《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》48話 役場とキスとハグのこと
役場とキスとハグのこと
「いよいよ中央地區だな・・・」
暗がりの中で呟いたのと同時くらいに、前方から強いが見えた。
おっと、暗視裝置付けたまんまだった。
取らないと眩しすぎちゃう。
坑道の終點にあったのは、古めかしい形狀の頑丈そうな扉だった。
こちら側には鍵も存在していないそれを、自衛隊・・・古保利さんの部下がどうにかして開けたようだ。
えっと・・・この扉の先にもう一つ扉があって、その先が役場なんだよな。
田舎特有のガバガバ管理狀況であることを祈る。
それと、扉を開けた瞬間にゾンビがなだれ込んでくるってのもナシだ。
俺の前には山ほどの軍人さんがいるけど、油斷する理由にはならない。
音を立てないように、兜割を引き抜いた。
ちなみに俺の裝備であるが、いつもの『魂喰』と兜割。
そして全各所に隠した多數の手裏剣。
あとは式部さんが運んでくれた、大木くん印の特製金屬弾が6本ってところかな。
防はヘルメットと駐留軍仕様の防弾チョッキで、それ以外はいつもの釣り人裝備である。
これ以上の武裝となると、重くなり過ぎてちょいとき辛い。
まあ、あと脇差の一本でもしい所ではあるが、そこは贅沢を言えないな。
高山さんの拳銃は相変わらず朝霞に預けっぱなしだ。
あの子がアレを撃つ機會が來ないことを祈るばかりである。
頼みましたよ、アニーさん。
まあ、『防衛隊』の連中にそんな度はもうないだろうけど。
來たら來たで即刻全滅させられるだろうけど。
開いた扉の先は廊下があり、その先に近代的な扉があるのが見える。
恐らくあそこを越えれば、役場部だ。
自衛隊が扉に取りつき、その左右ではいつでも撃てるように拳銃を構えた駐留軍さんたち。
今度の扉はちゃんと鍵があったようで、それに針金らしきものを突っ込んで作業している。
意識して気配を探るが、たぶん近くにゾンビはいない・・・と思う。
いや、周囲に人間が多すぎて判別が難しいんだってば。
「文字通り腕が鳴るぜ」
ボキボキと拳をならし、石川さんが不敵に笑う。
頼もしい事この上ない。
扉が開き、駐留軍がなだれ込んでいく。
・・・銃聲は聞こえないな、ゾンビはナシか。
しばらくすると、列がき出した。
最後尾に続き、開けられた扉を潛る。
「埃っぽいなあ」
「ここは・・・資料室でありますね。かなり古いようです」
式部さんが言うように、久方ぶりの地上は據えた臭いのする書庫のような場所だった。
長い事人がった形跡のない部屋には、雑多に本棚に収められた書類の束や古いファイルがある。
舞い上がる埃で咳が出そうだ。
「ここから2階部分までをクリアリングする。まだ夕暮れ時だ、くれぐれも外から見られないように注意」
古保利さんが指示を出す聲が聞こえてくる。
作戦通り、役場の安全をまず確保するようだ。
「狀況開始!」「MOVE!!」
指揮2人が指示を出すと、駐留軍も自衛隊も一斉にき出す。
一糸れぬきで、次々にドアから出て行った。
「我々はこのまま1階まで行きましょう」
「喧嘩はお預け、かい。まあ楽しみは後にとっとくかな」
石川さんが殘念そうだ。
神崎さんの指示に従い、俺達も後を追って歩き出す。
早く地上に出て暗視裝置を外したいものだ。
意外と重たいから首が凝っちまうんだよなあ。
牙島役場は地下2階、地上2階で構されている。
といっても地下2階はさっきの書庫?倉庫?があるだけなので、実質2階みたいなもんだ。
「しかしまさか、1匹もいないとは思わなかったなあ」
椅子に腰を下ろし、魔法瓶にれておいたコーヒーを飲む。
ねえちゃん特製ブラックコーヒーが、地下で張していたをほぐしてくれる。
ふう、うまい。
「元々いなかったか、もしくは・・・『レッドキャップ』が回収したかもしれませんね」
向かいのデスクに腰を下ろしている神崎さんがそう返してきた。
「それか、病院にみいんな合流してるかでしょうなあ」
神崎さんの隣に腰かけた式部さんが大きくびをする。
ゾンビ、ゾンビね・・・ここには結構な人間がいたはずだが、どこへ行ったんだろうな。
頭目的で回収した可能もあるが・・・今は考えてもわからんな。
ここは、役場1階の窓口エリアだ。
平時なら住人でにぎわっているであろう區畫も、今は俺達しかいない。
床や壁に生々しいの跡はあるが、結局のところ役場には1匹のゾンビもいなかった。
周囲を見渡すと、思い思いの場所で休憩をしている軍人さんの姿がある。
外に面した窓は初めからカーテンが閉め切られていたので、キャンプファイアーでもしなければ見つかる可能はない。
薄暗い室ではあるが、とっくに目は慣れているので問題ない。
「夜までけねえんだ、せいぜいゆっくりするさ」
石川さんは大きなソファにごろりと橫になっている。
自由だ・・・しかし理にかなっている。
腕時計を確認すると、時刻は4時半。
最近はだいぶ日が長くなってきたから、暗くなるまでには時間がかかる。
天候は滅茶苦茶だけど、日の長さとかは通常通りだな。
・・・それすらガバってきたら地球滅亡を心配しちまう。
とにかく、今はまだ休憩しておこう。
本番に備え、英気を養うのだ。
ヘルメットをぎ、機に置く。
「おっと・・・」
ヘルメットが何かに當たり、倒れた。
持ち主の安否は知らんが、借りているものだから綺麗に使わないとな。
機に倒れた板狀のものを持ち上げると、それは寫真立てだった。
どこかの公園だろう、花畑の前に家族が並んでいる。
夫婦と、小學生くらいの子供が2人。
全員、笑顔を浮かべて寫っている。
ゾンビ騒が起こる前の、幸せな寫真だった。
・・・この機の持ち主が夫婦のどちらかはわからない。
わからないが・・・どうか生きて再會していることを祈る。
「・・・ままならんなあ、おい」
機に立てかけた『魂喰』に、小聲で話しかけた。
いつものような幻聴は聞こえず、刀はどこか寂し気に佇んでいた。
「やあ、休んでるかい?」
思い思いに休憩していると、古保利さんがやってきた。
作戦の前だというのに、いつものような自然だった。
「ええ、今から張してたらが持ちませんからね」
「ははは、そりゃそうだ。ちょいと2階に來てくんない?連絡事項があるからさ」
作戦容の最終確認とかだろうか。
「神崎ちゃ・・・二等陸曹も來てね。式部ちゃ・・・陸士長には伝わってるからさ」
古保利さんはいつものように聲をかけようとして、周囲に人の目が多いのを気にしてかやめた。
いつもその方がいいんじゃない?
そのうち訴えられても知らんぞ。
石川さんは『難しいことは任せる』と言ったので、俺達だけで話を聞くことになった。
役場中央にある階段を上り、2階へ行く。
今更ながら、隨分年季のった木造だなあ。
過ごしやすいけど、あんまり頑丈じゃなさそうだ。
『確定申告はお早めに!』と書かれたポスターを見ながら、そんなことを考えた。
案されたのは『會議室』と書かれた広い部屋だった。
「中は暗いから足元に気を付けてね」
言われた通り、薄暗かった今までと違い・・・室は真っ暗だった。
全ての窓がしっかりとカーテンによって閉め切られているのだろう。
「あそこまで行ってね」
古保利さんはペンライトのようなものを持ち、窓際を指し示す。
そこはカーテンによって閉じられているが、なにやら窓際に盛り上がりが見える。
カーテンと窓の間に何かがあるようだ。
導に従ってそこまで行くと、カーテンのこちら側には小さな機とその上に乗った何かがあった。
これは、ノートパソコンか?
「ちょーっと待っててよ・・・っと」
古保利さんが畳まれたそれを開き、キーを作する。
スリープ狀態は解除され、PCが立ち上がった。
「・・・これは?」
畫面に寫っているのは、円形のミサイル陣地の姿。
リアルタイムだろうか。
「そこの窓にカメラを設置しててね。この部屋が真正面に位置してるからさ・・・人間が覗くよりもバレにくいからね」
あー、あの膨らみってカメラか。
なるほどね、準備は萬端ってわけか。
「適當に座ってよ、見ながら説明するからさ」
俺と神崎さんは、近くにあった椅子に腰かける。
暗闇にも結構目が慣れてきたな。
「さてさて、今更だけどこれが今回の最終目標だよ。今ズームするね」
いくつかのキーが叩かれ、映像が拡大される。
「陣地は中心に『マーヴェリック』が配置され、周辺は円狀に配置された裝甲車と強化フェンスによって・・・うん、3重に囲まれている」
その言葉通り、斜め上・・・この役場は陣地よりも高い位置にあるらしい・・・から見た映像は、迷路のように円狀に囲まれた陣地が見える。
「それぞれのフェンスの切れ目、そして裏側には歩哨が立っているね」
言う通り、銃らしきものを持った人間がチラチラ見える。
「一番外側は軍人じゃないね、だけど・・・奧に行くほど軍人が増える」
「確かに、なんかこう・・・チンピラっぽい人間が多いですね」
以前古保利さんに言われたように、鍛治屋敷が『現地調達』したアウトローが配置されているようだ。
奧の方はよく見えないが・・・外側の人間はなんというか、そう、だらけているように見える。
「仮想敵・・・この場合は僕たちだけど、その存在も確認されていない現狀・・・職業軍人以外なら警戒しろって言われても、どうしても緩むよねえ」
張は長続きしない。
『明日まで』とか『來週まで』って區切りがあるなら別だが、それもいつまで続くかわからない・・・となると、素人にそれは難しいだろう。
「ここに來てから見ているだけで、私語は多いしろくに警戒もしないし、ホラ見てよ・・・あんな持ち方じゃ咄嗟に撃てもしないだろうね。だらけきってるなあ・・・自衛隊にいたら即指導ものだよね」
「コチラにいても、そうでゴワス」
うお!?
いたんですかオブライエンさん・・・!
急に暗がりから出てくるからびっくりするじゃないですか!?
「・・・あくまで『レッドキャップ』にとってミサイルは『ついで』ということがよくわかりますね」
神崎さんがそう呟いた。
「うん、配置されている軍人の數もそう多くないし・・・その線が濃厚だろうね。奴らの人員は、北地區に集中していると考えてよさそうだ」
あの糞悪い研究のため、か。
正直イラっとするが、それでもここが手薄になるのはいいことだから我慢する。
あくまで、今はだが。
「僕としても例の『研究』に思う所がないわけじゃないけど、まずは目先の問題を片付けることにしよう」
仕切り直しとばかりに、古保利さんが明るい聲を出した。
「ああそうだ思い出した・・・田中野くん、これ見てみ」
またキーが叩かれ、映像が拡大。
「この方向の歩哨なんだけどさ・・・見覚えない?」
見覚え?
俺にチンピラの知り合いなんていない・・・は!?
「噓でしょ・・・まだ生き殘りがいたのか」
「だよねえ、黒いだけあって〇キブリそっくりだ」
そこに寫っていたのは、黒いローブを羽織った10人ほどの集団だった。
そう、龍宮で完なきまでに滅ぼしたハズの・・・
『みらいの家』の構員だった。
「殘黨か、別隊か・・・それとも新たな指導者が立ったのか・・・ま、どっちにしろ排除することに変わりはないんだけどねえ」
他のチンピラよりは多規律を守ったその姿は、嫌という程見慣れたものだった。
神崎さんもあの戦いを思い出したのか、険しい顔をしている。
「イエス、彼らハ危険すぎモス」
オブライエンさんもその思いは同じようで、いつもよりも怖い顔をしていた。
しかし、あの激ヤバ宗教観でよく他派閥と合流できたもんだ。
周囲の人間全部殺して最後に自殺っていう前衛的過ぎる教義だぜ?
とてもチンピラや軍隊にけれられるとは思えない。
・・・いや、そういえば戦ってる最中でも逃げたり命乞いしたりする奴いたな。
そういう『弱腰』の信者があそこにいる連中ってことかもしれん。
あの教義を実踐しようとした瞬間に、鍛治屋敷あたりに毆り殺されそうだし。
「それで作戦だけど・・・まあ、以前説明したのと変わりはないよ」
そう言って、古保利さんは別のソフトを立ち上げた。
スキャナーか何かで取り込まれた、牙島の地図が見える。
「役場から陣地までは役500メートル。位置的にこちらが上だから、正面から行くとさすがに丸見えになる・・・奴らもそこまでアホじゃないだろうから、キミ達はぐるっとこう・・・」
マウスカーソルが円を描くようにく。
「役場の裏口から出て、死角を回り込んで・・・陣地の向こう側に出る」
そして、カーソルもその通りにいた。
「傍の可能も考えて、無線の電源は切る。なので、歩く速度も考えて・・・作戦決行はキミた、いや『チーム田中野』がここを出発してから30分後だ」
「・・・そのクソダサチーム名やめませんか?」
「何故です?とてもいい名前だと思いますが?」
神崎さん、何ですかその曇りなき眼は。
頭でも強打しましたか?
「ははは・・・まあそれはそれとして、30分後にこの2階から裝甲兵が一斉撃を開始する。それを確認したら突っ込んでね」
「聞いてた通りですね、それでその後・・・」
「うん、両側からの奇襲でパニックになっている陣地に、僕含めた遊撃部隊が橫から突撃をかける」
3重の陣地には、3回の突撃ってワケね。
特に関連があるわけじゃないけど。
「そしてミサイルが破壊され次第、即時に撤退。ここの地下から出しつつ、扉と坑道を破する・・・ってわけ」
「結局捕獲はしないんですね」
できれば・・・とか言ってたけど。
「うん、駐留軍の基地は駄目だったけど詩谷駐屯地に似たようなモノはあるし。どうしてもしいって程のものじゃない、向こうの手にある方が大変だし」
「たしかに」
過ぎた『オモチャ』はぶっ壊すに限る。
そっちのほうがわかりやすくていいや。
「・・・今更だけど危険は多い。相手はチンピラだらけだけど、持ってるのは猟銃じゃなくてアサルトライフルだ」
古保利さんが真剣な顔をした。
「ご心配なく、こっちはの弾魔謹製のスーパーボムがありますんで」
あれで銃持ち連中を片付けて、一気に近接になだれ込む。
中心にいる練度の高い軍人連中がちょいと気になるが、そこはそれ。
裝甲兵と古保利さんたちにお任せしておこう。
それまでにせいぜい『壁』を作っておかんとな。
「ああ・・・大木くんね。彼がこっち側でよかったって本當に思うよ」
「ありゃ、古保利さんも面識あったんですか」
意外。
大木くん神楽にも行ってたんだな。
「うん、何度か偵察の仕事をやってもらったことがあるんだよね。彼フットワーク軽いし、映像記録も綺麗だからね・・・こっちからの給料は各種薬だよ」
・・・俺よりちゃんと働いてる気がする。
あと給料が騒すぎる。
よくその報酬許可しましたね?
「彼は自衛隊や警察とは仲良くしたいって考えだからね、々見限られないように努力しなくちゃ。こっちに住まないかって提案は食い気味で卻下されたけど」
「はは・・・大木くんは俺よりよっぽど1人で生きていけますからね」
避難所に住むなんて俺でも嫌だ。
古保利さんたちがしっかり管理している所だろうと、大量の他人と暮らすのはストレスがヤバい。
高柳運送?
あれはもう半分みたいなもんだから・・・俺が助けた子供ばっかだし。
あと自由だからな!いつ起きてもいつ寢てもいい!最高!
・・・やむにやまれぬ事で、最近はよく働いてるけど。
ああ、とっとと厄介ごとを片付けて日がな一日釣りしたり適當にドライブしたりしたいなあ・・・
「ま、こんなところかな・・・作戦開始時刻は8時だから、ゆっくりしてて。寢ててもいいよ」
さすがにその時間ならもう真っ暗だろう。
暗視裝置があればこっちは晝間みたいなもんだからな。
「あ、そう言えば陣地の連中ってどこで寢てるんですか?埃の合からここじゃないとは思うんですけど・・・」
さすがに24時間立ちっぱなしってわけにゃいかんだろう。
軍人ならともかく、チンピラからはクレームがバンバン來そう。
「ああ、陣地の近くにプレハブ小屋があるんだ。災害用の避難住宅みたいなやつ・・・そこで寢泊まりしてるよ」
古保利さんたちはもう偵察済みだったな、そういえば。
なるほどね・・・
「基本的に3代制での歩哨みたいだね。軍人連中は北地區から來てるけど、チンピラはそこさ」
「反起こしそうですね・・・起こすのは無理だと思うけど」
なんてったって相手は特殊部隊と鍛治屋敷だ。
多腕に覚えがあるくらいじゃ勝ち目はないしなあ。
そこらへんの損得勘定はできるらしいな、あそこの奴らは。
連絡事項はこれで終わりらしいので、1階に戻ることにする。
約3時間もあるしな、俺もひと眠りするかなあ。
ソファもまだあるし。
「『ふふ・・・寢てるとカワイイわね、子供みたい。ちょっと傷が多すぎるけどね』」
「『でもアノ黒いゾンビと戦ってた時はコワイ顔してたわよ、カタナ振り回してさ。あの目、セクシーだったわ・・・とっても!』」
・・・うにゃむ。
なにやら聲が聞こえる。
「『グレンジャー曹長、そろそろ時間です。代かと』」
「『そうであります!その次は自分であります!!』」
・・・騒がしいなあ。
でもまだアラームは聞こえないし、もうちょっと寢ていたい。
ううむ・・・適當に雑誌を積んだにしてはいい出來だなこの枕。
適度にくて適度にらかい。
そしてなんか暖かい・・・むにゃむにゃ。
「『あんっ!・・・ワオ、もうちょっと奧まで手をれてもいいのよ?』」
・・・ううん?
何で雑誌がこんなにいい匂いするんだ?
それに今いたような・・・?
「『私の時はそんなに頬ずりしてなかったじゃない!キャシディと何が違うのよ!』」
「『鍛えすぎてかったんじゃない?アタシのはほら、適度に脂肪もあるしぃ?・・・ホラホラ、見てこの顔!かーわいい!』」
・・・急速に思考が覚醒してきた。
俺が、俺が頭を乗せているこれは、ひょっとして・・・
恐る恐る目を開けると、布地が目に飛び込んできた。
・・・短パン?
なんで雑誌が短パンを・・・?
「ぅおおっ!?!?」
「『あーん!エマが騒ぐから起きちゃったじゃない!』」
を起こすと、そのまま背中に衝撃。
ソファから転がり落ちた俺を、キャシディさんとエマさんが覗き込んでいる。
2人とも短パンにタンクトップ姿だ。
その後ろには神崎さんと式部さんの姿も見える。
「なんっ・・・なんなん・・・なんでぇえ?」
なんで膝枕されてんの、俺。
確かに寢た時は雑誌を枕にしていたハズなんだが・・・?
いつの間にこんな幸せ空間にいたんだ・・・?
「オハヨ!イチロー!『良く寢てたわね、そんなに乗り心地がよかったかしら?』」
「オハヨゴザマース!『・・・?なんでそんなに目を逸らしてんの?』」
なんっ・・・!なんで!なんで下著付けてないのこの2人!?
タンクトップの丈が短すぎて々見えちゃっただろ!?
いかん、即刻立ち上がらなければ!目に毒だ!!
「あー・・・『ありがとうございます。天國でした、いい夢が見れました。覚えてないですけど』」
視線を悟られぬように立ち上がり、キャシディさんに頭を下げる。
「イツデモOK!」「ワタシモ!」
豪快なサムズアップに苦笑する。
スキンシップが激しすぎる・・・外人さんってみんなこうなのか?
いや、朝霞も似たようなもんだよな・・・アイツはいわば特異個だから無視しよう。
「時間は・・・うん、ちょうどいいかな」
腕時計を確認すると、7時18分。
7時半まで寢るつもりだったけど、まあ誤差だ誤差。
「そろそろ準備しましょうか、神崎さ・・・なんです?」
「・・・いえ、何でもありません(順番・・・ジャンケンが憎い)」
なんとも言えない表の神崎さんが、何かつぶやいていた。
橫の式部さんは苦笑いだ。
俺が寢てる間に何かあったんだろうか。
「『エマ、そろそろ著込む時間よ』」
「『蒸れちゃうから嫌なのよねえ・・・ま、死ぬよりマシだけど』バイバイ、イチロー!」
エマさんたちはそう言って手を振り、階段の方へ歩いていく。
そうか、彼たちは裝甲兵だもんな。
あの鉄板を著込む作業があるってわけか。
「『お気をつけて!ご武運を!』」
そう聲をかけると、2人は笑い・・・何故か引き返してきた。
「アナタモ!『天使って歳じゃないけど、祝福を!』」
「シヌ、ダメ!『アナタの方がよっぽど危険なんだからね!アタシと仲良くする前に死んだら承知しないわよ?』」
「ひょえぇえ・・・」
そして同時に俺の両頬にを押し付け、ニヤニヤ笑いながら小走りで去って行った。
・・・挨拶、多すぎじゃない?
「一朗太さん、一朗太さん」
しばし呆けていると、式部さんが聲をかけてきた。
「は、はい、なんでしょうぉお!?」
振り向いた瞬間、正面から抱きしめられた。
な、なに急に!?
どうした!?
「・・・ふ、ふふぅふ、おまじないであります。我が流派に古くから伝わる護法守護のおまじないであります・・・!」
そ、そうなの・・・?
降魔不流ってそんなのもあるの!?
さすが教派生・・・!?
「わ、私のは・・・そう!親のです!親の!」
何故か神崎さんまで後ろから抱き著いてきた!
どうしたんですか皆さん!今日は!?
だが、こうなってはどうにもできない。
甘んじてけれよう・・・顔から火が出そうだぜ、畜生。
俺は、戦いへの決意を新たに・・・できるわけねえだろう!?
四方八方からいい匂いするんだぞ!集中できるわけない!!
ちなみに、石川さんはライアンさんと笑しながらこっちを見ていた。
なんだその目は!?
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