《ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく》442話「テンプレ(俺じゃない)」

翌日、俺はし遅めの朝食を食べ、それから冒険者ギルドへと向かった。ギルドに到著すると、さっそく掲示板に張り出された依頼をチェックしていく。

特に興味を引くような依頼はなく、都市近隣にある森でのモンスター調査や討伐と薬草を採集する納品依頼などのよくある依頼ばかり並んでいた。そして、ここからし思案する。

前回の失敗を踏まえ、今回はランクに見合った完璧なムーブが必要であり、Eランク冒険者としてどうくべきなのかが求められる。もちろん、偽裝したギルドカードも新たに刷新して別の偽名を使う必要がある。前回では、同じ名前で活したことが疑を持たれる結果となったため、それも考慮することも忘れない。

「とりあえず、いつも通り薬草採集でいくか」

を手にれられれば間違いなく日銭を稼ぐことができる薬草採集の依頼を手に取り、付カウンターで注の手続きをする。ギルドカードの提示を求められ、それに従ってギルドカードを差し出す。

「確認できました。ラーロンドさんですね。では、お気をつけて」

「ああ」

我ながら安直な名づけだが、本名とあまりにかけ離れ過ぎていると聲を掛けられた時に反応が遅れる可能があった。そのため、できるだけ近い名前にした方がいいという判斷からこういった名前にしたのだ。

ギルドはすでに朝一で依頼をけた冒険者はおらず、俺のように朝の混雑を嫌った冒険者がちらほらといるくらいだった。だからこそ、面倒事が起きやすいということもあるのか、先ほどまで俺が見ていた掲示板で二人の冒険者がめていた。

「いいじゃねぇか。このDランク冒険者ガガット様が分厚い手ほどきをしてやろうってんだ」

「い、いらないわよそんなもの。あたしのことは放っておいてくれ」

一人は筋骨隆々だがいかにも世紀末の漫畫に登場しそうな見た目をしている荒くれ者で、もう一人は若い、それもかなりのであった。まるでと野獣のような組み合わせだが、殘念なことに今回はお互いに相思相の間柄というわけではなく、男がに言い寄っているという形であり、そのもそんな男に迷している様子だ。

「放っておいていいのかアレ?」

「はあ、冒険者同士のあれこれは當人同士での解決が基本方針ですので、ギルドの設備を壊されたとかの実害がないと、冒険者のやり取りにギルドは介できないのです」

「なるほどな」

付手続きを済ませた直後に起こった出來事であったため、俺を擔當してくれた付嬢に聞いてみたところそんな答えが返ってくる。確かに、冒険者のめ事にいちいち介していては職員の負擔が増える一方であり、冒険者もギルドにいろいろと細かいことを指摘されたくはないだろう。だが、今回は眼鏡なしで見たとしても男の方が悪いと思うが……。

「いいからお前は黙って俺に付いてくればいいんだ!」

「きゃあ」

痺れを切らした男がの手を摑んで無理矢理に連れて行こうとしている。いやいや、それってもう拐じゃないのかと心で思ったため、視線を付嬢に向けると俺の視線の意味を理解した付嬢がバツの悪そうな顔をする。どうやら、手を出したくてもいろいろと面倒なことになるため、手が出せないといったところなのだろう。

「それくらいにしたらどうだ?」

「な、なんだてめぇは!?」

「あ、あなたはっ!? 【神速の紅】」

そんなやり取りを見ていると、そこに割ってる人がいた。深紅の長い髪を持った妙齢ので、腰には一対のショートソードをぶら下げている。見た目的にスピードを重視した戦い方をする軽戦士らしく、作の一つ一つが軽そうだ。布面積のない軽裝からはむっちりとした肢が顔を覗かせており、特に大きなは男であれば視線を向けざるを得ない。

「【神速の紅】が一何の用だ? 今はこいつと俺で大事な話をしているんだ。邪魔しないでもらおう」

「とてもそうは見えない」

「お前には関係ないっつってんだろうが!!」

二つ名で呼ばれた冒険者は、男の態度に思うところがあったようで、それ以上の狼藉は止めるべきであると止めにる。一方で、そう言われたところで「はい、そうですか」などと引き下がるほど男もまた聞き分けのいい人間ではなく、彼の言葉をすげなく突っぱねる。彼もそれがわかっていたようで、挑発的な笑みを浮かべながら男にある提案を持ちかけた。

「では、こうしよう。私とお前で模擬戦で勝負をして、勝った方が負けた方の言うことを何でも聞くというのはどうだ?」

「なに?」

「お前が勝てば、私は大人しく引き下がろう。だが、お前が負けた時は彼のことは諦めろ。どうだ?」

「けっ、二つ名持ちの冒険者なんかと戦って勝てる訳ねぇだろうがよ!」

の挑発染みた提案をけるかと思えたが、冷靜な判斷ができるだけの頭はあったようで、悪態を付きつつも、大人しく引き下がっていった。それを聞いていた他の冒険者からは「ヘタレ野郎が。賭けができねぇじゃねぇか」とか「せっかく【神速の紅】の戦いが見れると思ったのによー」だの男にとっては知ったことではないようなヤジが飛びう。

「余計なことをしてしまったかもしれないが大丈夫か?」

「い、いえとんでもないです! 助かりました。ありがとうございます!」

「そうか、それならよかった。では、私はこれで」

「えっ、あっ」

引き留めようとするに気に留めるでもなく、冒険者はその場を離れていく、し遠めだったためわからなかったが、一瞬こちらに視線を向けてきたような気がした。

とりあえず、彼の計らいによっては事なきを得ることができた。もし、このまま狀況が変わらなければ、俺がバレないようにこっそりと助けるつもりだったが、手間が省けてラッキーな狀況にしたり顔で冒険者ギルドを後にする。

そんな一幕がありつつ、今日も今日とて薬草採集に勤しむべく都市から徒歩數時間前後にある森へと向かう。期間的にはすでにアロス大陸への侵攻が失敗したことはアルカディア皇國の上層部に伝わっているため、こんなことをしている余裕があるのかと突っ込まれれば、肯定はできかねる。だが、國のあれこれよりも今は目の前にあるスローライフが何よりも優先されるため、俺は足取りも軽やかに森へと辿り著いた。

「やくそぉーさいしゅうー、やくそーさいしゅうー。薬草一筋三百年。早いの味いのやーすいの。安かったら儲からないじゃん、ってな」

などと、普段口にしないような一人でいる時に歌うような歌を口ずさみながら、森に自生している薬草を取り過ぎないよう注意しながら採取する。森にる前にあらかじめ気配を探ってみたが、俺以外にも森にやってきている人間はいるらしく、いくつかの反応があった。近くにモンスターの気配もあったが、襲われているような狀態ではなかったので、特に問題はない。

いつもいつも何かのイベントのように問題が発生するわけもなく、指定された個數分の薬草を摘み取っていき、依頼を達できる量が集まったので、薬草採集についてはそれでおしまいにする。

しかしながら、これだけではせっかく森へと赴いている意味がないので、森の中にいるモンスターを狩ることにして、近くにいるモンスターの気配目掛けて地面を蹴った。

すぐに視界ってきたモンスターを倒し、ストレージに収納する。そして、その流れで分離解のスキルを使って各素材へと分けていった。以前はもっと苦労していたことだったが、便利なスキルを手にれた今では、流れ作業のようにできることはとても助かっている。まさにチートスキル様様である。

「こんなもんかな」

ある程度モンスターを狩り、それなりの量の素材を手にれた俺は、し早いが都市へと帰還する。瞬間移で都市手前まで移し、そのままゆっくりと門まで歩き、出ていった時と同じようにギルドカードを提示して都市へ戻ってくる。

その足で依頼の達を報告してもいいのだが、時間的に採取した薬草と移の時間を考えれば、明らかに辻褄が合わないため、先に森で手にれた素材を売り払うため、俺は商業ギルドへと向かった。

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