《ウイルター 英雄列伝 英雄の座と神代巫310.無敵の弱點

のぞみはまた敵を倒してから、神殿の真ん中にいる藍(ラン)たち四人の元へとき出す。

ティムやジェニファーのようなA組の上位10位にる心苗(コディセミット)たちは、まだ力や技量に余裕があるが、藍や悠之助はそろそろ辛くなってきているように見える。

藍は『易経天風剣(えききょうてんぷうけん)』を繰り出して、連続の刺撃と合わせて技を展開する。數本の鋭い気流に狙い撃ちされた敵は、を空けて倒れる。何とか負けてはいないが、弱音を吐き始めていた。

「戦況が変わらないと、スタミナが一方的に消耗されるだけですね……」

案の定、石像は元通りになって、また藍に向かってくる。そして、藍の『易経天風剣』を學習し、軽やかにその技を回避した。

「そんな……。『易経天風剣』が當たらないなんて……」

戦えば戦うほど、力も、効果のある技の範囲も狹まってくる。心が折れそうになった藍に、石像は弩(いしゆみ)の照準を合わせ、狙い撃とうとした。次の一瞬、敵の背後から、『日空陣(ひくうじん)・日月萬暈(ひつきばんがさ)』で、のぞみが相手を斬り落とす。弩ごと石像が崩れ落ち、のぞみが藍のそばに著地した。

「のぞみさん!」

「可児(コール)ちゃん、大丈夫ですか?」

「うん……まだ保ちます」

藍のようなブースター系闘士(ウォーリア)にとって、耐久戦は大きな弱點だ。

「可児ちゃん、諦めちゃダメです。きっと乗り越えられます」

のぞみの論を信じたい藍だが、何度でも立ち上がる石像を見ている現実に、及び腰になっている。

「……のぞみさん、この石像、本當に倒せるでしょうか?」

「倒せないなんて、ありえないぜ!」

さすがはあちこちで武者修行を重ねてきた修二だ。ピンピンした様子で飛び回り、石像が攻撃を繰り出す前に先手を打っている。

剣先が見えないほどの剣捌きを繰り広げているティムが、崩れた石像の向こうから聲を上げた。

「きっとどこかに弱點があるはずです」

ラーマは幹を使って回転しながら、ジャマダハルの竜巻ごと衝突し、一旦停止すると、追加の刺撃を加えた。気高さとしさを忘れぬ所作で石像を倒しながら、ティムの話を引き取る。

「任務を共にした仲間から聞いたことがあります。柱を守る者をかすのは、地脈を流れる源気(グラムグラカ)だそうです」

「おいおい、エネルギーが無限に供給されるってことかよ!?」

クラークの驚愕の聲が、神殿に響き、天井へと吸い上がっていった。防の構えを取り、しっかりと弾をけ止める。

振り下ろされる斧を金屬竹刀でけ止めた楓は、連続強ハイキックで石像を蹴散らしていく。反撃技は、元レーサーらしい冷靜な判斷と知じさせた。楓も知恵を持ち寄り、対石像戦の終結を模索する。

「いや、これは普通の戦闘機元(ピュラトファイター)だべ。エネルギーを集めてるコアを破壊すれば、機能停止するはずだべ」

それを聞いてティムは、発する石柱に目をやった。

「もしかすると、石柱こそが本であり、コアなのかもしれません」

「んだども、これだけ攻められて、柱を破壊する隙なんてねぇべ?」

ティムは全の戦況をよく見ながら指示を出した。

「ハヤガタさん、ミンスコーナさん、後方をお願いします。私はランさんたちの支援に回ります」

「分かりました」と、ラーマが素早く頷いた。

石柱の後ろで、マントを著たがのぞみたちの戦闘の様子をのぞいている。

その時、ヒュン、と何かが飛んできて、一本の石柱に當たった。

直撃した石柱には割れ目が生じる。飛び道は持ち主の手に戻ったかと思うと、さらに數を増やして石柱に注がれる。割れ目は大きくなり、最後には直接攻撃で石柱を崩した。

その直後、ラーマが倒した石像は々の破片となって散り、その後、回復することはなかった。ティムの推測は正しかったのだ。

戦況の変わり目が見え、ラーマの顔に笑みが戻った。

「これなら、勝てますね!」

楓は石像の斧を躱すと、金屬竹刀を大きく振った。石像は、源(グラム)の混じった突風に吹き飛ばされ、左の石柱にぶち當たる。楓はさらに火のように赤い源を纏って飛び上がると、凄まじいパワーを込めて、一點集中で蹴り貫いた。高さ10メートルもある柱は倒壊し、瓦礫の一部は橋から落下した。同時に砕された石像は、もう修復されることはなかった。

そして楓は、最初の石柱を壊した応援者に聲をかける。

「來たんだべ、蛍(ほたる)ちゃん」

蛍は楓に背を向けたまま、次のターゲットに向かってき出す。

「……私にも関わることだから。どんなことがあっても、逃げるわけにはいかないわ」

「蛍ちゃん、來てくれて嬉しいべ」

楓は蛍のそばに跳び寄った。ティフニーからは、もしも蛍が來たら、彼を守ってほしいと頼まれている。

石像たちのきにも変化が見られた。彼らは弱點がバレたことを敏に嗅ぎ取り、石柱の防衛を優先した、より好戦的な戦い方に変化した。近距離戦が得意な者たちは激しく武を振り、次々に攻撃を繰り出す。のぞみたちがその攻撃に押されていると、遠距離弾での狙撃に攻撃を変えた弩の石像たちが撃ち込んできた。

マシンガンのような弾の攻撃により、接近戦は難しくなった。この狀況で石柱を狙うには、まずこの弾攻撃を耐えるか避けるかしなければならない。

メリルは撃を避け、剣に集めた源気を払い出す。その技はすでに學習されており、石像は回避行を取ったのちに次の攻撃を開始した。

「作戦が変わったんだヨン!」

クラークが弾を避けると、その奧にいた石像が発に飲まれた。

「ハハ、味方の技を食らったな!」

そうんだ次の瞬間、発に巻き込まれたはずの石像が剣を手に飛び寄ってきた。

クラークは間一髪、敵の斬撃を刀でけ止める。

「くっそ、味方の技を食らっても無傷なのかよ?!」

格闘しか持ち合わせていない悠之助は、弾を避けるので一杯だ。

「それだけじゃないッス、それぞれの個が得た戦闘報が共有されてるみたいッスね」

のぞみと藍は連攜して戦い、石像一と石柱一本を戦闘不能にさせた。それから二人は、逃げ戦を強いられている悠之助の元へやってきた。おかげで悠之助はし休息を取ることができた。

とはいえ、不利な戦況に変わりはない。

「フェラーさん、どうしましょう?弱點がわかっても、これでは石柱を倒せません!」

藍が聲を上げると、ティムは瞬時に判斷を下した。

「ドイルさん、ツィキーさん、そしてヌティオス君とデュク君、あなたたちには後方を頼みます。五の弩軍団を食い止めてください。戦力不足のは、最後尾の私たちが埋めます」

「分かったぞ!」

ティムの指示に応じ、ヌティオスたち四人は後方へ跳んだ。ヌティオスとデュクの巨人二人組が弾を防ぎ、その間にルルとジェニファーが弩陣の懐へり、接近戦で石像を砕いていく。

彼らがいたおかげで最後尾のラーマ、楓たちはより広い空間を得た。攻撃が味方を巻き込む心配もなくなり、何度も必殺技を繰り出し始める。

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