《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》

今年の文化祭は、楓は來てくれるだろうか?

いつも學校側から渡される特別なチケットを楓に渡して招待しているのだが、そのことを話すと楓はとても嫌そうな顔をする。

やっぱり子校の文化祭にうのは、それなりに嫌だったりするのかな。

學校でやるライブのためのライブ裝のこともあるんだけど。

「ねぇ、弟くん」

「なに?」

「文化祭のことなんだけど」

私がそうきりだすと、楓の反応があきらかに変わる。

ビクっとしたような態度をとりだしたのだ。

いつもの何気ない學校帰り。

楓とのありふれた時間。

私にとっては、かけがえのない貴重な瞬間。

「ぶ、文化祭……。そっか。もうそんな時期なんだ」

「なんでそんなに嫌そうな顔をするの?」

「そんな顔してるかな?」

「してるよ。とっても嫌そうな顔をしてる」

「そっか。そんなつもりはないんだけど……」

本人はそう言っているけど、態度に出てるからわかるんだけどな。

まぁ、いいか。

「とにかく。今年の學校の文化祭は、私たちにとって最後になるから、弟くんには是非とも來てもらいたいんだよね」

「うん。なにも予定がなければ行きたいかな」

楓は苦笑いをしてそう言う。

それは、本音トークじゃないな。

「本當にそう思ってる?」

「もちろんだよ。香奈姉ちゃんからの文化祭のおいは、僕にとっては重要なものだから」

「それならいいんだけど」

私は、楓の言葉を聞いてしだけ安心していた。

今回も、學校側から渡される1枚の招待チケットは、楓に渡すつもりだったので無駄にならずに済む。

ただでさえ子校の文化祭の數週間前に學校側から渡される特別なチケットは、かなりレアなだ。

そういえば、奈緒ちゃんも楓に渡すつもりだったようだが、実際のところはどうなんだろう。

私の場合、他にあげる相手もいないので、どうしようもないが……。

とにかく、楓以外の男の子に渡すつもりはない。

「とりあえず、それは今じゃないんだよね?」

楓は確認のつもりなのか、そう訊いてくる。

たしかに子校の文化祭は、2ヶ月くらい先の話だ。

ちなみに、その前に行われる育祭すらまだである。

あくまでも確認のつもりで聞いてみただけ。

「うん。2ヶ月くらい先かな」

「そっか」

「まぁ、その時になったらチケットを渡すと思うから、弟くんは気にしなくてもいいよ」

今年は3年生ということもあり、文化祭もラストになってしまう。

だからこそ、楓とは良い思い出を作りたいのだ。

楓本人は、どう思っているのかわからないけれど……。

私なんかは、特にもステージの上で気になる男の子コーナーなんかでの告白イベントみたいなこともやらされるだろう。

そこで楓のことを言ってしまってもいいのか、ちょっと悩みものである。

「わかった。楽しみにしておくね」

楓は、そう言って私に微笑を向けてくる。

そんな楓を見ていると、率直に『大好き』といいたくなる私がいる。

しかし我慢だ。

私は、楓の腕にギュッと抱きついていた。

たぶん、私の顔は気恥ずかしさのあまり真っ赤になっているだろう。

「そういうのは……。もうちょっとひねくれて言ってくれても……」

「ん? だって香奈姉ちゃんだし。ひねくれる理由がないし……」

楓は、なんともいえないような表でそう言った。

私自、楓にはそこまで求めてはいないから、大丈夫なんだけど……。

しくらいはね。

「だったらせめて、甘えてくれてもいいんじゃないかな」

「香奈姉ちゃんに甘えてしまったら、とことんまで甘えてしまいそうで嫌なんだよな。香奈姉ちゃんにとっては、嬉しい事なのかもしれないけれど……」

「そんなの當たり前じゃない。弟くんのお世話をできるのは、私だけなんだから──」

「本音はそっちなんだ……」

「うん! こうしていられるのもしの間だけだしね」

私の場合、お姉ちゃんのせいもあり、誰かに甘えること自が苦手なのである。だから、どうしても楓に寄り添うことでストレスを発散させるしかない。

しっかりしているとはよく言われるけれど、私としては嬉しくはない言葉だ。

「香奈姉ちゃんって、僕にだけ甘いような気がする……」

「今ごろ気づいたの? そんなの付き合っているんだから、當然じゃない!」

私は、きっぱりとそう言った。

付き合っているのは、噓ではないし。

の付き合いだってある。

一緒にお風呂にっているのだから、そのくらいは気づくべきだと思う。

「たしかに付き合ってはいるけど……。どのくらいの距離なのか、最近だとよくわからなくて──」

「そのあたりは大丈夫。弟くんとの距離はバッチリだから。むしろ奈緒ちゃんや沙ちゃんあたりに言い寄られてないか心配で──」

特にもあの2人は、一番心配している。

隙あらば、楓のことを狙っているのは、態度から見てわかることだ。

「それなら大丈夫かな。ちょっとスキンシップが激しい気もするけど、2人とも、そんなつもりはないと思うし」

楓はそう言っているが、あの2人のことをよく知らないんだろう。

あの2人は、本気で楓のことを狙っている。

態度を見れば、わかることだ。

「弟くんは、甘いなぁ。あれだけ骨に優しくするのは、あきらかに好意を持っているからだよ」

「それは……。香奈姉ちゃんだって、たいして変わらないんじゃ……」

「私の場合は、に対してそこまで拗れていないから、そこまでめんどくさくないでしょ」

「そんなことを思ったことはないけど……」

「そっか。まぁ、私と一緒にお風呂にることも嫌がったりしないからね。そのあたりはわかってはいるつもりだよ」

「ホントに? なんか怪しいな……」

そう言って、楓はジト目で私のことを見てくる。

別に私のことを本気で疑っているわけではないのは、見たらわかることだ。

しかし弟くんには、一つだけ欠點がある。それは──

「弟くんって、困っている人を放っておけないタイプだから、奈緒ちゃんや沙ちゃんのことを本気で心配すると思うのよ」

私は、真面目な表でそう言っていた。

それは短所ではなく長所にもなり得るようなことだが、見方によってはそれは欠點にもなることだ。

たちにとっては、それがちょっとした勘違いをさせることもある。

たしかに楓からしたら、親切心でやっていることかもしれないが……。

「それは、まぁ……。バンドメンバーだし……。心配したりするのは當然のことかと──」

楓は、指で頬をポリポリと掻きながらそう言った。

至極真っ當なことを言っているのは、私にもわかっている。

だけど、なんとなく納得できない私がいるのも事実であり……。

こんな時はお姉ちゃんとして──

「今、付き合っているの子が誰なのかちゃんとわかっているのなら、私としては言うことはないかな」

こうしたアドバイス的なことしか言えない私って、結構卑怯なのかもしれない。

こういう時って、もっと積極的に攻めればいいのかもしれないけれど……。

なんか話を聞いた後だと、そういう気分になれない。

逆に楓から迫ってくるのなら、迷うことなくれると思うが。

今の楓の気持ちって、いまいちわからないんだよね。

私からの歩み寄りが足りないのかな?

どちらかと言えば、楓からの歩み寄りの方が圧倒的にない気もするけど……。

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