことを確認し、石川さんに聲を潛めて話す。

「・・・石川さんの、家族のことは・・・何年前です?」

一瞬、殺気がさらに濃くなった。

が、俺に悪意がないのを知っているのかすぐに収まる。

「すまねえな・・・5年前だ」

を切られるように、彼は絞り出す。

當時を思い出したのか、聲は冷え切っている。

俺は、石川さんを・・・いや、誰も見ずに正面を見るともなしに見た。

「―――俺は、だいたい『20年』ですよ」

なんでもないように、そう話す。

石川さんが、小さく息をのむ気配がした。

「もう日常の一部なんですよ、俺にとって・・・『恨み』ってのは」

中學の時も。

高校の時も。

大學の時も。

社會人の時も。

育祭の時も。

文化祭の時も。

修學旅行の時も。

忘年會の時も。

試験の時も。

験の時も。

卒論の時も。

社面接のときも。

楽しい時も、嬉しい時も。

辛い時も、面倒な時も。

だるい時も、腹が立つ時も。

―――俺の心から、『憎悪』と『怒り』が消えたことは・・・恐らく一度としてない。

よく聞く話として、『怒り』が持続するにはエネルギーが必要・・・らしい。

激しければ激しいほど、『怒り続ける』のは大層疲れる・・・らしい。

だから、『普通の人間』にとって・・・怒りは、恨みは持続しない。

人間は忘れる生きだからだ。

忘れてしまわなければ、恨みを抱えたままでは・・・疲れてしまう。

―――その點において、俺は確実に・・・間違いなく狂っている。

20年。

20年もの間、俺はそれを抱え続けた。

こうして他人と話せている今の狀況は、『普通の狀況』は、確かに異常だろう。

・・・そういえば大木くんは俺たち南雲流を『ネジが外れている』と言い、俺もまた同意していたが。

俺は多分、小學生時代の『あの日』から、ずっとネジが外れたままなんだろう。

あの子が、俺の前から永遠に姿を消した『あの日』から。

いや、『奪われた』あの日から。

「・・・なるほどなあ、すげえよ、アンタは」

「なあに、所詮『人殺しのケダモノ』の戯言ですよ。みっともなく泣きんでる、ただの糞鬼の泣き言とも言えますけどね」

心の中で『アイツが生きてるのは許せない』と、そう泣きんでいる小學生の俺。

平時なら危険人どころじゃない。

法治國家にいていい人間じゃないだろう。

「まあ、ゾンビやチンピラに謝はしませんけどね。奴らを表に出してくれた『今の狀況』にだけは・・・しだけ、しだけ謝してますけどね」

そう言いつつ、腰に差している『魂喰』の柄をポンと叩く。

「もっとも、俺達に必要なのは言葉じゃないですから」

ただただ、真正面から・・・いや、どの方向からでもいいがぶった斬る。

結局、重要なのはそれだけだ。

「・・・だな、そうだ、そうだなあ」

石川さんも、思い直したように拳をがちんと打ち鳴らした。

―――りぃん

どこからか、鈴の鳴るような音が聞こえたのは・・・幻聴ではないだろう。

その音は、恐らく同意を示していた。

それから俺たちの間に會話はなく・・・なったわけではない。

石川さんは顔に似合わず話し好きで、俺を楽しませようと々な話をしてくれた。

さっきの吐をした俺を、心配してのことだろうか。

だが、だが石川さんよ。

それが優しさからのことだと俺にもよーく、よーくわかっているが。

「・・・で?あの外人さんたちのどっちのケツが気にったんだ?」

「ファッ!?」

・・・それはやめてくれませんかね!?

そりゃあ、アレだぞ?

男同士の馬鹿話なんてだいたいそれ系が多いのはわかる。

俺だって學生時代はよくそんな話をしていたことも認める。

だけど!この狀況ではおかしいでしょ!

今から鉄火場に突っ込む・・・のはいいとして。

むしろ死ぬかもしれないから下ネタに逃げるのも、まあわかる。

不安を猥談でかき消すなんてのは戦爭映畫でもよくあったからな!

でも・・・いるんですよ!ここにはが!

こういうのはあくまで同しかいない狀況で話すべきじゃないの!?

SF蟲退治映畫みたいに、男平等が行く所まで行ってる世界観ならいいけどさ!

アレってシャワールームまで一緒だしな!

だけどここは現代である。

神崎さんや式部さんがそんな話に興じている俺たちを見て・・・どう思うかなんて火を見るよりも明らかじゃないですか!?

「『アラ?アイアンフィストがこっちを指差してるわよ?』」

「『何か質問でもあるの?スリーサイズかしら?』」

ホラ前にも気付かれた!

暗い坑道の中、何の危険もない狀況において退屈していたらしいたちは俺達に寄ってきた。

いかん!どうしよう!

・・・いや待てよ。

どうせ言葉が通じないんだから、別に大丈夫なんじゃないか?

よし!適當になんとか好きな映畫の話でもして有耶無耶にするしかない!

神崎さんたちがこの危険な會話に気付く前に!!

「『あー・・・今こっちの兄さんにな、姉さんたちのがそそるねえって話をしてた所でな。特に兄さんはのケツが大好きなんだよ』」

石川さん!?

なんでそんなに外國語ペラペラなんですか!?

何を言ってるかは皆目見當がつかないけども!!

「『ワオ!それ本當!?』」

「『素敵な話じゃない!』」

嬉しそうに寄ってくるお二人さん。

・・・何を言ったかはわからんが、この反応を見る限り愉快な話じゃないだろうなあ!!

「このご時世、空手の門下生にも外人さんが多くてよォ・・・下ネタ程度なら笑いが取れるくらいは話せるぜ」

石川さんがにやりと笑う。

下ネタって言った!今下ネタって言った!!

「『おね!おにはちょっと自信があるのよ!ふふ、確かめてみる?』」

エマさんが俺の頬をでる。

ゴーグルで目は隠されているが、艶めかしい舌なめずりはよく見えた。

に、食獣の口元・・・!

「『でもも好きよね男は!私達にとっては脂肪の塊だけど・・・あなたたちに対しては立派な武だものね?』」

キャシディさん!なんで俺のでるんですか!

息遣いがコワイ!本能的な危機をじてしまう!!

「『あー・・・あの、彼はどうなんですか?』」

いつの間にかじている後方からの圧力を無視し、なんとか英語を絞り出す。

こうなったら石川さんも巻き込んでやるってんだよ!!

「ノー、オクサン、イル、ダメ」「フリン、ヨクナイ」

だが、俺の希はそっけない返答によって打ち砕かれた。

・・・石川さん、いつの間に伝えてたんですか!!

そして、なんでそんなとこだけ普通のなんですかあなたたちは!!

・・・くそう!

この狀況で石川さんの過去を説明する程俺は人でなしじゃないし、それを表現する言語力もない!

「イチロー、ワタシ、キレイ?」

エマさんが口元をニヤつかせながら聞いてくる。

えらく好戦的な口裂けですね!

「アー!ワタシモ!ワタシモ!!」

キャシディさんまで乗っかってきた!

急に日本語上手になりましたね!よくできました!

「一朗太さんっ!じぶ、自分はどうでありますか!」

そしていつの間に橫にいるんですか式部さん。

マジで気付かなかった。

「・・・興味はありますね、ええ」

そのまた橫にいる神崎さんにも。

・・・殺気がないと本當にわからんな、俺。

どうしてくれるんですか石川さ・・・いねえ!?

どこ行きやがったあの人!?

「ウチの息子は走るのが早くてよお・・・將來は世界記録狙えたな、ありゃあ」

「ムスコハ、トテモベースボールガジョウズデ・・・オリンピックニ出タイ、言ッテマシタ」

ライアンさんと息子談議に花を咲かせていらっしゃるねえ!

火種だけ作ってトンズラですか!?

この野郎・・・でもよかったですね!ゆっくりご歓談なさっていてくださいよ!!

・・・そして殘された俺の周囲には、ワクワクした様子の陣だけが殘された。

うわーすごい、ハーレムじゃん。

おとこのゆめだなー。

「・・・えっと」

だが、俺とていつまでも昔の俺ではない。

特に牙島に來てこっち、アニーさんによってさんざん指導をけてきたんだ。

師匠もそういえば言っていたじゃないか、『よいを見て褒めぬのは男のすることではない』と。

・・・今まではボケ老人のたわごとだと思っていたが、どうやら違うらしい。

な人間関係のためにも、褒めることは重要だ・・・と、今更俺は理解した。

なにも噓をついてびへつらう必要はないのだ、だって・・・彼たちが揃いも揃って大人なのは本當のことなんだから。

それに、師匠はこうも言っていた。

『次も生きて會えるとは限らんからのう。人は、思うたよりあっけなく死ぬるぞ、小僧』

しだけ、悲しい目をして。

ならば俺はやれるだけやらねばならん・・・!

消えろ!俺の恥心!!

唸れ!俺のちっぽけな脳細胞!!

「あー・・・『エマさん、あなたは、とても引き締まった、とても素敵だ。それにその笑顔もしい』『キャシディさん、今は見えないけど、あなたの目はまるで寶石のようで、しいです。スタイルも嫉妬?するくらい素晴らしいし』」

「・・・オウ」「・・・ワーオ」

俺からこれほど直球で褒めるとは思っていなかったんだろう。

軍人2名は揃って顔を見合わせ、その笑みを一層深くした。

「・・・神崎さんは前から言っているようにカッコよくて有能で、その上キリっとした人じゃないですか。俺は噓と過度なお世辭はあんまり好きじゃないんですよ」

「っみ!?」

付き合いも長いから確実に伝わっているだろう・・・と思ったら、何故か神崎さんは瞬時に後ろを向いて直した。

・・・背後の警戒かな?

「式部さんもですよ。っていうか平均を遙かに超える人さんじゃないですか・・・周りの人間もそう思ってるでしょう?まあ、式部さんは綺麗だし可らしいという矛盾も包してるんですけど」

「ヒュウェ!?」

そして式部さんもまた、神崎さんのように後ろを向いた。

回る作がすげえ速いなあ・・・流石と言うべきか。

「『やればできるじゃない!アニーに謝ね!』」「『ちょっとジュンってきちゃったかも!ありがとう!』」

「やめて挨拶はもうやめ・・・アッー!!暗視裝置がゴンゴン當たって痛い!!めり込んじゃう!?」

案の定というかなんと言おうか、エマさんもキャシディさんも続けざまに俺の頬にキスの雨を降らせてきた。

やめて!嫌じゃないけどやめて!

家に帰った後朝霞が真似して大変だったんですよ!?

一昨日まで頬に痕が殘るくらい吸い付かれたんですからね!!

俺の悲鳴めいたものは、先頭が坑道の終點に著いたと連絡が來るまで続いたのだった。

両頬がヒリヒリするゥ・・・

「曹長たちが羨ましいであります・・・何故自分は日本人なのでしょうか・・・いや待ってください、今からでも帰國子という設定を付け加えれば・・・!」

「やめなさい陸士長、それは危険な考えよ。私までに乗りそうになるから即刻破棄してほしいわ」

「今まで通り寢ている時にこっそりするしかないでありますなあ・・・」

「・・・その話、詳しく説明しなさい。今、私は、冷靜さを、欠こうとしているわ・・・さあ、早く、早く」

「気道が的確に締まるでありますっ!はな、話すので命だけは!命だけはご勘弁をっ!」

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