《チート能力を持った高校生の生き殘りをかけた長く短い七日間》第三話 盜賊退治
ナナの行は早かった。
”ツインズ”という雙子の夫婦に話をつけて、俺たちも同行することに決まった。
イベント発生だ。
ゲームでは、サブクエストという扱いになるのだろう。
一番、ワクワクしているのがマヤなのはどうなのかと思うが、マヤは留守番(?)になる。ミトナルの中からサポートを行うことになっている。留守番という表現が正しいか解らないが、本人が留守番と表現したので、留守番が正しいのだろう。
ミトナルのスキルは、マヤのスキルで補完ができる事が解っている。
そして、マヤはミトナルの中から”第三の目”というべきなのか解らないが、死角からの攻撃を防ぐことができる。マヤも、ミトナルのスキルを使う事ができるのだ。俺だけではなく、眷屬の中で強者と思われているヒューマが互角で、人型のブロッホにも勝ち越している。ラトギでは既に相手にならなくなっている。アウレイアやアイルたちが複數で挑んでも、ミトナル+マヤには敵わない。
でも、そんなミトナル+マヤもナナには敵わない。スキルを全開で使って殺すつもりで戦えば勝てるだろうけど、模擬戦では簡単に負けてしまう。経験が違いすぎる。
「リン君。現場では、私が指示を出すわよ?」
依頼をけた時に、最初に言われた事だ。
リーダーは俺だが、経験が絶対的に足りていない。俺も解っている。しでも経験を吸収しなければ、せっかくナナという手本が居る。しっかりと學ばなければ一緒に遠征してきた意味が薄れてしまう。
盜賊のねぐらは、すぐに見つける事ができた。
隠蔽工作をしていると思っていたのだが、ナナだけではなく、ツインズの4人からも、隠蔽を行うような者たちは盜賊や野盜にならないと笑われてしまった。
作戦は、簡単だ。
俺とミトナルが盜賊たちに姿を見せる。
村から聞いている話では、盜賊たちは子供と思われる者たちを攫っている。
機は不明だけど・・・。ナナやツインズの話では、違法な奴隷商にでも売っているのではないかと教えられた。
「ねぇリン?」
「どうした?怖いのなら辭める?」
ミトナルが、辭めるという選択はしないのは解っている。
「ううん。違う。盜賊にしては、裝備が揃っていると思わない?」
盜賊の後をつけて、盜賊のねぐらを発見してから、作戦を考える場所で、ミトナルが最後に俺に質問するような形で発言した。
「え?」
聲は、ツインズの一人が上げた。
確かに、俺たちの存在が知られてしまった時でも、俺とミトナルなら盜賊は子供だと考えて、追ってくる可能がある。そこを、ナナやツインズが無力化して、を聞き出す。二段構えの作戦になっていた。
その為に、盜賊たちを見たのは、俺とミトナルだけだ。
「ミトナルちゃん。じたことを教えて!」
ナナがしだけ興した様子で、ミトナルに説明を求めた。
ミトナルは俺を見てきたので、頷いて許可を出す。許可も必要ないのだが、ミトナルはなぜか俺に許可を求めることが多い。
「うん。武は違っていた。でも、履が揃っていた」
「え?」
「武には好みがある。防も型や戦い方で変わる。でも、靴はサイズの違いはあるけど、大きくは変らない」
ミトナルの説明を聞いて納得ができた。
確かに、裝備品の中で靴だけは大きくは違わない。ゲームとかでは、スキルや防力で違う可能もある。しかし、リアルでは靴を別々に用意するほうが面倒だ。それに、靴は同じサイズを用意して中に詰めをする場合もある。
「そう・・・。ミトナルちゃん。全員が同じ?」
「わからない。でも、同じ履を使っているのが3人は居た」
ミトナルの観察眼も凄いが、これにはトリックがある。
マヤが関わっている。
マヤは、ミトナルの中で暇なのか回りを観察することを続けている。その為に、盜賊たちの裝備の違和に気が付いたようだ。
ミトナルが俺に許可を求めてきたのも、マヤの手柄を奪ってしまう形になってしまうからだ。
「どうかしら?」
「そうだな。全員を殺すのは簡単だが、裁定でも2-3人の捕縛を考えるか?」
ナナとツインズが作戦に変更を加える相談をしている。
俺とミトナルが囮になるのは確定だ。
捕縛と同時に、盜賊たちの掃討を行うことに決まった。
俺とミトナルを追ってきた者たちは、捕縛を試みるがダメだったら殺してしまうように言われた。躊躇しない様に何度も言われた。
作戦決行は、日暮れが近い時間に決まった。
それまでは、村で時間を潰していた。
村に居るような人の格好になってミトナルと森に向かう。
盜賊たちの屯している場所は解っている。一直線に向かう。眷屬たちは、俺たちから離れた場所で護衛をしてくれている。
ナナとツインズも、盜賊たちのねぐらを別の方向から迫っている。
リデルに伝言役を頼んでいる。
リデルの眷屬から、ナナとツインズが配置についたと連絡がった。
「ミル」
「うん」
ミルは気負った雰囲気はない。
俺のしだけ後ろに従うように歩いている。
が出す音とは違う音がする。
距離が近づいている。
見張りが居るようだが、大聲で話をしているので、見張りの役割は果たしているようには思えない。
「誰だ!」
見張りが俺たちを見つけてくれた。
俺とミトナルは、慌てた演技で、持っていた籠をその場に落として逃げ出す。
慣れない雰囲気は難しいが、追ってくる奴に合わせた速度で走るだけだ。
1分くらい走っただけで盜賊との距離が離れてしまう。
想定していたよりも引っ張れなかった。
「ミル!」
「うん」
追ってきているのは3人だ。
見張りの全員がこっちに來て大丈夫なのか?
盜賊の事だけど、心配になってしまった。
「アイル!殺すな!アウレイア!頼む」
護衛として隠れていた二頭が飛び出す。
これで終わりだ。
一人は、ミトナルが嬉々として倒していた。
腕を切り落とされていた。死んではいないだけだ。どうせ、この後に、ナナとツインズが尋問をするだろう。その時に・・・。
「ミル。こいつらは放置でいい。アジトに行こう」
「うん」
盜賊たちが何か言っているが気にしてもしょうがない。
アイルの眷屬が何頭か來ているので、スコルたちに見張りをしていた者たちを任せて、アジトに急いだ。
ナナとツインズがやられるとは思っていない。
俺たちの獲が無くなってしまう程度の考えだ。
俺たちが到達した時には、既に盜賊たちは倒されてしまっていた。
勉強にもならなかった。
「ナナ!」
「リン君。ミトナルちゃん。そっちは終わった?」
「あぁ捕っている。一人は、死んでいる可能があるけど・・・」
「・・・。そう。それは、どうでもいいわ。それよりも・・・」
ナナが手招きをする。
俺とミトナルは、お互いの顔を見てから、ナナの近くまで移した。
「アスタ!こいつら・・・。あぁ丁度よかった。リンもミトナル嬢も來てくれ」
ツインズに案されて、盜賊たちが使っていたアジトに足を踏みれる。
思っていた通りの展開で糞だが、問題はそこではなかった。
ナナが、俺たちに伝えようとしたことの裏付けになる資料が見つかった。
想像はしていたのだが、最悪な気分だ。
「教會?」
「そうね。評判がよくないけど、勢力が大きい方の奴らね」
教會の印がった資料には、”子供やを攫って奴隷にしてから王都に移送する”ように書かれていた。
「ナナ。この印は?」
印章を指さして、ナナに聞いた。
ツインズも苦い表をしている。
「ボルダボ家ね。今は居ないはずだけど、”とある事件”で失腳するまで、樞機卿が居たはずよ」
「アスタ。今の教皇に近い立場だ。確かに、失腳はしているが、裏での影響は衰えていない。それどころか、暗部を支配してしまっている。教會の汚れ仕事を行っている家だ」
ミトナルが、俺の袖を引っ張る。
「なに?」
「僕。前に、フレットが愚癡っていたのを覚えている」
「え?」
「確か、フレットの家・・・。コンラート家と対立しているのが、ボルダボ家だったはず」
なんとなく、同級生の誰かが絡んでいるように思える。
教會。宗教。誰か・・・。居たか?
神殿に戻れば誰かが知っているかもしれない。
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