《テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記》929 強いんですけど?
「ぐわははは!勝てばよかろうなのだ!」とバカ笑いする悪黨並みの小ずるい方法で先手を取ったボクたちだったが、與えられたダメージは致命傷には程遠いものだった。
ダメージこそ通ったけれど左手が使えなくなったとかそういうことはなさそうなのよね。現に今も手首を振り振りしたり、グッパーグッパーと指をかしたりしているので支障はなさそうだ。
「ぐぬぬ……。最後の一撃は割と本気だったんだけど。アレを素手で止めるとか、スラットさんのはどうなってるのよ!?」
「まあ、時間だけはあったからね。私のような素人の鍛錬でもそれなりの形になったということさ」
うわー。長命者あるあるな設定だー……。
あの境遇も止められなかった自らに対する罰だとか考えていたみたいだし、のんびりと怠けて過ごすような真似もできなかったのかもしれない。
「ある意味あのの功例だものねえ。最悪、死霊化した上に正確な時間が不明なくらい長い年月を研鑽に費(つい)やした連中が相手だったかもしれないのか。……うん。勝てる見込みが萬に一つもなさそう」
ちなみに、長命系では有り余る時間を持て余して存在していることに絶していく、なんてパターンもあります。こちらはこちらで自分だけでなく世界ごと滅びようとしていたりと、こちらはこちらで拗(こじ)らせて面倒なことになっている場合も多い。
「しかし、奇襲を功させても効果が薄いのはきついなあ」
「それなら諦めて王冠を渡してくれないかい」
「冗談にしても笑えないね。本気ならもっとつまらない。自分から勝負を投げ出すだなんて、そんな恰好の悪いことできやしないよ」
諦めたら以下略なあの言葉は世界の名言集にも記載されている至言です。
「……その結果どんなに無様(ぶざま)な姿をさらすことになり、どれほどの苦痛を與えられるとしても同じことが言えるかな?」
「わーお。これまた素敵な脅し文句だね。いきなり奇襲を仕掛けたボクに勝るとも劣らない悪役っぷりだよ」
「ふっ。悪黨か。反勢力の人々から聲高に言われた時には心が軋(きし)むかと思えるほどに苦しかったものだよ」
それは多分、臺詞の裏にある自分たちの行いを正當化しようする思がけて見えていたからではないかしらん。
『神々の塔』に迫るくらいだったから勢い自は間違いなく向こうにあったはずだ。が、建國のいきさつを知っている以上、『空の玉座』がある限り逆転される可能が常に殘っていると怯えていたのではないだろうか。そうなると自分たちの正當を主張するために、ことさら強く悪しざまに言っていたと考えられる。
その一方で、『天空都市』側の腐敗も相當のものだったみたいなので、事実もたくさん含まれていただろうけれど。
「まあ、ボクは自分の考えというか想いに沿った行しかしていないから」
なにせ太古の産である『空の玉座』を『天空都市』もろとも海の底に沈めようとしている訳ですからねえ。もしも知られてしまえば、歴史學者等々の研究者たちだけでなく多くの一般の人たちからも勝手な愚か者だと蔑(さげす)まれて糾弾されることになりそうだ。
「だからこれは悪いやつ同士の自分勝手な爭いってこと」
「……自分勝手か。同じ支配されるにしても突然現れた見ず知らずの者では反発されて當然ということか」
あ、うん。そういうことではあるのだけれど。……え?今の話の流れからそこに行き著くの?
「理解できたなら引いてくれちゃってもいいんですけど?」
「……ふっ。私にも意地があるから、ここで易々と引くことはできない。それに一度滅びの憂うべき目を味わった者として、それを繰り返させない義務があるのでね」
栄枯盛衰は世の常というやつなのだし、そんなはた迷な義務は捨ててくれて構わないのだけれどなあ……。
とにもかくにも話し合いは失敗ということになりそうかしらね。はてさて、エッ君とボクの二人でどこまでやれることやら。スラットさんの強さを鑑みるに、こちらの切り札は防力を無効化してダメージを與えることができる【ペネトレイト】や【流星腳】といった闘技になりそう。
ただ、向こうもそのくらいのことは理解しているだろうからなあ。その前段階となる読み合いの化かし合いが勝負の分かれ目になりそうだ。
こうなると先の奇襲が失敗したことが響いてくる。実は既にあの時ボクは手札を一つ切ってしまっていたのだ。決め手となった【ピアス】を放つ前、こちらに意識を向けさせるためにやったスウィングだけれど、あれは闘技を使ったように見せかけただけだったのだ。
基礎的な闘技は作をアシストしてくれる効果がある反面、使用後にしばかりの直時間が設定されている。だから本當はくるりと回って背中を見せることもできないのだ。
次々に手を繰り出していた戦いの真っ最中だったから気が付かれなかったけれど、こうして間があったことであの攻撃がフェイクだったことはバレてしまったかもしれない。
この、かもしれない(・・・・・・)が困りものなのよねえ。バレていなければ有効な一手として機能する反面、バレていた場合は決定的な隙になってしまう。そしてその危険がある以上、結局は使用することを控えるという選択を取らざるを得なくなってしまうのだ。
うーむ……。単純だからこそ使いやすいし効果も高かったのだけれどなあ。注目させるためだけに使用したのはもったいなかったね。もっともこれらは後になってからの今の段階でだから言えることでもある。後悔とは後にならなければできないものなのですよ。
「お互いの主張は平行線で譲る気もなしか。殘念だがもう実力行使しかなさそうだ」
水を向けてきたということはこれ以上の遅延も無理ということか。自然回復したMP量は微々たるものだわねえ……。まあ、著水までのカウントダウンの最中なので元々引き延ばせる時間なんてそうはなかったのだけれど。
それに、MPが萬全なくらいで覆せる実力差でもなさそうだし。どうやって勝てばいいものなのやら……。
「渉が決裂しちゃったのは殘念だけど、実力行使はむところだよ。ああ、先に言っておくと、さっきのでボクたちの実力を見切ったつもりでいたら大怪我するよ」
これで気持ちまで負けてしまったら本當に手も足も出なくなってしまう。はったりだろうが何だろうが、自分たちを鼓舞していかないと!
【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの少年は、眠りからさめた女神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】
サーガフォレスト様より、1巻が6月15日(水)に発売しました! コミカライズ企畫も進行中です! 書籍版タイトルは『神の目覚めのギャラルホルン 〜外れスキル《目覚まし》は、封印解除の能力でした〜』に改めております。 ほか、詳細はページ下から。 14歳のリオンは駆け出しの冒険者。 だが手にしたスキルは、人を起こすしか能がない『目覚まし』という外れスキル。 リオンはギルドでのけ者にされ、いじめを受ける。 妹の病気を治すため、スキルを活かし朝に人を起こす『起こし屋』としてなんとか生計を立てていた。 ある日『目覚まし』の使用回數が10000回を達成する。 するとスキルが進化し、神も精霊も古代遺物も、眠っているものならなんでも目覚めさせる『封印解除』が可能になった。 ――起こしてくれてありがとう! 復活した女神は言う。 ――信徒になるなら、妹さんの病気を治してあげよう。 女神の出した條件は、信徒としての誓いをたてること。 勢いで『優しい最強を目指す』と答えたリオンは、女神の信徒となり、亡き父のような『優しく』『強い』冒険者を目指す。 目覚めた女神、その加護で能力向上。武具に秘められた力を開放。精霊も封印解除する。 さらに一生につき1つだけ與えられると思われていたスキルは、実は神様につき1つ。 つまり神様を何人も目覚めさせれば、無數のスキルを手にできる。 神話の時代から數千年が過ぎ、多くの神々や遺物が眠りについている世界。 ユニークな神様や道具に囲まれて、王都の起こし屋に過ぎなかった少年は彼が思う最強――『優しい最強』を目指す。 ※第3章まで終了しました。 第4章は、8月9日(火)から再開いたします。
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