《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》1話 とりあえずの平穏のこと

4部開始です。

とりあえずの平穏のこと

「よぉ、やるじゃねえかボウズ」

俺は、気が付けばいつかの草原でいつかのベンチに腰かけている。

えっと・・・死にかけた覚えはないんだけども。

なんで橫に大師匠がいるんだろう?

寢てる間に窒息死でもしたのかな・・・?

「いやいや、こりゃあたまたまだ、たまたま」

いつかのように著流しを粋ににまとった大師匠は、豪快に笑う。

うーん、すげえ迫力。

超強そう。

よくもまあこんな人が事故で死んだな。

・・・タンクローリーと正面衝突でもしたのかな。

「見てたぜェ、『鋼斷』をよぉ。しっかり決まってたじゃねえか」

・・・ネオゾンビにかました時の話だろうか。

「いや・・・でも榊ソードよりもさらにランクが上の妖刀使ってましたし」

「馬ぁ鹿。前にも言ったじゃねえかよ、持ちってのは者の力量をカチ上げるもんじゃねえってな」

大師匠は俺の頭を軽く叩いてきた。

軽くのハズなのに衝撃が綺麗に通る・・・あががが。

「お前さんが十兵衛と違うのはそこだなあ。自己の評価ってやつが低すぎらぁ、仲間の嬢ちゃんにも言われてたろ?」

「あの世監視システム怖いぃ・・・」

全部筒抜けじゃないすか。

父方母方両方の爺ちゃん婆ちゃんにも絶対見られてる・・・ごめんよ殺伐とした孫で。

他人の振りとかしてくれてもいいんだぞ。

「がはは、お前さんは短い期間にちいと『死』にれすぎたからよ、『境界』が薄れてんのさ。マトモな人間ならこうはならねえ」

「・・・いや、この狀況なら結構いっぱいいるんじゃないんですか?」

ゾンビやチンピラと切った張ったやってんのは俺だけじゃないんですが。

そして今明かされる驚愕の真実である。

いや、これが完全な夢である可能は捨てきれないんだけど。

「いんや、違うねえ、違う。肝心なのは『命の取り合い』ってことさ・・・潛ってきた修羅場の數とも言えるかねえ、戦國時代の侍でもなきゃこうはいかねえぞ」

「もう嫌だこんな世界・・・」

鍛治屋敷とか白黒ゾンビとかとのドンパチのことかな?

この先も増えそうだし・・・寢る度にここに來るのは神的にきっついぞ、おい。

「しょうがねえやな。南雲流を修めようって連中は、大なり小なり安穏と生きられねえはぐれ者よ・・・俺も、十兵衛も、お前さんたち弟子連中もな」

・・・ぐうの音も出ない。

思い當たることが多すぎる問題。

「・・・でもまあ、しょうがないっすね。ここでケツまくるわけにはいきませんし」

もう戦いはこりごりだよ~なんて言って逃げ出せればいいが、今は無理だ。

俺が逃げれば、先輩方の誰かが鍛治屋敷とかち合う。

俺が逃げれば、領國は現世を謳歌し続けることだろう。

それが、許せるか。

いや、許す許さないじゃない。

「・・・我慢、ならねえ」

ここで逃げれるようなら、ハナから俺は南雲流に門してもいない。

はぐれ者、か。

その通りだろう。

元から、俺の頭のネジは外れてるんだ。

「おう、威勢がいいねえ・・・どうせ今の世は鉄火場よ、悔いが殘らねえようにやんな」

前のように、頭をガシガシとでられた。

もうそんな年じゃないんだけどなあ・・・

「それにしてもよお、ボウズ。お前さん、いいにモテるねえ・・・よりどりみどりじゃねえか」

「へぇっ!?」

急に話題が変な方向に!?

「軍人の姉ちゃん2人だろ、外人の軍人3人だろ、他にも同門やら學生やらときたもんだ・・・がははは!十兵衛の直弟子だけのこたぁあるなあ!」

「ちょ、ちょちょちょ、大師匠!?あ、あの人たちとはそんな・・・!?」

神崎さんたちのことだろうが、流石に勘違いが過ぎるぞ!?

あの人たちは相棒だったり仲間だったりはするが、別に男間のどうこうは・・・

っていうか同門って誰!?え!?後藤倫パイセン!?

それに學生って誰ェ!?

「いいじゃねえかよぉ!今は世の中荒れ放題だぜ?ああいうできた娘さんたちにゃあ、いい子をバンバン産んでもらわねえとよ、國が亡ぶぜ」

「いや、それはわかるんですけどなんで相手が俺なんですかって話なんですけどォ!?!?」

すると、橫からとんでもない殺気が放出された。

夢の中なのに死にそう!!

「―――ああ!?ボウズてめえソレ素面で言ってんのか!?」

ひいい!?急に睨まないでくださいよ大師匠!!

殺気が!殺気が津波めいて俺の全に襲い掛かって來るゥう!?

「いいか!今からありがたぁい話をしてやるから正座して・・・おいおい、時間かよ」

俺の両肩を恐ろしい勢いで摑んだ大師匠が、何故か殘念そうな顔をした。

うわ、草原が消え始めてる。

これは・・・今から起きるってことかな?

た、助かった・・・

「・・・まあいいか、この先もお前さんとはちょくちょく會いそうだしよ。説教はまたの機會にしてやらァ」

「は、ははは・・・」

この先も死にかけるってことですか、俺。

その未來は免こうむりたい・・・

「ったく、返す返すも十兵衛の野郎・・・武ばっかり教えやがって・・・テメエは16の頃にゃあ48手もそらんじてたって癖によォ・・・」

なんかもう聲も途切れ途切れになってきた。

いいのか悪いのか・・・

あとなんかすげえ暴されてんな、師匠。

若いうちから遊び人だったんだあ・・・

「そいじゃあまたなァ、孫弟子」

苦笑したような大師匠の聲が聞こえるなり、俺の意識は闇に沈んだ。

あ、お別れの挨拶できなかった・・・禮儀知らずだなあ、俺。

すいません大師匠!祟らないでください!!

「・・・懐かしき知ってる皮ァ・・・」

目を開けると、視界は真っ暗である。

背中にじるは、慣れ親しんだベッドだ。

『高柳運送』のベッドである。

「なんか・・・すげえ怖い夢を見た・・・そんな気はする・・・」

全然覚えてねえ・・・ゾンビに追いかけられる悪夢でも見たのかな。

いや、ゾンビごときでこんな気持ちにはならんからな・・・師匠との悪夢のような稽古をエンドレスでもしていたんだろうか。

なんか、とんでもなく恐ろしい存在と対峙していたような・・・?

「まあいいや、サークラぁ、朝だぞ・・・お?」

とりあえず頭に乗っているのはサクラだろう、いい匂いするし。

それをどかして朝ご飯の準備を・・・と思ったが、両腕がかない。

いや、両腕どころかかない。

・・・ナンデ!?

「んぐぐぐ・・・!」

頭を小刻みにかし、しずつサクラ(推定)をどける。

どけていくと、窓から差し込む朝日に黒い皮が照らされた・・・ん?黒い?

「・・・お前ソラか」

限定された視界では全像は見えないが、辛うじて皮とかわいい尾が見えた。

當のソラはまったく起きる気配を見せず、俺の顔面で惰眠を貪っている。

「・・・で、サクラはここ、と」

視線を下一杯に向けると、丁度腹の上で丸まった茶皮が見えた。

サクラである。

はそこでソラと同じように夢の中だ。

「・・・んん!?」

サクラまで視線をやると、やっと俺を取り巻く狀況がわかってきた。

俺のベッドに、俺以外の人間がいる!

誰かが・・・否、誰か『たち』が俺のを拘束するようにベッドにいる!?

「ふぁぴゅう・・・いへへ、へへぇ」

右隣にいるのは・・・憾ながら慣れてきた俺の親戚、朝霞だった。

いつものようにとろけ切っただらしのない顔で、俺に巻き付きつつ付近に涎を供給している。

・・・コイツ!昨日は子供たちと一緒に寢るって言ってたじゃないかよ!

また夜のうちに侵してきやがったな!オイ!!

だが牙島みたいに下著姿じゃないのでそこだけは褒めてやるぞ!!

「んふ・・・ふふ」

そして・・・左隣には、朝霞と同じように俺に著している・・・アニーさんがいた。

この人は昨日倉庫で寢るって言ってたよなあ!?

しかも何ですかその恰好!?ネグリジェなんて現実世界で初めて見ましたよ!?

・・・ある意味朝霞よりタチが悪い、朝から目の毒である。

・・・いや、いやいやいやこれはまずい、非常にまずいぞ。

かせないから正確にはわからんが、もう7時前くらいじゃないか?

なにがマズいって、このままだと誰かが俺を起こしに來るってことだよ!!

今日の朝食當番は俺じゃないが・・・それにしたって誰かが呼びに來るだろう!?

と、とりあえず起こしに來るであろう人員を想定するか。

璃子ちゃん・・・うん、軽蔑のまなざしで見られる気がする。

葵ちゃん・・・子供には刺激が強すぎる!!

神崎さん・・・まずすぎる、朝から極寒の視線で見つめられそうだ!!

後藤倫先輩・・・は、絶対起こしに來ないだろうけど、萬が一來たら殺される!!なんかそんな気がする!!

やべえよ・・・やべえよ・・・誰が起こしに來ても俺は破滅してしまう!!

なんとかそれまでに、このまず過ぎる狀況を打破しなくてはならん!!

まずは朝霞に聲をかけてみよう!!

「朝霞、朝霞起きろ!このままだと人類は滅亡する!!」

「んゆう~・・・へへぇ、にいちゃあん・・・すんすん」

・・・もうコイツは駄目だ。

デコピンの一つでもかまさんと6時間くらい寢続けそう。

だが、それをするにはが自由にならないといけない・・・!

右手はガッチリホールドされていてかん!ほんとなんなんだコイツは!!

では左のアニーさんを先に・・・!

「アニーさん!グッモーニン!グッモーニンベトナーム!」

「んぅ・・・」

「起きて!お願いだから起きて!地球が駄目になるかならないかなんだ!やってみる価値はありますぜ!!」

何度か呼びかけると、アニーさんの瞼がピクリといた。

これは・・・いける!

なくとも全自惰眠貪り機の朝霞よりはよっぽどマシだ!

「アニーさん、ちょっと!モーゼズ中尉!」

「みぃい~!みゃぁお~~~~う!」

ソラ!お前じゃない!!

あだだだだだ!?お前俺の顔面でびをするんじゃない!!

爪が!爪が頬に食い込むぅう!?

「おはようソラ!今日もいい天気だと思うぞ!」

「シャーッ!」

「やめろお前鼻に貓パンチは南極條約で止されてんだぞ!?」

気持ちのいい目覚めを邪魔されてご立腹なのか、ソラは俺の鼻に執拗なパンチを見舞っている。

地味に痛い。

両腕がかせないから何もできない・・・新しいタイプの拷問かな?

「んんぅ・・・騒がしいなぁ、にゃんだ、朝っぱらから・・・」

だがこの顔面上の攻防にも得るものがあった!

アニーさんが目を開けたのだ!きた!メイン起床きた!

これで勝つる!!

「おはようございますアニーさん!言いたいことは竜王山くらいありますけど!とりあえず俺の左手を解放してください!お願い!!」

「んぁ~・・・?なんだイチローか、私は疲れてるんだ・・・あと半日寢かせてくれよ・・・」

「二度寢の規模がデカすぎるんだよなあ・・・起きてくださいって、この狀況子供の教育に悪すぎますよ」

俺のに顔をり付け、不明瞭な言葉を呟き続けるアニーさん。

「あと疲れてるってなんですか、もうここに越してきてから一週間なんですよ」

そうなのだ。

朝霞が運転する竜神丸によって龍宮へ帰還して、今日でちょうど一週間。

子供たちも新しい住人に馴れて、ようやく以前のような空気に戻りつつある。

ちなみに、ねえちゃんが子供たちの一番人気である。

おばちゃん・・・モンドのおっちゃんの奧さんである幸子さんには及ばないが、そこは三児の母。

格も穏やかで優しいということもあって、子供たちはおばちゃんおばちゃんとよく懐いている。

・・・さんがまたちょっと拗ねてしまったが、ねえちゃんがしお話したらすぐに機嫌を直していた。

さんに人気がないってことじゃないしな。

もう一つちなみにだが、なーちゃんも大人気である。

今ではすっかりサクラと一緒に子供たちのアイドルと化している。

サクラも大きいお姉ちゃんに興味津々だし、なーちゃんも小さな妹ができて嬉しそうだ。

前までは兄弟と離れ離れだったもんな、よかったなあ。

なお、ソラはなーちゃんがし苦手なようだ。

嫌いというわけではなさそうだが・・・なーちゃんが隙あらばソラを舐めまわしてづくろいするのが嫌みたいだ。

前に見たけどベロのきに合わせて前後左右に振り回されてたしな、ありゃ仕方ない。

とまあ、そういうわけで久方ぶりに日常が戻ってきているのだ。

・・・おっと忘れてた、朝霞も人気である。

子供相手にも全力で遊んでくれるからな、特に男子に人気だ。

昨日なんていつの間に作ったのか竹馬で駐車場ダッシュしてたし。

・・・カテゴリー的には小學生男子なのかもしれん、アイツ。

そしてアニーさんだが・・・うん、ジャンル的には後藤倫先輩と同じような扱いのようだ。

『強いし優しいしすごく綺麗だけど、何を考えているかわからないおねえさん』ってじかな?

斑鳩さんとはよく話しているのを見かける。

2人して英語で楽しく會話しているようだ。

アニーさんもリラックスできてよかったな。

牙島じゃあ気を張り過ぎだったからなあ・・・

「かといって現狀ではリラックスしすぎなんですがね!起きて!」

「むうううううん・・・イチローがいじわる・・・いじわるだ・・・」

この人慣れれば慣れるほどどんどん子供っぽくなってねえか!?

そのダイナマイトボディで甘えてくるのやめてくれませんかね!?

「いいから!後で二度寢でも何でもしていいですから!お願いだから起き―――」

その時、俺は気付いた。

部屋のドアが、し開いてるのを。

そして、その隙間から・・・こちらを覗く視線があることを。

しかも、『縦に2つ』

「葵ちゃん、あれがね、ハーレムってやつだよ。ママが言ってた」

「はーれむ?なあに?」

「強い強い男の人はね、お嫁さんが何人いてもいいんだって!」

「およめさん!・・・璃子おねーちゃんも、おじちゃんのおよめさん?」

「にゅ!?ど、どどどどどうしよっかなあ~~~おねえちゃん結構モテるからなあ~~~~~」

葵ちゃんは興味深そうに俺を見つめ。

璃子ちゃんは顔を真っ赤にしていた。

モテるんならなんでそんなに恥ずかしがるんだよ。

というか斑鳩さんは娘にどういう教育してんだ!!

・・・じゃなくて!!

教育に!

悪い!!

現在進行形で!!!

「たすけて!2人とも助けて!このままじゃ俺は死んでしまう!早くこの狀態から解放してくれ!!」

そして俺は、せめて傷が淺いうちにと・・・恥も外聞もそこらへんにポイすることにしたのだ。

この上は贅沢を言っておられんのだ!!

「わふはふ!」

そしてこのタイミングで起きるサクラである。

「ハイおはようサクラ!おとうちゃんを助けてくれあばばばばばばば」

俺がけないのをいいことに顔中を舐め回すサクラにも、俺は助けを求めるのだった。

なんとかベッドから出し、朝食を食べることができた。

璃子ちゃんが駄目な大人を見るようなジト目を向けていたが、甘んじてけた。

・・・葵ちゃんは逆に楽しそうにしていたが、一なんなんだろう。

そして今の時刻は晝前。

特に出かける用事もないので、俺は新たに増えた『施設』を利用させてもらっている。

「朝からひでえ目にあった・・・」

「牙島から帰ってきたと思ったら田中野さんがラブコメ時空に片足突っ込んでた件について」

「なんだとこの野郎」

「がぼぼぼぼ」

じりじりと日は照り付け、アスファルトからは炎が上がる。

俺は知らない間にデカくなっていた簡易プールにつかっていた。

隣で同じように涼んでいた大木くんは暑さのせいか変なことを言い始めたので、頭を押さえて強制冷卻させた。

「ぷっは!・・・いいでしょうこのプールは!」

「最高、最の高。しかし、キミに1年も任せといたら、ここの社屋も変形合する巨大ロボになりそうだよな・・・」

5メートル先を犬かきで楽しそうに泳ぐサクラを見つつこぼす。

ソラはタライの中に浮かび、なーちゃんは端っこの方で水中おすわりをしたままもう10分もかない。

・・・ウチの連中、水好きすぎだろ。

「ははは、2年はしいとこですね」

「2年でいけるのかよ・・・すげえなオイ」

「さすがにロボは無理ですけど、大砲とかならなんとか・・・いっそのこと冗談ぬきで屋上に迫撃砲もどきでも備え付けます?」

悪魔のささやきだ・・・ううむ、現狀防力はいくらあっても困らんが・・・

「自衛隊とかから聞いてるでしょうけど、『元』一般市民で『現』レイダーってのが増えてるんですよねえ・・・こんないいとこ、この先いくらでも狙われますよ?」

「ジレンマだよなあ。ゾンビやチンピラが子供に悪影響だし目障りだからってんで減らしたら、何故か新たにチンピラが生まれるんだよなあ・・・」

「世に盜人の種は・・・いっぱいっぱい!でしたっけ?」

「たぶん違うと思う」

そんな風に大木くんと話していると、サクラがこっちに泳いできた。

に付いてる見慣れないは、案の定大木くんが開発した犬用救命だという。

「わふ!」

「おう、しばらく見ない間に泳ぎが上手くなったなあ・・・今度溜池にでも泳ぎに行くか!」

浮かんだままこっちに當たりし、そのまま顔を舐めてくるサクラ。

この救命のおもあるだろうが、やっぱり犬は泳ぎが上手だな。

「ふふふ、そうでしょうそうでしょう・・・この大木式犬用救命『ジェットマグナム』なら、サクラちゃんみたいなかーわいいワンちゃんでも理論上20ノットの速度で泳げますよ!」

「・・・それ泳ぐって言う?推進でかっ飛ぶの間違いじゃない?」

サクラの救命には、どう見ても不釣り合いなパーツが付いている。

の側面から前足の側面まで、見慣れないパイプ狀のがあるのだ。

「これ・・・ひょっとしてウォータージェットとかいうもんじゃ・・・?」

「オモチャみたいなもんですよ。サクラちゃんくらい軽い犬種ならこれで十分!ナカオチちゃんとかならもう半分船みたいにしないとですけどね!」

ウチの子が知らない間に新技の実験臺みたいにされちょる・・・まあ、大木くんの作るものだから危険はない・・・のかな?

しかし今回の発明品にはジェット要素もマグナム要素もあるんだな・・・長したな大木くんよ。

「安全対策はバッチリですって!やめてくださいよ!もしサクラちゃんに何かあったら僕なんて即挽にされちゃいますからね!」

いくらなんでも友人をいきなりミンチにはせんけども。

まあ、危険なようならすぐに止めさせるが。

「きゃふ!わん!」

「おっとと、いってら~」

また泳ぎたそうにをよじったので、サクラをリリース。

すると嬉しそうになーちゃん方面に泳いでいった。

「そろそろ上がるか、流石にふやけちまうな」

「ですね~、晝ご飯の後は子供たちが使うだろうからついでに水もれ替えときましょうか」

突撃してきたサクラミサイルと楽しそうにじゃれるなーちゃんを見ながら、俺達はプールから上がることにした。

「おじちゃん、しゅっちょう行かない?」

「行かない行かない、しばらくはお仕事したくないからな、絶対」

晝食の後プールで遊んでいた子供たちは、倉庫周辺に敷かれたキャンピングシートに寢転がってを溫めている。

そんな子供たちの中で、葵ちゃんは寢転がった俺の上に寢転がっている。

國民的名作アニメ映畫を思い出すなあ。

『あなた〇トロっていうのね!』っていつ聞かれてもいいようにモノマネの準備をしているが、出番はなさそうだ。

「ほんとに、行かない~?」

「ほんとほんと、おじちゃん仕事だいっきらいだから」

「しごと、しないとだめだよ~?」

「ハイ・・・」

小學生に正論でぶん毆られた・・・つらい・・・

「でも、しゅっちょうは行かなくていいよ~?」

さっきから葵ちゃんが言っている『出張』ってのは、俺が牙島に行っている間に大木くんがでっち上げてくれた理由だ。

『田中野さんは出張しているから、すぐには帰れない』って、すぐさま子供たちに周知してくれたらしい。

マジで有能だぜ大木くんよ・・・キミが仲間でよかった。

「行かないって、今度外に行くときはみんな一緒だ。いい港があるからみんなで魚釣りしような」

「ほんと~?」

「ほんとだって、ほんと」

・・・どうも、子供たちが疑り深くなってるなあ。

頭では大木くんの噓を信じていただろうが、心のどこかで疑ってたのかもな。

その証拠に、この一週間の間子供たちは起きている間中常に誰かが俺に張り付いている。

・・・たまに朝霞も張り付いているが、文字通り。

また俺が消えないかどうか不安なんだろう。

「おじちゃんが噓ついたことあるか~?今回だってお土産も持って帰ってきたし新しいお友達も連れてきただろう?」

「んにゅ・・・えへへぇ」

そう言って頭をでてやる。

葵ちゃんはしだけくすぐったそうにした後、嬉しそうに目を細めた。

ちなみにお土産は牙島から持って帰った多種多様の保存食や調味料のことだ。

そして新しいお友達は・・・もちろんなーちゃんである。

そのカテゴリーに朝霞をれてもいい気がしてきたけどな。

「あーおいちゃん!あーしもい~れて~!」

「あは、朝霞おねえちゃん、どーぞー」

噂をすれば影。

さっきまでそこらへんで晝寢していた朝霞がやってきた。

「俺の意思は無視か」

「にいちゃんが嫌がるはずないもんね~」

そう言いながら、あっという間に朝霞は俺の橫に寢転がる。

コイツはもう・・・まあ、服著てるからいいか。

さっきのプール遊びで迷わず全になろうとした時は心臓が止まるかと思ったが。

璃子ちゃんがぷんすか怒りながら水著を渡してたな・・・朝霞のほうが年上ってこと忘れそうになるわ、いつも。

「にいちゃん、おひさまのにおい~・・・」

「噓だろもう寢付きやがった」

朝霞は俺の肩に頬ずりするなり、一瞬で晝寢へと旅立った。

なんて早い寢付き・・・俺でなくとも見逃さないね。

「・・・おねえちゃん、ふえた」

「ん?」

朝霞の寢顔を見ていたら、葵ちゃんが嬉しそうに呟いた。

ちょっとだけ眠そうだ。

伝染したかな?

「なーちゃんも、アニーおねえちゃんも、ちえこおばちゃんも、みんな、すき~・・・えへ、おじちゃん、すご~い・・・」

「・・・なーにが。葵ちゃんのいい子さに比べたら、おじちゃんなんてとてもとても・・・」

「えへ、おじちゃん・・・だいすき~・・・」

なんともかわいらしいことを言いながら、葵ちゃんも夢の世界へ旅立っていった。

・・・まあ、々あったが・・・とにかく、帰ってこれて萬々歳だなあ。

まだまだ面倒ごとはたくさん殘ってるけど、今はを休めるとしよう。

俺も2人に倣い、夢の世界へ旅立つことにした。

今回ばっかりはサクラを數えなくてもすぐに眠れそうだ・・・お?

後藤倫先輩が・・・いるような・・・気が・・・スヤァ。

「・・・ふん、馬鹿面」

「・・・だけど、弱い癖によく頑張ったね」

「・・・おかえり、田中」

「後藤倫、素直じゃないのう。起きとる間に言ってやれぇや・・・1週間も経っとるし」

「私はいつでも素直!いつでも素直だから!!」

「わかったわかった、わしが悪かったけぇ毆んなや」

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