《ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく》426話「呼び出し」
「ギルドマスターがお呼びですので、こちらに來ていただけますでしょうか?」
「?」
薬草採集から戻ってきた俺を、開口一番ザシカがそんな風に出迎える。何か、バレたのだろうかと頭を巡らせつつも、彼の案に従ってとある部屋に連れて行かれた。
ここで斷ってもいいが、それだと探られて困るようなことがありますよと言っているようなものなので、ここは逃げずにギルドマスターと対峙する選択をした。通された部屋で待っていたのは、大柄の男だった。
「初めてだな。俺はこのギルドのギルドマスターをやっている。オイトという」
「ローランドだ。ただのEランク冒険者だ」
「……」
元ネタ(?)のキャラクターは細の青年だったが、この世界では名前だけで見た目が合致していな様子だ。お互いに簡単な自己紹介を済ませる。何故かザシカも殘っており、二人とも顔が厳しい顔つきになっていた。
異様な雰囲気の中、オイトが俺にギルドカードの提示を求めてきた。それに対し、俺は何のためらいもなくギルドカードを差し出す。
すぐさま、目視による確認をすると、テーブルに置かれていた水晶にギルドカードをかざす。すると、一度だけ水晶がったと思ったら、そのあと何事もなかったかのように元の狀態となった。
それが終わると、オイトは俺のギルドカードを再び確認したが、容を確認すると困のを浮かべた。
「ば、馬鹿な。変化がない……だと?」
彼の口ぶりから、どうやら俺がギルドカードを偽造している可能に気付き、その真偽を確かめるために呼び出したということが確定した。そして、おそらくだがギルドカードをかざした水晶は幻などの目視による偽稱を見抜くための魔道だったようで、その魔道を使った結果が予想していた容と違っていたがために困しているらしい。
「何か、問題でもあったのか?」
「い、いや。特に問題はない」
そう言うと、オイトはそっとギルドカードを返卻する。殘念だが、俺の方が一枚上手だったようだ。
一どういうことかといえば、俺が部屋に案された瞬間、スキルを使って水晶が俺の幻を見破るための魔道であることをすぐに察知した。そして、ギルドカードをかざしたことで俺の掛けた幻は確かに解除された。であれば、再び幻を掛けなおせばいいだけの話である。
魔道を使用してから相手がギルドカードを確認するほんの僅かな時間で再び幻を掛けなおす。こうすることで、魔道を使って幻を解除されても一見すれば最初から幻など掛かっていなかったように見えるのだ。圧倒的なステータスを持つ俺だからできる力業でもあった。
「それで、俺を呼びだした理由を聞こうか」
「……」
俺がそう問い掛けると、途端に黙り込んだ。おそらくは、水晶によって俺の本當のランクを白日の下に曝け出したかったのだろうが、あてが外れたため呼び出しの言い訳を考えているのだろう。そんな困った様子のギルドマスターに、ザシカが助け舟を出してきた。
「ギルドマスターは、頑張っている冒険者を呼び出してたまにこうして激勵しているんですよ。ね、ギルドマスター」
「そうなのか?」
「あ、ああ。ザシカの報告では、質の良い狀態の薬草を納品してくれて助かっていると報告をけている。ギルドマスターとして謝している」
ザシカの言葉に、多詰まりながらも同意するオイト。これで俺を呼びだした名目上の理由はり立ったため、形の上では最近活躍している冒険者を激勵するという言い訳ができた。
まあ、ギルドカードの偽造という不正を行っているかもしれない人間を野放しにしておくことはできないというギルド側の言い分もあるだろうが、俺とて面倒なことを押し付けられたくはないのだ。
お互いにそれ以上かける言葉がなかったので、その場はお開きとなりかけたのだが、俺が部屋の扉に手を掛けたところで、それを遮る者がいた。言わずもがな、ギルドマスターだ。
「……お前【クエストブレイカー】だな」
「クエストブレイカー? 何のことだ。俺はただのEランク冒険者だ。ギルドカードを見ただろう?」
そう返してやると、反論することなくただ押し黙っている。ギルドカードの偽造が不可能という事実がある以上、それを否定することは冒険者ギルドのみならず他のギルドの分証のシステムも否定しかねない問題となるからだ。
しかしながら、何事も抜け道と呼ばれる不正はどこにも存在することは常であり、どうやらオイトは俺がそれを行ったのだと疑っている様子だ。まあ、正解なんだが。
だが、不正やイカサマというものはバレれば問題になるが、バレなければ問題にはならないという側面を持っている。犯罪なども同じくこれに當てはまり、要は明るみにならなければ問題にならないということだ。
「だが、ローランドという名前の若い冒険者が、SSランク冒険者として登録された報はってきている。坊主の名前と同じ名前だな」
「そうだな。だが、若い冒険者でローランドという名前の冒険者なんて他にもいるだろうし、それだけでは俺がSSランクの冒険者である拠とするには弱いな」
「……」
ギルドカードの偽造を見破れなかったことが大きく出ているのか、俺の言葉に反論できない様子だ。だが、ここでザシカが起死回生ともいうべき一手を打ち出してきた。
「そうだ。でしたら、新しくギルドカードを再発行すればいいのではないですか? そうすれば、ここにいる年がSSランク冒険者かどうかわかると思いますよ」
「そうか、その手があったか!」
ザシカの提案に明るい顔になるオイトだが、殘念ながらその策には重大な欠點があった。それを指摘してやる。
「殘念ながら、それはギルドカードを紛失した場合に取られる措置だ。ご覧の通り、俺の手元にはこうしてギルドカードがある。つまり、ギルドカードの再発行手続きをする必要が――」
「ふんっ」
ギルドカードの再発行をするためには、ギルドから発行されたギルドカードを紛失する必要がある。ギルドカードが手元にあるにもかかわらず、ギルドカードの再発行手続きを行うことは規約上は止されていないが、不必要なことであるため、基本的には斷られる。
ちなみに、登録する際の名前や出地などについては偽名や架空のものあるいは空欄でもいいらしいが、冒険者のランクと犯罪歴や不正を行ったなどの不祥事の履歴については偽稱することは止とされている
ギルドカードの再発行について俺が説明しながら持っていたギルドカードを左右に振っていると、突然手にあったはずのギルドカードがなくなった。そして、次の瞬間なくなったギルドカードはオイトの手によって捻じ曲げられてしまったのだ。なんという力業だろう。俺以外にも力業で何とかする奴がいたとは……。
「これで、ギルドカードが使えなくなってしまったな」
「それでは、再発行手続きをしましょうか」
「……」
そのあまりにもあまりな態度に半眼を向けるも、どこ吹く風といった様子で二人は再発行手続きを進めようとする。
「登録名と冒険者ランクをお願いします。二つ名などがあれば、それも申告してください」
「……ローランド。Eランク冒険者。二つ名はなしだ」
「々お待ちください」
俺の申告を聞いたのち、新しい無記名のギルドカードを水晶にかざす。しばらくして、同じように水晶が輝くとそこに報が記載されたギルドカードができあがる。
(幻、ほいっ)
できあがったカードにさっそく幻をかけると、先ほどと同じように偽造されたギルドカードが完する。これぞまさしく完全犯罪だ。
自信満々な顔をしていた二人だったが、まったく同じ報が記載されていたことに目を見開いて驚いている。これで俺がSSランクの冒険者ではないことがギルドカードの報で証明されてしまった結果となる。
仮にこれを覆そうとするならば、ギルドカードという長年に渡って積み上げてきた信頼を否定することをせねばならず、そうなった場合ギルドカードを取り扱っているすべてのギルドや施設を敵に回すことになりかねない。
「もう気は済んだか? だったら、それを返してほしいのだが」
「……」
俺の言葉に、苦蟲を噛み潰したような何とも言えない複雑な表を浮かべつつ、オイトがギルドカードを寄こしてくる。その様子を見て、満足気になった俺は、最後に捨て臺詞を殘して部屋を後にしてやった。
「殘念だが、ギルドカードの偽造が不可能という事実がある限り、俺がEランク冒険者だということは揺るがない。俺をSSランク冒険者と認定するためには、確固たる証拠を見つけることだな」
そういう言い方をすれば、俺がSSランク冒険者だと言外に言っているようなものだが、その証拠が提示できない限り、俺はあくまでもEランク冒険者なのである。
その言葉を殘し、部屋を出た俺は、別のギルド職員に薬草依頼の報告をして報酬をけ取り、その日は休むことにしたのであった。
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