《ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく》416話「ローランドの授けた策の行方その4」
カリファの屋敷に商業ギルドから大金が送られてきたその日の朝、フランバスクとその他の都市を結ぶ周辺の街道に奇妙な一行の姿があった。一見すると、幌馬車を引く行商人とその護衛を務める冒険者のように見けられるが、その実態はまったく違っていた。
「まさか、こんな方法があるとはな。さすが、領主様だ」
「ああ、これなら俺たちが騎士団だとは誰も気付くまい」
その一行の正は、フランバスクを治めるアシュフォード家に仕える騎士団であり、なぜ行商人を裝っているのかといえば、所謂おとり捜査である。
フランバスクのみならず、べラム大陸がアルカディア皇國の手によって統一されて以降、元々他國の所領だった土地の治安が悪化している。だというのに、アルカディア皇國は何もせず、領地の管理すら他國だった人間に丸投げ狀態となっており、治安という一點においては大陸統一が行われるよりも悪化の一途を辿っていたのである。
そして、ここで起死回生の一手を打ったのが、フランバスクのアシュフォード家である。騎士団の警らにおいては、大陸統一以前から定期的に行ってはいるものの、その果は芳しくなく、治安が悪化してからも巡回する回數を増やしたが、目に見える果は上げられていない。その理由としては、盜賊たちの警戒心の強さにあった。
盜賊たちも騎士団が巡回するという報を得ており、彼らを避けるように決まって騎士団が巡回する日は表に出ずを潛めてしまう。そのため、騎士団が盜賊たちと接することは數えるほどしかなく、仮に盜賊を視認したところで、戦力差を理解しているのか、すぐに逃亡されてしまい、なかなか捕まえることができなかったのだ。
それを憂いたアシュフォード家現當主カリファ・フォン・アシュフォードは、騎士団が街道の警らに赴く際にある裝いをさせて警らに向かわせたのだ。その裝いとは、行商人である。
今まで騎士団たちはフルプレートと呼ばれる全鎧をに著けており、遠目から見ても鎧を著こんだ集団ということが一目瞭然だった。それ故に、盜賊たちも騎士団が巡回していることを察知し易かったというなんともお末な展開となってしまたのだが、今の彼らの姿は行商人とそれを護衛する數人の冒険者という見た目をしている。であるからして……。
「隊長、複數の人影がこちらに近づいてきます」
「……盜賊か?」
「そのようで」
「よし、では手はず通りにやるぞ」
部下の報告に、騎士団を取り纏める隊長は心で歓喜していた。今まで箸にも棒にも引っ掛からなかった盜賊たちが自らやってきてくれる。これほど、手間の省けることはない。何せ相手は行商人の姿をした騎士たちなのだ。そんな彼らのもとにのこのこやってくれば、結論は目に見えている。
「止まれ! 命が惜しけりゃ金目のものを置いてきな」
「……」
そこに現れたのは、報告通り武裝したならず者たちで、彼らが捕まえたくても捕まえることができなかった盜賊である。隊長はにめたる喜びを押さえつつ、両手を頭の橫に上げ、降參のポーズを取る。それに倣い冒険者の姿をした騎士たちも人數差によって戦意を喪失したような演技をする。
それに気をよくした盜賊の頭目らしき男だったが、次の瞬間その顔が驚愕に染まることとなった。
「第一、放てぇー!!」
突如として鋭い號令が響き渡り、幌馬車から數十本もの矢が放たれる。それは吸い込まれるように盜賊たちに向かって行き、無防備なを簡単に貫く。
「ちっ、フランバスクの犬どもだったか。野郎ども応戦するぞ」
頭目の號令によって下っ端たちが応戦するも、日々鍛錬を行っている騎士とものぐさな盜賊とでは彼我の戦力差は明らかだった。人數としては、同等でも一個人當たりの戦力が違いすぎたのだ。
一人、また一人と盜賊たちが討ち取られ行く中、ここで頭目が撤退する指示を出す。だが、騎士たちに手を出した時點ですでに彼らは詰んでいたのだ。
「そこまでだ! 我ら、アシュフォード子爵家に仕えるアシュフォード騎士団である。大人しく投降しろ。さもなくばここで斬る!」
盜賊たちが逃亡しようとするが、その退路を新たにやって來た騎士の部隊が取り囲む。これは、カリファに助言したとある年の策だった。
年が彼に授けた策は、三十人から四十人を一つの小隊とし、その小隊を三つで一つのグループとする。その中から一つの小隊に盜賊をおびき出す餌として行商人と護衛及び反撃する役をやってもらい、殘り二つの小隊は逃亡しようとする盜賊たちを逃がさないよう取り囲む役だ。
全部で百人規模の大掛かりな作戦となるが、警戒心の強い盜賊をおびき出し、逃げ足の速い奴らを逃がさないよう三つの小隊の二つの小隊で包囲網を築く。大規模ではあるが、確実を見れば十分な果を上げることができる布陣となっている。
年からこの策を聞いたカリファは、アシュフォード家が所有する千五百人の騎士団の中から三分の一に當たる五百人から六百人を員し、殘りの千人弱については今まで通り都市の防衛の任務をやらせた。そして、その六百人ほどの騎士を十五の小隊で編し、それを五つのグループに分け、グループ一つ……つまり三つの小隊に盜賊をおびき出す&奇襲する小隊一つと、逃げようとする盜賊を取り囲む小隊二つに編したのだ。
その効果は絶大で、各方面に放った五つのグループすべてで盜賊を撃退する果を上げることができたのであった。治安が悪くなり盜賊の數が増えたことで、盜賊の間で獲を奪い合う競合が起こり、実質的な早い者勝ちという狀態になっていたため、釣りで言うところのれ食い狀態となっていたのだ。
こうして、ローランドが授けたカリファの策は見事にはまり、フランバスク周辺の街道を拠點としていた盜賊は一掃された。そして、その話を聞いた他領の領主たちもまたアシュフォード領主に倣って同じことをやった結果、見事に治安が回復することになり、全的な治安回復につながることになるが、それはまた別の話である。
そして、都市外だけではなく都市の治安もまたカリファが行った路地裏の住人雇用政策が上手くいき、將來的に路地裏の住人と呼ばれる存在がほとんど見けられなくなっていく結果に繋がっていくことになった。
ただの気まぐれで話していた容がまさかここまでの結果を生み出すとは、その話を話している時のローランドは夢にも思わなかった。だが、すでに次の街へ旅立ってしまった今となっては、彼自どうすることもできない。
それから、しばらくしてあの時の年の行方を探っていたカリファだったが、それ以降彼がその年と再び會うことはなかったのである。
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